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アルミ缶リサイクルマーク方式に無限強化される魔王~経験値の時代は終わった。戦わなくても自分を食べて倍々レベルアップ~ 作者:あかまろ
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第9話:自己超強化能力

 よく考えればおかしな話だ。魔王城にツキカゲ様が二人もいれば間違いなく誰かが気付く、そして気付いていればツキカゲ様の超再生の秘密はその時点で発覚していたはずなのだ。

「ツキカゲ様、もしかしてその分裂は……」

「「「「「う~ん、さっきのモヒカン何処に行ったのかなぁ」」」」」

 俺の言葉を無視してきょろきょろと辺りを見渡すツキカゲ様達。どうやら自身の首を刎ねたモヒカンの賊の首領を探しているようだ。だが残念ながら賊の首領は首から生えて来たツキカゲ様を見た時点で恐れおののき退散している。とは言え人間の足で逃げられる範囲などたかが知れている、匂いは覚えているし俺の嗅覚を使えば容易くあぶり出せるだろう。

「先程の賊の首領ですね、もし直接手を下したいのであればあの男だけはここへ連れて来ましょうか?」

 あの首領に関していえば俺は感謝しているくらいだ、こんな秘密を知る切っ掛けを作ってくれたのだからな。その褒美として偉大なる大魔王の子であるツキカゲ様の手で直接命の灯を消されるくらいの優遇はあってもいいかもしれない。

「「「「「いや、いいよ。自分で捕まえるから」」」」」

「首領が何処に行ったか見当がついているのですか? この廃墟には隠れる場所も多く人一人を探すのは面倒ですよ。ここは私が」

「大丈夫、ここは魔王戦隊に任せとけって。ブルー、グリーン、イエロー、ブラック! アレやるぞ!」

「「「「おっけ~」」」」

 ツキレッドと思われるツキカゲ様が声を掛けると、ゆる~い返事が四人のツキカゲ様から返ってくる。今更だが頭がおかしくなりそうだ。なにせ全く同じ姿に同じ声のツキカゲ様が五人、髪の色で言うなら全員がツキブラックだ。今はツキレッドが指示をしているようだがこの中に主人格というものがあるのかすら不明な状況だからな。

 四方に分かれて前方の虚空を見つめるツキレッド以外の四人。一体何をする気だ?
 俺はツキカゲ様の指南役として一通りの剣術、武術、魔法を教えて来た。しかしそのどれもが普通の魔物と比べても突出したものではなく魔王の子の力を片鱗も見せてはいなかった。

(まあそれでも人間の賊を殺すくらいなら十分すぎるがな。だがこうも広範囲に散らばった相手を追尾するような魔法は教えてはいない、一体何をするつもりだ?)

 ツキカゲ様はそれぞれが東西南北の方角を向き意識を集中している。

(これは!?)

 四人のツキカゲ様の真っ黒な右目の眼球が徐々に薄くなり完全な白へと変貌をとげる。それと入れ変わるようにして今度は左目の白目部分が完全なる漆黒へと染まり黒い球体へと変化する。

「「「「いくぜ! 超漆黒吸引眼めんたまぶらっくほーる」」」」

(めんたまぶらっくほーる?? なんだそれ? そんな魔法教えてないぞ!?)

 そもそもそんな魔法はないはず。まさかオリジナルか!?


 グググ……


(っと……なんだ?)

 聞き慣れない技名に困惑している俺は何かに引っ張られるように右足を一歩前に踏み出す。


 グググググ…………!!


 ……!
 その引っ張る力がより強くなった所で気付く。俺は一番近くにいるツキカゲ様に引っ張られ……いや、吸引されているのだと。

(これは……ツキカゲ様の目に吸い込まれて行くだと!?)

 俺でさえ足に力を入れないと吸い寄せられてしまう程の吸引力。
 石も草も地面に捨てられた剣や斧も近辺にある廃屋の木片もツキカゲ様の黒目へと引き寄せられるように螺旋の弧を描いて向かって行く。そして逃げ出した賊達もまた重力の方向に逆らうかのごとく畏怖した魔王の血筋であるツキカゲ様の元へと宙を舞いながら出戻って来る。

「凄いですツキカゲ様! こんな目をお持ちだったとは!」


 ドガドガドガ! グサグサグサ! ズシュズシュズシュ!

 吸引した石、剣、斧、木片、実に様々なモノが勢いよくツキカゲ様の左目へと突き刺さる。

「へ……?」

「「「「ぐあぁぁぁぁ目が、目があぁぁぁぁ!!」」」」

 その場でうずくまり悶絶する四人のツキカゲ様達。宙を遊泳するように飛ばされて来た賊達は吸引重力支配から解除され一転地面へと落ちてくる。

「吸収するわけじゃないのかよ!」

 大層な名前を付けやがって! 目ん玉柔らかいままじゃねーか!
 とんでもない自爆技を披露してくれたツキカゲ様達は大ダメージを負ってその場から動くことさえままならない。そんなツキカゲ様の姿をみて勢いを取り戻したのは出戻り組の賊達だった。

「へ、へへ……なんだか分からねぇがこれはチャンスだな」

 その中に見覚えがあるモヒカンが一人、地面に転がっていた斧を持って近づいて来る。ふぅ、まったく懲りない賊の首領だ。まあいい、これ以上ツキカゲ様に分裂されても把握が面倒だ。俺がツキカゲ様の代わりにこの首領の首を飛ばしてやろう。

 タタッ!!

 俺が賊の首領に向かって一歩を踏み出そうとしたその時、ただ一人無事だったツキレッドと思われるツキカゲ様が魔王戦隊の隊員である四人の元へと向かう。
 そして一人一人抱き起しながら声を掛けて行く。

「おい、大丈夫かツキブルー!」

「ツキレッド、俺はもう駄目だ。へへ……お前とは喧嘩ばっかりだったな。最後だから言うぞ……俺はお間の事をリーダーと認めないって言っていたけどな。本当はずっと認めていたんだぜ、お前をな」

「ツキブルー……」

 なんだこの茶番。

「今回復してやるぞ、諦めるなツキイエロー!」

「ごめん、最後まで一緒に戦えなくて。私ずっと黙っていた事があるの。私貴方の事……ううん、なんでもない。私の分まで生きてツキレッド」

「ツキイエロー……」

 気持ち悪っ! ツキイエローの性別変わってるじゃねーか!

「ツキブラックしっかりしろ!」

「ツキレッド。こんな時に他人の心配か? 本当に甘い奴だよ、お前は昔からな……昔から……優しい弟だったよ」

「まさか……ツキブラック兄さん!?」

 おい、お前の兄はエルローシュ様だろ。いい加減にしろ!

「ツキホワイト、ツキホワイトォ!!」

<返事が無いただの屍のようだ>

「ツキホワイト……」

 誰だお前!? いなかっただろホワイト! ツキグリーンはどこに行ったんだよ!


「皆ごめん。俺が不甲斐ないばっかりに……でも安心してくれ皆の意思は俺が継ぐ!」

 自分に謝るツキカゲ様の姿は実にシュールだ。そもそも首を飛ばされてもピンピンしているのに目が潰れたくらいで死なないだろ。


 バクッ!


 は?
 冷ややかな目でツキカゲ様達のやり取りを見ていた俺はまたしても自分の目を疑う事になる。それもそのはず、一人元気なツキカゲ様が倒れたツキカゲ様達を頭からかぶりついて丸飲みにしていたのだから。

「な、何やっているんですかツキカゲ様ぁ!」

 四人分のツキカゲ様を丸飲んだ腹はパッツンパッツンに膨れ上がっている。

「ふぁい?」

 口からは飲まれたツキカゲ様の足がはみ出ていて喋りにくそうだ。本当に何やってるのこいつ!?

 ごっくん……
 分裂した自分自身を完全に飲み込んだツキカゲ様の体がパァァァと光輝く。ポッコリと出ていたお腹も元に戻り通常の体型へと戻っている。

「隙ありぃ、死ねやぁ化け物ぉぉぉぉ!!」

 背後に回って虎視たんたんと隙を狙っていた賊のモヒカン首領はまたしても片膝をついて座っているツキカゲ様の首めがけて斧を振り下ろす。

 バキィィィィン!

「……なっ!?」

 斧は刃の根元から甲高い音を立てて折れる。
 賊の首領は砕けた斧を信じられないといった表情で見つめている。そして驚いているのは賊だけではない、俺もだった。

(変だ……さっきはあれ程簡単に落とされた首だぞ。それが今度は斧の方が折れるだと?)

「むっ、出たなモヒカンの男! 食らえ正義の鉄拳、魔王鎮魂拳(おもいっきりぱんち)!」

「ぬぐぁぁぁぁ!!」

 振り向き様に繰り出されたツキカゲ様の拳は見事に賊の首領の顔面にヒットする。首から上が吹き飛びそうな威力の正拳はそのまま賊を彼方まで吹き飛ばす。

「お、御頭ぁぁ! こいつやっぱり化け物だぁぁぁぁ逃げろぉぉぉぉ!」

 ふん、逃がすか。
 俺は逃げ出そうとする賊に向かって右拳を握り向けて魔法を唱える。

「ブラッドマネジメント」

 握った拳から溢れ出た漆黒の魔力渦は帯状に広がり十数人いた賊全員を捕える。俺は賊全員に魔力が染み渡ったのを確認して徐々に右手を広げていく。

「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁ!」

 この魔法は血液の熱量を操作する魔法。血液の温度を上昇させる事も、逆に凍りつくまで下げる事もできる。賊に使うには過ぎた魔法だったかな。右手を半分も開かない内に血が沸騰した賊達はその熱に耐え切れず体を掻きむしりながらその場で息絶えて行く。
 たかだか体内の血液が100度になった程度で絶命するとはな。まったくこれだから人間は。おっと、今はそんな事よりも……

 俺は賊の首領を倒したツキカゲ様の方を見る。
 ツキカゲ様の見た目にさほどの変化はない……だが明らかに先ほどまでとは違う力強さを身に纏っている。俺の鼻はごまかせない、首を落とされた時とはまるで別人だ。これはさっきまでの大よそ4倍……いや5倍の強さはあるな、どういう事だ?

 ん、待てよ……5倍……!?

 俺はハッとする。
 ……まさか、自分自身を食べたからだとでも言うのか! 自分自身で分裂し、自分自身を食する事で力を増す、究極のセルフパワーアップだとでも!?
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