挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

謎の遺跡編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

72/310

中央館へ向かえ!

「【レーザー・レイン】!」

「【ミラージュ・ボディ】! 【クリムゾン・エッジ】!」

 雨のように降り注ぐ光線の合間を潜り抜け、スキルによって五体に分身した俺は手近な「カースド・ゾンビ」へと、仄暗く光る紅き刃で斬りかかる。

 光属性の高位スキル・【レーザー・レイン】を浴びてしまったアンデッドは、ある程度のダメージと共に若干の硬直時間が発生する。それを少しでも無駄にしないために、スキル発動と共に突撃する必要があったのだ。

 誤射の可能性もないことはない。だが、そこは慣れ親しんだ者との連携により、限りなく危険性を抑えることができる。俺は優介の癖を、優介は俺の癖を知っている。繰り返してきた訓練と実戦のおかげで、今では意識することもなく【レーザー・レイン】と共に敵の群へと躍りかかれる。

「アォオ……」

 そして、二度目の光線雨が止む頃、十はいた「カースド・ゾンビ」たちはエフェクト光の残滓も残さずに全滅していた。リーダー格の「カースド・リッチ」も、たった今、炎属性の短剣スキル【クリムゾン・エッジ】に貫かれて光の粉と消えたところだ。

「ふ~、やったな!」

「あぁ、ニ人でも何とかなるもんだな!」

 元々、「カースド・リッチ討伐」のクエストは、「フリーライフ」のメンバー全員で挑もうと決めていたものだ。しかし、約束の日に集まったのは俺と優介のみ。他は、別の用事が入ったとかで来れなくなったそうだ。

 だが、いよいよ「中級者の登竜門」と言われるクエストに挑もうという俺たちの熱意は止まることを知らず、その場のノリと勢いで、「じゃあ、ニ人でやるか!」という話になってしまったのだ。

 自信はあった。俺も優介も、アンデッドに有効な炎属性と光属性の大技を、レベル200となって習得しているんだ。それに、連携の訓練もした。練習用ダンジョンで、どう動くかの打ち合わせもした。

 二人で挑むなら、速攻で敵の数を減らす。これしかないと思った俺たちは、「【レーザー・レイン】が降り注ぐ中、分身した俺が高威力の【クリムゾン・エッジ】で確実に数を減らしていく」という作戦を取った。

 一度でもミスれば、後はなかっただろう。俺たちと同レベル帯のモンスターということは、向こうも俺たちを充分に殺し得る力を持っているということなのだから。それに、数が違う。物量で押し切られれば、本当に後はなかったんだ。

 だから、不意打ちで【レーザー・レイン】と俺の突撃をかましてやった。そこから、反撃の機会をろくに与えぬままに攻撃、攻撃、ひたすら攻撃! 敵の硬直時間をフルに利用しての総攻撃だ。自身の二分の一のステータスを持つ四体の分身たちと共に、一体一体丁寧に囲ってやった。

 結果として、俺たちが取った戦法は正解だったようだ。回復が何とか追いつくペースで、終始優位に戦闘を進められた。まぁ、大技を連発したせいでSPスキルポイントはすっからかんだけど……何はともあれ勝ったんだ。その事実こそが重要だ。

「うは、やった、上位職何にしよう……」

 優介は、早くも上位職について想いを馳せていた。無理もないか。元々、このクエストが「中級者の登竜門」と言われているのは、クリアをすることによって上位職に就くことができるクエストの一つだからだ。

 上位職はどれも魅力的な補正ステータスと高位スキルが得られるため、上位職になれるレベル200となると、みんなすぐにでも試験のクエストを受けるんだ。優介もその口だ。俺だってそうさ。上位職では、どんなことができるのか……今から楽しみだ。

 楽しみ……そう、楽しいんだ。レベルを上げたり、モンスターと戦うだけじゃない。飯を作ったり、バザーに参加してみたり、あえて現実にもあるようなスポーツをしてみたり……そんな何気ない日常が、たまらなく楽しい。

 最近は、生活に張り合いがあると思う。彼女なんていないし、相変わらず何の役に立つのか分からん勉強ばかりの毎日だけど、現実も仮想もそれなりに充実し、笑って過ごせている。自分一人だけだったら、こうはいかなかっただろう。

 みんな、アイツらのおかげだ……なぁ、優介、れんちゃん。



………………
…………
……



「……ッ!!」

 あくまで無言のまま、オレに背を向けた「スクール・ゴブリン」の咽をかっさばく。口に押し当てた布越しにくぐもった断末魔が微かに聞こえ、回した腕にはビクリと大きな痙攣が一つ、伝わる。それから間もなく、水兵服を着たゴブリンは絶命し、魔素の煙となって消えていった。

「ふ~……これでラストか」

 どうやら、この近くにいる魔物はこいつで最後のようだ。少なくともオレの索敵系スキルには反応がない。肌で感じる気配や空気も、魔物が近くにいる時特有の、何とも言えないイヤなものは感じられない。

 とりあえずの安全は確保できた。そう考えていいだろう。

「おい、出てきな」

 通路から声をかけると、部屋の後部に備え付けられた掃除用具入れがゆっくりと開き、恐る恐るといった感じにセリエが出てくる。体を縮めてキョロキョロと辺りを見回すその姿は、どこか小動物を連想させた。

「ま、魔物はもういないんですか……?」

「あぁ、オレが全部倒した」

 そうだ。どうやら斥候の役割を持っていると思わしき三体一組の「スクール・ゴブリン」は、オレが【首狩り】で一体一体丁寧に片付けていった。

 この魔物は、こちらに気づいた途端に大声を張り上げて仲間を呼ぶからな……後ろの奴から順番に、かつ迅速に音も立てずに片付けていく必要があったんだ。

 幸い、この状況に適した一撃で音もなく魔物を倒すスキル【首狩り】は元から覚えていた。そして、「ライトストライカー」になって覚えた隠蔽系スキル(【隠蔽3】、【スニーク】など)が、【首狩り】の成功率を大幅に高めてくれたんだ。

 油断し切った首筋を、ナイフで掻き切る……同レベル帯の魔物なら、これだけで勝負はつく。

 ただ、相手がこちらに気づいている状態では、流石に上手くいかない。【首狩り】が失敗する可能性も十分にあり得た。だからこそ、セリエをどこかに隠し、オレも身を潜めて敵が背中を見せるのを待っていたんだ。

 しかし、まぁ、ネズミ相手の尾行がこんなところで役に立つとは思わなかった。ネズミ……タカヒロの野郎は、少しでもこちらが存在を匂わせると敏感に察知しやがるからな。それに比べたら、ここの魔物の死角をつくなんて楽勝過ぎる。

 おかげで(というのも妙な話だが……)、対策を確立させた今では、戦闘らしい戦闘もなく目的地へと進めている。

 このまま、出口まで行けるか……? いや、流石にそれは虫が良すぎるか。いつかは気付かれるかもしれない。敵が同じ手を使ってくる可能性だってある。何らかの手段で、こちらの位置を察知することだってあり得るんだ。油断はしない方がいい。

「もうすぐ中央館ですね……?」

「あぁ、そうだな」

 この迷宮は、三つの三階構造の棟が一階と二階の連絡通路で繋がり、「E」の字のような形となっている。それぞれの棟は一直線に長く、通路に面する形で同じような形の部屋がいくつも連なっている。今、身を潜めているのもその中の一つだ。

 オレたちが初めにいた「東館一階・保健室」は一階の連絡通路にほど近い位置だったのだが、そこは椅子や机を積み上げられ、封鎖されていた。二階の連絡通路を使おうにも、二階への階段もまた、同じようなバリケードが形成されていて、無理矢理には通れなかったんだ。

 だから、オレたちは東館の反対方向の階段を目指した。階段は棟の両端に備えられているようで、こちらが駄目ならもう一つの方を、というわけだ。

 そこから階上へ上がり、二階の連絡通路を使ってネズミがいる中央館へ向かおうとしたんだ。【クレアボヤンス】で透けて見える二階の連絡通路は通れるようだったからな。ネズミがいるのは三階だし、丁度いいと思ったんだよ。

 だが、中々うまくは物事が運ばなかった。セリエが転んで床に荷物をぶちまけた音で魔物には見つかるわ、二階の通路も塞がれているわ、仕方なく上がった三階にはそれぞれの教室に数匹の魔物がたむろしているわ……よくここまで来れたよなぁ、オレたち……。

 だが、苦労の甲斐もあって、二階の連絡通路前に降りられる階段はもうすぐそこ、この教室の隣だ。そこから上がってきていた魔物どもも、たった今全部倒した。

 「東館一階・保健室」から出てかれこれ一時間……さほど大きくはない迷宮なのに、ここまで時間がかかるとは思わなかった。せめて、もう一人戦闘要員が欲しい……ネズミと早く合流しよう。

「さっ、いくぞ。近くに魔物はいねえから大丈夫だ」

「はい……」

 「大丈夫だ」なんて、何が起こるか分からない迷宮ではあんまり言いたくはねえんだが、こう言わねえとこの箱入り娘は動かねえからな……まったく、こういうところも護衛仕事のつらいところだな。

 だが、仕事は仕事だ。こいつを何とか安全なところまで連れていくためには、少しのウソだって吐くさ。

 そして、歩き出したセリエを背後に、オレはゆっくりと歩を進めていく。【レーダー】で見る限りでは連絡通路付近に魔物の反応はないが、念のためだ。隠蔽系スキルで隠れている奴がいないとも限らないし、急いで移動すれば、それだけ注意が疎かになって咄嗟の事態に対応できない。

 焦っている時こそ、慎重に。

 先輩の冒険者が教えてくれたことだ。守るべき護衛対象だっているんだ。今は、それに従おう。

「ほら、こっちだ」

「は、はい……」

 幸いなことに、二階の連絡通路を渡りきるまでは敵とは遭遇せず、中央館へと辿り着くことができた。中央館も東館と似たような構造で、やはり縦に長い直線通路にいくつかの小部屋が面している。

 「E」の字状の構造であるため、目の前には脱出口がある西館への連絡通路がある。だが、ここも塞がっているうえに、脇にある一階と三階への階段も塞がっている。

 どうやら、何をするにもまずはこの通路を通らなければならないようだ。突き当たりに見える限りでは、反対側の階段は塞がれていない。まずはそこに行く。そして、三階へ上がり、ネズミと合流する。ネズミは小器用だから、未だ行方が知れないエルフの姉ちゃんを探すのにも役立つだろう。

 そうと決まれば、腹をくくるか。【レーダー】は、この階の小部屋内に存在する魔物の反応を示している。如何にこれらを片付け、またはやり過ごすか……ぐずぐずしていると、他の階や棟から増援が来る恐れもある。

 戦えるのは、実質オレだけだ。これまでの戦闘でいくらかレベルが上がったとはいえ、セリエは戦闘になれば怯えて使い物にならない。オレが一人で、色んなことに気を配らなくちゃいけない。まるで、「ペア」の仕事を通り越して、「ソロ」の仕事をしているみたいだ。

 冒険者の日常は予期せぬことの連続とは言うけれど……流石にこういうのは勘弁して欲しかったかな……。




mbzm5aiw24mozaohw3ghgtmdypi_1dmo_ic_2d_r cont_access.php?citi_cont_id=162018451&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ