第六十一話~…………不知火。~
「いってきまーすっ!! 」
「いってきまーす。」
「いってきまーす。」
今日も一日頑張ろう。
特にクラスに馴染めるように頑張らなきゃ。
「優衣ちゃん、お昼はどうするの?」
「兄さんが昼飯持ってくから玄関までこいよ、って朝いってたよ。」
「そうだったっけ?」
兄さんが言ってたことは全く聞いていなかったようだ。
「…………茜たちはどうする?」
「私も姉さんに同じこと言われたので、一緒に行きます。」
「じゃあ、私も行くー。」
「…………あのぉ…………。」
僕たちが話していると、後ろから誰かが話しかけてきた。
みんな揃って声のした方を見る。
「……えーっと、君は確か…………。」
「…………同じクラスの『不知火 咲』です。」
「そうだ、不知火…………さんだ。」
…………不知火。その姓を口にしたとき僕のなかでなにかが引っ掛かった。
どこかで聞いたような気がする。
「それで、あの…………私もお昼ご一緒させていただいてもいいですか?」
「いいよ、不知火さん…………不知火さんはお弁当?」
「はい。」
「それじゃあ一緒に食べられるね。じゃあ行こっか。早くしないと、お昼休みが終わっちゃうし。」
僕たちは少しだけ速く玄関まで歩いていった。