第13話:大切な人の為なら罪人にもなる
夜、皆が寝静まった頃、河原で一発の花火が上がった。
ハヤテはそれを確認すると、桂家を出て行った。
その様子を見ていたヒナギクは、こっそり後を追う。
(ハヤテくんったら、こんな時間に何処へ行くのかしら?)
そんな事を考えていると、彼を見失ってしまう。
一方ハヤテは、河原の前まで来ると、後ろを顧みて安堵の溜め息を吐いた。
(まさか、付いてくるとはなぁ。まあ此処まで来れば大丈夫だろう)
と河原に顔を向ける。
「よしっ」
と気を引き締め、土手を下って河原に下りて行くハヤテ。
河原に居た連中がそれに気付き、ハヤテを取り囲む。
「って、あの女じゃねえじゃん。てめえ、一体何者だ?」
「ああ、そいつ、あの女の彼氏っすよ」
「ほお。姫を守るナイト様って奴か。だが生憎、俺たちにはお前とやる理由は無い。戻ってあの女を連れてきな」
と連中の一人が中指を突き立てて挑発する。
「いいえ、そうはいきません。ヒナギクさんを殺ると言うなら、僕が貴殿方を潰します」
「へっ、この人数相手に度胸あるじゃねえか。面白い。お前ら、殺っちまおうぜ!」
連中の一人がそう言うと、全員でハヤテに襲い掛かる。
「っ!?」
ハヤテは咄嗟に地を蹴って上空に避け、懐からグレネードを取り出して投げる。
「何だ?」
と連中が落ちてきた物に注目する。
その瞬間、グレネードが爆発して連中を八方に吹っ飛ばす。
「うわあああああ!」
と連中の悲鳴が木霊する。
「くそっ、爆弾なんて卑怯だぞ!つーかそれ持ってる時点で犯罪じゃねえのか!?」
ハヤテは着地すると、
「大切な人を守る為なら、そんなの僕には関係ありません」
そう言ってロケットランチャーを取り出した。
「さて、誰から逝きたいですか?」
その問いに連中は焦って逃げ出そうとする。
「逃がしませんよ!」
言ってハヤテはロケットランチャーのトリガーを引いた。
ドカーンッ!
放たれた弾が連中の一人に命中して爆発し、爆風で全員を遥か彼方まで吹っ飛ばした。
ハヤテはロケットランチャーを仕舞い、ふと橋を見上げる。
その先にはヒナギクが居た。
「一寸ハヤテくん!今のは何よ!?」
そう言ってヒナギクは橋から飛び下り、ハヤテの前に着地する。
「ひ、ヒナギクさん、何時から此処に!?」
「ハヤテくんが何かを吹っ飛ばした所から。で、何してたのよ?」
「すみません。それは内緒って事で・・・」
「ふーん。私には言えないって訳?」
言ってヒナギクはハヤテを睨む。
(こ、怖い・・・。いっその事全部話して楽になってしまおうか。否、しかしそれだと余計な心配掛けるしなぁ・・・)
「一寸、何黙ってんのよ?」
「ああっ!」
ハヤテはそう叫びながら空を指差した。
ヒナギクは驚いてハヤテが指した方向を見る。
その隙にハヤテは脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ、ハヤテくん!?待ちなさい!」
ヒナギクはハヤテの後を追い、直ぐに追い付いて捕まえる。
「見逃して下さい、ヒナギクさん!」
「駄目よ。何が遭ったのかちゃんと話さないと放さないんだから」
ヒナギクのその言葉に、冷たい風がピューッと吹いた。
「ヒナギクさん、今のギャグ寒いですよ?」
ハヤテがそう言うと、ヒナギクは額にピキッと怒りマークを浮かべた。
「今のはギャグじゃなーい!」
ヒナギクはそう怒鳴り、ハヤテを背負い投て地面に叩き付けた。
「痛っ!何するんですか!?」
「五月蝿い!」
言ってヒナギクは立ち上がったハヤテに助走無しドロップキックをお見舞いする。
「うぉっ!?」
ハヤテは吹っ飛び、地面を転がる。
「あ、ごめんハヤテくん!」
ヒナギクは我を取り戻し、ハヤテに駆け寄った。
するとハヤテは例の果たし状を取り出し、彼女に渡す。
「何これ?」
「ヒナギクさん宛てです。昨日、渡されました」
ヒナギクは果たし状を開いて無意識に読み上げる。
「先刻の仕返しだ。明日の夜、河原に一人で来い。時間は花火で知らせる。って、何よこれ!?」
「ヒナギクさん、昨日、何かしたんですか?」
「昨日?えーと、昨日は何か・・・」
と昨晩の事を思い出すヒナギク。
「何かしたわね」
「何したんですか?」
「商店街を屯していた数人の不良に絡まれたから叩き熨めしたのよ」
「それじゃあ先刻のはその仲間でしょうか」
「でしょうね。それより、有り難うね。私の為に」
「いえ。主人を守るのが執事なので、当然ですよ。て言うか僕、疲れたんで少し寝ます」
ハヤテはそう言って、夢の世界に旅立った。
「一寸ハヤテくん、こんな所で寝たら風邪引いちゃうわよ!?」
・・・返事がない。ただの屍の様だ。
「一寸、巫山戯ないでよストーリーテラー!」
「ストーリーテラーに突っ込んでも何も始まらなーい」
と言うのは天の声ことア○ゴくん。
「・・・・・・」
ヒナギクは何も言い返せず沈黙してしまった。
(取り敢えず、家まで運ばないと)
ヒナギクはハヤテに背を向け、彼の体を背負って立ち上がる。
その際、彼女は思わず「重っ」と口にする。
(この人、私より重いわ。多分)
そう思いつつ、ヒナギクは家路へと着いた。
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