1話を加筆したので、まだ読んでいない方は、そちらを読んでからの観覧をオススメします
matter of life or death
朝になり一般生徒達が登校し始めると、校長室には次々と戦線メンバーが集結していく。
「いい感じで揃って来たわね。
……それじゃあタマちゃん、紹介するわ。
彼が日向くん。
見た目通りちゃらんぽらんだけど、やるときはたまにやるわ」
紹介されると、日向は誇らしげな表情をするが、
「って、フォローになってないぜ!」
直ぐに気付いて突っ込む。
それを気にかけることもなく、ゆりは続けた。
彼は松下くん。柔道五段だから、敬意を持って皆は松下五段と呼ぶわ」
紹介されると、がっしりとした体躯の男子は、多真に握手を求め、彼は握手でそれに応える。
彼がそれに応えると、今度は普通の男子が続いた。
「彼は大山くん。特徴がないのが特徴よ」
そんな中、メンバーの一人が多真に絡んだ。
「Come on,let's dance!」
「何で踊らなきゃならんのか意味が分からんのだけど……」
「この人なりの挨拶よ。
皆TKと呼んでいるわ。
本名はだれも知らない謎の男よ」
ゆりに言われると、多真は呆れ果てた様子で、
「謎の男って……個性があるのはいいけど、そこまで来ると烏合の衆だろ」
言うが、ゆりは気にも止めない。
「眼鏡を一々持ち上げて知的に話すのが高松くん。
本当はバカよ」
そんな紹介を否定することもなく、高松は眼鏡持ち上げる。
続いて、今度は木刀の男子が紹介され、
「後彼が藤巻くん。
そこでハルバート振ってるのが野田くん」
ハルバートを持っている男子は、さして興味もない様子で鼻をならす。
「ずっと端の方で物陰で立ってるのが椎名さん」
紹介されるが、物陰に立っていた黒髪長髪の女子は無言で反応しない。
「こっちに座ってるのが岩沢さん。
陽動部隊のリーダー」
「陽動部隊?」
「そう、彼女は校内でバンドを組んでいて、その人気は学園内全域に広がる。
それを利用してゲリラライブを開き、一般生徒を誘導するのよ」
「つまり、相手もこちらも手を出さない一般生徒を、退けることも盾にすることも出来ると」
「あら、察しがいいのね。
ますます頼りになりそうじゃない」
感心した様子で声をあげると、ゆりは続ける。
「後、ここにいないだけで、戦線のメンバーはまだ何十人も校内に潜伏してるわ。
……まぁ、説明することは他にもあるけど、面倒だからそこらへんは後で遊佐から説明してあげて」
そんな雑な説明を聞くと、多真は呆れた表情を見せるが、やはりゆりは気に止めることはない。
「それじゃあ、今朝はこれくらいにして解散。
なお、本日の作戦説明は1500より行うので各自遅れないように」
ごまかすように解散を言い渡されると、多真以外の戦線メンバー達は、文句の一つも口に出すことなく、解散していった。
「……本当に烏合の衆だな」
しばらくの間、多真が呆然としていると、
「……タマちゃんさん、行きますよ」
「行くって何処に?」
「ゆりさんに言われた通り、細かいことを説明するので着いてきて下さい」
遊佐に言われ、多真は彼女に続いて校長室を後にした。
遊佐に連れられ多真がまず向かった場所は事務室だ。
「……この世界に来た人間には、それぞれに事務室で奨学金が渡されます」
「ふーん、でもそれって誰が用意してるの?」
「分かりません。
ただ、そういう面で学園を切り盛りしている誰かがいることは確かです」
「つまりは、相手側のことは全部分からないと」
「かみ砕いて言えばそういうことです」
遊佐の説明を聞くと、多真は微妙な表情を浮かべていた。
すると、次に遊佐は彼を食堂に案内する。
「……私達は既に死んでいるので餓死はしませんが、飢えはしますので空腹を感じたときは食堂を利用します」
説明を受けると、多真は頷いて理解したことを示す。
「それじゃあ、丁度小腹も空いてきたところだし、何か食べようかな」
多真が言うと、彼が食券を買う前に遊佐は一言付け足す。
「あ、言い忘れていましたが、この世界では天使の意思に従い真面目に授業を受けたり、満足や納得をしてしまうと消えてしまうので、いくら満腹になっても、生前の未練を上回る程の満足はしないように気を付けて下さい」
「……ありがと、その一言で食欲が落ちて満足出来そうにないよ」
皮肉で返されても、遊佐は表情を変えることはない。
「そういえば、戦線の人間じゃない一般生徒も全員死人なの?」
ふと多真が尋ねると、
「いえ、あれは最初からこの世界に存在する、歳をとることも減ることも増えることもしない不変の存在、私達がNPCと呼んでいるものです」
「じゃあ人間じゃないのか?」
「分かりません。
ゆりっぺさんは人間ではないと言っていますが、歳をとらないのは私達も変わりませんし、
ただ、彼等は無個性な集団なので、この世界に戸惑っている人がいれば、それが人間だと確認出来ます。
それと、戦線メンバーの見分け方ですが、女子はこのセーラー服調の制服を、男子はベージュのブレザーを着用していますので、一目で見分けがつきます」
「そういえば、俺NPCと同じ格好なんだけど……」
「多分ゆりっぺさんが作戦を説明するときにくれるので大丈夫です」
遊佐が淡々と答えていくと、多真は一つ一つ確認しながら頷く。
しばらくの間、そんなやり取りをしていると、
「……あなた達、もう昼休みは終わっているわよ。」
ふいに誰かに声をかけられる。
振り向くと、そこには昨日多真達と死闘を繰り広げた天使の姿があった。
「っ!?」
驚きを隠せない様子で立ち上がった多真は、遊佐を庇うように彼女の前に出るが、
「……タマちゃんさん、大丈夫です。天使はこちらから危害を加えでもしない限り、襲っては来ません」
「え?そうなのか?」
「私達が堂々と授業をサボっているので注意をしに来ただけです。
彼女は生徒会長ですから」
「生徒会長なのかよ」
遊佐に説明され、多真は間の抜けた表情を浮かべていた。
すると、天使は二人に尋ねる。
「……それで、あなた達、授業はどうするの?」
その問い掛けに対し、遊佐は多真の手をとり歩き出す。
「……行きましょうタマちゃんさん」
「あ……うん…行こうか」
遊佐の言葉に答えると、多真は彼女に従い食堂を後にした。
―――教員棟、校長室
「あら、早かったわね?」
多真達が校長室に戻ると、そこにはまだゆりの姿しかなかった。
「まぁいいわ。多真くんには渡しとくものがあるしね」
そう言うと、ゆりは戦線メンバーの着ていた制服をと一丁の拳銃を出す。
「これに着替えなさい。
この制服に袖を通した瞬間から、あなたはSSSの正式メンバーよ」
その制服を受け取ると、多真は神妙な面持ちで小さく頷いた。
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