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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

サイドストーリーズ3

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春は再会の季節

「うんん~……もっと寝かせて……あぶねええ!? ハンマーは止めろ!?」

 朝、住み込み従業員に起こされ。

「ほいほいっと……ふ~、こんなもんかな?」

 昼まで工事現場での力仕事。

「今日の焼き魚は鮭か……うん、うまいうまい。味噌汁もよくできてる。むぐむぐ……カオル~、おかわり~」

 昼食は馴染みの定食屋でとる。

「zzz……」

 昼休みは公園で眠りこける。そこに犬獣人や猫獣人の少女が寄ってくることもある。

「とりあえず、十人前焼けたぞー!」

 午後の仕事は屋台の手伝いのようだ。「ジパニア焼き」なるものを手際よく焼いていく。

「げっ……フランソワ」

 そこに彼の親しい者たちが訪れる。今日は大貴族のお嬢さまのようだ。彼を訪ねる者は意外に多く、黒髪のエルフや冒険者の少女の時もあり、それら全員が鉢合わせすることもある。

「はひ~……えらい目にあった……なんだよ、「売上に貢献しますわ!」って。百人前とか、もはや嫌がらせの類だろ」

 そして、仕事を終えて家路へとつく。



 幸せだ。幸せがある。確かな充実感が、生の実感がそこにはある。

 以前の彼とは違う。ただ生きているだけ……長い人生の退屈を仮想空間の遊戯でしのいでいた頃の彼とは、目の輝きが違う。

 「めんどくさい」という口癖は変わらないけれど、今の生活を満更ではなく思っている。自分が生きていることの意味を掴みかけている。それは幸せなことだ。

 とてもいい。幸せなのはいいことだ。なぜなら……だから。

 あぁ、あぁ、もっともっと彼には幸せになって欲しい。

 もっともっともっと……誰よりも幸せになって、これ以上ないほどの幸福を味わって欲しい。今の私は、ただそれだけを願っている。

 ……でも、ちょっとだけ。ちょっとだけ我慢ができなくなってしまった。余計なことだとは思う。もしかしたら、今まで積み上げてきたことが無駄になってしまうのかもしれない。

 でも、どうしても試してみたくなったから……これは生まれ持った性分だから、私でも御し切れないところがある。一度「こうしたら……」と思ってしまうと、寝ても覚めてもそのことばかりを考えてしまう。

 やってみようか……止めようか……迷っているうちに、とうとうこの日が来てしまった。彼の前に、あの子が来てしまった。

 もちろん、もう少しだけ引き延ばすこともできたけれど、「ここまできたら流れに任せてしまおう」と自分に言い訳をして、ここまで来させてしまった。

 さあ、この再会は何を呼ぶ?

 喜劇? 悲劇? それとも……。

「楽しみ、楽しみ……ふぇっふぇっふぇっ」

 どう転んでもいい。どう転んだとしても、行きつくところは同じだから。

 幸せな結末……彼は、そこに辿り着ける人間だ。



………………
…………
……



 それは、突然の再会だった。

 特別な日じゃない。俺たちがチームを組んだ記念日でも、この世界へ落ちてきた日でもない。何てことのない、いつも通りの仕事日なはずだったんだ。

 でも、そんな日に、そんな日の帰り道に、俺はあいつと再会したんだ。

 短く刈ったツンツンした黒髪……いかにもいい奴そうな、精悍な顔つき……すらりとした体形ながらも、引き締まったその身体。

 俺の学校でも一、二位を争うほどのイケメン野郎。

 そして、俺の幼馴染。「アース」じゃない、俺たちの世界で共に過ごした大の親友。

「れんちゃん……?」

 倉本蓮次が、俺の目の前に立っていた。

「よっ、久しぶり」

 そして、やたら爽やかな笑顔で片手を上げて挨拶をしてきた。

 間違いない。れんちゃんだ。

 ちょっとだけ大人びた顔になっているけれど、この笑顔は以前のままだ。

 生きていた。

 れんちゃんは生きていた!

 れんちゃんは、生きていたんだ!



 あの日からもうすぐ二年……俺はやっと、仲間と再会することができた。




これで日常パートはおしまいです!

次章から、いよいよいくつかの過去編に突入です。

貴大がどんな風に「アース」に来たのか、そこで何をしていたのか、ユミエルと出会ってからどう生活したのか。

小出しにしてきたことが、一気に明らかになります。お楽しみに!
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