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夏のホラー2017参加作品

いるわけない子供が消えた後に戻って来た話

「去年閉鎖されたよな、あの遊園地」

 俺達は地元の居酒屋で久しぶりの同窓会をしていた。
 中学の同窓会で、中学卒業の記念にクラスみんなで行った遊園地、裏野ドリームランドの話題になった。

「あんまり行かなかったけどさ、やっぱ閉鎖となると急に行きたくなるもんだよな。閉鎖される前に何度も行ったけど結構人が来てたわ」

 もう何年も行ってないし、どういう経緯で閉鎖されたのかも詳しくは知らない。
 非日常を楽しむ夢の場所だから、日常を生きるうちに忘れ去られる運命なのだ、なんて思うのは俺が酔っぱらってるからだろうか。

「卒業記念で遊園地に行った時にやったあれ、覚えてるか?」

 誰かが言い出した、少しタチの悪い遊びの話が出た。

「そうそう、何回数えても1人足りない!どこに行ったんだ、でも誰がいないのか思い出せない!!って集団パニックみたいな事をやったんだよな。しかも出入口のゲート前で。あれさ、よく営業妨害で怒られなかったよな」

「いや、怒られる前にみんなで走って逃げたんじゃん。結構注目されてたし、子供も大人もめっちゃ見てたよ。遠巻きに園のスタッフも何人もいたし」

 一クラス31人、全員が揃ってるのにみんな口を揃えて1人足りない!でも誰がいないのか分からない!!うわー!!!ってパニックになったふりをして楽しんで、ひとしきり騒いだ後に走って逃げたのだ。
 大人なら翌日の新聞を見たりしてそんな事件はなかった、もしくは大した事なく解決したんだろうと軽く流すだろう。

「それがさ、そのイタズラ以来子供が行きたがらなくなった時期があるらしいのよ。あそこは子供がいなくなってしまう場所だから、行きたくないって」

 俺達のイタズラがキッカケで、それを目撃していた子供を中心に行きたくないと思う人が増え、結果として来園者が減った事で閉鎖されるに至ったのだとしたら。

「まぁそこまでは言い過ぎだよ、だってただの遊園地だし?テーマパークじゃないから売りも少ないしね」

「まぁでも、小さなキッカケになったかも知れないわな」

「いやいやいや、でもいずれは潰れてただろうし、俺らがそこまで気に病む事はねぇよ」

 もう済んでしまった事だ、気にするだけ無駄だろう。
 あのイタズラをしなかったとしても、今も続いているとは思えないとみんな口を揃えて言う。

「実は話はまだ続きがあるんだよ。俺らがやったイタズラの噂がさ、何年か経って尾ひれは付いてんの聞いたんだよ」

 地元に残った男が、興味深い事を口にする。

「この遊園地に来た子供が、いなくなるって噂が流れたんだけどよ、それは俺らのイタズラが原因じゃん。でもさ、その後にまだ続きがあるんだよ」

 場がシーンとして、話をしている男を注目している。
 飲み物を片手に、ゴクリと喉を鳴らした後、続けて男が話し出す。

「そのいなくなった子供、何年かして帰ってきたらしいぜ、ってな」

 ぷっ、と吹き出す女、そんなわけないじゃん!と手を叩いて笑っている。

「その話おもしれーな、誰もいなくなってないんだからよ、帰って来るわけねーじゃん!ってか誰だよお前って話だ!!」

 みんなで爆笑する。
 自分達のイタズラが原因で、それを目撃していた人が噂をし、何年も経ってその噂が一人歩きして続きが追加された。
 イタズラに対する評価を得たような気分になり、みんなが上機嫌になって酒を追加注文していく。

「誰か閉鎖した後に肝試しで行った奴いねぇーのかよ、今もまだ観覧車とかメリーゴーラウンドとかは残ってんだろ?」

「何かまだ買い手が見つかってないとかで、そのまま廃墟みたいになってるらしいね」

「人気のない遊園地だって言っても、そこそこ広いからなぁ。更地にしようとしたら結構金掛かるだろうな。誰かあの土地を欲しがってる会社に勤めてる奴いたらさ、うちの会社に発注してくれよ。あの規模の工事ならいくらくらいになるだろ」

 中学の同窓会で自分の名刺を配り出す同級生。
 止めろよな、せっかく当時を思い出して童心に戻ってるって言うのに。
 まぁみんな酔っぱらってるし、童心も何もないんだけどな。
 一部では名刺交換会が始まってるし、それを指差してケラケラ笑ってる主婦層もいるしでカオスってやつだ。

「営業活動もそこそこにしてさ、他にも噂あったじゃん。裏野ドリームランドって何で裏野って言うの?地名でもオーナーの名字でもないのに何で裏野なの?とかさ」

 あぁ、そういう噂なら当時から結構聞いたもんだ。
 裏があるなら表もあるんだろ?とかしょうもない事言って笑ってたな。

「後はあれだ、アクアツアーで不気味な生き物見た!とか」

「そうそう、ジェットコースターで事故があったけど、どんな事故なのか誰に聞いても違う内容の事故の話になって、結局本当の事故は何なのか分からん!これは裏野の裏の陰謀だ!!とか」

「あったあった、ミラーハウスから出て来たら人格が変わったみたいに性格が変わった人がいるとか」

「ドリームキャッスルの地下には拷問部屋がある!とか。子供が流しそうな他愛無い噂よね」

「メリーゴーラウンドが勝手に廻って、誰も乗ってないのに明かりが灯って、すごく綺麗だとか」

「えー、それ初めて聞いたよ。明かりが灯って綺麗って事は、その人は夜に見たのかな?」

 話題が社会人から裏野ドリームランドに戻って来た。
 酔いもあり、懐かしさもあり話していて楽しいらしい。

「閉鎖した後から流れ出した噂もあるんだぜ、人なんて誰もいないはずなのに、観覧車の近くを通ると『出して』って小さく声が聞こえるんだとよ。いやいやいや、人いるじゃん、喋ってるお前がいるじゃん!ハッハッハッ!!」

 さすがにアイツは酔っぱらい過ぎだな、大して面白くない話でゲラゲラと笑ってる。
 途中休憩として全員分のお冷を頼んでおこうか。
 店員を呼ぶベルを押す。

「すみません、お冷を人数分お願いします」

 カシコマリマシター!と元気よく返事してくれる店員さん。
 茶髪でロン毛の大学生風のバイトだ。
 予約人数を見ればいいだろうに、わざわざ部屋にいる人間を指で数えてやがる。
 トイレ行ってたり外に出たりしているかもと思わなかったんだろうか。
 他のテーブルを見回すと、全員席に座っているようではあるが。

「29、30、31、32」

 ショウショウオマチクダサイマセー!と元気よく部屋を出て行くバイト君。
 32人分のお冷を少々待つだけで用意出来るのかとやや疑問に思うが、俺はそんな些細な所で言いがかりをつけるほど子供でもないし、酔ってもいない。
 待ちますよ、待ちますとも。

「すみませーん、俺ビールお代わりで!」

 おいおい、お前の為にお冷頼んでやったというのに、ちょっとは休憩を挟めっての。
 へへへじゃねーよ全く。

「じゃぁさ、じゃぁさ、この後みんなで行こうよ、裏野ドリームランド!みんなで行ったら怖くないっしょ!!ここからなら歩いても20分くらいっしょ。大丈夫っしょ」

 本当に大丈夫か?アイツも飲み過ぎだな、いくら当時好きだった女の子の隣に座れたからって、調子に乗り過ぎじゃないか?
 お互い既婚者なんだから、あんまりハメを外すなよ?

「それイイネ!どうせ二次会するつもりだったんだしさ、途中コンビニに寄って花火と酒買ってさ、みんなで行こうぜ!!」

 へ~、結構賛成する奴いるんだな、集まった時間が早かったからか?
 けど残念、俺は明日仕事が入ってるから二次会に行くつもりもなかったんだ。
 これが終わったら新幹線で帰らせてもらうよ。

「えー、お前も来いよ!絶対楽しいって!!」

「楽しいって、肝試しに行くんだろ?楽しいより怖いの方がいいんじゃないのか?」

 オマタセシマシター!絡まれた所でちょうど茶髪でロン毛のバイト君が、大量のお冷を持ってやって来た。

「ハッハッハッ!誰だよこんなに水頼んだの!!」

 バイト君から直接水を受け取って、その場でイッキを始める。
 バイト君もノリがいいもんで、次々にお冷の入ったグラスを渡して行き、男が6杯ほどイッキをしたところで会場から拍手と歓声が起こった。
 あ~あ、あれじゃ本当に人数分来たかどうか分からなくなったじゃないか。

 その後、俺を除く全員で裏野ドリームランドへと向かう事が決定した。
 みんな成人してるんだから、不法侵入で全員逮捕とか止めてくれよ?

「それでさ、帰る前にゲートでアレやるんだろ?何回数えても1人足りない!?って」

「そうだな、閉鎖になった原因かも知れないイタズラをやれば、何か起きるかも知れないな!」

「言っておくけど、俺が帰るんだから全員で30人だからな。1人足りない!ってなったら、それは俺だからな。俺が失踪したみたいな流れだけは止めてくれよ」

「分かってるよ、あんだけ水飲んだら酔いも醒めたわ」

 それじゃ、と言って手を上げ、俺はその場を後にした。
 次に会うのは何年後になる事やら。
 みんな、元気でな。



 了
分かりにくかったらすみません。
その後、裏野ドリームランドのゲート前で1人足りな・・・、くない!?ってパニックになって逃げるって話。

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