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黒獅子物語 作者:黒井ここあ

第二章 二人の王

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一、秋風のロンド

キャラクターデザイン(外部リンクです)
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キャラクター紹介
http://ncode.syosetu.com/n2893cc/
     1

 日がとっぷりと暮れる直前に、第一部隊の仲間達は、幸運な事に出発したその日にアーミュの牧場までたどり着いていた。
 広大な牧場の真ん中に、一家がのびのびと暮らせるような石造りの家が堂々と立っている。
 厩や家畜の小屋までも立派なものだった。
 ヴァニアスの夏はとうに去り、牧場を撫でていく風は秋の香りを孕んでいた。
 羊たちは、ふくふくとその体毛を増やし、香ばしくも少しぱさついた草を食んでいる。
 エイノ達の荷物を詰めた巨大な木箱は、戸口から家の中に入れることができなかったので、玄関先に放置されていた。猫たちが興味深そうにその匂いを嗅ぐ。
「はいっ! みなさん! 遠くロフケシアからようこそいらっしゃいました! わたしがみなさんのお世話をする、アーミュ・アルバトロスです! お家では、わたしの言うことをちゃんときくよーに!」
 大きなバンダナがトレードマーク、オーク色の長い髪を二つに分けて結んでいる少女が、毛織の絨毯の上で宣言した。
 なるほど、小さなホストマザーか、と理解したエイノは小さく頷いた。
「なンでこんな、ちみっこの言うことを聞かなきゃなんねーンだ!?」
 小さな胸を張る十一歳の少女を、二三歳のユッシが年甲斐も無くムキになってねめつける。
 顔の真ん前で鼻を鳴らす青年に、アーミュは困ったように眉を傾ける。
 みるみるうちに、髪と同じ色の瞳には涙が溜り出す。
「ほれ、見たことかっ! 泣き虫は大人しくしてろよな? わかったかっ!?」
「む、むぅ……!!」
 少女の顔がだんだん悲壮感に満ちてくる。
 爆発するのも時間の問題と思われたその時、アーミュに助け船が入った。
 エイノが彼女に向かって右手を差し出したのだ。
「よろしく、アルバトロス殿のご息女。僕がエイノユハニだ。ここは君の城だからな、喜んで従おう」
「アーミュ、あたしウェンディ! 飛び入りで来ちゃったんだけどさ、部屋はどうしたらいい?」
「え、ちょっ!? エイノ!? ウェンディも!? ちみっこの言うこときくのか!?」
 泣きべそをかいていた少女は、二人の言葉で直ぐに明るさを取り戻し、手元のメモを参照した。
 ウェンディの名前が見つからなかったらしく、一つ首を捻ったが、すぐに何やら書き込み、笑顔を花咲かせた。
「ミルちゃんと一緒っていうのはどーでしょー?」
「おうっ! ミルやんと一緒だと色々捗るな! ヒュヴァ!」
「ひゅば?」
「いいね! ってこと!」
「ひゅばー!」
 ウェンディとアーミュがすぐに打ち解けた隣で、ユッシは一人、話に取り残されていた。
「オ、オレは――」
「僕も誰かと相部屋なのかい、アーミュ?」
「ううん、違うよ。エイノくんには一人部屋って、おじじさま言ってたです」
「了解した。何から何まで用意してもらって、すまないな」
「いーってことよー! です」
 少女は両手の拳をぐっと握って見せる。
 彼女がすっかり元気を取り戻したのを見て、エイノは満足げに踵を返した。
「続いて僕は、あの荷物をどうにかしよう。夜露に濡れては本が黴てしまう」
「あたしも行くよ! 薬品も、湿気ちゃったら使えなくなっちゃうよ!」
 エイノとウェンディが、荷解きのために玄関をくぐる。
 一人残されたユッシは、先程までの強気はどこへやら、右往左往していた。
 二人を見送った小さな背中に、青年は恐る恐る声をかける。
「な、なあ……アーミュ……」
「むっ」
 振り向いた彼女の丸い瞳は、嫌悪感でぎゅっとひそめられていた。
「うっ……」
「何の用?」
 愛らしい声が棘とげしている。
 ユッシは一瞬ひるむ。
「……オレはどうしたら……?」
「名前も知らない人には優しくしちゃいけないって、おじじさま言ってたもん!」
 むくれた拍子に、ぷいっとそっぽを向いた少女に、青年はピンク色の頭を思い切り下げた。
「わあった! 悪かった! オレ、ユッシってンだ」
「……ちみっこって言った」
 下手に出るユッシを、アーミュは睨みつけた。
 彼女なりに、怒っているらしく眉根が険しい。唇も鼻に届きそうなくらい、尖っている。
「……ちみっこって言って、ごめんなさい、アーミュさん……」
 すると、彼女は不機嫌だった顔を一転させた。
 ほっと胸を撫で下ろすユッシ。
「いーよー! ユッシくんは、へいかと一緒のお部屋ね!」
「ンっ? ……へーか?」
 へーか。
 陛下。
 ユッシの知る限り、そう呼ばれる身分の人間は、この仲間にはいないはずだった。
 アーミュは薄茶色の瞳を真ん丸に見開いた。もちろん、小さな口もそれに合わせてあんぐりと開いた。
「はうっ! 違うの! ろ・ー・か、を行った先の、ぐ、ぐれいさまと同じ部屋なの!」
「そうか! わかった! そうとわかったらオレ、エイノ手伝ってくるわ!」
 ユッシは納得すると、手を振りながら戸口から出ていった。
 アーミュは、溢れて来ていた脂汗が、すっと引いたのを感じた。
「ふー、ひやっとしたぁ!」
 そう、アーミュの養父、ヴァニアス騎士団長セルゲイ・アルバトロスの命により、グラズアの身分はその時が来るまで明かしてはいけないのだった。
 ヴァニアス王国、現国王による独裁国家。
 リンデン伯爵を支持する革命家の引きいる、レジスタンス。
 そして結成して間もない弱小の解放軍。
 上記の二つは、既にリンデン伯爵の息がかかっている。
 レジスタンスによる国家転覆が起こるのは時間の問題だった。
 この革命が成功すれば、リンデン伯爵が正式に表舞台に立ち、国の手綱を握るだろうことは予見できていた。そうすれば、ヴァニアスはリンデン伯爵による完全な独裁政治の支配する国となる。
 アルバトロスと国王グラジルアスの考えは、議会制政治のヴァニアスに戻すこと。
 その為には、革命を何としても防がねばならなかった。
 革命を止めようとするグラズアが国王本人だということは、彼を城から連れ出したテュミル、アルバトロス、エイノ、そしてアーミュだけが知っている真実だった。
「……危ないの。練習しとかなきゃ。ぐれいさま、ぐれいさま――」
「アーミュ、いいかい?」
「ひぁあっ!?」
 小さな体を大きくびくつかせたアーミュを見て、エイノはほほ笑んだ。
「驚かせて悪かったな。部屋まで案内してくれるか?」
「いいよ、いいよ。だいじょーぶ!」
 エイノは抱え込めるだけの書物を持って、アーミュの後ろについて行った。
 必要なものが揃っている簡素な部屋。
 その備え付けのテーブルに書物を置く。
「アーミュ。陛下はこの冬、帰ってこられない予定だ」
「そ、そうなんだ……。さみしいね」
「そうだな……。だから、君も無理しなくていい」
「私、無理してないもん!」
「……そうは見えないがな。まあ、いいんだ。冬を越すまで、仲良くやろうじゃないか」
「冬を越すまで……。それじゃあ、雪がとけたら、いなくなっちゃうの?」
「君はなかなか、鋭いんだな」
 エイノは室内の蝋燭全てに火を灯さなかった。
 たった一つ、手元を照らす分だけの蝋燭を燭台ごと持ち上げる。
「解放軍は冬眠だ。春になったら、動き出せるように」
「でも……。へーか……、ぐれいさまはお家に帰ってこない間、何をするの?」
 アーミュが心配そうにエイノを見上げる。彼が答えを知っていると思っているのだ。
「陛下には、働いてもらいます。大丈夫。ちょっとは世界を見たんだ。きっといい仕事をしてくれるさ」
「エイノくんは?」
「僕かい? 君は知りたがりだな」
 エイノは頤に手を持ってゆくと、一つ閃いたようだった。
 軍師として働く、その意味と、その能力。
 長らく一人で研究を続けてきたエイノにとって、仲間という存在と自分との距離感は未だつかめないものだった。
 この空白の期間は、自分に欠けているものを補うチャンスだともいえた。
 本を書くことに必要なのが、沢山の単語とそれを繋ぎ合わせるセンスだとすれば、戦を動かすことに必要なのは、軍を構成する人員の把握、そしてそれらを組み合わせる作戦だといえよう。
 それならば、知る必要がある――。
 彼はそう思った。
「僕が、友達を作る……っていうのは、変か?」
 友達。
 自分にはなじみの無い言葉だと、エイノは自嘲した。
 アーミュは額面通りの言葉として受け取ったようだった。
「ううん! へんじゃないよ!」
「よし。じゃあ、アーミュには色々聞かないとならないな」
「いいよー!」
 何をして友達と言えるのだろうか?
 エイノの中で答えは見つかりそうも無かった。
 共犯者。
 彼の言葉が、拳の軋みと共に呼びさまされる。
 そして、《英知の書》の精、ココがささやく名前。
 エド、そして、シャル。
 まさに、謎が謎を呼びこんでいる。
 それも、グラズアを巡って。
 エイノは蝋燭の灯火より、熱い魂の迸りを感じていた。
 ……全ての真実を、君と見てみたくなったよ……グラズア!
 司書の瞳がわくわくとした輝きを宿した。

     2

 夜風が冷えこんできた、秋の日。月の無い星空の照らす夜に。
 四人の家族とおぼしき人影が、街道を西へ、牧場へと向かっていた。
 エイノの指示通りならば、彼らはスキュラで数日時間を待つ予定だった。
 しかし、一人の思いつきによってその約束はあっさり破られていた。
「このままだと、野宿をした方がいいかもしれませんね」
 男がぽつりと呟いたのを、女が食ってかかる。
 二人の子供を連れている割に、その声は母親のそれとは異なり、うら若い。
「あたし、野宿は嫌だって言ったじゃない、マスター!」
「じゃあミルちゃん、どうしてエイノ君の言うことを聞かずに今日、出発したんです?」
「……だ、だって……」
 暗闇の中、男女が口論をくりひろげる。
「……なぜか、グレイ君御一行の後ろについて歩きましたよね?」
「……ま、まさか! ……たまたま、おんなじタイミングだっただけで――!」
「素敵な剣士さんと……あと、かわいい女の子と一緒でしたねえ? どちらにしても、ライバル登場、ってところですか?」
「み、ミレ――! あの子がいるなんて思わなかったのよ! あと、グレイは男に興味ないと思う!」
「あら、そうと言い切れる確証はないですよ。まあ、女の子の方が誰かは敢えて聞きませんけど。だからって、ヴァニアス王家の離宮までこそこそつけてくることはなかったんじゃないですか?」
 冷静な男の言葉に、矢継ぎ早に返事を打ち返していた少女の声がぴたりと止む。
「……マスター、今日はなんか、冷たい」
「体も心も冷え切っていますからね」
 むくれた少女の横顔に、ドーガスはやれやれと溜息をついた。
 寒暖差の激しさで、旅人の身体は芯まで冷え切っていた。
 彼らはまだ、夏の装いだったということもある。
「休まず歩けば、アーミュちゃんのところには着くでしょうけど……。双子ちゃんたちがこれじゃあね……」
 ドーガスとテュミルに手を引かれ歩いている双子は、心ここにあらず、半ば眠っている状態で歩いていた。
 既に半日、自らの足で歩かせていた。これ以上、無理強いをするのは可哀想だった。
「……ごめんね……」
 自身の過失を素直に認めた少女に、男が小首を傾げて見せる。
「さ、どうします、ミルちゃん?」
「ちょっと森に入って、木の合間に設営して、仮眠でもとろっか」
「賛成です」
 彼らは、離宮からほど近い森に、野営をすべく入っていった。
 不吉な獣の雄叫びが、何処からともなく聞こえた。

     3

「……僕はルヴァ。君は……?」
 星座の見守る木陰にて、二人の少年少女が立ちつくしていた。
「……リシュナ・ティリア・ディア・ヴァニアス……」
 国の名前を持つ少女は、心もとないのかあるいは寒さのためか、両手を組んでいた。
 その目の前には、無残にも焼け死んだ狼がいた。
 赤黒く焼けただれた肉の奥からは、その大きな体躯を礎である骨が露出していた。
 ルヴァは嫌な唾を一つ飲み下す。
「助けてくれたのは嬉しいけど……でも、こんな……」
 むごい仕打ちをしなくとも――。
 命を救われた身だったので、ルヴァはその言葉を飲み込んだ。
 少女は、ふるふると首を振った。
「これは、ただの狼ではないのです。狼と、なにか別なものが混じった、化け物なのです。ほら、この角を見てください……」
 名前の長い少女に促され、ルヴァは骨も露わになった死体の頭部を見る。
 近づくと、タンパク質の焼けついた強烈なにおいが彼の鼻を刺してくる。
 少年は顔を顰めながら黙視すると、あることに気が付いた。
 それは、本来、狼が持っていないはずの、渦巻いた二本の角が、堂々とその額から生えていたのだ。
 なるほど、とひとつ溜息をついたルヴァは、すぐに死体の傍から引き下がった。
「……その様子だと、初めてこいつを仕留めた、ってわけじゃないみたいだね、りしゅなて……。……ごめん、なんだっけ?」
 後ずさった拍子に少年と隣り合わせになった少女は、流暢に再び名乗った。
「リシュナ・ティリア・ディア・ヴァニアスです」
「長い! 覚えられないよ!」
 少女はルヴァの素っ頓狂な声に目を丸め、思わず笑いだしてしまった。
 鈴を転がしたような声に、少年は顔を赤らめた。
「だって、ほら、憶えられなくって! 呼びにくいだろ!」
「ふふ……そうかも、しれないですね! 皆は、リシュナと呼んでくれますが……」
「りすな?」
「リ・シュ・ナ!」
「りーすーなー」
「うふふふ! 小さいころのわたしみたいです!」
「れ、練習したら言えるかもしれないだろ! あるいは、もっと良い愛称をつけるとかさ!」
 ルヴァは照れ隠しの為に、うーんと言いながら、少し訝ってみせる。
 俯く少年の顔を、少女は興味深そうに下からのぞきこんでくる。
 彼がそれに気付き、顔を背けると、次はその方向に少女が。
 その場でクルクルと回る小さなイタチごっこの末、ルヴァはぶつくさ言っていた口を大きく開いた。
「りすなて……。りしゅなてぃ……。ナティア! どうかな、短いし」
「ナティア……。私の愛称に、ですか?」
 少年は満足げに頷いた。
「うん。ナティアさん。可愛い名前だよ!」
「……かわいい……ですか」
 少女がその言葉をかみしめていると、ルヴァは慌て出した。
 そう、覗きこんでくる愛らしい顔を、極めて意識しないように努力していたのに。
 思わず本音が漏れてしまい、少年は赤面しながら言い訳をする。
「! あ、えっと、その! 君も可愛いけど、名前も可愛いよねって!」
「! ……そう言っていただくのは、初めてです……」
 少女もはにかんだらしく、ルヴァはその声色に温かさを感じた。
「嘘!? 君みたいな子、滅多にいないのに――! いや! その、忘れて! ほんとごめん! いきなり何言ってるんだろ……ほんと、ごめん……」
「……忘れません」
 少女は、取りつくろうルヴァの元に駆け寄り、その手をとった。
 その頬は、ふんわりと持ち上げられていた。暗くて、その色はまだわからない。
 しかし確かなのは、ルヴァの頭が沸騰したかのように熱を帯びていたことだけ――。
「私は今日からナティア。水使いのルヴァさん、ありがとうございます」
「け、敬語とかも、無し! 僕の事は呼び捨てて良いんだよ、ナティアさん!」
 手を取り合ったまま、黙りこくる二人。
 きょとんとしていた二人は顔を見合わせて、くつくつと笑いだした。
「ルヴァ……も、呼び捨てで、いいんだよ?」
「初対面だし、つい……」
 不思議と心地よく、語り合える空気感。
 少女と繋いだ手の温もりが、夜風に冷える体に心地よかった。
「ルヴァ、わたしたち、仲良くなれると思うの」
「そうだね、そう思う」
「……わたしと妹以外に、魔法を使える人、初めてだから……」
「……僕もさ……」
 二組の碧眼が、うっとりとその視線を絡ませる。
 それはまるで、再会した恋人同士の様な熱を持っていた。
「また、会えるかしら?」
「会いに来るよ。約束する」
「では、満月の夜に。あの離宮の裏庭で会いましょう」
「今日が新月なのが、恨めしいな。でも、わかった」
 二人は、繋いだ手を名残惜しげに手放した。
「またね、ナティア」
「ええ、また、ルヴァ」

     4

 その足音を聴きとったのは、夢の中に旅立っていた双子だった。
「みりゅちゃー……」
「なんかきたー……」
 そのとき、見張りに立っていたのはテュミルだった。
「……なんかって、何よ……?」
 彼女が双子を振り返ると、二人はグラズアの藍色のマントの上で呑気に眠っていた。
 養父の匂いに安心しているのか、二人は気持ちよさそうに寝っ転がっている。
「……寝てるってことは、そこまで危険じゃないのかしら……?」
 シロとクロは、近頃は命の危険にさらされることも無く、穏やかに過ごしていた。
 その為か、彼ら二人が魔法を放つ魔獣であるということを、テュミルはなんとなく忘れかけていた。
 彼らは豹の姿にならなくとも、聴覚や嗅覚が他の人間よりも優れている。そう、それは野生動物のような危険察知能力だった。
 その双子が、眠ってやり過ごせる相手……。
 足音は、テュミルにも聞きとれるほど近づいて来ていた。
 一定のテンポが刻まれている。
 微かに、金属同士のぶつかる音がする。
 人間だ、とテュミルは判断した。
 テュミルは、船上でウェンディに手伝ってもらいながら爆薬を調合していた。
 いつもならいい加減に薬品を混ぜ合わせて、羊皮紙にくるんでいただけだが、ウェンディが、調合の違うものを何種類も作ってくれた。
 なんで爆薬は上手に作れるんだろ、と悔しそうに愚痴る友人の顔を思い出すテュミル。
「いっちょ、新作でも使ってみようかな」
 白銀の髪を払うと、彼女はそっと木陰に身をひそめた。
 そして、足音が最も近付き、段々と遠ざかる、その背中に着火した爆薬を投げつけた。
 小さな爆発音があったかと思うと、あたりに白い煙が立ち込めた。
 不審者の視界を遮っている間に、テュミルはその者の背後に回り、首にナイフをぴたりとあてがった。
「死にたくなければ、大人しくすることね」
「その声……! テュミルさん!? 何、山賊みたいなことしてるんですか!?」
 テュミルは、その声に聞きおぼえがあった。
 この数日、聞かなかっただけで、忘れるわけがなかった。
「ルヴァ!? あんたこそ、こんなところで何やってんのよ!?」
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