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悪役令嬢と呼ばれたがそれより隣のカリスマがこわい【連載版】  作者: 良よしひろ
1.桜並木のオープニングだがそれよりここは校門前である
3/35

ヒロインの世知辛い受験事情 1

評価、感想ありがとうございます。

ブクマ4桁行ってた怖い。

なので慌てて3話目投稿です。前回の復習、というテンション。

 私は黒瀬百合である。この春、聖生・瑠守良実学園、国語の専任講師に、正式に就職した。この時の私の気持ちを、10字以内で簡潔に述べよ。


 正答例、どうしてこうなった。


 ほんとになんで? 校長に呼び出されて激ムズのテストされて、面接で堅苦しいこと聞かれて、その場で就職が決まった。

「思ってたより長い付き合いになったね」、そう言った校長と副校長の顔は少し疲れていた。

 学園に就職してしまった事実を信じたくなくて、直前まで考えないようにしていた。が、入学式で入場する子ども達を見て、流石に現実を突きつけられた。

あれほど絶望した新任挨拶は、もう一生しないだろう。

 来賓の挨拶やら何やら、まったく頭に入らず、周りに促されるまま働いて、片付けもひと段落してからやっと、校舎に戻った。

もうもたない。休みを、心の休息をくれ。

というか、普通にヤバい。朝8時から現在13時、休憩一切なし。

トイレはどこだの、書類の書き方がわからないだの、保護者の忘れ物だの。

非常勤時代には考えもしなかった仕事がぼろぼろ出てくる。し終われば新たな仕事が割り振られ、それにまた右往左往。

もう、ムリ。とりあえず国語科準備室に避難しよう。

ふらふら扉を開けた。だがそこには既に、つやつやした黒髪の先を、日の光に不思議に赤く透かして、先客が座っていた。


「やあ。高校1学年付さん」


 鮮やかな笑顔の赤宗に、私はひきつった微笑みを返した。


「ごきげんよう、入学生代表。素晴らしい答辞だったね。どうやって国語科準備室に入ったのかな?」

「さあ」


 愚問だ。今日も変わらず雄弁な笑顔が、私にそう言っていた。


 赤宗真輝。世界屈指の大財閥、赤宗財閥の御曹司であり、学園の絶対君臨者。

文武に秀で、玲瓏な容貌に、常に微笑みを浮かべ、圧倒的存在感で学園に君臨する、誰もが認めるカリスマである。

通称「皇帝」。

二次元でしかお目にかかれない言葉が、赤宗には実によく似合う。


確かに、彼が国語科準備室の鍵如きで、悩むはずもないのだ。リアル・カリスマ・チートに要らぬ質問だった。


 瑠守良実学園は、日本の政治や経済を担う上流階級の、その子どもが数多く通う、いわゆる『お金持ち学校』である。

幼稚園から大学院までを擁し、「最高の設備と環境による、日本の将来を背負う青少年の育成」を標榜している。

今日は、その中高合同の入学式だった。

 高等部の三分の二は、学園の中等部の進学希望者が受験し、あとの三分の一は外部から受験する。

今すぐ世界のトップ大学院に入れる頭脳の持ち主、カリスマ赤宗氏は、勿論断トツの成績で、中等部からそのまま学園の高等部に入学なさった。答辞はそりゃあ見事で、入学への希望と展望を慎ましく語っていながら、大企業の社長が新入社員を言祝ぐような貫禄があった。

 こいつのいる学年の副担任とか。人間として足りないものをいろいろ突きつけられてホント嫌だ。

 だがそれよりも。


「なんなの、あの朝の茶番は」

「「彼女」のイメージ通りだったのでは? 学校の邪魔にならないようにしてきたつもりなのですが」

 赤宗は空っとぼけたが、口調自体は聞いていてうすら寒くなる。「彼女」という単語には、一欠片の感情もない。

 「彼女」とは今朝、桜並木での騒ぎになった、美少女のことだ。

彼女は確かに昨年の夏、夕焼けの廊下で、私に宣戦布告をした少女その人だった。遠目から見ても、あのチェリーブラウンの髪は間違いない。私は勝手にA子嬢、と呼んでいる。

 あの時は、何やら荒唐無稽なことを並べ立られてぽかんとしている間に、A子嬢は去ってしまった。が、彼女が言い捨てたセリフを検討すると、どうやらA子嬢は、女性向けの恋愛趣味レーションゲーム、「乙女ゲーム」なるものに入れあげているらしい。彼女はこの学園が、自分の知っている「乙女ゲーム」の舞台であると信じきっていて、私はそこに出てくる「悪役令嬢」。私、「黒瀬百合」を破滅させ、学園のイケメンたち、通称レインボーズを「落とし」、逆ハーレムを築こうとしている。

 それが、皇帝、赤宗の逆鱗に触れた。彼女の挙げたイケメンたちはよりにもよって、皇帝陛下が身内とみなす男子生徒ばかりだったのだ。

 赤宗が「皇帝」と呼ばれるのは伊達やノリではない。そう呼ばれるだけの実力があるから、決して小さくはない学園全体に君臨している。

にっこり口角の上げ方を変えるだけで、「声かけ」してその人生を根本的に変えてしまう。

 ケンカを売って来た時、彼女は学校名を「セント・ウルスラ」という、かなり気合の入った間違え方をしていた。面接できっと豪快にやらかしてくれるだろうと、フラグが折れるのを待っていたわけだが。


 私の祈りも空しかった。

A子嬢はこの春、学園にやってきてしまったのだ。


黒瀬は赤宗の答辞を聞いてホント現実が嫌になってた。


追記:某バスケ部の赤い人に似ているとのご指摘をうけました。なんかもう表現力と想像力が無くて申し訳ない。最初、彼の名前知らなくて(本気で苗字しか知らなかった)もともと漫画を描いていた時使っていた少年の名前を、文字変えて与えたらこうなった。名前考えるの、サボるんじゃなかったなー。一度書き上げた後、変えようか悩んでいます。

モデルは一応、ロマノフ王朝のイヴァン雷帝です。性格はともかく、かなり優秀な人物だったそうで。イリヤ・レーピン作「イワン雷帝と息子イワン」の画がイメージです。あの絵、とても赤いんですよ・・・

これ以上はネタバレかもしれないので、ヒミツ。


問題あればすぐに消そうかと思っています。

問題出てきましたら感想等でご指摘お願いいたします。


2019.12.10 改訂

ちょっと調べものとプロットを練り直して、キャラクター像も少しずつ変わりました。

ご迷惑おかけします。

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