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廃クラさんが通る 作者:おまえ
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016 碧玉のドラゴン

Jill:ねえ、せっかくだからどっかIDいこうよ
Selfish:そうだな、三人でパーティ組んでヒーラーにはランダムで来てもらうか
Sky:よし、いこうか
Jill:やった~! 日本に来て初めてのIDだ!

 ジルが喜んでいる。無理もない。
 今までジルはIDで思うように動けてなかったんだろうから。
 俺は「むーたん事件」のことを知らないが、その後もジルが
TFLO
(このゲーム)
を辞めずに続けてこれたのは、セルフィッシュさんやカテドラさんのサポートがあったからなんだろうな。
 セルフィッシュさんにパーティに誘われ、それに入る。
 続けてジルもそれに加わった。
Selfish:それじゃランダムで登録するぞ。難易度はハードでいいな?
Jill:うん
Sky:おk

 このゲームでは一般的な I D (インスタンスダンジョン)は四人での攻略となる。
 人数が少なかったとしてもマッチング機能により、足りない分の人数は同目的の他PCにより補充されるようになっている。
 セルフィッシュさんが登録を完了するとすぐさま「しゃきーん!」とマッチングが完了した効果音が鳴る。
 残り一枠のヒーラーだけの補充とはいえ、さすがタンクを含めた三人がパーティを組んでいる状態だと早い。

Jill:はや~い
Sky:どこになるかな
Selfish:よし、いくぞ

 突入のボタンを押下(クリック)すると画面が暗転する。
 読み込み(ローディング)が開けると周りには木々が鬱蒼と生い茂る密林(ジャングル)
 古代の失われた遺跡に歯朶(シダ)植物やら苔やらがびっしりと張り付いている。
 秘境アスタライト。
 遺跡の奥に棲み着いたドラゴンを討伐するIDだ。

Jill:よろしくね~
Sky:よろしくお願いします
Selfish:不慣れだけど全力を尽くします。よろしく。
Millennium:よろしく~

 パーティが四人揃い、IDの攻略が始まる前にそれぞれ挨拶をする。
 不慣れって、セルフィッシュさん、俺から見たらずいぶん手練れた仕事(プレイ)してる気がするけど。
 まあ、不慣れと(そう)言っておけば無難なのかな?

 ……ん? いや、まてまてまて。
 それよりなによりもっと気にならないといけないことがあるじゃないか!

Sky:ミレニアムさん!?
Jill:ああ、ほんとだ
Selfish:まじか……

 ランダムマッチングでそろった四人目はまさかのミレニアムさん。
 ミレニアムさんは麦わら帽子のようなつばの広い帽子をかぶり、袖のない白いワンピースを着て、肘くらいまである長手袋をしている。
 ちなみにヴァニラ族特有の長い耳は帽子の上に穴が丁度二つ開いていてそこから突き出している。
 ピクニックやらハイキングやら、いかにもそんなことをしに行くような、こんな密林(ジャングル)に、これから戦闘に行くなんて格好(スタイル)ではない。
 おそらく戦闘用装備にこれらの服装を投影させているのだろう。 
 無言で防御力上昇(アップ)の魔法を詠唱するミレニアムさん。
 それを中心に絹のような光の膜に覆われると全員に防御力上昇(アップ)効果(バフ)が掛かる。

Selfish:なにしれっと始めようとしてるんよ
Millennium:なんだ? 始めないのか?
Selfish:いや、そりゃ始めるけど…。その前に、なにが「よろしく~」なんだっつ~の
Millennium:普通に挨拶をしただけだが、どこかおかしかったか?
Selfish:いや、あんたの普段のあの調子で「よろしく~」はないっしょ……
Millennium:そうか? 私はいつもこうだが
Sky:そういえばミレニアムさん、俺が初めて会ったときも言葉遣いや態度は普段と違って丁寧だったよね

 俺は裁縫ギルドではじめてミレニアムさんに会ったときのことを思い出す。

Millennium:当たり前だ。私だっていくらなんでも初対面の相手と接するときの態度くらいはわきまえているつもりだぞ。
Selfish:でも「よろしく~」はなんだっつ~の……

 セルフィッシュさん、いつまで「よろしく~」(そこ)にこだわるんだ。

Millennium:普通に「よろしく」だとなんだか堅い気がしてな。「~」をつければより無難なのではないかと思いつけている。ランダムでマッチングした相手におかしな印象を持たせることもないだろうと、無難な挨拶をしているだけだ

 まあたしかに多少柔らかくなるかもしれない。

Jill:ミレニアムさん精霊使いなん?

 そう言われてよく見てみると、ミレニアムさんの周りを小さな精霊(フェアリー)がぱたぱたと羽ばたいている。

Millennium:ああ、そうだが。それがなにか?
Jill:うちもはじめは精霊使いやったんやけど、ラグが酷くて諦めたんよ

 精霊使い(サマナー)はTFLOの大元になったFinal(ファイナル Loreロア)シリーズを象徴する戦闘職(ジョブ)であり、それはTFLOでも変わらない。
 しかし少し特殊な戦闘職(ジョブ)であり、この精霊使い(サマナー)盾役(タンク)でも回復職(ヒーラー)でも攻撃職(DPS)でも、どの役割もできる唯一の戦闘職(ジョブ)なのである。
 しかし、あるレベルに達したときに役割(ロール)の特化をし、それにより能力も分化し役割(ロール)として固定される。
ちなみにジルが行ったIDのLV(レベル)の時点では特化は行えず、便宜上攻撃職(DPS)ということになっている。

Millennium:そうなのか、でも今ならできるのではないのか?
Jill:どうやろう? 今日がはじめてなんだよね。日本に来てIDやるのって

 ジルが今日ここで手応えをつかめば「むーたん」を呼び戻してまた精霊使い(サマナー)になるのかな?
 てかミレニアムさんはこのジル(・・)をあのジル(・・)だってちゃんと認識しているんだな。

Selfish:つーか、あんた、クラフトだけじゃなくIDとかも攻略してるん?
Millennium:最低でも周制限のトークンを集める分くらいはやっている。全く厄介なことだ

 TFLOには戦闘用装備や製作(クラフト)素材(アイテム)と交換できる専用通貨(トークン)があり、それはID等を攻略すること等により取得できる。
 そしてその専用通貨(トークン)には制限があり一週間で取得できる数量が限られているものもある

Sky:厄介? ならやらなくてもいいんじゃない?
Millennium:なまじ週制限なんてあるから、やらなくてはいけないと思ってしまう。制限をかけることにより、無制限にやるような輩を封じ込めるのが本来の役割だったのだろうが、制限があるからこそ、上限まで集めたくなる。結果それがノルマとなり達成しないとどうにも気分が悪い。非常に迷惑だ
Sky:う~ん、そういうものなのかなあ……

 俺は特にそういうのは気にしたことがないけど

Selfish:まあ、わからないでもないけど
Millennium:旧時代は高性能のレア装備なんて、がんばったところで誰もが手にいれられるようなものでは到底なかった。だが、真生してそんなレアものは撤廃され、少しがんばればトークンで誰でもそこそこな強装備が手に入れられるようになった。しかし、レアが撤廃されたからこそノルマに縛られることになる。
Jill:強い装備が誰でも誰でも手に入れられるならええことなんちゃう?
Millennium:レアなんてどうせ手に入れることなんて出来ないから最初からそんなものを手に入れようなんて思わなかった。そんなものを追わなくても、何もしなくても、ただみんないるだけでそれだけで楽しかったのに、トークンなんてものを持ち出して引っかき回したからおかしなことになった。結果、自由だったあの世界は崩壊したんだ。


 『世界は崩壊した』?
 レアがトークンに置き換わったからって意味?
 ミレニアムさんの所属するギルドのメンバーが辞めたことに関係があったりするのかな?
 いまいち言っている意味がわからない。

Sky:え~と、とりあえず始めようか? ここに来てからもう結構時間たっちゃったし……

 申し訳ないがミレニアムさんが作ったおかしな空気を振り払いたかったから俺は開始を促した。

Millennium:すまなかった、私のせいだな。タンク、さっさと先導してくれ。
Selfish:ああ、わかった。遅れるなよ! しっかりついて来い!

 おそらくセルフィッシュさんも俺と同じことを思ったのだろう、余計な詮索はせずに、背の高い植物の生い茂る密林に足を踏み出し、俺たちをそれについて行く。
 葉をプロペラのように回し空中に浮かぶ植物(モンスター)
 それが三体襲いかかってくる。
 俺たちはそれを難なく撃退――ってピンチ!?
 セルフィッシュさんのHPがその植物(モンスター)たちに削られどんどん減っていくのに回復職(ヒーラー)が回復していない?
 いや、正確に言えば精霊(フェアリー)がセルフィッシュさんを一生懸命回復させている。
 でも回復職(ヒーラー)に特化した精霊使い(サマナー)なら自分でも専用の回復魔法が使えるはず。
 なのにミレニアムさんは一切回復せずに攻撃魔法を撃っている。
 特化したとはいえ精霊使い(サマナー)の回復力はフェアリーと自身の回復力を併せてやっと一人前(ひとなみ)だ。
 精霊(フェアリー)だけの回復力では半人前にも満たない。
 毒も食らってさらにHPが削られさらにやばいことに。
 しかし精霊(フェアリー)(すんで)の所でその毒を消し、なんとかセルフィッシュさんが墜ちる前にその一団(グループ)を倒しきった。

Selfish:あんた、少しは回復しろっての!

 ミレニアムさんのプレイにたまらず口を出すセルフィッシュさん。

Millennium:回復ならしてただろう、フェアリーが
Selfish:それだけじゃ全然間に合ってねーっつーの
Millennium:死ななかったであろう? だったら間に合ってるではないか

 う~ん、確かに死んではいないけど……。

Selfish:あんたいつもこんなプレイしているのかよ?
Millennium:ああ、そうだ。この程度のIDならまとめなければフェアリーの回復だけで十分だ。それに私からも言わせてもらうが、ボス前の道中だからって気を抜くな。お前以外のタンクはもうちょっと堅いぞ? お前はどれだけ甘やかされてプレイしてきたんだ?

 甘やかされてたって、俺はセルフィッシュさん以外の盾役(タンク)のこととかあまりよく知らないけど、カテドラさんはセルフィッシュさんがちょっとでも減ったらすぐ回復してくれてたし、甘やかされていたといえばそうなのかな?

Sky:ごめん、俺たちも火力出せていたらもっと速く倒せてセルフィッシュさんも楽になるんだよね?
Millennium:私も目一杯攻撃をしていたのだがな。まったく、ヒーラーにも攻撃を強いるゲームなんてこのゲームくらいだ。回復してほしいと文句を言うのなら、こんなバトルシステムにした長田を恨むことだな
Selfish:またその名前を出すんかい…。そんなにあいつが嫌いなのかよ
Millennium:ああ、嫌いだ、前も言っただろう。あいつがすべての元凶だ

 ああ、またこの話になる。
 ミレニアムさんが口を開くと最後は結局なぜかいつもおさPの話になる。

Sky:とりあえず先に進まない? この話は後でにしよう

 俺はまたも進行を促す。
 ちゃんと終わらせることができるのかな?
 秘境アスタライト(ここ)……。

Millennium:そうだな、私が悪かったな。相手に合わせることも大事だな。タンクが未熟ならそれを介護するのもヒーラーの役目だからな
Selfish:あんたいちいち癪に障るようなこと言いやがって……
Sky:ほら! 行こう! 時間だって無制限じゃないんだし
Jill:うん、早く行こうよ

 俺はさらに進行を促すと無言で走り出すセルフィッシュさん。
 ボスまでの道中、無数の根を足にして移動する植物(モンスター)や遺跡を盗掘をする獣人(ゴブリン)、遺跡を護る魔石像(ゴーレム)等が立ちはだかる――が、先ほどとは違い難なく撃退する。
 ミレニアムさんはちゃんと回復を優先し、セルフィッシュさんも防御を意識して敵の攻撃に対して少し堅くなり、ダメージが減ったような気がする。

 そして遺跡の最奥まで到達、俺たちの目の前にの古代竜(エメラルドドラゴン)が姿を現す。

 遺跡のさらに奥深く、人の手が入っていない洞窟というにはあまりにも広い洞穴の中、毒の沼気が漂う沼地の中で眠っていた古代竜(エメラルドドラゴン)が俺たちに気づき目を覚ますと、俺たちの方を大きな紅玉(ルビー)のような(ひか)る目で睨み付ける。
 一つ一つが碧玉(エメラルド)で出来ているかのような美しい鱗の巨軀が飛び立つと、大きな翼を羽ばたかせ俺たちの所まで飛んで来る。
 俺たちの上空まで来たところで羽ばたきをやめ重力に任すままに落下する。
 巨軀が地面に到達するとその衝撃により土埃が舞い地面は波打つ。
 そして首をゆっくりと薙ぎ払うように振りながら大きく咆哮。
 空気がビリビリと震え、共鳴した岩肌から岩石がボロボロと崩れ落ちる。

さあ、古代竜(エメラルドドラゴン)戦の始まりだ。 
ミレニアムさんがこのIDに入っていたときと同じように無言で防御力上昇(アップ)の魔法を詠唱する。

Selfish:よし、いくぞ!

 光の膜に覆われた瞬間、セルフィッシュさんが飛び出す。

Jill:GO!

 俺たちもセルフィッシュさんの後を追う。今日はジルの出足も速い。
 いきなり古代竜(エメラルドドラゴン)が咆哮を上げる――と、地面に丸い範囲攻撃(AoE)の予兆がいくつか現れ、俺たちはそれを回避する。
 回避した範囲攻撃(AoE)に岩が落下し、それが障害物となり行動範囲が制限される。

 そして古代竜(エメラルドドラゴン)からはひとりの冒険者(プレイヤー)を狙って毒の息が吹きかけられる。
 毒の息により範囲攻撃(AoE)が発生。
 これはその場にしばらくとどまり、その範囲に入るとダメージを受ける。
 この二つの攻撃により戦闘区域(バトルフィールド)内での行動範囲が狭められる。
 古代竜(エメラルドドラゴン)戦は位置取りが非常に重要な攻略要素(ポイント)となるのだ。

 攻撃をしながらも咆哮による落石を避け。
 毒の息に狙われたら、それを古代竜(エメラルドドラゴン)から離れた遠くに『捨てる』。
 これが古代竜(エメラルドドラゴン)戦の基本攻略法(パターン)だ。

 ジルが普通に攻撃を回避している。
 今までは挙動がおかしくて食らったんだか食らってないんだか、見ていてはらはらしていたけど、今日のジルは違う。
 岩山の間をするすると縫うように移動し、完璧に範囲攻撃(AoE)を回避している。
 俺はたまに食らっているのに……。
 食らうたびに精霊(フェアリー)とミレニアムさんの回復(ヒール)が飛んでくる。
 カテドラさんにもだけど、やっぱり俺は回復職(ヒーラー)に迷惑をかけっぱなしだなぁ。

 そして、特に危なげもなく古代竜(エメラルドドラゴン)体力(HP)を削っていくと、ドラゴンが突如飛び立ち、戦闘区域(バトルフィールド)の中央に降り立つ。それを見た俺たちは崩れ落ちてきた岩山の後ろに隠れる。
 古代竜(エメラルドドラゴン)が大きく息を吸い込むと碧玉(エメラルド)の巨軀が光り輝く。
 そして

「フォアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 と一際大きな咆哮を発すると外周の岩が崩れ落ち、強毒の沼の危険区域(フィールド)が発生する。
 このとき天井から落ちてきた岩山の後ろに隠れていないと強毒の沼まで吹っ飛ばされ、死にはしないが、強力な継続(DoT)攻撃(ダメージ)を受けることとなる。
 装備が弱いうちにこのIDに来ると、吹き飛ばしのダメージの後の強毒の連続攻撃(コンボ)で死ぬということも十分有り得る。
 吹き飛ばされずに残った俺たち。
 ここからは毒の息の攻撃はなくなるが、岩を振らせる咆哮が多めになり、先ほどの吹き飛ばしの咆哮も使ってくるようになる。
 落石が増え、回避に専念することが多くなり攻撃がちょっと疎かになる。
 ジルの方を見てみると、回避しながらも魔導銃(マガン)による銃撃を華麗に当てている。
 こういうときは遠隔レンジ)攻撃職(DPS)はいいよな…。
 魔法職(キャスター)だと逆にきついかもしれないけど。
 しかし古代竜(エメラルドドラゴン)も単調な攻撃の繰り返しなので、危うくなる要素がほとんどない。このまま押し切れば大丈夫だろう。
と、「しゃきーん!」と連係奥義(リンクバースト)のゲージが貯まった効果音が鳴る。
 よし、これで決めてやる!
 俺は L B (リンクバースト)手順命令(マクロ)押下(クリック)

Sky:みんなの力を俺に貸してくれ!

 俺の持つ大剣に光が集まり俺は大きくジャンプをする。
 光は闇の炎(ダークフレイム)となり大剣から黒い炎が(ほとばし)る。

 「ドカン!」と落石が俺にあたる。

 あ、LB中の硬直に丁度落石がきて俺にあたってしまった。
 でも大丈夫だろうこのまま押し切ってしまえば何の問題もない。

Sky:これでおわりだあああああああああ!!!!!!!

 手順命令(マクロ)による俺の絶叫が響き渡り、俺は渾身の一撃をたたき込む。
 かと思われたが……たたき込んでいない? 
 LBが止め(キャンセルさせ)られて気絶(スタン)している!?
 さっきの落石か!
 そうだ、後半の落石の中には当たると気絶(スタン)する落石もあるんだった……。
 恥ずかしい。むなしく響いた俺の絶叫(マクロ)が恥ずかしい。

「フォアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 そして気絶中に俺は吹き飛ばしの咆哮を食らう。
 あ、やばい。
 落石のダメージも残ってるし、これは死んだな。
 俺は死を覚悟し、なすがままに吹き飛ばされ、毒の沼にはまり込む。
 毒の沼気(しょうき)に包まれた俺は死を覚悟し、思考と操作を停止する。

 ――が、死んでいない? 俺、まだ生きている?

 何が起きたのか周りを確認すると、ミレニアムさんとフェアリーが必死に俺を回復させている。

Millennium:何をしている! 早くそこから出ろ!

 そう促されると、俺はコントローラーを握り直し沼地から脱出する。
 脱出するや俺に掛かっていた強毒の効果(デバフ)をフェアリーが消し去る。
 完全復活した俺。
 よし、もう一度LBで止めだ!
 ――と思ったところで「ギュイン!」とLB発動の効果音が鳴る。
 ジルにLBを先に使われたようだ。
 光がジルに集中すると魔導銃(マガン)に特殊な銃弾を詰め込む。
 古代竜(エメラルドドラゴン)に狙いをつけ、それを撃つと着弾した先に真っ赤な大輪の花が咲き大ダメージを与えた。
「ガアアアアアアアアア!!!!」

 断末魔を残し巨軀がゆっくりと崩れ落ちる。
 『COMPLETE!』の文字が表示され無事にクリアした。

Selfish:よし、おわったか
Jill:やった~、うちがたおした~
Millennium:おつかれ~
Sky:おつかれさま

 結局最後はジルに持って行かれちゃったか。
 てか今回のジル、被弾(ダメージ)らしい被弾(ダメージ)は一回も食らっていないんじゃないのか?

Jill:すごいよ! すいすい動けた! まるで別のゲームやってるみたいやったよ
Selfish:いつもはスカイと二人で攻撃食らいまくっていたのにな。ずいぶんな変わり様だ
Millennium:そんなに酷かったのか? 今回はMVP級の活躍だったぞ

 ラグがなくなったジルはこうまで変わるとは……。
 俺と同レベルくらいだと思っていたのに俺はすっかり置いて行かれてしまった。

Sky:はじめて一緒にプレイしたけど、ミレニアムさんもうまかったよね?
Millennium:そうか? ほかのヒーラーのことはよく知らないので、だいたい人並み程度だと思っていたつもりだが
Sky:いや、すごかったよ。あそこで俺、死んだと思ったもん

 俺がLBを撃とうとしたら気絶させられて吹っ飛ばされた場面だ。

Selfish:そうだな。最初はどうなることかと思ったが及第点って所だな

 いや、そこはセルフィッシュさん、認めてあげなよ……

Millennium:この程度のIDで死人を出すようではヒーラー失格だからな

 う~ん、俺、結構死んでたりするんだけど……。
 ヒーラーのカテドラさんと一緒にID行くことは結構あるけど、だからって(インフェルノ)に行くようなカテドラさんが下手なわけじゃないだろうからやっぱり俺のせいだよな……。

Sky:ミレニアムさんはインフェルノとかも行ってるの?

 気になった俺は聞いてみた。

Millennium:いや、まったく行かない。IDに行くのだってさっきも行ったように週制限のトークンを稼ぎに行く程度くらいだ
Jill:じゃあ今度みんなで行こうよ! うちもラグがなくなったから行きたいし

 ジルが唐突に提案する。

Millennium:いや、私はそこまでやれる自信がない
Sky:さっきのミレニアムさんうまかったよ? 俺もインフェルノは自信ないけどミレニアムさんが行くならがんばるよ

 俺の腕前じゃ戦力になるかわからないけど。
 いや、もしかしたら足を引っ張ってマイナスさえあり得る。

 …………しばらく沈黙が流れた後。

Millennium:お前たちがそう言うのなら

 ミレニアムさんが答える。

Jill:やったー! ありがとう!
JillはMillenniumに抱きついた
Jill:セルフィーもいいよね?
Selfish:いや、俺は行くって決めてねえし、お前たちで勝手に行けばいいんじゃねえの?
Millennium:なんだ? 怖いのか? インフェルノが
Selfish:はあ? ふざけんな! インフェルノが怖いとかねーから! わかった、行ってやるよ。あんたもそのときになって逃げんなよな!

 ジルが提案し、ミレニアムさんに煽られ、(インフェルノ)攻略が俺たちの目標となる。
 しかしその前に現実世界で俺たちは攻略しなければならない事案(クエスト)があった。

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