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フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~ 作者:気がつけば毛玉

過去編2

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「グラビトン・ファイター」との出会い


「はあっ、はあっ、生き、生きてるか……?」

「なんとか……でも、死ぬ、がはっ、は、吐きそう……」

「あは、はは、はっ、はっ……はふ~……」

 ジークムントの魔の手から逃れ、とうとう隣国であるイースィンド王国との国境を越えた俺たち。

 関所? んなもん、最強騎士から逃れるために登った前人未踏の魔の山にあると思うか?

 まさか、こんな形で≪Another World Online≫にもあった高レベルスポットに足を踏み入れるとは思わなかったよ……。

 でもまぁ、おかげで化け物騎士を振り切ることができた。ジークムントは魔の山に住まう「シャドウ・ワイバーン」(レベル210)に頭をくわえられてどこかへ飛んでったよ……まぁ、あの化け物のことだ。死んじゃあいないだろう。

 でも、払った犠牲は大きかった。

 最難関ダンジョンやスポットみたいに、出てくる魔物がレベル250オンリーとかの地獄じゃないけれど、ここだって十分過ぎるほどの難所だ。

 出てくる魔物の平均レベルが220……BOSSのレベルに至っては250だ。こんなところに足を踏み入れるなんて、ゲームと違って命の危険すらあるこの世界においては自殺行為だろ?

 それでも、人間やればできるもんなんだなぁ……迫りくるモンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げの全力の山越え。

 遂には『まさか、我が庭を土足で踏み荒らす愚か者がいるとはな……』なんて威厳と前振りたっぷりに現れたここのBOSS、「カオス・ドラゴン」も、その場の(ヤケクソな)勢いとノリで何とか追い払うことができた。

 おかげで、レアな回復薬とか消費アイテムとかバンバン使っちゃったけどな……でも、生きているだけでも儲けもん。それに、戦っているうちにバルトロア帝国とは反対側のイースィンド王国領内へ来ることができたから、まぁ、結果オーライということで。

「三人で魔の山越えだなんて、チャレンジクエストかよ……はひ~」

「懐かしいね……ははは、はぁ~」

「でも、引き返してあのおっさんとまた会うのも嫌だったからな……ふ~」

「「確かに」」

 そこは断言する優介とれんちゃん。それほどまでにジークムントが……奴の気迫が恐ろしかったのだろう。まぁ、最終的には「七代祟って許すまじ」みたいなオーラを全身から放っていたからな。どんだけ姫様大好きなんだか……。

 きっと、後方から聞こえてきた断末魔は奴のじゃない。「シャドウ・ワイバーン」のだ。腹の奥底から絞り出されたような声が耳に届いた時、それはもう鮮やかに、黒翼竜がミンチにされているイメージが浮かび上がったね。

 分かるだろう? こんなんが後ろにいたんじゃ、魔の山がヤバいスポットだからって、引き返すだなんてとてもじゃないけれどできんわ。

 だから、追い立てられるように魔の山の奥へ奥へと足を踏み入れたんだが……まぁ、その後はさっき語った通りだ。

 ……うん、結果がよければ全てよし! これからのことを考えよう! これからのことを!

「んで、これからどうする? もうイースィンドには来たわけだけど」

 息も整ってきたので、早速話を振ってみた。こういう時に話をリードする優介はまだ水筒から疲労回復効果がある茶をがぶ飲みしてたから、まずはれんちゃんが口を開く。

「そうだね……まずは王都に向かおう。そこで活動拠点を確保して、その後はいつも通り資料探しだね」

「だな。まだヨーロッパの西側には拠点がないもんな」

 そう、ドイツ……じゃねえわ、バルトロア帝国の北側に落ちてきた俺たちは中央ヨーロッパの辺りはウロチョロしていたけれど、まだ東西ヨーロッパには行ったことなかったからな。活動の中心となる、腰を落ちつけることができる拠点が必要だった。

「ぷはっ。そうだな、拠点は大事だ。宿は……なぁ?」

「だね……はは」

 水筒から口を離した優介の言葉に、力なく笑うれんちゃん。優介自身も宿という言葉に苦々しい表情を見せている。確かに、俺たちが使うような宿では、ろくなことがなかったな……。

 安さを求めれば、寝心地最悪の硬いベッドに薄っぺらい壁。個室にシャワーもサウナも付いていない。ここでれんちゃんは、共用サウナで見知らぬおっさんにケツを掘られかけた。

 かといって高い宿に泊まれば、連日高級宿に泊まり続ける俺たちに目を付ける者たちが現れる。護衛も付けていないガキが三人……さぞかし、俺たちはおいしいエサに見えたことだろう。

 安くても、高くてもいけない。でも、ちょうどいい宿はなかなか見つからないか、客で埋まっているかのどっちかだ。それならいっそ、自由にできる一軒家を買った方が早いと思うのも、無理はないことだ。

 異世界に転移する数日前に≪Another World Online≫でフリーライフの拠点ホームを改築したばかりで金はすっからかんだったけれど、幸いにしてアイテム類は全部持ってくることができていた。アイテム欄と、拡張空間内蔵リュック様々だ。

 リュックはホームのアイテムボックスと繋がっていて、戦闘中でない限り自由にアイテムを出し入れできるマジックアイテム……ちょっとお高い課金品だけど。それでも、買っといて良かった~! と、三人で声を揃えて叫んだのは言うまでもない。

 んで、今まで入手してきたアイテムから、市場に流しても不自然じゃないものだけをいくらか売りさばいて、最初の拠点を買うことができたんだ。

 小さいながらも楽しい我が家……二階建てで、4LDK……風呂とトイレ、ベランダ付き。

 ……まぁ、さっきそこから逃げてきたんだけど。きっと、バルトロア帝国騎士団のガサ入れでボロボロにされるんだろうなぁ……ううっ。他の国では借りただけだけど、あそこだけは持ち家だから、どうにも惜しい気がした。

「まぁ、いいじゃん。売りもんになるけど、俺たちには特に必要じゃないアイテムなんて腐るほどあるんだから。イースィンドの王都……グランフェリアだっけ? で、また家を買おうぜ」

「金銭感覚狂いそうだけど……そうだね、そうしよう。貴大も、それでいい?」

「そだな……うん、そうしよう。もうあの国には戻れんからな……あのおっさんが出るから」

「「だな」」

 三人の意見は一致したようだ。それにしても、俺たちが起こすトラブルで出入りできない国が増えていっているような……ま、まぁ、世界は広い。まだまだ歩いて回れる国はいくらでもあるさ!

「んじゃ、体も休まったことだし、早速下山するか!」

「ああ」

「りょ~かい」

 魔の山を突破したとはいえ、まだまだ下りきってはいない俺たち。現在地は、標高にして千はあるんじゃなかろうか。それに、眼下には鬱蒼とした森が広がっている。

 こんなところには、民家だってありはしないだろう。じきに日が沈む……早いところ、屋根があるところまで辿り着いて休みたかった。

「って、うお、雨だよ」

 急に曇ってきたなと思ったら、バラバラと雨が降り出した。山の天気は変わりやすいとは言うけれど、こんなタイミングで雨が降らなくても……。

「ちょ! 濡れる濡れる! 【矢避けの風陣】!」

 優介が、本来は飛び道具を防いでくれるバリアーを張ってくれる。これは雨の中の戦闘中に発見した、スキルの活用法だ。

 オーラやバリアーなど、物理攻撃を軽減するスキルを使えば、傘がなくとも雨が防げるんだ。これさえあれば、急な雨にも十分対抗できる。

 でも、地面はそうはいかない。雨に振られてぬかるむばかり……これでは、腰を下ろすこともできない。やはり、雨が防げる場所へと移動する必要があった。

 バシャバシャと、水たまりをふんづけながら走る俺たち。

 森の中ならいくらかマシだと思って、緑深き森へと移動していたのだが……。

「あ、あれ! もしかして、山小屋じゃないか?」

 れんちゃんが、進行方向の右斜めを指差す。見れば、そこには煙突が付いたログハウスが……確かに、山小屋らしい山小屋だ。

 あそこに行けば、風雨を凌げるだろう。そう判断した俺たちは、進行方向を変えて山小屋へと向かった。



 俺たちが山小屋へ辿り着く頃には雨が更に勢いを増し、雷まで鳴り始めていた。

 そんな中を当て所なく歩きまわるなんてごめんだったからな……「俺たち、ついてるな」、な~んて笑いながら、山小屋のドアを開いたんだ。

 すると、目に飛び込んできたのは、肉、肉、肉……裸のムキムキマッチョマンが、部屋の中央に仁王立ちとなり、大ぶりなタオルで全身を拭っている姿だった。

 って、えええええ……!?

「ん? おめえら……誰だ? どうやってここに来た」

 裸体を隠すこともせずに、怪訝そうな目をこちらに向ける筋肉オブ筋肉。ついでにご立派な「マンモス・カイザー」までこちらを向いている。

「う、う~ん……」

 それを見たれんちゃんが倒れた。れんちゃんは掘られかけて以来、野郎の体に拒否反応を示すようになったからな……気絶するのも無理はない。

「お、おい、なんだなんだ? どうしたってんだ?」

 突然人が倒れたことに動揺したのか、おっさんが巨体で床をどすんどすんと、「マンモス・カイザー」をぶるんぶるんと揺らしながら近づいてきマッスル。

 あれはもう、何だろうね。男の裸体が恐くなくても逃げ出したくなっちゃうよね。

 現に、ほら、優介が気を失いかけているしさ……俺だって、あんなもん直視するぐらいだったら意識を手離したかったさ。



 これが、俺たちフリーライフのメンバーと、イースィンド国内最大手の冒険者グループ・「スカーレット」のリーダー、キリング・ブレイブ=スカーレット=カスティーリャの出会いだった。

 ……正直、犯されるかと思ったのは秘密だ。



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