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アルミ缶リサイクルマーク方式に無限強化される魔王~経験値の時代は終わった。戦わなくても自分を食べて倍々レベルアップ~ 作者:あかまろ

ツキカゲ編

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第8話:増殖する魔王

「「さて、じゃあカッコよく人間の賊を倒すとするかな」」

 二人になったツキカゲ様はそう言うと賊の一人が逃げる際に捨てていった短剣をひょいっと拾い上げる。

「「悪いけどちょっと待っててな。ポチ」」

「ツキカゲ様……何を?」

 スパッ!
 ツキカゲ様はその短剣で左手の人差し指から薬指までの三本の指を自らの手で何の躊躇もなく切り落とす。真っ赤な鮮血が血しぶきをあげる。

「ツキカゲ様!?」

 突然の自傷行為に俺は慌てる。しかしそれは不要な心配である事にすぐに気付いた。先ほどと同じように超再生したツキカゲ様の左手からはにょきにょきと三本の指が綺麗に生え揃い、再生具合を確かめるかのようにその左手をグーパーさせている。
 俺はその光景を見て溢れ出る高揚感を抑えるのに必死だった。

(……なんて事だ。やはりツキカゲ様の再生能力は人知を超えている。あのジゴック様の上を行く再生力。この力を上手く使えば本当に獲れるかもしれないぞ……魔王の座を!)

 兄や姉に比べて特別な力を持たない凡庸な子ツキカゲ様。十数年に渡り指南役として仕えて来た俺の見解はそうだった。だがこんな突出した再生力を持っているとは想定外だ……でも今なぜ指を切り落とした? 自らの再生力を誇示する為か?
 ふと沸いたその疑問はすぐに解ける事になる。

 メキュメキュッ! 
 ん? この聞き慣れない音……これはさっきも聞いた肉が軋む音だ。

(……!)

 俺はハッとして地面に転がったツキカゲ様の三本の指に目をやる。
 そこには切り落とされた指の付け根から肉の塊が丸く盛り上がり直径5センチほどの膨らみを見せていた。

(おいおい、まさか……!)

 そのまさかだった。膨らんだ肉塊は木が地面に根を張るかのように勢いよく弾けてにょきにょきとツキカゲ様の胴体を、手足を、頭を形作って行く。そしてあっという間に指から超再生された三人のツキカゲ様はなまった体をほぐす様にして大きく背伸びする。


「指からも本体が再生すんのかよ!!」


 思わず叫ばずにはいられない。
 脳も、心臓もない場所からツキカゲ様が生えてきたのだ。これはもう超再生ってレベルじゃないぞ!
 唖然とする俺をよそに五人のツキカゲ様は隊列を組んでそれぞれにポーズを取って行く。

「猛る炎の情熱! 満月のツキレッド!」

「困難は努力で乗り越える、雲外に蒼天あり! 三日月のツキブルー!」

「緑を愛する優しき戦士! 寝待月ツキグリーン」

「電光石火の跳ね馬、動く事雷帝の如し! 下弦の月ツキイエロー!」

「敵か味方か、謎に包まれし影の戦士! 新月のツキブラック!」


「「「「「勇者に代わって賊を斬る、夜空に輝くお月様……我ら魔王戦隊ツキレンジャー!!」」」」」


 自らが考案したであろう決めポーズを横並びでバッチリと決めたツキカゲ様達はご満悦な様子だった。

「「「「「ポチ、待たせたな。これが俺のとっておき魔王戦隊ツキレンジャーだ」」」」」

「……って! いやいや! 魔王戦隊ツキレンジャーとかはどうでもいいですよ! 一体どうなっているんですかツキカゲ様の体は!! なんで指から本体が生えてくるんですか、無限増殖するつもりですか!!」

「「「「「凄いだろう。俺、どうやら人よりも少し回復力が高いみたいなんだ」」」」」

 えっへんと胸を張って答える五人のツキカゲ様。

「ソレはもう回復力なんて可愛げのあるモノじゃないですよ! ……それにこんな再生力がある事を何故指南役である私に教えてくれなかったのですか?」

「「「「「う~ん、そう言われても使う機会なかったし……それに多分ポチだけじゃなくて誰も知らないんじゃないかな。ルナ姉ちゃんにも内緒にしてるし」」」」」

 なんだと!?

「あの仲の良いルナプリ様にさえ話していないのですか!?」

「「「「「うん」」」」」

「それでは本当にこの体の秘密は誰にも知られていないのですね!?」

 俺は念を押すようにツキカゲ様に問う。

「「「「「しつこいぞポチ、誰も知らないと言っておるだろう。気付いたのも割と最近だし。今までコレ使ったのは俺を一人増やしてルナ姉ちゃんを部屋から連れ出した後もう一人の俺がタンスからパンツを盗むという究極コンボの時くらいだし……あ、だからルナ姉ちゃんには絶対内緒な!」」」」」

 なるほど、下衆な究極コンボのお蔭でルナプリ様さえ知らない秘密か。くくっ……これは凄いぞ、大きなアドバンテージだ!
 基礎能力ではツキカゲ様は兄や姉には勝てないだろう、だがこの力を使えば十分に勝機があるはずだ。絶望から一転の歓喜につい顔が緩む。

「「「「「どうしたポチ、にやにやして。エロい事でも考えているのか? ずるいぞ、教えろ!」」」」」

 お前と一緒にするな、だが愚息と思っていたツキカゲ様にこんな力があるとはな。これも大魔王ジゴック様の偉大なる血の力のなせる業か。
 ……ジゴック様、このヒルポチが必ずやツキカゲ様を次期魔王にしてみせますよ。

 俺は胸に手を当て今は亡き主君に誓いを立てる。
 さて、そうなると散り散りに逃げて行った賊共は皆殺しにしておかないとな、どこでこの極秘情報が漏れるとも限らん。

「ツキカゲ様、少しだけ待っていて下さい。無礼を働いた賊共を始末して参りますので」

「「「「「え~! せっかく五人になったのにぃ!?」」」」」

「ツキカゲ様の力はもう十分に分かりました。わざわざ汚い人間の賊の相手をする必要もないでしょう。ここは私に……!?」

 俺は話ながらふとツキカゲ様の言葉に疑問が湧く。
 そうだ……ツキカゲ様の話によれば以前にも超再生を使った分裂をしているはず、それならばその時に誕生したもう一人のツキカゲ様は一体どこに行ったのだ!?
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