少年の心救う女神縦書き表示RDF


少年の心救う女神
作:ユーリ


オレの名前は江戸川コナン。

小学生をしているが、その正体は高校生探偵の工藤新一。

謎の組織に、APTX4869という毒薬を飲まされ、こんな姿にされてしまったのだ。

オレは今、少し悩んでいる。

それは、蘭の高校に新しく来た新出智明という人の事だ。

もっとも、彼は授業の先生ではなく、バスケ部の顧問・・・そう蘭は言っていた。

女子生徒に人気がある人で、最近蘭が部活と言って出かけるのも、この人に会うためだった。

その事で、オレは少し心配だった。

前に新出病院で起きた事件の時、蘭はやけに新出先生と仲良くしてたみたいだし、事件後に手編みのセーターを貸してと言ったのも、本当のところはどうなのかわからない。

そんなオレの不安は、ある日ついに現実になった。





それは、帝丹小学校でいつものように授業を受けていた時の事だった。

ふいに、コナンの携帯がブルルとふるえた。

もっとも、振動した方の携帯は工藤新一用の物で、江戸川コナン用と使い分けていたのだが。



コナンは給食の時間、何気なく携帯を開いてみた。

メールだった。差出人は、蘭と書いてある。

まさか・・・と思い、コナンはメールを見た。

その瞬間、コナンはその場に立ち尽くした。

メールには、『ごめんなさい、新一。私、新出先生と婚約する事になったんだ。待ってるって言ったのに、ゴメンね。だから、私の事はもう忘れて・・・ 毛利蘭』

コナンは、ぼうぜんとなった。

前に『いつか必ず絶対に、死んでも戻るから、それまで待っててくれ』って、言ったのに・・・

コナンは力が抜け、その時、彼のかけているメガネが下に落ちた。

カシャーン!

小林澄子
「え?どうしたの?コナン君・・・」

コナン
「すいません、小林先生・・・ボク、気分が悪いので早退します・・・」

落ちたメガネも拾わずに、コナンはランドセルを背負って教室から駆け出した。

元太
「コナン!」

歩美・光彦
「コナン君!」


「・・・」

哀は無言のまま、コナンのメガネを手に取った。






コナンは、トボトボと歩いていた。

ずっと想っていた恋人に、突然ふられてしまうなんて・・・

信じたくない、受け止めたくないけれど、これは紛れもない事実だった。

コナン
「そっか・・・蘭と新出先生が婚約か・・・ハハ・・・やっぱ、愛想尽かされちゃったんだなぁ・・・ボク・・・」

コナンは、自分の事をオレと呼ぶ事も忘れ、ただひたすら歩き続けた。

コナン
「もう、毛利探偵事務所にはいられないや・・・あそこを出て、どこかアパートを探そう・・・」

コナンは、気力が抜けていたせいなのだろう。

背後から近づいてくる、怪しい人影に気がつかなかった。

ガバッ!

コナン
「うっ・・・」

気がつくと、コナンは背後から何者かに口をハンカチで塞がれ、羽交い締めにされていた。

コナン
「むぐぐぅ〜!むぐぐぅ〜!!」

コナンはジタバタともがいたが、ハンカチにクロロホルムが染み込まされていたらしく、だんだん眠くなってきた。

コナン
「うぅ・・・」

コナンは気が遠くなり、倒れ込んで気絶してしまった。






コナン
「うぅ〜ん・・・」

意識が朦朧とする中、コナンはようやく目が覚めた。

コナン
「!!!んっ!んんっ!!」

気がつくと、コナンは手足と体を縄でグルグル巻きに縛られていた。

さらに口にはガムテープを貼られ、さるぐつわをされている。

コナン
「う〜ん!う〜ん!!」

「おや、お目覚めのようだな・・・」

コナン
「!」

コナンが振り向くと、そこには3人の男達が立っていた。

3人とも、覆面をしているので顔ははっきりわからないが、いずれもかなり怖そうな男達で、子供1人軽く殺せそうな感じだ。

コナン
「う〜ん!う〜ん!!」

「気分はどうだ?ボウヤ。」

コナン
「う〜ん!う〜ん!!」

「ゼータ、ボウヤのガムテープを取ってやりな。」

ゼータ
「いいのか?シータ。」

シータ
「かまやしねぇさ。」

ゼータはコナンに近寄ると、口に貼られたガムテープをはがした。

ピリリ・・・

コナン
「イタタ・・・おじさん達、何者なの?どうしてボクを誘拐したの?」

シータ
「まだ気づいていないようだな、ボウヤ・・・」

コナン
「え?」

コナンの前で、3人は覆面を取った。

コナン
「あ!」

コナンの目に写ったのは、あの時のイタリアの強盗団の3人組だった。

コナン
「おじさん達、あの時の・・・」

ゼータ
「そうさ、ようやく気づいたか。」

四角いサングラスの男・・・丸メガネの男にゼータと呼ばれた男が、口を開いた。

シグマ
「あの時は、ボウヤ達にしてやられたからなぁ・・・」

三角のサングラスをした男、シグマが、コナンを見てニヤリと笑う。

コナン
「ボクを誘拐したって事は、ボクを殺すつもりなの・・・?」

シータ
「ハハハ、そんなのが目的じゃあないよ、ボウヤ・・・」

丸メガネの男・・・ゼータにはシータと呼ばれていた、唯一の日本人が答える。

コナン
「じゃあ、目的はいったい何なの・・・?」

縛られているコナンは、イタリアの強盗団3人組を前にして、体がブルブルとふるえている。

シータ
「ボウヤを誘拐したのは、あの毛利小五郎から身代金を手に入れて、国外逃亡するためなのさ・・・」

シータは、ニヤリとしている。

コナン
「そういえば、おじさん達のボスはどうしたの?」

シータ
「カパネか・・・カパネのヤロウ、子供を誘拐して身代金をいただこうって提案をオレ達がしたってのに、真っ向から反対しやがった・・・」

ゼータ
「そして、あげくの果てにはオレ達をサツに突き出すなんてほざきやがるから・・・」

シグマ
「息の根を止めてやったのさ・・・」

コナン
「こ、殺したの・・・?」

シータ
「そうさ、計画に賛同しないヤツなんて、足手まといなだけだろ?」

コナン
「でも、ボスを殺すなんて・・・」

シグマ
「大人の世界は、そうそう甘くはないのさ、ボウヤ。」

シグマは、やはりニヤニヤしている。

コナン
「そ、そんな・・・」

ゼータ
「まあ、ボウヤにはまだ利用価値がありそうだからな。」

シータ
「とりあえず、毛利探偵事務所の電話番号を教えてもらおうか・・・」

シグマ
「素直にしゃべった方がいいぜ?」

コナン
「う、うん・・・わかった・・・」



数分後、コナンから電話番号を聞き出したシータは、電話をかけ始めた。

コナン
「(た、助けて・・・誰か・・・助けて!!)」






コナンが目を覚ました頃、毛利探偵事務所には、小五郎、蘭、目暮、高木、佐藤、そして哀が集まっていた。



目暮
「未だにコナン君が帰ってきてないというのは、確かにおかしいな・・・」


「やっぱり、何かの事件に巻き込まれてるんでしょうか?」

小五郎
「蘭、まだそうと決まったワケじゃないぞ。コナンの事だから、案外、どこかで遊んでいるだけかも・・・」


「そんな事はありません!江戸川君は、遅くなる時は必ず誰かに連絡をしています!それがないって事は、やっぱり・・・」

高木
「哀ちゃん、コナン君の事が心配なんだね?」


「はい・・・江戸川君は大切な友達ですから・・・」

佐藤
「大丈夫よ哀ちゃん、必ずコナン君は探し出すわ。」

その時、事務所の電話が鳴った。

目暮
「毛利君、もしもの時は、できるだけ会話を引き延ばしてくれ!」

小五郎
「わかりました・・・」

小五郎は、静かに受話器を取った。

小五郎
「もしもし・・・」

シータ
「毛利小五郎だな?」

小五郎
「あ、ああ・・・」

シータ
「オレは、イタリアの強盗団の1人、シータだ・・・」

小五郎
「イ、イタリアの強盗団って・・・」


「確か、前にコナン君達が捕まえた・・・」

シータ
「フフフ、その通りだ・・・さっそくだが、本題に入ろう・・・オマエの家に居候している江戸川コナンは、オレ達があずかった・・・」

小五郎
「な、何!?コナンを誘拐しただと!?」

小五郎の言葉に、蘭達の表情は一気に曇った。

特に哀は、深刻な顔をしている。

小五郎
「コナンの声を聞かせろ!!」

シータ
「いいだろう・・・」

シータは、コナンの口元に携帯電話を近づけた。

コナン
「お、おじさん・・・」

小五郎
「コ、コナン!」

コナン
「おじさん・・・助けて・・・」

小五郎は、コナンの状態を察知していた。

コナンの声は、とても弱々しい。

小五郎
「コナン、オマエ、無事か?」

コナン
「う、うん、今はなんとか大丈夫だよ・・・手足を縄で縛られているけど・・・」

小五郎
「オマエ、今いる場所、わかるか?」

コナン
「えっと、ボクが今いる場所は・・・あ・・・」

小五郎
「コナン!?」

シータ
「ムダ話は終わりだ。いいか?コイツを助けたければ、明後日の夕方5時に、メイプルリーフ金貨7500枚分の金をバッグに詰めて、米花港に持って来い・・・」

小五郎
「な、7500枚分って・・・3億か!?」

シータ
「フフフ、その通り・・・オレ達が取り逃した金の半分だ・・・もし持って来れなければ、このボウヤの運命は保証できないぜ?」

小五郎
「コナンの運命・・・?」

シータ
「まあ、しっかりがんばってくれたまえ、眠りの小五郎さんよ・・・」

そう言うと、シータは電話を切った。


「コナン君の運命って、どういう意味なの・・・?」

小五郎
「わからん・・・ただ、今言える事は・・・明後日の夕方5時に3億を持って行かなければ、コナンがどうなるかわからないという事だけだ・・・」

目暮
「逆探知はできたかね?」

高木
「はい!どうやら、鬼桜ビルの最上階からかけたものと・・・」


「鬼桜ビル・・・前に江戸川君達が、イタリアの強盗団を捕まえた場所ですね・・・」

佐藤
「警部、今からそこに向かった方がいいのでは・・・」

目暮
「イヤ・・・万が一ヤツらを刺激したりしたら、人質のコナン君の身も危ないだろう・・・なにしろ、コナン君はイタリアの強盗団を捕まえた時、作戦の先頭にたっていた子なんだからな・・・」

蘭達は、黙ってうつむいた。

特に哀は、コナンの無事を信じて考え込んでいる。


「(待ってて、工藤君・・・私が必ず助け出してあげるからね・・・)」

哀はコナンを助け出すために、作戦を考えていた。






一方、コナンは鬼桜ビルの最上階に監禁されている。

柱に縄でつながれた状態で、コナンはうつむいていた。

しばらくして、コナンが口を開いた。

コナン
「おじさん達、ボクの運命がどうとか言ってたけど・・・あれって、どういう意味なの?」

シータ
「フフフ、その事か・・・」

3人組は、ニヤニヤと笑っている。

シータ
「ボウヤ、コイツらが誰だか、知ってるか?」

シータは一冊の雑誌を持って来ると、ページを開いて、ある記事をコナンに見せた。

『凶悪な犯罪組織『元素団』、ついに日本にも来日か!?』

記事を見たコナンは、体がブルブルとふるえた。

元素団といえば、殺人、強盗、麻薬、恐喝、暴行、誘拐、密輸、詐欺・・・あらゆる犯罪に手を染めている犯罪組織だ。

コナンも小さい頃、父・優作の犯罪ファイルで元素団の記事を読んだ事がある。

元素団の構成員は、コードネームに科学元素の名前を使っているという。

水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、ブロウミン(Br)、クリプトン(Kr)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ヨウ素(I)、キセノン(Xe)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bl)、ポロニウム(Po)、アスタチン(At)、ラドン(Rn)、フランシウム(Fr)、ラジウム(Ra)、アクチニウム(Ac)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツニウム(Np)、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、バークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)、アインスタイニウム(Es)、フェルミウム(Fm)、メンデレビウム(Md)、ノーベリウム(No)、ローレンシウム(Lr)・・・ヒトクセもフタクセもありそうな者ばかりの集団だ。しかも最近では、ある物の売買にも関わってるって言ってたっけ・・・

あっ!と、コナンは思い出した。

確か、ある物の売買って・・・

シータ
「その通りさ・・・」

3人組が、ニヤリと笑みを浮かべた。

シグマ
「元素団が最近関わっているのは、人身売買さ・・・」

コナン
「まさか・・・まさか・・・」

ゼータ
「そうさ、君はその商品に選ばれたというワケだよ・・・」

コナン
「そ、そんなぁ・・・」

コナンは、ジタバタともがいた。

コナン
「イヤだ・・・売られるのなんてイヤだよぉ〜!!」

シータ
「ハハハ、明後日の夕方5時には米花港からイタリアに運ぶ準備ができる。それまで、おとなしくしている事だな・・・」

コナン
「(助けて・・・灰原・・・助けて!!)」

コナンは、うつむいていた。






その頃、阿笠邸




「工藤君・・・?」

哀は、コナンの叫びが聞こえたような気がした。


「何なのかしら、このイヤな感じは・・・?身代金は目暮警部達が銀行をかけずり回って集めて、あと1億で指定の3億になる・・・それなのに、さっきからイヤな感じがなくならないわ・・・何?何なの?この不安な気持ちは・・・?」

哀は、工藤邸に行ってみる事にした。







工藤邸




「家のカギは、この辺りに置いてあるって工藤君が言ってたよね・・・」

ほどなく、哀はカギを見つけた。

ガチャ・・・

哀はカギをドアに差し込み、扉を開け、中に入っていった。



工藤邸の中で、哀はある犯罪ファイルを探していた。


「あ、あった・・・きっと、コレだわ・・・」

哀は踏み台に上り、『FILE foreign offenders(外国の犯罪者達)』というファイルを手に取った。

哀はソファーに座り、ファイルを開いた。


「えっと、イタリアの強盗団はっと・・・」

ほどなく、哀はイタリアの強盗団の記事を見つけた。


「えっと、なになに・・・」

『昨年、イタリアのパスタ銀行に4人組の強盗が押し入り、メイプルリーフ金貨15000枚が奪われる事件が起きた。日本円に直すと、6億円相当の被害額である・・・』


「はぁ・・・派手な犯人達なのねぇ・・・あら?まだ記事があるわ・・・」

『昨日未明、イタリアのパスタ銀行からメイプルリーフ金貨15000枚を奪ったイタリア強盗団のボス、ディノ・カパネが、潜伏先の日本で逮捕された。なお、カパネは警察官が駆けつけた時何者かに縛られており、警察は通報者がカパネを捕らえた上で通報したものと・・・』


「これはきっと、そうじゃないわね・・・おそらく、奪ったメイプルリーフ金貨を持って日本に逃亡したカパネを仲間達が追いかけて、警察に突き出したんだわ・・・」

『本日の夜、逃走を続けていたイタリアの強盗団の残りのメンバーがついに逮捕され、奪われたメイプルリーフ金貨15000枚も戻ってきた。彼らを捕まえたのは、小学生の4人組だった。』


「4人組としか書かれていないけど、ヤツらが的を絞るターゲットは決まっていた・・・工藤君に狙いをつけていたってワケね・・・」

ファイルを閉じようとした哀は、1つの記事に目がいった。


「なになに・・・『元素団』?」

哀は、元素団の記事を読んだ。


「この記事によると、かなり危険な組織みたいね・・・なになに・・・え!?最近では、人身売買にも手を染めているですって!?」

哀の表情が、一気に曇った。


「ま、まさか、工藤君・・・この組織に捕まって・・・」

哀は、コナンの危機を察知した。


「こうなったら、私1人で助けに行かなきゃ!!」

哀は、蘭にメールを打つと、犯人追跡メガネをかけて、ターボエンジン付きスケートボードを持ち、工藤邸を飛び出した。

『蘭さん、私は今から1人で鬼桜ビルに行ってきます。もし、1日たっても私が帰って来なかったら、米花港に来てください。 哀』






哀は、米花町をスケボーで駆け抜けていた。


「工藤君、待ってて・・・」






ほどなく、哀は鬼桜ビルにたどり着いた。


「このビルの最上階から、発信器の反応があるわ・・・」

哀は、鬼桜ビルの中に入っていった。

その周りに、自分を監視する何人もの人影があるとも知らずに・・・






哀はしばらく階段を上り、最上階にたどり着いた。

ギイ・・・

哀は、扉を開けた。


「え、江戸川君!!」

哀の見た先には、縄で柱につながれたコナンがいた。

その横には、あのイタリアの強盗団もいる。

コナン
「は、灰原!どうして・・・」


「あなたを助けに来たのよ!」

シータ
「ほう、お嬢ちゃん1人でここに来たのか・・・」


「そうよ!」

シータ
「かわいそうだが、袋のネズミだな・・・」


「え?」

シータ
「後ろを見てみな!」

哀が振り返ると、哀の後ろに100人以上の集団が立っていた。


「げ、元素団・・・」

シータ
「お嬢ちゃん、悪いがおとなしくしてもらおうか・・・」


「くっ・・・」

哀は、とっさにキック力増強シューズに手をかけ、身構えた。

シグマ
「おっと、このボウヤがどうなってもいいのかな?」

シグマは、コナンに拳銃を突きつけた。

コナン
「は、灰原!ボクの事はいいから、君だけでも早く逃げて!!」

哀は、黙っている。

コナン
「早く!!」

次の瞬間、哀は床にへたり込んだ。

コナン
「え?」


「ダ、ダメだよ・・・」

哀は、涙を流している。


「江戸川君は、私の大切な友達・・・イヤ、それ以上の存在なの・・・逃げるなんて・・・あなた1人だけを置いて逃げる事なんてできないよぉ〜!!」

コナン
「灰原・・・」

シータ
「さあ、おとなしくこっちに来るんだ、お嬢ちゃん。」


「はい・・・」

哀は、なすすべもなく強盗団に捕らえられてしまった。







それから数分後、哀はコナンと同じように縄で手足を縛られ、柱につながれた。

ゼータ
「運がよかったな、シータ。」

シータ
「そうだな、一気に2人も商品が手に入ったんだ、こんなにめでたい事はない。」

シグマ
「祝いの酒でも買って来ようぜ。」

そう言い終わると、強盗団達は哀とコナンを残し、外に出ていった。

一方、取り残された哀とコナン。



「う〜ん!う〜ん!!」

哀は、ジタバタともがいた。


「うぅ〜ん!!」

コナン
「ムリだよ・・・柱につないである縄は、しっかり縛ってあるもん・・・」

コナンの声が聞こえ、哀はコナンの方を向いた。

コナンは、ずっとうつむいている。


「工藤君・・・」

コナン
「何?」


「私達、どうなっちゃうのかしら・・・」

コナン
「明後日、米花港にボク達を連れて行って、さっきいた元素団と取り引きするんだって。そのあと、イタリアに連れて行かれて、競売に賭けられちゃうんだと思うよ・・・」


「私達、人身売買の組織に売られちゃうのね・・・」

コナン
「灰原、どうしてボクを助けに来たの?」


「決まってるじゃない!あなたの事が心配で・・・」

コナン
「本当にそれだけ?他に理由はないの?」


「・・・!!」

確かにそうだ。

どうして私は、工藤君を助けに来たの?

彼が大切な友達だから?

それもある。

でも、それ以上に・・・

彼の事が好きだから。

彼を失いたくなかったから・・・

私は、今さら自分の気持ちに気づいた。

彼を好きだという事に。

工藤君は、私の気持ちに気づいてる?

だから、そんな事を私に聞くの?

工藤君・・・あなた、いったいどうしちゃったの・・・?

工藤君の瞳は、今はもう名探偵の瞳ではない。

いったいどうしちゃったの?

どうして、工藤君はあきらめてるの?

私は、なんだか悲しくなった。

戻ってほしかった。

元の、やさしくて、いつも私にホームズやサッカーの事を話してくれていた工藤君に。

もう、戻れないの?

私達は、助からないの・・・?

なかば泣きそうになる私。

そんな私に、工藤君が話しかけてきた。

コナン
「ねえ、灰原さん・・・」


「何?」

コナン
「もし、また来世で会えたら、その時は・・・」


「その時は・・・?」

コナン
「一番最初に、友達になろうね。」

工藤君は、少しだけ笑顔を取り戻した顔で、私にニコッとほほえんだ。

私は声を出さず、うなずいた。

友達なだけじゃない・・・

来世で会えたら、あなたと永遠に一緒にいたい・・・

そう、夫婦としてね・・・

私は、もうあきらめてしまっていたのかもしれない。

人身売買組織に売られてしまうとわかった今、私達の命は絶望的。

だからなのかな?

涙が止まらない。

悲しい。

くやしいよ・・・

何もできないなんて・・・

私が工藤君の方を見ると、彼も涙を流していた。

私と出会ってから、一度たりとも涙を見せた事のない工藤君。

その彼が今、私の横で泣いている。

それは、彼が私に初めて見せた素顔だったのかもしれない。

コナン
「灰原さん・・・」


「え?」

コナン
「できる事なら・・・まだ死にたくなかったね・・・」


「・・・」

私は、少しうつむいた。

そうだ。

そうだよ。

あきらめちゃいけない。

きっと、蘭さん達が助けに来てくれる・・・

私は、助かる事を信じて、工藤君の肩に寄りかかり、そのまま眠った。

彼も、目を閉じて眠りについた。







その頃、阿笠博士の家には、蘭、小五郎、英理、園子、真、目暮、高木、佐藤、由美と、電話で呼んだ平次と和葉が集まっていた。

目暮
「助けに行った哀君まで帰って来ないとは・・・」

由美
「哀ちゃんも、犯人達に捕まっちゃったのね・・・」

佐藤
「一刻をあらそう事態だわ・・・」

高木
「目暮警部、要求された3億円は、すでに用意できています・・・」

目暮
「うむ・・・」

小五郎
「警部殿、明後日の午後5時に米花港に金を持って行けば、2人は無事に帰してもらえるんでしょうか?」

目暮
「わからん・・・哀君が置いていった手がかりによると、イタリアの強盗団の3人以外に、元素団という国際犯罪組織が関わっているらしい・・・」

小五郎
「元素団・・・?」

目暮
「そうだ。しかも、最近では人身売買にも手を染めているそうだ・・・」


「じ、人身売買って事は・・・」

目暮
「うむ・・・たとえ身代金を払っても、2人が無事に戻る可能性は低い・・・2人の救出を最優先に考えた方がいいだろう・・・」

佐藤
「そうですね・・・」


「コナン君・・・哀ちゃん・・・」






そして、2日後・・・





米花港に、イタリアの強盗団の3人組と、元素団のメンバーが集結していた。

コナンと哀は縄でつながれ、シータに縄の先をにぎられている。


「江戸川君・・・ゴメンナサイ・・・」

コナン
「灰原・・・ゴメンな・・・」

コナンと哀は、港に設置されたイスに座らされた。

シータ
「もうすぐ、出航だ・・・」

コナンと哀は、覚悟を決めていた・・・

まもなく、5時になる・・・

シータ
「さあ、そろそろ船に積み込むか・・・」

コナンと哀は、目を閉じた。

目暮
「そこまでだ!!」

シータ
「何!?」

コナン・哀
「!!」

米花港に、蘭達が駆けつけてきた。

小五郎
「2人を帰してもらおうか・・・」

シータ
「バカめ・・・やっと手に入れた商品・・・手放してなるものか・・・ヤロウ共、かかれ!!」

元素団のメンバー103人が、蘭達にかかってきた。


「ハアーッ!!」


「シッ!!」

佐藤
「らああああ!!」

蘭、真、佐藤は、空手で次々と男達をなぎ倒していく。

小五郎
「うりゃあああ!!」

和葉
「やあああ!!」

由美
「せいやあっ!!」

小五郎、和葉、由美は、片っ端から男達を投げ飛ばした。

平次
「たああああ!!」

園子
「えええい!!」

高木
「はああああ!!」

平次、園子、高木は、木刀で男達を叩きのめしている。

しだいに、元素団の残りは数を減らしていった。

そして数分もしないうちに、元素団のメンバーは全滅した。

シータ・ゼータ・シグマ
「はっ・・・!!」

イタリアの強盗団が気づいた時には、回りを蘭達に囲まれていた。

目暮
「もう観念するんだな!!」

シータ・ゼータ・シグマ
「く、くっそぉ〜!!」

こうして、イタリアの強盗団の3人組と、元素団のメンバー達は逮捕され、コナンと哀は無事解放された。




小五郎
「とにかく、2人とも無事でよかったよ!」

コナン
「・・・」

コナンは、ずっと黙っている。


「コナン君、さあ、帰ろう!」

蘭は、ゆっくりコナンに近づくが・・・

コナン
「近寄らないで・・・」


「!?」

コナンの言葉に、蘭達は驚いた。


「コ、コナン君・・・!?」

コナン
「もうボクにかまわないでよぉ〜!!」

そう叫ぶと、コナンは哀が乗って来たターボエンジン付きスケートボードに乗り、哀達を振り切って行ってしまった。





「江戸川君・・・!!」

哀はその瞬間、思った。

彼を追いかけなきゃいけない。

彼を引き止めなきゃ・・・

このままじゃ、どこかへ行っちゃう・・・

でも、体が動かない・・・

そんな哀に、平次が声をかけた。

平次
「今のあいつを追いかけられんのは、アンタだけや・・・」


「!」

平次
「今のあいつを救えるんは、姉ちゃんしかおらへんのやで?」

哀はその言葉に、決意を決めた。


「服部君、バイクに乗せてって!!」

平次
「おう、しっかりつかまっときや!!」

哀は平次の後ろにしがみつき、バイクに乗り込んだ。

平次
「飛ばすで!振り落とされんなや!!」

平次はバイクを発進させ、2人はコナンの後を追った。





平次
「工藤の居場所、わかるか?」


「ええ、この追跡メガネで・・・」

哀は追跡メガネのスイッチを押した。

ピポッ・・・


「いたわ!杯戸シティホテルよ!!」

平次
「よっしゃ、かっ飛ばすでぇ!!」






数分後、平次のバイクは杯戸シティホテルに着いた。


「じゃあ、私行ってくる・・・」

平次
「がんばりや、姉ちゃん・・・」






私は、屋上にたどり着いた。


「工藤君・・・」

コナン
「あ、灰原・・・」

私は、ゆっくりと工藤君に近づいていく。


「工藤君、いったい何があったの?私でよければ、話してくれない?」

コナン
「うん・・・」

工藤君は、私にすべてを話してくれた。

蘭さんが新出先生と婚約した事、その事がショックで毛利探偵事務所を出ようと、家に向かっていた事、それで気が抜けていて、あの強盗団にさらわれた事・・・


「そうだったの・・・」

コナン
「ボク、愛想尽かされちゃったんだ・・・もう生きてる資格もないよ・・・」

工藤君は、柵の方に向かおうとした。


「ダ・・・ダメ〜ッ!!」

コナン
「わっ!」

気がつくと、私は工藤君を押し倒していた。

工藤君は、ゆっくりと起き上がる。

コナン
「は、灰原?」


「ダメだよ・・・死んじゃダメだよ、工藤君・・・あなた、前に私に言ったよね?逃げるなって・・・運命から逃げるなって・・・それに、守ってくれるとも言ってくれたよね?私、とってもうれしかったんだよ?なのに、その工藤君が弱音を吐いてどうするの?運命から逃げてどうするの?」

私は、工藤君を抱き締めた。


「行かないで・・・お願いだよ、工藤君・・・どこにも行かないで・・・あなたがいなくなったら、私は誰を頼りにすればいいの・・・?」

そして私は、彼に言葉をかけた。


「私、あなたの事が好きなの・・・この世の誰よりも大好きなの・・・蘭さんみたいになれないかもしれないけど、私が工藤君を必ず幸せにするから・・・だから・・・だからね・・・もう死ぬなんて、言わないで・・・」

私の告白に、工藤君は2度目の涙を流して答えた・・・

コナン
「ありがとう・・・ボクも灰原さんが好きだよ・・・この世の誰よりも大好き・・・ずっと一緒にいてくれる・・・?」

私は、工藤君をやさしく抱き締めながら言った。


「うん・・・ずっと一緒にいてあげる・・・ずっとだよ・・・約束する・・・」

コナン
「ありがとう・・・哀ちゃん・・・」

私と工藤君は、熱いキスを交わした・・・






それから数ヶ月後、私達は警察とFBIの協力もあって、ついに黒の組織を壊滅させた・・・

APTX4869のデータも手に入り、解毒剤も完成し、私達はいつでも元に戻れるようになった。






その1ヶ月後、本物の新出先生と蘭さんは結婚した。

式には多くの人が詰めかけ、2人を祝福した。

その後、蘭さんが投げたブーケは、1人の男の子の両手に収まった。

そして、その男の子も1ヶ月後めでたく結婚する事になった。

ずっとそばにいてくれた、やさしい女の子を嫁に迎えて・・・






7年後・・・イギリス−ロンドン






「ねえ、お父さん・・・」

「お母さんがお父さんの救いの女神だって、本当?」

新一
「ホントだよ、蘭葉、一保。お父さんが生きる希望を持てたのは、お母さんがいたからなんだよ・・・」

「蘭葉、一保ー!」

「こっちでサッカーしようよー!」

蘭葉
「あ、今行く!」

一保
「待ってて!園真、次斗!」

新一
「元気だなー、4人とも・・・」

志保
「育ち盛りだからねー・・・」

私と新一君の間に生まれた4人の子供、一保(かずほ)蘭葉(らんは)次斗(つぐと)園真(そうま)

4人は今年、イギリスの小学校に入学する事が決まっている。

私は、彼らならどんな事があっても乗り越えていけると信じている。

私と新一君が育てた、自慢の息子達なのだから・・・


一保、蘭葉、次斗、園真の未来に・・・幸あれ。

オ・シ・マ・イ♪














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう