変態至上主義!(12/23)PDFで表示縦書き表示RDF


変態至上主義!
作:闇友菜



第12話 変態をもって変態を制する


ナルシストは、自分のあらゆる側面をこよなく愛している人のことだ。つまり、この狼男の信雄くんも、自分のドMな面もこよなく愛しちゃっているということなのだろうか。
「これでわかったわね……。まぁ、あんたに負けるような奴、アタシは今まで見たことないけどね。あきらめて帰れ」
 信雄くんは、元の美少年に戻っていた。転がっている信雄くんを、艶子が足で転がす。
「…・・・そうは行かないんだよ艶子。君だって、本当はわかってると思うけど、君が思っている以上にことは深刻なんだよ……。ふざけてるわけじゃない、僕は本気で言っているんだ」
「そうね、アタシも本気で言ってるのよ、信雄。大体、どこの世界に天敵と結婚するやつがいるのよ。アタシは吸血鬼よ? 狼男となんてそりが合うわけないじゃない! アンタ、まさかマジでアタシと結婚するつもりでいたの? バッカじゃない!」
「要、僕がこんなこというのもなんだけどね、君。こんな女やめておいたほうがいいようん。気が強いし、ドSだし、血は吸われるし……今なら僕が選んであげたっていいよ、君」
背筋が寒くなるようなことを言われ、僕はちょっと引いた。
「信雄くん、いってることめちゃくちゃだね」
「何キモいこと言ってんのよ信雄。恋に火傷はつきものなのよ!! 男はね、ちょっと小悪魔な女の子に手を出してちょっと火傷して大きくなるのよ!! ドSだって気が強くたって、要はそこがすきだって……言ってくれたようなくれなかったような!!」
「艶子、君は昔からそうだけど、己の願望入り混じって話すのやめたらどうなんだい!? それに、君にかかわったらちょっとの火傷じゃすまないから!! 全身火傷だから!!」
「信雄くん。君、本当は艶子のことが、嫌いなの?」
信雄は身体をぴくっと動かした。
「僕は艶子が大好きだよ。僕の外見だけで僕を見ない、僕を見てくれるから。本気で、本音でぶつかり合える最高の相手だ! そんな彼女が僕は大好きさ! できるなら、誰にも渡さないよ!もちろん君にも譲らない!」
 潤んだ瞳で熱く語る信雄くんは、すごく可愛かった。
「ライバルに、婚約者の良さを教えるわけないだろう! 全部うーそーさ! 艶子は最高のレディーだよ!!」
僕は、反射的に信雄くんの横っ面をひっぱたいた。
「な、なに……何するんだい要!! 不意打ちなんて、卑怯じゃないか!!」
信雄くんが地面にへたり込む。薄っすら赤く手形のついた右頬を押さえて、熱っぽく僕を見上げてくる。
「どうして君は、僕が喜ぶようなことを次々と……僕を喜ばせてどうする気なんだい!? そんなに僕をいじめて蔑んだ目で見つめて……楽しいか要!! そんなに楽しみたいんだったら、僕を縛っておくんだね! どんなプレイで受けてたつよ!」
 艶子が前言ったようなことと同じことを言って、信雄くんは僕にしがみついてきた。目が輝いて見えるのは、きっと僕が疲れているからだ。
「よく見ると、君は僕の美に近いものがあるんだね……。なんでこんな野暮ったいメガネかけているんだ? どうしてわざわざジミーになっているんだ? どうして、その綺麗なブルーグレーの瞳を隠すんだい? 君の瞳に映る僕を見せてくれよ――」
信雄くんが這い上がってきて、僕の頬をそっと両手で包み込む。目が完全にイっちゃっている。いくら美人でも、男からこんなこと言われたら、気色悪くて仕方ない。
「僕をずっと縛り続けて欲しい……セージ」
 艶子が、硬直している僕から、信雄を引き剥がして、その辺に捨てた。
「要に触るな、信雄」
低いけれど、その声ははっきり響く。
「それから、本当にお前は余計なことをべらべらべらべらと……。お前の舌は二枚舌か。一枚引っこ抜くぞ。お前が煌羅きららに何を言われたかは知らないが……この場では見逃してやる。さっさと国に帰りな、負け犬が」
「く……艶子、どうして僕が煌羅の差し金で秘密裏に君を連れ戻しに来たこを知っているんだい……! まさか、君は僕のストーカーかい!? エスパーかい!?」
「馬鹿かお前。かまかけられたって言葉知らないの? ふーんそう、煌羅ちゃんがね……なんでこんな馬鹿を送り込んできたのかしら。これでアタシが大人しく帰るとでも思われてるのかしら?」
艶子が鼻で笑った。
「認めよう……。だが僕は、それを知っていて煌羅のことを話したんだ!! やさしすぎる僕!完璧すぎる僕!! 全ては君のためだよ艶子!」
「何がなんでもアタシを連れ戻したいと、そう思ってるならね、煌羅ちゃん……もっと力ずくじゃないと無理だって。伝えてきな、信雄」
「艶子、本当に昔から君は頑固だね。生まれながらの女王様で――。そんなところも可愛いけれど煌羅は僕みたいに寛大じゃないからね。僕は大人しく君をあきらめるよ、君にはもう、心に決めた人がいるみたいだしね。あーあ……煌羅に殺されるかなぁ、僕」
信雄くんは、肩をすくめてみせ、チラッと僕の目を見た。
「要、艶子を頼んだよ」
「はぁ……」
なんだか良くわからないが、僕は気のない返事をした。話に乗れていない疎外感がこうひしひしと僕の胸を打つ。
「――すきだ!!」
信雄くんがいきなり飛び掛ってきた。僕は、綺麗なお顔を片手で掴んで、地面にたたきつけた。激しい拒否。
「嫌いだ」

艶子って、もっと頭がすっからかんの女だと思ってた。それどころか、ただの変態だと思っていたけど、違うみたいだった。












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