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  Angel Beats! + 作者:
少し時間が掛かりましたが、一話目です
Posthumous world
「……もしもし?」

幼さの残る澄んだ声が、耳元に響いた。

聞き覚えのないその声に、少年はゆっくりと目を開けてみる。

「……あ、やっと起きましたか。」

視界に入った小柄な少女は、仰向けに寝転んでいる彼を見下ろしていた。

「……誰?」

上体を起こして少女に尋ねると、少年は自分の身体に起きた異変に気付く。

「あれ?身体が軽い。

と言うか、なんで学生服?
それ以前に」

言いかけて立ち上がると少年は周囲を見渡した。

「ここは何処だ?」

見る限りでは学校だと思えるその場所は、予想外に広大な土地であり、フェンスを越えた校外には鬱蒼とした森が広がっている。

「……質問が多いですね」

無表情で言われると、少年は少女の気を害したと思い、直ぐに謝罪する。

「え、あ……ゴメン。」

すると、少女は機械的な口調で淡々と語り始めた。

「最初の質問から答えると、私は遊佐、『死んだ世界戦線』のオペレーターです。」

「死んだ世界戦線?」

「はい、正確には現時点では『死んでたまるか戦線』と名乗っています。

それから二つ目の質問への答えですが、貴方がその服を着ているのは、死んでしまったからです。

三つ目の質問への答えとしては、ここは死後の世界です」

すらすらと語られたその返答を聞けば、普通はこの少女を危ない相手だと思うだろう。
しかし少年は違った。

「あー……やっぱ俺死んだのか」

まったく抵抗なく自分の死を受け入れているのだ。

「……随分すんなりと受け入れましたね?」

「まぁ、元から生きた心地のする生き方なんてしてなかったからね」

「……そうですか」

「あ、自己紹介がまだだったっけ?

俺は霧島きりしま 多真たま

「猫みたいな名前ですね」

「良く言われるよ」

そんな掛け合いの後に、遊佐は付けていたインカムに手を当て、何処かと連絡をとり始めた。

「……ゆりっぺさん。
新しく来た人を見付けたのですが」

『嬉しい知らせだけど、今はそれどころじゃないわ!

遊佐、校内にいるなら直ぐに撤退しなさい!』

通信相手は一方的に言うと、通信を切ってしまった。「どうかした?」

多真が尋ねると遊佐は、

「……緊急事態です。

タマちゃんさん、ついて来て下さい」

「『タマちゃん』はやめてもらえるかな?」

「そうですか?可愛くていいと思いますけど」

そんな緊張感のない会話をしながら、二人は歩き出す。

「それで、緊急事態って何なの?」

当然ながら多真は尋ねるが、

「他の戦線メンバーが、天使と戦闘を始めました」

遊佐は無表情に即答した。

明らかに説明不足な彼女の台詞を聞くと、多真は小首を傾げる。

「『天使』って、そんなの本当にいるのか」

「……正確には、現在私達が天使と呼んでいる存在です」

そうやって話しながら歩いていると、

―――パン!

辺りに乾いた破裂音が響いた。

「?……これって、もしかして銃声?」

周囲を見渡し多真が呟くと、次の瞬間にはその問いに答えるように連続した銃声が響く。

「うわ!?」

多真が驚きを隠せない様子でいると、

「……急いで下さい。
至急このエリアから離脱します」

囁いて、遊佐は多真の手を引く。

「!?」

手を握られた途端、多真は顔を赤らめる。

(女の子の手って、柔らかいな)

そんな思いを頭の片隅に置き多真は遊佐に合わせて走り出す。

しばらく校舎に沿って歩いていると、不意に物陰から一人の女生徒が飛び出した。

(……天使か?)

そんな考えを巡らせ、多真は咄嗟に遊佐の前に出て身構えるが、

「遊佐!?

あんた帰ったんじゃないの?」

女生徒が声をあげると、多真は安心した様子でため息をついた。

「はぁ……天使じゃないのか」

「……タマちゃんさん、まだ安心は出来ませんよ」

遊佐が言った次の瞬間、ゆりの駆けて来た方向から再び銃声が響く。

そして今度は男子生徒がこちらに駆けより、三人を見付けて声を上げた。

「ゆりっぺ、何やってんだ!
さっさと逃げないと!?」

その瞬間、男子生徒の声を遮るように、彼の腹部を後方から刃が貫く。

「!?」

「日向くん!?」

「……多真さん、アレが天使です」

驚きを隠せない多真とゆりに対して、遊佐が冷静な口調で説明しながら、日向と呼ばれた男子生徒を突き刺した本人、銀色のきらびやかな髪をなびかせる小柄な少女を指差す。

すると、ゆりは持っていたライフルを構え、多真達に言った。

「私が時間を稼ぐわ!
あなた達は逃げなさい!」

対して多真は一瞬戸惑うものの、女生徒が腰に付けたホルスターに入った拳銃を視界に入れ、咄嗟にそれを抜き取ってゆりの前に出た。

「女の子だけ残して逃げれるわけないだろ!」
声をあげると、日向から刃を抜きこちらを視認した天使に照準を合わせ、

一発目、天使の肩を狙うも、彼女はそれを袖伸びる刃で簡単に弾く。
二発目走り出した天使の足に向かい撃つが、これも弾かれる。

そして、天使が間合いに入り剣を振り上げと、多真は咄嗟に彼女に密着し今度は零距離で腹部に銃弾を撃ち込んだ。

「……やった」

そう呟いたのもつかの間、天使は腹部からの出血を気に止めることもなく、再び剣を振り上げる。

「なっ!?」

「そのまま体当たりしなさい!」

呆然とする多真の耳に、その指示が飛び込んだ。

その言葉でハッと我に返ると、多真は咄嗟に全力でタックルを叩き込み、天使を校舎の窓に向かい弾き飛ばす。

当然ながら小柄な天使の身体は軽々と宙を舞い、ガラスを割って校舎内に飛び込んだ。

「……はぁ…はぁ……何だって言うんだよ。
痛みを感じないのか?」

「戦闘に不便な感覚は持ち合わせてないんじゃない?何せ天使だもの」

息も絶え絶えに立ち尽くす多真に言うと、ゆりは天使の飛び込んだ場所に銃口を向けたまま、彼に手招きをしていた。







―――校長室



「……さてと、何とか校長室に逃げ込めたわね」

「で、これからどうする?

あんたの仲間皆やられちゃったんだろ?」

ゆりが言うと、多真は彼女に尋ねるが、

「何言ってるのよ。

遊佐から聞いてない?ここは死後の世界、生前とは違って致命傷を負っても少しすれば直る。
抗い続ける限りは死なないのよ」

「……死後の世界ということは説明しましたが、死なないことは言ってませんでした」

ゆりと遊佐に言われると、多真は微妙そうな表情を浮かべていた。

そんな彼に対してゆりは、

「それじゃあ改めて……。

ようこそ、死んだ世界戦線へ。
私はリーダーのゆり、他のメンバーもおいおい紹介するわね。

で、あなた名前は?」

「霧島 多真」

「タマ?おかしな名前ね」

「もうちょっとオブラートに包んでもらえるかな?」

「そうね。
じゃあ、可愛い名前って言った方がいいかしら?」

「勘弁してくれ」

そんな緊張感のない掛け合いを続けていると、多真はふと疑問に思う。

「そう言えば、天使は校長室に入ってきたりしないのか?」

「安心なさい。
ここを占拠してからは、一度も侵入を許したことはないわ。

明るくなって一般生徒が登校をはじめれば天使も手を出してこないし、それまで休んでいて平気よ」

それを聞くと、多真は安心した様子でソファーに腰掛けた。

しばらくそのままの体勢でいると、何故かゆりがまじまじと彼の身体を眺める。

「……えっと、何かご用で?」

重圧に耐え切れずに尋ねると、ゆりは視線を反らすことなく答える。

「男子にしては線の細い身体してるのに、よくさっきみたいな動き出来るわね」

「いや……まぁ、鍛えてはいたから」

そんな回答を聞くと、今度は遊佐がまじまじと多真を眺め、無表情のままペタペタと胸板に触れる。

細く品やかな指先の触れるこそばゆい感触と目前に迫った彼女の幼さが残りながらも端正な顔に、多真は思わず顔を赤らめた。

「……えっと…何を?」

問い掛けられると遊佐は、

「……ゆりっぺさん、タマちゃんさんの胸板、見掛けに寄らず結構厚いです」

言われるとゆりは感心したような表情を浮かべる。

「ふぅん……中々頼りにはなりそうね」

そんな彼女達の行動に戸惑いながらも、多真は校長室で一晩明かした。


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