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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

サイドストーリーズ6

209/291

しゃっきりお休み

噂のロケラン使いこと、???の登場です。

 生れ落ちてからの二十一年の生。

 これまで、俺は何をしてきたのだろうか。そして、これから俺は何をするのだろうか。

 人の身で分かることはあまりに少なく、俺はずっと、暗中模索の日々を過ごしていた。

 やりたいことはあった。次世代型VRMMO《Another Wolrd Online》で、ユニーク・アイテムを見つけたい。大学に進んで、可愛い彼女といちゃいちゃしたい。社会に出たら、ものづくりに携わりたい。

 漠然とした夢は、コーラの泡のように生まれ、弾けて消えてはまた生まれていく。泡の一つ一つは、同じなようで、同じではない。いつか一つの形になる日まで、何度も何度も生まれては弾けていくのだろう。

 炭酸が抜ける前に、一人前にならなきゃな。

 友だちに向かって、したり顔でこう語ったこともあった。想像力は創造力だ、人間に生まれたからには、何かを生み出さなくちゃいけないと、得意げな顔で腕を組んだこともある。

 今にして思えば、若気の至りだと断ずることができるけれど、あの頃の俺は、心の底から人間の可能性を、自分の将来性を信じていたんだ。

 いや、過去形にするのはよくないな。俺はまだ、未来を信じている。人間の力を信じているし、あいつのことだって信じている。

 だけど、『敵』はあまりに強大で、蛇のように残忍なやつだ。なあなあで生きていては、決して、打倒は叶わないだろう。

 唯一の希望を、鍛え上げる必要があった。あいつと【アース】の人々の、絆を結ぶ必要があった。

 だから、俺は試練を与えることにした。放っておけばふぬけてしまうあいつのために、幾多の苦難を用意した。

〈憤怒の悪鬼〉で刺激した。母校を模した迷宮でもてなした。『欠落した』親友を送り、龍や聖女の意識を引いた。時限爆弾化したイベント・アイテムを、これ見よがしにストルズに寄進したのも俺だ。俺は、あいつを引き締めるためなら、何でもやった。

 しかし、俺の行いが実を結ぶのかは、未だに確信を持てずにいる。もしかすると、俺は奴らの掌の上で踊らされているのかもしれない。取るに足らないもがきだと、嗤われているのかもしれない。

 それでいい。奴らには、大いに油断していて欲しい。俺の頑張りを、どうか邪魔しないでいて欲しい。間近に迫った『その時』まで、ほくそ笑んでいて欲しい。

 最後に笑うのは、俺だ。勝つのは俺たち、〈フリーライフ〉だ。

 俺が、貴大が、れんちゃんが、奴らのにやけた頬を張り飛ばす。それができてこそ、俺たち三人は未来に向かって歩き出せる。止まってしまった俺たちの時計は、再び秒針を刻みだす。

 そのためにも――貴大は、幸せにはさせられない。

「ど、どちらさまで……すかー」

 慌てる淫魔に【スリープ】をかけ、俺は寝ている貴大を担いで、中級区のアパルトメントを飛び出す。

 範囲型【スリープ】の影響を受けた貴大は、強い振動を受けても目覚めず、泥のように眠りこけている。まあ、このところ、ハードスケジュールだったからな。睡眠魔法なんて使わなくても、起きやしないだろうが……念のためというやつだ。

「もう少し離れた方がいいか」

 無防備な貴大は、こいつを慕う少女たちの恰好のエサだろう。特に、あのカオス・ドラゴンの前に放置してしまえば、婚前交渉は間違いなしだ。それだけは、いけない。今の貴大に、女の味を覚えさせてはいけない。女を抱くという、とびきりの幸せを与えてはいけないんだ。

 こいつのことだから、一度関係を持ってしまえば、それが日常化してしまうだろう。それこそ、何だかんだでメイドやカオス・ドラゴン、先ほどの淫魔だって抱くはずだ。

 女はいいからな。俺だって、この街で初体験を済ませた時は、心と体が蕩けそうだった。この世の一つの幸せを、あの時確かに感じていたんだ。

 それが、いけない。貴大には、まだ童貞でいてもらわなくては困る。女を悦ばす自信がなくて、性交を怖がってるぐらいがちょうどいい。

 だから、俺は人目がつかないところまで、熟睡する貴大を運んでいく。

「じゃあな。起きたら歩いて帰れよ」

 街外れの酒屋の裏に貴大を寝かせ、俺は愛用の杖をくるりと回し、転移魔法を発動させる。

 目深に被ったマントのフードをぐいと引き下げ、俺はグランフェリアの景色を遮断する。それからきっちり十秒数えて、フードを上げると、そこは見慣れた我が家だった。

 イースィンド南部の山奥に構えた、研究所。廃棄された貴族の別荘を改築して作った秘密基地は、人除けの結界の効果もあり、誰も近寄らない。

 ここで俺は、ずっと、対策を講じていた。魔術を極め、マジック・アイテムを錬成し、貴大に試練を与え、世界の秘密を探ってきた。

 結果として、道は一つしかないということを知った。その道を行くために、貴大には頑張ってもらわなくてはいけない。

 四年前の【異世界浸食】。

 二年前の【選択的捕食】。

 半年前の【部分的欠落】に、迫り来る【昇華の刻】。

 敵は着実に段階を進んでいる。そのことを知っているのは、俺だけだ。

『口封じ』をされているため、俺は誰にも、何も喋れない。筆談も不可能で、【コール】すらも禁じられている。俺は、回りくどいやり方でしか抵抗できない。小石を積み上げるように、忍耐強く進むことしかできない。

 でも、その先には希望が待っている。自由な未来が待っている。

 何者にも縛られない生き方を、あの時歪められた人生を、俺たちはこの手に取り戻せるはずだ。

「信じているぞ、貴大」

 俺は眼鏡を外し、どっかと椅子に座り込んで、大きく息を吐き出した。


以上、暗躍担当の優介視点でした。

え? このタイミングで!? と思われる方は、お気づきでしょうか。以前、貴大の親友その1が出てきたのは、サイドストーリーズ3。そして、本章はサイドストーリーズ6。

つまり、フリーライフ第二部は、あと数章で終わるんですよ!

そこから、最後の第三部が始まります。夏にはフリーライフ完結を目指しますので、どうぞお楽しみください(・ω・)b


次回、修学旅行編。

夕暮れのビーチで、ビキニ腰みのユミエルがアロハオエー。
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