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第二十九話
フェザーンにある軍務省航空工学研究所。ここでは新型ワルキューレの開発が行われていた。ワルキューレもマイナーチェンジがこの二〇年でなされていたが、ついに本格的な開発が行われることになった。

新帝国暦二〇年、試作機が初飛行に成功し、翌年量産が開始される事が決定した。フェザーンの工廠では先行量産型約三〇〇機が翼を並べていた。

新型ワルキューレの開発責任者、ギュンター・ローゼンベルグ技術少将は会心の笑みをもらした。

「壮観だな。私のつくったワルキューレたちが宇宙を飛び回る姿を想像するだけでわくわくするものだ」

ギュンターが新型ワルキューレの流麗な機体を眺めていると、助手のヘルベルト・グーテンベルク技術大尉が駆け寄って来た。

「大変です! 室長! あのスタッフォードが対空戦艦を開発したようです」

「あの女が!? よりにもよって対空戦艦とはな。だが、戦闘艇で沈められないものはないということをあの高慢な女に思い知らせてやるとしよう!」

ギュンターは自信満々に言った。ギュンターとクリスはこの二、三年ライバル関係にあり、何かと対立していた。もっとも、クリスにはそうは映ってはおらず、ギュンターは小物以下にしか見られてはいなかった。

クリスには小物にしか見られていなかったが、実際のところ、ギュンターの科学者としての腕は超一流であった。

彼はグロス・アドミラルス級の設計者の座をクリスから奪われていたが、その代わりとして新型ワルキューレの開発者に任命され、彼はその開発に奔走することになった。彼の開発したワルキューレは極めて完成されたもので、武装、運動性能ともに以前のワルキューレと段違いの性能を有していた。

彼は軍務省の知己に頼み、戦艦サターンの完成予定日を聞き出し、軍務省教導訓練部長、カール・フォン・ブランデンブルグ中将にサターンとの合同訓練を申し出た。その内容とギュンターの動機はあきらかに見え透いたものであり、内心カールはあきれ、ギュンターを門前払いにしようとしたが、今後の対空戦艦とワルキューレの重要性を考えると、突っぱねる訳にもいかず、彼はギュンターの提案を了承した。

訓練の日取りは新帝国暦二一年一二月二四日に決定され、そのことはヴェルナーらにも伝えられた。


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