9:全力で潰します
ライトの思惑通り、梨依は近くのビルから、ライトが見える教室の窓から、双眼鏡を使いライトを監視していた。
その梨依の耳からは、風の音の代わりに、Lの声が届いていた。
「梨依、先ほどまでは今朝放送された犯罪者、時間差はありますが全てが心臓麻痺で死亡しました」
「…。お兄様、時間はこの際、もう関係ありませんわ」
日本捜査本部での捜査で、既にキラは、時間、そして死亡前の行動はある程度操れることがハッキリしている。この場合重要なのは…
「重要なのは、今、または少し前まで報道された犯罪者が、心臓麻痺で亡くなったかどうかですわ」
・・・。
そう言ってから数秒の間が空いた。
まさか…
Lの声が再び聞こえてくる。
「私もそう考えていました。しかし…今尚キラの殺人は止まっていません。梨依の話し方で、夜神 ライトも不自然な行動を取っていないことが分かりました…」
…その通りですわ、お兄様…。キラと睨んだ夜神 ライトは、一切不自然な行動は取っていない…。ただノートに、授業内容を書き込んでいるだけ…。
「…もしかしたら、梨依や私の推測は間違っていたのかもしれませ…」
「いえ。それはありませんわ。キラは夜神 ライトです…。それに夜神 ライトは、昨日の午後は時間がありました…何か仕掛けたのかもしれませんわ」
「何か、とは、梨依らしくないですね」
「ええ…さすがにキラを舐めていました…」
梨依は一呼吸おいて、
「…全力で夜神 ライトを潰します」
放課後の教室。ライトは帰宅準備を終え、帰ろうとしているところだった。
授業の合間にある小休憩時間に、ユリにもLの存在のことは話しておいた。勿論“関係”に至っては、朝友人に言った内容と同じだ。このことによって、彼女は僕を絶対にキラと疑うことは出来なくなる、が…。リュークを見られたのはやはり大きいな…。Lがユリを疑い始め、十分に引き付けた後、彼女は葬らなければ。
ライトが校門を抜けると、Lは自然にライトの隣に歩き着けた。
Lがまず言葉をかけた。
「キラについて、何か推理出来ましたか?」
「いえ、授業がはかどって…何も考えられませんでした」
「…。そうですか。まあ来年には卒業ですし、進路や受験対策に頭が行きますからね。無理もありません。では私の考えを話します…キラは、顔と名前が割れているもののみ殺人が出来──…」
他から見ると一見、年の差や身長差があるにしても、普通の友人のようにも見えるが、頭の中では、互い探りあいをし、内面的には、全く穏やかな雰囲気ではなかった。
そうして数十分が経ち、二人は夜神家の前まで来た。
「それでは」
「はい、また」
Lは身を翻し、どこか近場に泊まるところでもとってあるのだろう、そこへ歩き出した。
ライトはその背中を見送ることなく、鍵を取り出し、家に入った。
「ただいまー」
玄関を後ろ手に閉めながら言ったものの、返事は無い。
「…?何だ、誰もいないのか…」
呟きながら階段を上り、ライトは、自分の部屋の扉に仕掛けた細工を確認した。 |