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アルミ缶リサイクルマーク方式に無限強化される魔王~経験値の時代は終わった。戦わなくても自分を食べて笑顔でレベルアップ~ 作者:あかまろ
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第11話:そして道は分かれ……

 ふざけるな!!

 ヘルガルーダから話を聞いた俺は強く唇を噛む。
 ジゴック様がエルローシュ様に殺されただと!? そんな馬鹿な話があってたまるか! ジゴック様は俺達の目の前で自らその命を絶ったのだ、これは陰謀だ! ジゴック様がいないのをいい事に仮初の下剋上を演じ、魔王軍を自分の手中に収める為のな。

 なにより腹が立つのはジゴック様がエルローシュ様の手で葬られたという嘘が広まっている事だ。ジゴック様は完全なる存在、例えそれがその血を引くエルローシュ様であろうと本来は負けるはずなどはない……それを、それをっっ! ……こんな侮辱があるか!!
 俺は激昂し近くにあった木を素手でなぎ倒す。

「誰がエルローシュ様をそそのかしやがった……」

 俺の殺意にあてられて周りの草木は枯れていく。ジゴック様の実力を過小評価し、エルローシュ様を神輿(みこし)に担ぎ上げた罪はそれ程までに許せない事だった。
 一体どいつだ! 魔獣王ベリアルルか!? それともベルゼヴルの蝿野郎か!? どこでジゴック様の死の秘密が漏れた? それともその確証はなく動いたのか? どちらにしても絶対に許さねぇ!

「誰がこんなふざけた真似をしやがったんだ! 答えろヘルガルーダ!!」

「ク、クェーークェクェ……ニャンクェ、クェクェ……」

 ヘルガルーダの言葉は耳を疑うものであった。

「ダル……ニャンだと!?」

 エルローシュ様の指南役ダルニャン。確かにあいつはジゴック様の死を一緒に目の前で見ていた。エルローシュ様を魔王に据える事で一番メリットがでかいのもダルニャンだ。普通に考えればあの化け猫が最も怪しいのだろう、だが……

「嘘をつくなヘルガルーダ! ダルニャンがそのような事をするはずがない!」

 俺は唾を飛ばしながら必死にその言葉を訂正する。
 ダルニャンは魔王軍の同期だが別に仲良くはない。出来のいい長男の指南役という役得なポジションに収まり、空気を読まず飄々と生きるあの化け猫は性格的に全く合わないしむしろ嫌ってさえいる。だがそれでもダルニャンを絶対的に信頼していた部分が確かにある……それは俺と同じ大魔王ジゴック様への未来永劫変わる事が無い堅い忠誠。

 そんなダルニャンがそのような嘘をつくはずがない。

 目の前で傷つき翼を休めているヘルガルーダの言葉を信じないわけではない。しかしこれは何かの間違いだ、そうとしか思えない。
 俺はヘルガルーダの片翼をそっと撫で語りかける。

「クェェーー……」

「……大きな声を出してすまなかったな。疲れているだろう、この森で少し休んでから魔王城に戻って来るといい」

 そうだ、魔王城へ戻ろう。誰かは分からないが下らぬ謀略をめぐらせる不届き者に鉄槌をくれてやる。
 俺は空を見上げて誓う。その空は夕焼けに染まり血のような赤い色をしていた。

 ……? 夕日? いや、夕日は俺の背に沈んでいっているはずだぞ?
 しかし沈む夕日とは真逆の空は確かに紅色に染まっている。

 あの方向……まさか!?

「ヘルガルーダ! お前は北へ飛べ、一日も飛べば『巌の大滝』と呼ばれる場所に辿りつけるはずだ。そこで身を隠せ、いいな。高度は可能な限り低くだ!」

 俺はそう言い残し木が生い茂る山道を駆け上がる。



 山頂へと登った俺が目にした光景は炎に包まれるローグ村の姿だった。
 風に乗って運ばれてくる煙と人が焼ける独特の匂い。珍しくはない、俺も幾度となく経験した人の命が消える際に放たれる儚い光。煌々と燃える火を見上げながら戦果を自慢し凱歌を唄うのだ。
 そんな俺達魔王軍にとってはありふれた日常的な光景、しかし今回は違う。この炎は俺を……ツキカゲ様を焼く為の煉獄の炎……

「嘘、だ……」

 最弱の大陸と呼ばれるノブル大陸、しかもこんなへんぴな場所にある村を襲っているのは竜……エルローシュ様の支配下にある竜族騎士団だった。
 そしてその光景はもう一つの真実を俺に否応なしにつきつける。俺達が演習でここに来る事を知っている人物、それは二人しかいない。一人は長女ルナプリ様の指南役リエリア、そしてもう一人は……

「くそっ! くそっ! くそぉぉぉぉ!!」

 怒りで下唇を噛みちぎり俺は村を背に山を駆け下りる。
 俺達は友達ではない、それどころか魔王の後継者争いが進んでいけばいずれは殺し合う立場だ。しかしこんな形でこの争いが始まるなんて納得できるか! 俺はあいつを騙すし、罠にだって嵌める、闇討ちが成功すればほくそ笑むだろう。だがそれは俺の特権だ、どんな汚い手でも勝ちを拾う手段を選ばない俺の強さ、俺がジゴック様に認められたのはそういう強さだ。
 だがお前は違うだろうダルニャン。お前がジゴック様に認められた憎らしい程の強さはそういった類のものではなかったはずだ。

 裏切られた、裏切られた、裏切られた、裏切られた!
 何が恐らくは決着までに二年だ。悠長な事を考えて嵌められたのは俺だっていうのかよ……
 身勝手な俺のいい分、誰かが聞いたら呆れて笑うだろう。それでも心は悲鳴をあげる。仲間意識など皆無であったはずなのに。紅く赤く朱い空を見上げ胸にある思いが去来する。

(あぁ……そうか、今日なんだ)

 燃えたぎる空は決別の光。いつかは必ず訪れる開始の合図。
 今日この時を持って全てが終わり、全てが始まったのだと。
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