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第一話
新帝国暦二一年六月二一日、ヴェルナー・テンシュテット大佐率いるバーラト星系警備艦隊第六戦隊はヨーゼフ・アドルノ少将率いる第八戦隊とともに、「海賊騎士」サー・ドレイク討伐のために、ドレイク本拠地と思われるケリム星域付近の小惑星帯に向かっていた。

「この出兵は乗り気じゃないな」

先のドレイクとの戦闘で大破し、五月に修復を完了したサターンの艦橋で、ヴェルナー・テンシュテットは不満そうに言った。

「どうしたの? あなたがそんなこと言うなんて珍しいじゃない」

艦隊参謀長のナオ・リヒテンシュタイン中佐が指揮シートに腰掛けて憮然としている一歳年少の相棒に言った。

「意味がない。大義がない。兵力もない。無い無いづくしで、総司令官がアドルノ少将ときたもんだ。やってられないさ」

ヴェルナーは収まりの悪い黒髪をもしゃもしゃとかきながら、相棒に不満を言った。

第八戦隊司令官、ヨーゼフ・アドルノ少将はこの年、四六歳。かつては帝国軍のエリートコースを歩んでいたが三〇代半ばに不祥事を起こし、警備艦隊に左遷された経歴を持っていた。本来、軍官僚タイプであった彼は、艦隊司令官としての指揮能力はほとんどないに等しかったが、少将と言う階級に見合うための警備艦隊の中でも最大の兵力二〇〇〇隻を与えられていた。階級が上というだけならば、納得がいくが、彼の気位の高い性格がヴェルナーを不満足らしめている最大の原因であった。

「兵力は二五〇〇。こっちが優勢だが、所詮は烏合の衆だ。統制のとれたあのドレイクに勝てるかどうか……」

指揮シートの肘掛けに肘をかけてふてくされたヴェルナーにナオは容赦なく鉄拳を浴びせた。

「司令官のあなたがそんなこと言ってどうするの。勝てる算段をしておくのが私達の務めでしょ。しっかりなさい」

いつになく弱気になっているヴェルナーをナオは自分流に励ました。作戦の初めから気乗りしていないヴェルナーだったが、ナオの一言で少しだけ元気を取り戻した。そんななか、六月二一日午後八時三〇分、作戦指揮官のアドルノ少将からヴェルナーに通信が入った。


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