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第二話
「テンシュテット大佐。卿は後衛にあって我が艦隊の退路を確保し、伏兵のある場合は備えよ。ドレイクは我が艦隊が仕留める」

「了解しました。しかし、相手はあのドレイクです。数の面で我々の方が優勢ですが、一〇〇〇隻程度の優勢は彼の前では数のうちには入らないでしょう。ゆめゆめ油断なさらぬよう、お願いします」

毒を精一杯のオブラートに包み込んでヴェルナーはアドルノに言った。

「今回は卿の奇術は必要ないだろう。後方にいるからと言って、我々の足を文字通り引っ張らぬように」

アドルノはヴェルナーを鼻で笑うと通信を切った。ヴェルナーは通信が切れると同時に真面目な士官の仮面を脱いで、足を思いっきり蹴り上げた。

「ふざけやがって。足を引っ張るなだと……戦艦ばかりそろえた鈍重な動きで、ヤツの艦隊運動についていけるか!」

「ヴェルナー……冷静になりなさい」

いつもはナオが熱くなり、ヴェルナーが押さえるのだが、今回は逆になっていた。ヴェルナーは指揮シートにどっかりと腰を落とし、手で目を覆った。

「ふぅ……俺としたことが熱くなりすぎたな。……すまない……参謀長」

「ドレイクとの再戦ですもの。後方にいるなんて私も納得出来ないわ。ただ、アドルノ少将はドレイク討伐の功で中央に戻りたいと思っているでしょうね。実際、ドレイクはその価値はあるから」

今回の出兵は先のケリム星域遭遇戦においてヴェルナーがドレイク艦隊の全貌をあらわにしたことで勝算を見いだしたアドルノ少将が自らの出世のために、司令部に直訴し無理矢理に決定させたものだった。二〇〇〇隻という兵力を有するアドルノだが、実戦経験が少ないということは自覚していた。そのため、実戦経験の豊富な第六戦隊を指名し、自らの退路の安全を図ろうとしたのだった。

ナオは腕組みして前方のアドルノ艦隊を見た。戦艦の配置も、巡航艦の配置もめちゃくちゃで、お世辞にも良い陣形とは言えなかった。だが、二〇〇〇隻と言う、ドレイクを遥かに上回る兵力は侮れなかった。

「だが、兵力の差が勝敗を分ける訳ではない。奴の戦術は数をすら凌駕する。……もっとも、俺たちも同じだけどね」

指揮シートに座ったヴェルナーは、傍らに立つ相棒に笑った。その顔を見たナオはやっとヴェルナーがいつもの調子に戻ったと少し安心して苦笑まじりの微笑みを返した。

小惑星帯に光点が現れた。ドレイク艦隊が姿をあらわしたのだ。
今回の戦闘に動員された兵力はドレイク側兵力、約九六〇〇隻、約九万人に対し、帝国軍側艦艇二五六〇隻、将兵二四万三〇二〇人であった。

午後九時、アドルノ艦隊は姿を現したドレイク艦隊に向けて最初の砲火をあびせかけた。


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