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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

サイドストーリーズ5

181/300

フリーフェアリー

はい、書籍版フリーライフの情報が出回り始めたので、約束通り更新です!

まずはサブキャラたちの視点、サイドストーリーズです。第一話は例の妖精さんたちのお話。

では、お楽しみください(・ω・)b
 妖精っていうのは、何よりも自由な存在なの。

 風に舞い、せせらぎに笑い、甘い蜜をチュッと吸う。誰にもソクバクされず、誰にとがめられることもなく、心が命じるままに飛んでいく。

 そういうのが妖精ってものでしょ? なのに、妖精王のジジイときたら、ちょっとイタズラが過ぎたからって、浄化の監獄の中に閉じ込めるなんて。

 森の中の花畑! 清らかな小池に、いくらでも実が生る果樹園! そして、四方八方に張り巡らされたワープ罠……。

 ワケわかんない。ゴラクもシゲキもない箱庭に閉じ込められたら、三日で発狂するっての。

 あのジジイも、自分で閉じこもってみたらわかるでしょうよ。毎日、変わり映えのしない景色を見ながら、クリームもチョコもかけていない果物を食べて過ごすなんて、地獄だって。

 まったく、もう、おしおきだからってやり過ぎよ。妖精界の重罪人、『ホールケーキのつまみ食いニールソン』だって、もっとマシな待遇のはずだわ。

 考えれば考えるほど、不満が湧いて出てくる。グチだって、いくらでもあるわ。フラストレーションだって溜まりまくりよ!

 でも、それも今日まで。本日、私たち三姉妹はいよいよキンシンが解かれるんだ。この狭っ苦しい監獄から、ようやく解放されるんだ。

 ふふん、これもマジメに日々を過ごしていたおかげね。こらえ性のない妖精なら、後一年は閉じ込められていたところよ。

「姉さん、行きますよ」

「フェア姉、行くよー」

 フェアリーズ・ガーデン上空に開いたポータルゲートを背に、妹たちが私を呼んでいる。

「ええ、今行くわ」

 ここでは思い切り使う機会もなかった背中の羽を大きく羽ばたかせ、私は風を切って飛んでいく。

 このスピード感! そして、ゲートの先にどこまでも広がる自由な空! これが、私の求めていたもの!

「私は、自由よーっ!」

 そして私は、忌まわしい監獄からの脱出を果たした――。

 んだけど、ポータルゲートの先にあったのは、見慣れた妖精界の景色じゃなくて、石とレンガで作られた大きな街だった。

「って、あ、あれ? ここ、どこ?」

 一番下の妹のニースが、街の上空をふにゃふにゃと飛びながら戸惑いの声をあげている。

「ここは――」

 次女のピークは、カチンと固まってしまい、何やらしきりに眼鏡をくいくい持ち上げている。

 私だってそうだ。二人に負けず劣らず混乱していて、頭の中がぐるぐるとこんがらがっちゃっている。

 え? ここはどこ? 花が咲き乱れる妖精郷は? 飛び回る仲間たちは?

 キノコのお家や、ツリーハウス、ハーバーズ&パーファシーのお菓子屋さんは?

 妖精用とはとても思えないようなスケールの家や街並みに困惑し、私はただただうろたえるばかり。

「――わかりました。ここはどうやら、ニンゲンの街のようですね」

「え? ニンゲン?」

 巨人の国にでも紛れこんでしまったかと焦っていたんだけど、よく見れば、人も建物もあいつらほど大きくはなかった。

 ニンゲンか。確かに、狭い道路をぞろぞろ歩いているのは、いかにもニンゲンっぽい。

 公園で遊んでいるのもユミエルぐらいの大きさの女の子だし、屋台で声を張り上げているのも貴大ぐらいの背の男だ。

「しかも、ここはグランフェリアのようですね。あの王城は、ユミエルさんの目を通して見ていたものと同じです」

「あー、そうね。無駄に偉そうなあのお城ね」

 空の上から見渡せば、海に面した岸壁の上に要塞のようなお城がそびえ立っているのが見えた。

 そうだそうだ。あのツンツン飛び出た尖塔は、ユミエルのお家の屋上から見えていたものだ。

 他にも、ユミエルの目を通して見ていた外界の風景を、いくつも見つけることができた。中級区の大市場に、闘技場のようにも見えるギルドホール。下級区の屋台通りに、子どもたちが駆けまわっている孤児院。

 見覚えのある建物を辿って、ユミエルと貴大が住んでいる〈フリーライフ〉だって見つけることができた。空から見下ろせば、どこに何があるのか凄くわかりやすい。

「ふわ~、大きいね~。こんなに大きな街、はじめて見たよ~」

「うん、そうね。人間界は久しぶりだけど、これはスゴイわね」

 上から見れば地図のように街を見渡せるとはいえ、視界の端から端まで街が広がっているんだ。ずっと見ていると、目がくらくらしてしまう。

 前に来た時は、ニンゲンの街はここまで大きくはなかった。魔物に壊されては建て直して、建て直しては壊されるようないたちごっこで、発展なんてする暇がなかったはずだ。

 それが、どうやったらこんな大都会を築けるようになったんだか。グランフェリアという街の全体像を初めて目にして、私の心は驚いたり感心したりで忙しかった。

「でもさ。そもそも、何でこの街にゲートが繋がっていたわけ? 出口は妖精郷の『おしおき部屋』に繋がってたはずでしょ?」

 そう、私たちはその部屋に設置されているゲートを通じ、フェアリーズ・ガーデンに放り込まれたんだ。

 それなら、出ていく時もおしおき部屋を通るはずなんだけど……?

「おそらく、ユミエルさんが何度もフェアリーズ・ガーデンに通う内に、この街へのバイパスができてしまっていたのでしょう。私たちは、そちらへ逸れてしまって、ニンゲン界へと来てしまったわけです」

「迷子になったってこと~?」

「有り体に言ってしまえばそうですね。しかも、この転移はイレギュラーなものでしたから、ポータルゲートも閉じてしまっています。他のゲートに辿りつくまでは妖精郷に帰れませんよ」

「え~!? そんなのやだ~!」

 ニースが涙を目に浮かべてふるふると首を振る。ピークは妹の肩を抑え、安心させるように背中をさする。それでも、ほんのわずかに顔をしかめているのは、不安によるものね、きっと。

 まあ、仕方ないわよね。何年かぶりにシャバ……じゃない、故郷に帰れると思っていたのに、ニンゲンの世界に迷い込んでしまっただなんて、妖精さんだってびっくりよ。

 でも、私は違う。むしろ、嬉しいとすら感じている。だって、だって……!

「〈プティ・ローズ〉のクリーム菓子」

「はうっ!?」

 涙目のニースがびくりと震える。

「新作映像水晶」

「――っ!?」

 ピークが眼鏡をキラリと光らせる。

 たった一言。たった一言だけで、二人の間に漂っていた悲壮感は一気に吹き飛んだ。

 私もそうだ。予期せぬ転移がなんだ。ニンゲンの街に出てしまったことがなんだ。

 そんなことは――。

「グランフェリアンアンの前ではサジに過ぎないわっ!」

 ファッション雑誌の最新号を求め、大都会の上空からお近くの書店目がけてダイブ!  

 二人の妹たちも、高級菓子店や劇場目指してものすごい速さで飛んでいった。

 ようやく気づいたようね。この街は、ユミエルが住んでいる街。それはすなわち、あの子が差しいれてくれた品物が普通に売っている街だということ!

 お菓子もある! 映像水晶もある! そしてファッション雑誌が山ほどある!

「いやっほーっ!!」

 監獄からの解放の瞬間に感じたものよりも更に大きな歓喜を全身に感じながら、私はスピードを上げて街の書店へと飛び込んでいった。






「いや~、満足、満足」

「だね~。ん~、このチョコレートパフェ、おいし~♪」

「ニース、貴女、まだ食べるのですか」

 あれから三時間後、私たち姉妹は手頃な喫茶店で一度集まって、それぞれの成果を報告していた。

「書店や貸し本屋は圧巻だったわ。月刊のファッション雑誌だけで八つもあるのよ? 信じられる!?」

 私は、ファッション雑誌を詰め込んだバッグを取り出してみせる。

「お菓子はみんなおいしかったよ~。バリエーションも十分だし、質もいいんだよ。店員さんに聞いたら、海運が発達しているから、色んなところから色んな材料や職人さんが集まってくるんだって~」

 ニースは、二杯目のチョコレートパフェを頬張りながら、うっとりとグランフェリア菓子について語る。

「劇場もよかったですよ。『黒騎士英雄譚』というものを観たのですが、仕掛けにマジックアイテムを豊富に使っていて……秀逸の一言でしたね。映像水晶のラインナップも文句無しです。ただ、スタジオジ○リの新作がなかったのは残念でしたが」

 いつも冷静なピークは、珍しく頬を上気させ、購入した映像水晶をごろごろと机の上に置いていく。

 みんながみんな、思いっきり楽しんでいる。食べて、遊んで、劇を観て、とっても人生をオウカしている。

 う~ん、これよ、これ! 私たち、今、めっちゃ輝いてる!

「ねえ、妖精郷に戻るのだけどさ、しばらく後にしない?」

 せっかく発展したニンゲン界に来たんだもの。どうせなら、思いっきり楽しんでから妖精郷に返るべきだろう。

 それに、妖精王だって、ニンゲン界はカンカツが違うから、大っぴらにわたしたちを探せないだろうし……うん、やっぱり、いい考えだと思う!

「うん、そうしよ~。あたし、もっとお菓子が食べたいし~」

 末っ子のニースは、ふわふわの金髪を揺らしながら大きくうなずく。

 だけど、ピークは口をへの字に曲げて、反対の意を示してきた。

「いけません。ここは仲間もいない外世界ですよ? お目付役がいないということは、頼れる人もいないということです。むやみやたらに長居するべきではありません」

 うん、言いたいことはわかる。自分たちがコリツムエンの状態だってこともわかるし、故郷へのポータルゲートが遠い位置にあることもわかる。

 それに、わたしたちは妖精郷のフェアリーだ。〈アース〉にいる魔物の邪妖精とは全く違う、トートイ種族だ。

 その羽から発する粉だけでも魔法の力を持っているし、何より、ニンゲンとは比べ物にならないほどキュートだ。

 もしもニンゲンに見つかってしまえば、ただでは済まないだろう。最悪、ずっと昔にあったっていう妖精狩りにあってしまうかもしれない。

 ふふん、でも、そんなのはわたしたちには無縁だ。なんせ――。

「大丈夫よ。『変化のピアス』もあるし、お金もたっぷり持ってるし、ね?」

 わたしは、ニンゲンサイズの手で、同じくニンゲンサイズの自分の耳に触ってみる。

 そこには、妹たちとおそろいの銀細工のピアスがぶら下がっている。これこそ、わたしたちフェアリー族の知恵の結晶、変化のピアスだ。

 これさえつけていれば、見た目をどんな種族にも変えられるという便利なマジック・アイテム。それだけじゃない。他にも、いくらでも物が入るバッグとか、金銀財宝が詰まった宝石袋とか、色んな道具を持っている。

 これは、わたしたちが今まで集めてきた財産で、ユミエルにあげた指輪もその中の一つ。高い封印効果をもつ浄化の監獄では、今まで使う機会がなかったけれど、外の世界ならいくらでも使うことができるんだから!

 使えるものを使わないのはもったいないし、正体がバレることなんてあり得ないんだから、ムダに怖がる必要なんてどこにもない。

 ううん、むしろ、堂々とニンゲンとして振る舞って、ニンゲンの娯楽を楽しむべきね! そういうのが、妖精らしいってものでしょ?

「ねえ、いいでしょ? もっと享楽的に生きましょうよ。あんただって、熱心にパンフレットとかチラシとかを読んでたじゃない。劇、見たいんでしょ?」

「ううっ!? そ、それはそうですが……」

「は~い、きまり~♪ お姉ちゃん、まだお昼だよ~? もっと遊ぼ~」

 三杯目のパフェを完食したニースがピークの腕を引っ張って店の外へと出ていく。

「ごちそうさま。はい、これはお代ね」

「ありがとうございました。またお越しください」

 何枚かの銀貨を店主に渡し、わたしも喫茶ノワゼットを後にする。

 さあ、これからまた街を回って、たくさんの喜びを見つけよう。

 小さな箱庭に閉じ込められていたウップンを、思う存分晴らしてやろう。

 ここでは、何をしてもいい。食べてもいいし、遊んでもいい。歌ってもいいし、踊るのもいい。

 怒られるのだって、偉い人に叱られるのだって、自分の勝手! 楽しさ、悲しさ、歓喜に怒り、何でもかんでもどんとこいだ!

 この世に生まれた、ありとあらゆるものを感じよう。思い切り、人生を楽しもう。

 それが自由ってことだ。それが妖精だということだ。

 だから私は、自由の羽を広げて――ニンゲンの街へと、飛び出していった。




 ――んだけど。

「ほう、妖精か。久しく見てなかったな。どれ、ペットとして飼ってやろう」

「何でカオス・ドラゴンが街中にいるのおおおおおおおおっ!?」

 私たちみたいに人化しているドラゴンに追われたり。

「むむっ、ヘンな気配! ちょっと、そこの女の子たち、止まって~」

「ひっ、強大な魔素っ!?」

 魔素の塊みたいなシスターに追われたり。

「林檎味のポーション、試飲中でーす」

「え~、りんご味~? どんなのかな……見た目がもう、りんごじゃ、な、い」

 ごぽごぽ泡立つ水銀色のポーションに震えあがったり。

 なかなか、ヘビーな日々を送ることになってしまった。

 何だか、繁栄の裏の闇を見てしまった気分でした。はい。


次回、存在を忘れ去られているっぽい老龍さんの視点です。

老龍さんの指導で、アップルポーションに変化が……!?

彼の涙ぐましい努力をご期待ください。


※書籍版フリーライフが、アマゾンで予約開始されました。どれだけWEB版と違うかは、2013年2月5日の活動報告にまとめていますので、ぜひ、チェックしてみてください。
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