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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

フランソワ編

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黒騎士の素顔、少女の想い

文字数がいつもの三倍になったぞ!(白目)

じっくりとお楽しみください^^;

 貴大の家には和室がある。

 暖炉がある洋風のリビングに、六畳一間を後からくっつけたような、小さな和室。

 夏は畳がひんやりと冷たくて、冬は炬燵が温かい。休日や休憩時間、和室に目を向ければ、そこにはいつも誰かがいた。

「それでさー。どっかで見たと思ったら、その女の子、フランソワだったわけ」

「はあ? 何であいつがんなとこ歩いてたんだよ」

「フェルディナン家のご令嬢が、夜の繁華街に、ですか。おかしな話ですねえ」

「だよなー」

 寒風吹きすさぶ十二月、暖炉の温かさだけでは足りないらしく、この日も和室には多くの人々が集まっていた。

【ウォーム】の魔法石が仕込まれた炬燵に、脚も腕も突っ込んで、ぬくぬくと温まっている青年と少女たち。

 貴大、アルティ、セリエ、エルゥ。奇しくも、貴大が黒騎士と知るメンバーがフリーライフに集まって、貴大はそれを幸いに、数日前に起きたことを話していた。

「それにしても、君はまだ黒騎士の恰好をして遊んでいたのかね。そろそろごっこ遊びは止めにしてはどうかな?」

「ごっこじゃねえよ! 俺が本物だっつーの!」

「そういえばそうだったね」

 本気なのか、冗談なのか、すました顔で貴大をちらりと見た黒髪のエルフは、また黙々と本を読み始めた。

 カオルお手製のちゃんちゃんこを羽織ったエルゥは、最近は、ここにいるのが当然だとばかりに和室に居座っている。

 彼女の背後に置かれた真新しい本棚に目をやって、貴大は心底嫌そうにため息を吐いた。

「サ、サヤマさん。差し支えなければ、黒騎士の兜と鎧、この場で見せていただけないでしょうか……?」

「あっ、いいな、それ。オレもよく見たことなかったんだよな、あれ」

「ん? まあ、いいけど」

 王立図書館司書見習い。ふわふわした栗毛とベレー帽が特徴的な少女、セリエ。

 縁があり、歳も近しいということで、彼女とアルティはプライベートでもちょくちょく会っている。

 内気な少女と、男勝りな冒険者。対照的な二人ではあったが、呼吸は妙にぴったりだ。キラキラと目を輝かせる少女たちに乞われ、貴大はアイテム欄から黒騎士装備を取り出した。

「ほら、これだ」

 黒いフルヘルムに、胸鎧に毛が生えたような軽装鎧。そこに、ショートソードのようにも見える、黒いナイフを加えたこれらが、巷を騒がす黒騎士の装備品のすべてだ。

「ふわー……! これが、黒騎士様の剣と鎧……!」

「へー。ハリボテみてーなもんかと思ってたら、意外としっかりした作りだな」

「まあな。間に合わせだけど、使い物にならん装備品を持ってるわけないからな」

 貴大が炬燵の上に置いた武具を囲み、少女たちはますます大きな声を上げた。

 マイペースなエルゥでさえも、本から顔を上げ、眼鏡の位置を直しつつ、鎧の縁を指でなぞっている。

 貴大にとってはどうということのないアイテムだったが――この世界の人々にとっては、一級品であるようだった。

 姦しい三人を見つめながら、貴大は背後の畳に右手をついて、空いた手で湯呑をつかみ、のんびりとお茶をすすっていた。

「あっ、もうこんな時間ですね! サヤマさん、エルゥさん、図書館に行きましょう」

 ナイフを持ち上げたり、兜をかぶったりしていたセリエが、柱時計に顔を向けて、アッと大きな声を上げた。

 休日であればこのまままったりとしていて構わないが、残念ながら、今日は平日である。

 四人がこの場に集まったのも、元はといえば仕事の打ち合わせのためだ。エルゥはうつらうつらと船を漕いでいたが……それに釣られて、眠ってしまえばユミエルが怖い。

 リビングの方から飛んでくる仕事の鬼の視線を感じ、貴大は慌てて立ち上がった。

「あ、ああ、そうだな! おい、エルゥ! 行くぞ!」

「むにゃむにゃ……午睡は仕事の効率を高めてくれるという研究がだね……」

「行くぞ、オラァ!」

「あいいいいい!? 耳は! 耳はつままないでくれぇー!」

 炬燵の中に潜り込もうとする駄エルフを引っ張り出して、貴大はユミエルとアルティに声をかける。

「それじゃ、ユミィ、行ってくる。アルティは今度の仕事の時によろしくな」

「……はい、行ってらっしゃいませ」

「ああ。打ち合わせ通りに頼むぜ」

 なかなかエンジンに火がつかない貴大だが、一度動き出せば彼の動きはスムーズだ。

 コートを着込んだ貴大は、冬服の上に白衣を羽織ったエルゥ、もこもことしたセーターを着たセリエを連れて、足早に自宅を後にした。

 そして、そのまま大通りに出て、上級区にある王立図書館に向けて歩いていく。

「この季節は街馬車が少ないなあ」

「たまには歩け。冬太りするぞ」

 貴大の家から王立図書館までは、徒歩にして一時間ほどだ。

 それなりの距離があったが、グランフェリアの中で街馬車を使うなど、よほど裕福な者でなければあり得ない。

 東大陸有数の大都市においても、移動の基本は徒歩である。貧乏性な貴大と、真面目で勤勉なセリエは、だるそうに足を動かす不健康エルフを連れて、せっせこと街を歩いていった。

「あれ? フランソワ、か?」

 何でも屋〈フリーライフ〉を出て、王立図書館までの道すがら。

 上級区に入った貴大は、広々とした大通りの向かい側に、よく知る少女の姿を見た。

「ああ、やっぱりフランソワだな。おーい!」

 大通り沿いのカフェテリア、その窓際の席に座り、物憂げに頬杖をついている貴族の少女。

 知り合いを見かけた貴大は、何の気なしに彼女に向かって手を振ったのだが……。

「あれ? 聞こえなかったのか……?」

 フランソワは、すっと席を立ったかと思うと、店の奥へと消えていった。

 下級区に比べれば人が少ない上級区だが、昼間ともなるとそれなりの人通りがある。

 その雑踏に紛れて、声が届かなかったのだろう。そう判断した貴大は、特に気にすることなく、エルゥらを連れて、また大通りを進んでいった。

「……うっ」

 さて、貴大には、『気づかれなかった』と思われていたフランソワだが――。

 実は、大通りに貴大が現れた時から、彼の存在には気がついていた。

「ううっ……」

 見えていた。聞こえていた。貴大の姿は認めていた。

 なのに、フランソワは店の奥へと逃れていって、身を隠すように化粧室の扉を閉めた。

「せ、先生……ううう……」

 貴大が嫌いになったわけではない。フランソワは、できれば彼を誘って、午後のお茶を楽しみたかった。

 しかし、今の彼女には――彼女の胸のうちには、背徳感と罪悪感がある。

 黒騎士がもたらしたときめきは、フランソワの胸にトゲのように突き刺さり、その甘い痛みは、貴大(想い人)への申し訳なさに繋がっていた。

「申し訳、申し訳ありま……」

 狭い化粧室の中、両手で口を覆って、溢れ出る嗚咽を抑えようとするフランソワ。

 代わりに、貴大への謝罪を口にしようとするも、それはなかなか意味ある言葉にならなかった。

「ごめんなさ……ごめんなさい……」

 泣きじゃくる幼子のような、拙い言葉が化粧室に消えていく。

 フランソワ=ド=フェルディナンは、このように情けない少女ではないはずだ。いつも自身に満ちていて、そうするに恥ずかしくないだけの力を身につけていた。

 だというのに、貴大が関わると、いつも彼女は心を乱してしまう。市井の女子おんなこどものように、容易く涙を見せてしまう。

 それは、恋心ゆえに。貴大を愛するがゆえに、必然的に現れる心の動きだった。

 フランソワは、それを恥じてはいなかった。むしろ、誇らしく思っていた。

 恋慕に関する悲喜こもごもは、余すところなく、すべてが素晴らしい!

 自身に根付いた貴大への愛情は、フランソワを一回り大きな人間に成長させていた。

 ――だからこそ。だからこそ、フランソワは自分が憎らしかった。

 一途と信じていた自分の恋心も。貴大に捧げたはずの愛の言葉も。何もかもを裏切ってしまう、あのときめきが許せなかった。

 違う。違う、違う、違う! 何度も繰り返したのは、否定の言葉。

 自分は、『尻軽女』ではない。この人だと決めた心を、ころころと変えるような女ではない。

「……違う。違うのです、先生」

 しかし、その言葉を面と向かって告げるには、あの甘いうずきは致命的で――。

 だからこそ、絶対に、否定しなければならないことだった。






 中級区繁華街。この区画に住む者たちは、ここ数日、とある予感を覚えていた。

 ――何かが、起きる。

 具体的な答えは出てこなかったが、誰もがみんな、感じていた。

 ただならぬ雰囲気を。忍び寄る不気味な気配を。

 繁華街は、いつもと何も変わらない。酔客たちが大いに騒ぎ、娼婦たちが黄色い声で男を誘う。

 中央広場は相変わらずにぎやかだし、人気のない路地はいつもと同じで物騒に思える。

 何も変わらない――何も変わらないからこそ、恐ろしい。

 何の変化も見られないのに、繁華街を包む、この不穏な空気は何だ。じりじりと近づいてくる、この不可視の脅威は何なのだ。

 目に見えないからこそ、恐ろしい。言葉にできないからこそ、恐ろしい。結果として、ここ数日の繁華街は、いつもよりほんの少し、閉店時間を早める店が増えていた。

「お嬢様。各員の配置、終了しました」

「……ええ」

 繁華街の住人たちを、殻に閉じこもる貝のようにしている要因の一つ。

 町人に扮したフェルディナン家の親衛隊たちは、今夜も繁華街に溶け込んで、フランソワの指示を待っていた。

「絶対に……絶対に、黒騎士を、見つけてください……」

「……お任せください。お任せください、お嬢様」

 意気消沈したフランソワに、頭を下げる親衛隊筆頭、セバス。

 フランソワからは何の説明もなかったが、彼女が落ち込む理由は、親衛隊の者なら誰もが察していた。

 黒騎士との邂逅。貴大を避けるフランソワ。お嬢様の恋心を微笑ましく思っていた親衛隊たちは、それだけに、今回の事情は痛いほどに理解できた。

 そして、フランソワがなぜ、まだ黒騎士を探しているのかも――。

(決着をつけられるおつもりなのだ、お嬢様は)

 自分の心に。黒騎士への想いに。それらすべてに清算をつけて、そして、ようやく貴大と再会するのだ。

 誇り高きはフェルディナン。イースィンドの大公爵、フェルディナン家の跡取り娘。

 未来の主人の気高さを、逆に哀しく思いながらも、親衛隊たちは黒騎士の影を探していた。

「なーんか……今夜だって気がするんだよなあ」

 上級区から下ってきて、繁華街の北側に陣を構えるフランソワ。

 彼女とは正反対に、下級区から上がってきて、繁華街の南側へと集まっていたのは、街に予感をもたらした要因のもう一つ。マチス率いる『アンダー・ザ・ローズ』の幹部と、構成員たちだった。

「はは。うん、今夜だ。何となく分かる」

 繁華街の影の影。月明かりがかろうじて照らす袋小路で、手下を前に、マチスは笑う。

「良い、悪いは分からねえけど、今夜だ。ははは、今夜だ。今夜だ、ははは」

 乾いた笑いに混ぜるように、今夜、今夜と呟くマチス。

 彼が若くして『アンダー・ザ・ローズ』の頭目にのし上がったのは、この直感力によるところが大きい。

 そのことを知っている幹部と構成員たちは、残忍な笑みを浮かべ、あるいは冷や汗をかき始めた。

「よーし、じゃあ、黒騎士の首を獲るぞ。はは、誰でもいいから、奴の首をねじ切ってやれ」

 軽い調子で、人を殺せと指示を出すマチス。

 彼は懐から例の小瓶を取り出して、指でつまんで振ってみせる。

「それじゃ、行こうか」

 からからと笑いながら、歩き始める『アンダー・ザ・ローズ』の頭目。

 彼に続く者たちの手にも――同じ小瓶が、握られていた。






 フェルディナン家の親衛隊に、犯罪者集団『アンダー・ザ・ローズ』。

 出自も性質も異なる二つの集団は、奇妙なことに、同じ日に、同じ目標に向かって進み始めた。

 グランフェリアという木に生った、黒騎士という果実をつかもうとするならば、衝突は避けられず、争いは必至である。

 何かが起きる。事件が起きる。繁華街の住人たちの予感は、今宵、現実となって彼らの身に降りかかる。

 彼らが思ってもみなかった形で――最悪の形で、彼らを巻き込もうとしていた。

「羊の串焼き、羊の串焼き~♪ 今日は絶対、肉を食べるぞー。むふふ」

 さて、一方で、騒動の中心となる黒騎士は、のん気に歌など歌っていた。

 日が暮れるまで肉体労働に精を出していた貴大は、仕事帰りに繁華街に寄って、串焼きを食べて帰ろうと決めていた。

 疲れた体に、羊の串焼き。たっぷりと脂がのった羊肉を炭火で焼いて、岩塩のみをふりかけて食べる。

 単純で、でも、それがたまらなく美味しい串焼きに、貴大はうきうきと心を弾ませている。

「いくつになっても、買い食いっていいもんだよなあ」

 繁華街に漂う、焼いた肉やバターの香りに、貴大はほっこりと顔をほころばせる。

 お母さんのように厳しいメイドからは、買い食いは控えるようにと言われていた貴大だが――今日は頑張って城壁の補修に取り組んだのだ。少しばかりは許されるだろうと、彼は串焼きの美味しい店へと近づいて行った。

「……ん?」

 城壁から繁華街へと移動し、区画に入ってからは、まっすぐに目的の店へと向かっていた貴大。

 彼は、視界に何かが映ったような気がして、背後を振り返ってはきょろきょろと辺りを見回した。

「ん……?」

 違和感を覚えたものの、特に異常は見当たらない。いつもの街並み、いつもの人通り。中央広場から聞こえる喧騒も、貴大にとってはいつも通りのもので――。

 ついでに言えば、路地裏で女を押さえつけている男がいるのも、警邏隊の姿が近くにないのも、いつも通りのことだった。

「またか。最近、物騒だな」

 見てしまったからには、見捨てることなど出来はしない。

 貴大は近くのアパルトメントにするりと入り込み、【インビジブル】を発動させ、姿を消した。

 そして、次の瞬間には、同じ建物の屋上に黒衣の騎士の登場だ。黒騎士に扮した貴大は、軽装鎧の留め具を確認しつつ、眼下で行われている暴行を呆れたように見つめていた。

「世に盗人の種は尽きまじって言うけどさ……限度ってものがあるだろ」

 週に二度も黒騎士に変身するなど、貴大にとっては初めての経験だった。

 中級区の治安が乱れているのか、はたまた、ただの偶然なのか。どちらにしても好ましくない展開に、貴大はため息を吐きながら、強姦魔の前へと飛び降りた。

「かっ……!?」

 演劇や芝居では、名乗りを上げて、口上を述べて――という黒騎士だが、本物は寡黙で事務的なものだ。

 余計なことは言わず、無駄に時間をかけず、あっさりと強姦魔を気絶させた貴大。ベルトを外し、今まさに局部をさらそうとしていた中年男は、そのままの姿勢でどうと地面に倒れ伏した。

「あ、あああ……!?」

 怖い思いをしたのだろう。服や髪を乱れさせた町娘は、突然現れた黒騎士にも怯えて、じりじりと路地の奥へと後ずさる。

(おいおい、そっちじゃないだろ)

 街の暗がりは狼のねぐらだ。そこに逃げ込めば、下手をすると帰ってこれない恐れがあった。

 心配した貴大は、町娘を刺激しないよう、ゆっくりと路地裏の奥へと回り込み、彼女の行く手に立ち塞がった。

「え……? あ、あ……?」

 貴大の背後にあるのは……自分が進もうとしていた場所にあるのは、闇だということに気がついて、ようやく町娘は正気を取り戻した。

 足を止め、申し訳なさそうにうつむいて、もじもじと手すさびを始める町娘。この調子ならば大丈夫だと、貴大もほっと一息ついたところで――。





「――見つけた」





 ぞくり、と貴大の背筋が震えた瞬間、彼の体は自然と回避行動を取っていた。

「なっ……!?」

 数秒前まで彼が立っていた場所には、鋭利なナイフが突き出されている。それを握っているのは、他ならぬ町娘。先ほどまで顔を赤らめてうつむいていた少女が、人形のように表情を失って、ナイフを突き出した姿勢のままで固まっていた。

「この動き、間違いない。見つけた、見つけた、見つけた……」

 昆虫のように感情のない両目。陶器のように固まった表情。冷たい言葉、身にまとう殺気。

 一瞬にして、町娘からならず者――あるいは、暗殺者へと変じた少女は、懐から笛を取り出し、空に向かって鋭く吹いた。

 すると、呼応するかのように、繁華街の空気ががらりと変わる。剣呑な、しかも、冷徹な気配が、街のあちらこちらから近づいてくる。

(くそっ、何か、やべえっ!)

 気がつくと、先ほど気絶したはずの男も、少女と同じように無機質な顔をして、ゆらりと立ち上がってきていた。

 そして、二人は油でぬめるナイフに、小瓶から出した白い粉を塗りたくり――猛然と、貴大に襲いかかってきた。

(ちっ……)

 貴大ほどの実力があれば、二人を倒して警邏隊に引き渡すことなど、造作もないことだ。

 しかし、状況が分からないまま交戦に入るほど、貴大の戦闘経験は浅くはない。

 ここは逃げの一手しかない。状況は距離を取ってから確かめる。貴大は壁を蹴って、民家の屋根の上へと飛び上がった。

「しっ!」

「甘いっ!」

 増援が到着したのか、あるいは伏兵が潜んでいたのか。

 貴大の跳躍に合わせ、屋根の上から二重、三重と投網が降りかかる。

 だが、それらは貴大に滅多切りにされて、バラバラと音を立てて散っていった。続くボーラもかわされて、両端におもりをつけたロープは、虚しくどこかへ消えていった。

(捕縛用の道具……毒を塗ったナイフ……俺を捕まえるつもりか? ……いや、それだけじゃないな、きっと)

 貴大は現場から大きく飛び退きつつ、襲撃者たちの目を思い出していた。

 人を害することを何とも思っていない、あの無感情な目。そのくせ、ギラギラと油虫のように輝いて、見る者に嫌悪感を催させる目。

 貴大はあの目に見覚えがあった。冒険者時代、若かった貴大たちに、何度もからんできた悪漢、盗賊、犯罪者。彼らと同じものを、貴大は先ほどの襲撃者たちから感じ取っていた。

(狙いは黒騎士……『仕事』をするうえで、邪魔になったか。だとすると、ここで逃げても問題は解決しないな……)

 煙突の影に身を隠し、わずかな時間で思考を巡らせる貴大。

 そうする間にも、殺気立った気配は、輪を縮めるように近づいてきて――。

『……オオオオ……!』

「っ! な、何だ?」

 いよいよ覚悟を決めた貴大が身構えた時、中央広場からどよめきと剣戟が聞こえてきた。

 素早く場所を移動して、繁華街の中央に目を向ける貴大。すると、彼の目には、意外な光景が飛び込んできた。





 中央広場で、樽や木箱を蹴飛ばして、刃を交わす白と黒。

 フェルディナン家の親衛隊と、『アンダー・ザ・ローズ』の構成員たちは、どちらも町人姿のままで、死力を尽くして戦っていた。

「ここで会ったが百年目、というやつだ。一網打尽にしてくれるっ!」

「くそがぁぁっ!!」

 戸惑う悪人を、一人、また一人と捕縛していく魔法剣士たち。

 百戦錬磨の精鋭たちは、突然の交戦にも顔色一つ変えず、剣で、魔法で悪人たちを打ち倒す。

「くそっ、何でお抱え騎士どもが……!」

「情報が洩れていたのか……!?」

 数では勝る『アンダー・ザ・ローズ』たちも、混乱に陥ってしまえば烏合の衆だ。

 まさか、このようなところに現れるはずもない猛者たちの出現に、ならず者たちは浮足立っていた。

「かっ……! 囲まれてやがる! 貴族の奴ら、本気だ!」

「ああ、あああ……!? あれ、あいつ、知ってるぞ! あいつは――!」

「フェルディナン家の、白老龍!?」 

 やがて広場に現れた白髪の紳士に、犯罪組織の面々は血の気を失った。

 その名も高き、大公爵。フェルディナン家には、これを守護する老戦士がいる。

 それが、親衛隊の長、セバス・S・サーバス! 並ぶ者なき〈マジック・フェンサー〉の登場に、ならず者たちはのどを引きつらせて、か細い悲鳴を上げた。

「これが目的ではありませんが、外道が大手を振って歩いているなど、見すごせるものではありません。総員、かかりなさい」

「「「おうっ!!」」」

 抜身の刃を一斉に構え、親衛隊の魔法剣士たちは、町人に化けていた犯罪者たちに斬りかかっていく。

「なめるなああぁぁああああっ!! 野郎ども、返り討ちにしろっ!!」

「「「おおおおうっ!!」」」

 腹をくくった犯罪者たちも、負けじと声を張り上げて、鉈やナイフを振り上げた。

 蜘蛛の子を散らすように一般市民たちが逃げ出して、飲み屋は娼館は一斉に扉を閉めた。窓や扉の隙間から、恐る恐る、人々が見守る中、二つの集団は真正面からぶつかり合って――。

「……何が起きてるんだ? 狙いは……俺じゃないのか?」

 背の高い建物の上から広場を見下ろしながら、貴大は戸惑いの声を上げていた。

 先ほどの不意打ちと、その後の襲撃は、明らかに黒騎士をターゲットにしたものだった。狭まる包囲網も、忍び寄る魔の手も、黒騎士一人に向けられていたもののはず。

 それがどうして、突如として霧散して、代わりに広場で騒ぎが起きているのか。腑に落ちない展開に、貴大は助太刀に入ることすら忘れて、広場の戦いに見入っていた。

「毒に頼るかっ! 軟弱者どもめっ!!」

「魔法も剣も使うやつに、言われたくないなあ!」

 すべての攻撃にマヒ毒をからめた悪人たちに、鍛え上げた肉体と技術でこれを迎え撃つ魔法剣士たち。

 北上してきた『アンダー・ザ・ローズ』と、南下してきた親衛隊が衝突するのは必然のことであり、この戦いは起こるべくして起きていた。

 だが、それも、あの笛の音がなければ――犯罪者たちの本性を露わにさせた、黒騎士発見の報がなければ、何事もなく終わっていただろう。

 すべては偶然。すべては誤解。互いの目的も知らぬまま、二つの集団は火花を散らして戦っていた。

「面白そうだなっ! 参加させてもらうぜっ!」

「かたじけないっ!」

 やがて、繁華街で起きた戦いには、冒険者たちも加わっていき、

「このままで済ますものか……!」

「許さん……! 貴様ら、生かして帰さんぞ……!!」

 街に散らばっていた、『アンダー・ザ・ローズ』の幹部までもが集結して、

「「「おおおおおおおおおおおっ!!」」」

 嵐のような――犯罪者たちにとっては、泥沼のような戦いと化していった。

 こんなはずではなかった。対抗勢力など、いるはずがなかった。組織の力で黒騎士を排して、意気揚々と下級区へ引き上げるつもりだった。

 じりじりと『アンダー・ザ・ローズ』が劣勢となっていくのは誰の目にも明らかで、だからこそ、構成員たちは状況を覆す一手を狙っていた。

 黒騎士など、もはやどうでもいい。今はただ、この場を切り抜けなければ――!

「【ポイズン・ブラッド】!」

「【ダークネス・ストーム】!」

 毒々しい粘液が、黒き風に乗って広場を駆け抜ける。

 向かう先はこの戦場の要、フェルディナン家親衛隊の長! あの老いぼれさえどうにかしてしまえば、死中に活は見いだせる――!

 強力な範囲魔法を一点に絞った毒の槍は、セバスただ一人に向けられていた。

 だが――。

「これは面白い曲芸ですね」

 歴戦の〈マジック・フェンサー〉は、なんと魔法を使うことなく、レイピアさばきだけで合体魔法をかき消した。

「ジャッ!!」

「お嬢様、少々、お下がりください」

 毒の槍に紛れた幹部たちの追撃も、難なく迎撃し、彼らを一刀のもとに斬り捨てる。飛び散る血さえハンカチで受け止めて、主には一滴さえも触れさせない。

 これがフェルディナン家を守る老龍の実力。グランフェリアにその人ありと謳われた人物の力。

 その前では、いかな地下世界の住人と言えど、取るに足らないごろつきと変わらない。白老龍を相手にして、彼らが無事に帰れる道理はない。

 ただ――ただ、セバスにとって、誤算があったとすれば――。

「きゃああっ!?」

「お嬢様っ!? ……ぐううっ!」

 彼の不意をつける人物が『アンダー・ザ・ローズ』にいたことと、彼ほどの戦士を一瞬にして行動不能にするマヒ毒があったことだろう。

「おじょう、さ、ま……」

「セバス! セバス!?」

 セバスという絶対の盾に守られていたフランソワが、悲鳴を上げた。

 彼女にとって、セバスの強さは一つの完成形であった。彼が苦戦することなど考えられなかったし、こと防戦においてはギルドマスターや宮廷魔術師長にも勝ると信じていた。

 そのセバスが――親衛隊の長が、倒された。

 途端に戦場は混迷をきたし、その騒乱の中、フランソワは何者かに連れ去られていった。

「ははは。ははは」

 仕留められた鹿や猪のように足をつかまれ、石畳の上を無造作に引きずられていくフランソワ。

 頭部をかばう彼女の耳に、ぞっとするような空虚な笑い声が響く。

 セバスを倒した男。おそらくは相当の実力者。そして、『アンダー・ザ・ローズ』の構成員――。

 フランソワでさえ名前を知る犯罪組織の恐ろしさは、彼女が先日出くわした悪漢の比ではない。

 ただでは済まない。ただでは済まされない。自身の身分と、『アンダー・ザ・ローズ』の性質とを考えたフランソワは、渾身の力で何者かの手を振り解いた。

「おや? 思ったより、活きがいい。ははは」

 暗がりへ、より暗がりへ向かおうとしていた襲撃者。

 バンダナを巻いた青年、マチスは、一瞬、きょとんとした顔をして、幼子のように朗らかに笑いだした。

 場にそぐわぬその笑い声に、フランソワは怖気を振るった。およそ善良とはほど遠いその者に、震えを抑え、抜身の剣を向けた。

「貴方、私が誰か、知っているのでしょうね?」

「ああ、分かるよ。分かる。フェルディナン家の一人娘だろ? パレードで見たことがある」

「それなら……」

「うん。面白いことになりそうだ。いいものを拾った。何をしても、面白いことになりそうだ。ははは」

 マチスの言葉に、フランソワは、彼の正体を察していた。

 ただのごろつきなら、このようなことは言わない。ただの異常者なら、このようなことはできない。

 セバスに奇襲をかけたその実力と、独断専行のような今の状況。思うままにふるまう彼は、『アンダー・ザ・ローズ』の中でも上位に位置する存在なのだ。

 組織の幹部か、頭目か。いずれにせよろくな相手ではないことが分かり、フランソワはより一層、警戒心を震わせた。

「させません。私のこの剣が、貴方の企みを防ぎます」

「……へえ」

 隙なく構えたフランソワの姿に、マチスは一瞬、笑いを止めた。

 細めた目で興味深そうに細身の剣を見つめ、伸ばしかけていた手をぴたりと止めた。

 日々、鍛錬に励んでいる彼女の実力を読み取ったのだ。手下よりもよほど『使える』少女の構えを見て、一度は動きを止めたのだ。

 なのに――。

「えっ……!?」

 マチスは、突き出された剣に構うことなく前進を始めた。

 広げた手に剣が刺さり、それが手の甲から飛び出しても、構わず前に、前に、歩き続けるマチス。

 思わずフランソワは剣を引き抜こうとしたが、刀身はマチスの手の中に呑み込まれていくばかりで、少しも戻ってこなかった。

「ははは。高級品はいいな。お上品な感じがする。ははは」

「あ、貴方……!」

 堪能するように剣が貫通した手を何度か握り、マチスは実にうれしそうに微笑んだ。

 気がつけば、彼は間合いを詰めていた。彼なりのやり方で、フランソワの剣を無力化していた。

 何もかもが異質な存在に、フランソワは逃げることも忘れて絶句した。これがアンダー・グラウンドの住人かと、心の底から恐怖した。

「うふふ……さあ、家に連れて行こう。お茶も出すよ……ははは」

 月明かりを背に受けて、顔を黒く染めた男が、また、笑った。

 闇よりも濃い黒を瞳の中で蠢かせ、犯罪組織の頭目が、黄金の少女に手を伸ばした。

 剣が肉を裂き、骨を削る感触が、フランソワの手に伝わってくる。怖い。恐ろしい。気持ちが悪い。ありとあらゆる悪感情が、フランソワの口をついて出てこようとする。

 十代の少女にとって、マチスの存在は何と毒々しいものか。抵抗する心を奪う闇の住人は、空虚な笑みを顔に貼りつけたまま、ゆっくりと少女の体に手をかけようとしている。

(先生……)

 遂には幼子のように震えだしたフランソワは、心の中で助けを求めた。

(先生……!) 

 黒騎士ではない。セバスではない。頼れる彼女の父親でもない。

 平凡な容姿。ぼさぼさとした髪。いつも眠たそうな目。ダルそうにふらつく動作。

 だけど、フランソワにとってはかけがえのない、たった一人の愛しい男。人生の道の先に立ち、いつも彼女を導いてくれた、優しく、温かな一人の男性。

 佐山貴大のことだけを、フランソワはただひたすらに想っていた。

(タカヒロ先生……!)

 その祈りが、果たして、本人に届いたのだろうか。

 それは神のみぞ知ることであったが――今、この場には、少女を助ける者が現れていた。

「っ!?」

 どことも知れない路地裏に、一陣の風が吹いた。

 闇を吹き散らすような、鋭く、激しい風。それはフランソワの金色の髪を巻き上げて、マチスの顔から笑みを消し去った。

「つっ……!」

 遅れて、マチスが左手を抑える。

 剣に裂かれた彼の手首は、操り人形のようにぶらぶらと揺れて、滝のように鮮血を流し始める。

「は、はは」

 やったのは、剣を握っていたフランソワではない。突如として二人の間に飛び込んできた存在が、両者を強引に引き離したことによって、マチスの手は切り裂かれたのだ。

「貴方は……!」

 月の光を浴びてなお黒い甲冑。誰の目にも止まらぬ動きと、その手に握られた黒色の剣。

 フランソワとマチス、二人が狙っていた怪人が、二人の思わぬ形で路地裏に姿を現した。

「なぜ……?」

 少女の疑問の声には振り向かず、黒騎士はマチスと対峙する。

 自分の手を切り裂いてでも攻撃をかわしたマチスを、黒騎士は驚きとともに警戒していた。

 ただ者ではない――マチスから伝わる不気味な気配も、黒騎士の警戒心を引き上げる。

「はは……」

 不健康な顔色をますます青くして、それでもマチスはへらへらと笑っていたが――気まぐれか、あるいは、黒騎士の力量に恐れをなしたのか。

『アンダー・ザ・ローズ』の頭目は、手にバンダナを巻きながら、ゆっくりと横道に後ずさっていった。

「……いいよ。今夜は引くよ。ははは。散々な夜だ」

 遠くから聞こえていたざわめきは、段々と小さくなっていた。

 同時に、甲高い金属音も鳴り止んで、それは戦いの終わりを意味していた。

 おそらくは、『アンダー・ザ・ローズ』の敗北で終わったのだ。今ごろは多くの構成員が捕縛され、幹部や実力者は逃げ惑っていることだろう。

 そう、今のマチスと同じように。そのことを察したマチスは、苦々しく笑いながらも、最後に明るく笑って姿を消した。

「――でも、収穫はあった」

 彼の視線の先。そこには、ほんの少しだけ露出した黒騎士の肌があり、そして、そこにはわずかに白い粉が付着しており――。

「……!?」 

 黒騎士は――貴大は、マチスの視線をたどって、ようやく自分の手が震えていることに気がついた。

 恐怖ではない。緊張によるものでもない。この感覚は、彼がよく知るマヒの症状であり――。

(う、ウソだろ!?)

 気がついた途端、痙攣は貴大の全身に回っていった。

 電気を流されたように彼の体は痺れて、同時に力が抜けていく。視界は白く染まっていき、思考は回転を緩めていく。

(状態異常を防ぐ、装備品、は……)

 単独行動をするうえで、貴大は状態異常には人一倍気を配っていた。

 今もマヒや魅了、行動を阻害する状態異常を防ぐアクセサリをつけている。その守りが破られたことなど、かつて一度もなかったことだ。

(ダメ、だ……正体……バレ……)

 一度に多くの状態異常を与える、混沌龍のブレスにさえ耐えた貴大は。

 マチスがなすりつけた白い粉によって、心身を過剰なまでにマヒさせて、フランソワの前で気絶した。

 正体を明かしてはならない黒騎士が――人前で、無防備な姿をさらしてしまった。

「……これ、は」

 路地裏に倒れる黒騎士を見て、フランソワは何を思っただろうか。

 真っ白な頭に浮かぶのは、戸惑い、安堵、興味、哀しみ、怒り。

 本人でさえも把握できない感情が、少女の心中で渦巻いて、彼女の体を震わせる。

「なぜ……」

 フランソワは、今夜、黒騎士に決別を告げるつもりでいた。

 再び、黒き装いの英雄に出会い、自分の気持ちを確かめようとしていた。

 あのときめきは何かの間違いだったと、彼女は証明するつもりでいたのだ。

 なのに、どうして、フランソワはときめきを覚えているのか。なぜ、彼女の心は、温かな何かを感じているのか。

 気高き大公爵家の令嬢は、その矜持の高さから、自分の『淫らさ』が許せなかった。二心を持つ自分が許せず、また、自分を惑わす黒騎士が許せなかった。

 泣き出しそうになりながらも、抑えきれない腹立たしさによって、フランソワは黒騎士の兜に手をかけた。

 せめて、自分の心を奪った怪人がどのような顔をしているのか、確かめようとしたのだ。

 涙を浮かべ、憤慨し、フランソワは八つ当たりのように荒々しく留め具を外していく。固定を緩め、縁に手をかけ、兜を取り外し、そして――。

 そして――真実を、知った。

「あ……ああ……!?」

 イースィンドを襲った未曾有の災厄。大国を絶望の底へと叩き落としたカオス・ドラゴンを、単独で倒した黒衣の英雄。

 素顔をさらさず、言葉も発さず、ただ剣を振るう超人の正体を、誰もが想像し、誰もが知りたがった。

 美男子なのか。不細工なのか。有名人なのか。無名の人物なのか。人間なのか。魔物なのか。

 フランソワも、幾度か仮面の中身を予想した。過去の英雄の肖像画から、当てはまりそうなものを思い出し、見事な偉丈夫を作り上げていた。

 だが――だが、本物はどうだ。

 平凡な顔立ち。英雄とはかけ離れた、庶民的な造形。これが真実だと公開しても、与太話だと一笑されそうな黒騎士の素顔。

 それは、フランソワが思いもしなかったもので、しかし、彼女がよく知るものであった。

「そうだったのですね……」

 呆然としていたフランソワの目から、ぽろり、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちる。

 取り外した兜を石畳の上に置いて、彼女は貴大の体にそっと手を置いた。

「そ、そうだったのですね……うう、わ、私は、ふしだらな女ではなかったのですね……」

 黒騎士の正体。それは、フランソワにとっては救いであった。

 黒騎士にときめきを覚えた少女。彼女の恋心は、実は、たった一人に向けられたものだったのだ。

 そのことを知ったフランソワは、なおも涙を流しながら、愛おしげに貴大の頬をなでた。

「先生だけを、想っていたのですね……」

 一途な少女なのだ。フランソワは、彼女が思っていた通り、一途な少女だったのだ。

 十七年生きてきた中、彼女が恋したのは貴大と黒騎士だけ。そのことで、一時は自分が信じられずにいたフランソワも、黒騎士の正体を知ることによって救われた。

 自分は変わらず、一途に貴大を想っていることを、彼女は再確認できたのだ。

「先生……タカヒロ先生……」

 いつも自分の危機を救ってくれる青年。

 そっと手を差し伸べて、時にはこうして駆けつけてくれる、頼りになる人。

 ただ一人、自分が愛した男性に――フランソワは、万感の思いを込めて口づけをした。

「愛しています、先生」

 溢れ出る幸せと愛情を感じながら、フランソワは穏やかに微笑んだ。

 彼女の瞳には、もう不安は浮かんでいなかった。

 十二月。冬は深まり、夜の街には寒々しい風が吹いている。

 それでも、フランソワの胸は、ぽかぽかと温かな気持ちで満たされていた。





黒騎士の正体は、貴大だったのか……(愕然)

とうとうバレてしまった真実ですが、いますぐどうにかなるわけではなさそうです。

さてさて、これでフランソワ編は終了。次章はエルゥ編。お楽しみに!
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