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第十九話
翌日、ヴェルナーは上申書の作成に取りかかった。ヴェルナーは艦隊の主立った人間、ナオ、ブラウン、アデナウアー、アルベルトらを呼び、サターンの改装箇所について話し合った。五人は夜を徹して研究しあい、二日後提出する上申書が完成した。ヴェルナーは眠気まなこをこすりながら、フランツに提出した。フランツは、すぐさま上申書を軍務尚書エルネスト・メックリンガー元帥へと送った。

上申書に目を通したメックリンガーは対空戦艦の必要性をすぐに理解し、特別予算を承認すると同時に、来年度予算に警備艦隊関係費を増額させた。この一件で、初めて帝国軍首脳部の記録にヴェルナー・テンシュテットの名前が刻まれることになる。

良報がヴェルナーの元に舞い込むのはフランツに予算を要求してから二週間後のことだった。

新帝国暦二一年八月一五日、応急修理を終えたサターンはハイネセン宇宙港に到着した。ナオにとっては半身とも言うべき友人を失った場所であり、軍務がない限りは決して自分から訪れることのない場所だった。今回、第六戦隊首脳部からは、ヴェルナー、ナオ、ブラウンの三人が出向の辞令を受け取っていた。三人はハイネセン上陸早々、バーラト自治政府軍統合作戦本部戦術研究部長ハーヴェイ・ウォールバンガー、バーラト自治政府軍士官学校長エドワード・マディガン両中将からの出迎えを受けた。

ハーヴェイ・ウォールバンガー中将は現在バーラト自治政府軍統合作戦本部戦術研究部長の要職にあり、自治政府軍の艦隊戦術立案の総責任者であった。どんな任務でも冷静に、冷徹にこなしたことから「アイスマン」ウォールバンガーの異名を取り、一兵卒の叩き上げでありながら、四〇代半ばにして中将の地位まで出世していた。

また、軍官僚、艦隊司令官と軍人として様々な顔をもつハーヴェイであったが、彼の本質は砲術家であったと言える。艦や戦闘艇の構造を知り尽くし、その急所を的確に狙ったピンポイント射撃は弟子のヴェルナーにも受け継がれていた。

ヴェルナーは師であるハーヴェイに敬礼した。

「ご無沙汰しています。ハーヴェイ閣下」

「壮健そうで何よりだ。貴官らの活躍は聞いているぞ」

ハーヴェイは返礼すると、ヴェルナーに言った。

「そうだそうだ。この間、お前さんらがドレイクを撃退した時など、仕事を放り出して俺のオフィスまでやって来たぐらいだからな」

マディガンが人懐っこい笑顔を浮かべてヴェルナーらに言った。親友の態度にひとにらみすると、ハーヴェイはマディガンを制した。

「エド。ここは公式の場だ。そのような態度は後回しにしたらどうだ」

「おいおい。久々の再会に公式も非公式もないだろう。少しは素直になるのも可愛いものだぞ。ハーヴェイ」

親友の手痛い反撃にハーヴェイはひとつ咳払いをした。さらにハーヴェイに絡もうとするマディガンからわかれ、ヴェルナーたちを工廠に案内した。ハーヴェイは歩きながらヴェルナーたちに言った。

「サターンの改装案は私も読んだ。対空艦としては恐らく最高の艦になるだろう。今回は私もアドバイザーとして計画に加わるように命令を受けている」

「対空戦の元祖の閣下が加われば、千人力です」

ヴェルナーは少し頬をかきながら師に言った。

「私にも実現してみたいアイデアがあってな……」

ハーヴェイが話し終わらないうちに手前の研究室の扉が爆発して弾けとんだ。


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