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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

わん孤児院編

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犬も歩けば・・・

新章です。感想書いてくれた人、ありがとう!
「……今日は仕事がありません」

「だな!」

「……労働をしなくては、人間は堕落します。休んでいいのは週に一度の休息日だけです」

「オレのいた世界では週休ニ日だったっつーのぉぉぉおぉぉおおお!!!?」

 ビーィィンと音を立てて震える投げナイフ。寸でで避けていなければ貴大の額に第三の目が開眼していたところだ。

「あぶ、あぶねえっ!? な、なにしやがる……!?」

「……週休ニ日など、神は許していません。働いてください」

 主人に向かって「働け」と言い放つ使用人。ここ、「何でも屋・フリーライフ」ではいつもの光景だ。

「でもよ~、お前が仕事を見つけられないってことは、本当にないってことだぞ? どうしろってんだ?」

 この優秀な使用人は、いつもどこからともなく依頼を受けてくる。これが無ければ、フリーライフの依頼など週に一度あるかないかだ。

「……なければ、探してきてください。そもそも、店主はご主人さまです。さあ、はりーあっぷ」

 しっしっとハエを追い払うかのように主人を家の外へと追いやる使用人。主人を主人と思わぬ言動に、貴大の頭が鈍く痛む。

「あ~、わかったよ、仕事探してくりゃあいいんだろ?」

「……そうです。労働は美徳です」

「初めて聞いたぞ、んなこと……まあ、いい。じゃあ、出かけてくる」

「……ご健闘を」

「はいはい」

 ぽんぽんとユミエルの頭を軽く叩き、ドアの外へと出ていく貴大。今日も暇でありますように。そうは祈るが、叶ったことの方が少なかった。



………………
…………
……



「ふあ~あ……ったく、やっぱ仕事なんかねえよな……」

 そもそも、何でも屋には縄張りというものがある。俺が受け持っているのは、精々が中級区の一区画のみだ。そんなのすぐに回り終わる。

「そうだよ、本当なら仕事なんか全然ないはずなんだ……ほんとに、ユミィのやつはワーカーホリックだよな、ったく」

 あいつは不思議な情報網と伝手で、他の何でも屋の取りこぼしや上級区の仕事を次々と持ってくる。今日みたいに何もない日なんて、休息日を除けば本当に稀だ。

「あ~あ、止めだ、止め止め!! 探しても見つからんもんは見つからん!!」

 ふらふらしているうちに、いつの間にか中級区の自然公園に辿り着いた。丁度いい、ここで時間を潰そう。

「【エア・ウォール】! 【エア・クッション】!」

 空気の壁で外気や風、音を阻み、空気の塊でクッションを作る。昼寝必須スキルだ……本当はブレスや衝撃波を防ぐためのスキルなんだけどな!

「さ~て、では、お休み~……」

 程よい気温に調節した空間に敷かれた、ほどよい柔らかさと反発性を持つ空気のクッションに身体を埋め、俺はまどろみの中へと落ちていった。





「っはっはっはっはっはっはっは……ぴちゃっ、ぴちゃっ」

「うぶ、うう? なんだぁ……?」

 妙な感覚に目を覚ますと、俺の視界にわんこの顔がどアップで広がっていた。

「……犬か……なんだよ~も~、俺は眠いんだよ~……」

 首輪が付いているあたり、野良ではないのだろう。人懐っこそうなゴールデンレトリバー(この世界でもそういうのか?)が、尻尾をふりふり、なおも俺の顔をなめてこようとする。

「犬とキスする趣味はねえよ~……いいから寝ようぜ~……」

 頭を撫でて、「伏せろ、伏せ」と言うと、ちょこんと伏せの体勢になる。いい子だ。賢くて聞きわけの良い犬は好きだ。

「さっ、寝るぞ~……」

 横腹を撫でてやると、ころりと横になる。俺も横になりながら、わんこのお腹をなでてやる。見ると、早くも目を閉じてリラックスしているようだ。

「そうだ、それでいい……んじゃ、寝るか……」

 俺も負けてはいられない。わんこのお腹を撫でながら、いつの間にか意識を手放していた……。





「っはっはっはっはっはっはっは……ぴちゃっ、ぴちゃっ」

「うぶっ、うう? またお前か……?」

 妙な感覚に目を覚ますと、俺の視界に知らない娘の顔がどアップで広がっていた。



「…………は? え、ええ? 誰だ、お前……!?」



 首輪が付いているあたり、野良ではないのだろう。って、なんだそりゃ。人に野良も何もねえよ! 混乱しているな……。

 人懐っこそうなゴールデンレトリバー(この世界でもそういうのかぁ……?)に似た耳としっぽと髪を持つやたらでかい(180はあるんじゃねえか?)娘が、尻尾をふりふり、なおもオレの顔をなめてこようとする。

(え? なに? あのわんこが実は人間でしたってオチか!?)

「くぅ~ん……」

 いるよ! わんこもいるよ! 甘えたそうなつぶらな瞳でこっちを見てるよ!! じゃあ誰だこいつ!?

「わふっ!」

 ぬおお!? こら、引っ張るな、服が伸びる!!

「なんだなんだ? どこかに俺を連れていきたいのか?」

「わんっ!!」

 正解とばかりに「にぱっ」と笑って尻尾を振る犬娘。良く見りゃ犬系の獣人だ。そこにいるわんこと余りにも特徴が似てるから妙な勘違いをしたぜ……。

「わんっ! わんっ!」

 今度はぐいぐいと背中を押し始める犬娘。

 ……まあ、なんだかんだで良く眠ったから、暇つぶしに着いて行くのも悪くない。わんこは嫌いじゃないしな!

「わぁーたよ、いくよ、ついて行きますよ」

「わおーん!」

 嬉しそうな声をあげちゃって……悪い子じゃあなさそうだ(能天気そうでかわいいからな!)。

 たまには、こんな娘に時間を割くのも悪くない。労働に比べれりゃあ、何やっても天国さ。





 そう、あの時、ほいほい付いて行かなけりゃあ、あんな厄介事に巻き込まれることもなかったんだ……でも、この時の俺は、デカかわいいわんことわんこ娘に囲まれて浮かれてたからな。良い予感しかしていなかったのさ。






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