表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

hana*do-wa

あーちゃんはパパがきらい

作者: 花*

娘にきらいとか言われてる全国のパパに捧ぐ

     挿絵(By みてみん)


「パパいや! きらい! あっちいって! あーちゃんはママがいいの!」


あーちゃんがパパにいっています。

このごろのあーちゃんはパパがきらい。なんでかな。


「だってパパは、あーちゃんがいやだっていってもくっついたりだっこしたりするし、たかいたかいは たかすぎてこわいし、てをぎゅーってにぎりすぎていたいし、ふざけるし、おならするし、あとは、あとは……とにかくきらい!」


そんなあーちゃんに ママはいいます。


「あーちゃん そんなこといわないのよ。パパはあーちゃんのこと だいすきなんだから、きらいなんていったらかなしいよ」


でも、でも、いやなんだもん!


あーちゃんは、ぷいっ。


「そんなこといって、あるひ とつぜんパパがいなくなったらどうするの? いやでしょう?」

「いなくなってもいいもん!」



* * *



あるあさ、おきると、あーちゃんはベッドにひとりでした。


あーちゃんはいつもおおきなベッドで パパとママのあいだに ねています。(もちろんどちらかというと ママのほうに よってねていますが……)


あさになると いっつもパパがあーちゃんをだっこして ねています。ママはもっとはやくにおきていて、あさごはんをつくっているので あーちゃんがめをさますときには もうベッドにはいません。


くっついているパパのかおを て でグイグイおして、あーちゃんはパパのうでからぬけだすのです。それがいつものあさでした。


けれど、けさはひとりです。パパはいません。さきにおきたのでしょうか。


ベッドからでて、かいだんをおりて、したのおへやをのぞいてもパパはいません。

あーちゃんがおねぼうしたのでしょうか。

パパはもうかいしゃにいってしまったのかな?


あーちゃんは だいどころにいるママにききました。


「おはようママ。ねえ、パパは?」

「おはようあーちゃん。パパって? なにいってるの? うちにはパパはいないでしょう」

「え? もうかいしゃへいったの?」

「なにいってるの。だからうちにはパパなんていないでしょう? へんなあーちゃんね」


挿絵(By みてみん)


ママは なにをいってるのでしょう。でもよくよくまわりをみると、なにかがいままでとちがいます。

なんでしょう……


あっ!


あーちゃんはベッドのところにもどりました。まくらがふたつしかありません。あーちゃんとママのまくらです。パパのまくらがありません。


パパのふくがかかっているクローゼットをあけました。そこはからっぽでした。


それからあーちゃんは せんめんじょへいきました。パパのはぶらしも ひげそりも ありませんでした。


だいどころの とだなもあけました。パパのおはしも おちゃわんもありませんでした。


そして、そして……。まどべにかざってあるしゃしんをみました。きのうまでは あーちゃんとパパとママと さんにんならんでうつっていたはずの そのしゃしんは あーちゃんとママのふたりだけでした。



パパがきえてしまった!!!!



* * *



あーちゃんは いえをとびだしました。

パパをさがしにいくつもりです。

でもいったいどこへ さがしにいけばいいのか わかりません。


いつもいく きんじょのこうえん。いません。

そのまえにあるコンビニエンスストア。いません。

もうちょっとさきの じどうかん。いません。

そのもうちょっとさきの おおきなおおきなこうえん。

いません……。


きがつくと あーちゃんはだいぶとおくまで きていました。いままで こんなとおくに ひとりできたことはありません。ちょっとこわくなって かえろうかなとおもいました。


けれど、もうここまできてしまったのです。こうなったらぜったいパパをさがしだす! あーちゃんは おおきなこうえんのなかにはいっていきました。




「パパー、どこー?」


そこでだれかがこえをかけてきました。


「きみ、パパがいないの?」

ふりむくと、そこにいたのは ちゃいろいいぬです。


「いるよ。いるけどいなくなっちゃったからさがしにきたの。いぬさんみなかった?」

あーちゃんは いぬさんにききました。


「どんなパパ? せはたかい? ひくい?」

いぬさんにきかれて、あーちゃんはこたえました。

「せはとってもたかくて き みたいなの。たかいところにあるでんきもすぐとりかえられちゃうし、きにひっかかったボールもすぐとれちゃうの。かたぐるましてくれるとおつきさまにてがとどきそうになるぐらい」


「へえ、すごいパパなんだね。でもぼくはここではみかけなかったな」


挿絵(By みてみん)





いぬさんとわかれて あーちゃんはこうえんをすすみます。


「パパー、どこー?」


するとまただれかがこえをかけてきました。


「きみ、パパがいないの?」

ふりむくと、こんどはそこにいたのは くりいろのはとです。


「いるよ。いるけどいなくなっちゃったからさがしにきたの。はとさんしらない?」

あーちゃんは はとさんにききました。


「どんなパパ? あしははやい? おそい?」

はとさんにきかれて、あーちゃんはこたえました。

「すっごいはやいよ。ようちえんのおとうさんのかけっこでいちばんだったもん」


あ、でも、あーちゃんとかけっこするとパパはまけるのです。なんでかな。もしかしてわざとまけたのかな。


「へえ、すごいパパだね。でもぼくはここでは みかけなかったな」





はとさんとわかれて あーちゃんはこうえんをすすみます。


「パパー、どこー?」


するとまたまただれかがこえをかけてきました。


「あなた、パパがいないの?」

ふりむくと、こんどはそこにいたのは くろとしろのねこです。


「いるよ。いるけどいなくなっちゃったからさがしにきたの。ねこさんみなかった?」

あーちゃんは ねこさんにききました。


「どんなパパ? やさしい? こわい?」

ねこさんにきかれて、あーちゃんはこたえました。

「とってもやさしいよ。つかれたっていうとだっこしてくれるし、あーちゃんがきらいなたべものは こっそりかわりにたべてくれるし、ママにおこられたときは かばってくれるの」


そこであーちゃんは さっきはとさんとはなしたときのぎもんにきづきました。


「あとあーちゃんとかけっこすると ほんとははやいのにわざとまけてくれるの」

「へえ、やさしいパパなのね。でもわたしはここではみかけなかったわ」





ねこさんとわかれて あーちゃんはこうえんをすすみます。


「パパー、どこー?」


すると、またまたまた、だれかがこえをかけてきました。

「きみ、パパがいないの?」


ふりむくと、ちかくのさくのむこうがわに まっしろなやぎがいました。

「いるよ。いるけどいなくなっちゃったからさがしにきたの。やぎさんみなかった?」

あーちゃんは やぎさんにききました。


「どんなパパ? つよい? よわい?」

やぎさんにきかれて、あーちゃんはこたえました。

「うーん、どうかな。でもないたところをみたことないし、おもちつきたいかいでは ぺったんぺったん かんたんにおもちをつけるんだよ。あーちゃんはおもちをつくぼうは おもくって ひとりでもてないのに」


そういえば そんなにちからがあるのに、あーちゃんにぽかぽかたたかれてもパパはたたきかえしてこないな、とあーちゃんはおもいました。


「へえ、つよいパパなんだね。でもわしはここではみかけなかったよ」





やぎさんとわかれて あーちゃんはこうえんをすすみます。


「パパー、どこー?」


すると、またまたまた、だれかがこえをかけてきました。


「きみ、パパがいないの?」

ふりむくと、そこにいたのは はいいろのねずみです。


「いるよ。いるけどいなくなっちゃったからさがしにきたの。ねずみさんみなかった?」

あーちゃんはねずみさんにききました。


「どんなパパ? おもしろい? つまらない?」

ねずみさんにきかれて、あーちゃんはすぐにこたえました。

「すっごいおもしろいよ! じゆうじざいに おならをするんだよ! ママはすっごいおこるけど、あーちゃんはすっごいわらっちゃうの! あと おわらいげいにんのまねも すっごいうまいんだよ!」

「おなら……くさくないの?」

「くさいけど……でもおもしろいの……」


おならでよろこんだらまずかったでしょうか。でもねずみさんはわらってくれました。


「おもしろそうなパパだね。でもぼくはここではみかけなかったな」





ねずみさんとわかれて あーちゃんはこうえんをすすみます。


「パパー、どこー?」


よんでもよんでもパパはいません。ほんとうにいなくなってしまったのでしょうか。


挿絵(By みてみん)


すると きのうえでカーカーと カラスがとんできて えだにとまりました。

そして あーちゃんにむかっていいました。


「ぼくはしってるよ。きみはいっつもパパがきらいっていってたじゃないか。くっついたりだっこしたり たかいたかいしたり おならしたりするパパがきらいだって。いなくたっていいんだろう? このままでいいじゃないか」


たしかにあーちゃんはいつもそういっていました。きらいって。いなくてもいいって。

でも。

ほんとうはちがうのです。

なぜだかわからないけど、てれくさくて きらい といってしまうのです。


きらいっていってもおこらないから。でもちょっとかなしそうなかおをしてた。


でも、でも、ほんとうは、パパのことはだいすきなのです。

せがたかくて、やさしくて、あしがはやくて、つよくって、おもしろいパパが だいすきなのです。

あーちゃんのめから なみだがぽろぽろこぼれました。


「えーん、えーん。パパ、ごめんなさい。もうきらいなんていわないから、いなくならないで。かえってきて」


あーちゃんは、カラスのとまった き のしたで、いつまでも ないていました。


挿絵(By みてみん)



* * *



「パパ! あーちゃん! いつまでねているの。いくらおやすみだからってねすぎよ」


あたたかいなにかにくるまれて、めがさめると、あーちゃんはベッドにいました。

よこをみると パパがあーちゃんにくっついて だっこしながらねています。


「パパがいる……」


あーちゃんはなみだがでてきました。すると めを あけたパパが


「あーちゃんどうしたの? こわいゆめを みたの?」

と もっとぎゅうっとしてきました。


よかった、ゆめだったんだ、パパはいなくなってなかったんだ。

これからは もうパパをきらいっていうのはやめよう。こんどはすきっていってみよう。

あーちゃんはつよく そうおもいました。


挿絵(By みてみん)


「あーちゃん、かわいそうに。パパがいるからね」


パパはぎゅうぎゅうあーちゃんをだきしめます。ぎゅうぎゅうぎゅう。ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。

ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう……。



「パパいたい! はなして! パパなんかきらい!!」






おしまい。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 動物と会話している内に、父親の良い面に気づく点が良かったです。 挿絵も可愛らしくて良いですね。
[一言] 再婚して養父となって、 養子を自我の芽生えない頃から育てていたのに、 「お前なんか本当の親父じゃないくせに」 やって本当にバッドエンドやっちまう時が…… ハッピーエンドでよかった
[良い点] 挿絵が可愛くてお話にぴったりでした。 前書きの「娘にきらい〜パパに捧ぐ」に笑いました。 [一言] 初めまして。 子どもに読んでいたのですが、おならの話に一番喜んで笑っていました。 いやー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ