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肉霊

作者: 乱(みだれ)

数日前に見た夢の内容が一向に頭から離れないので、文にしてみます。

夢の内容なので矛盾している場合があります。そして、この小説が私の書く初めての小説なので拙い文章だと思いますが、それでよろしければ暇つぶしにでも御覧ください。

朝起きると、小学校の壁にもたれかかっていた。

もちろん、自分は今小学生な訳がない。

通りゆく人々はまるで自分など居ないかのように通り過ぎるが、それは、自分が自分を見て欲しいと感じているからそう見えるのだと、一人で納得させる。中々の自意識過剰である。


太陽はほぼ南中している。

自分は何故か「今はお昼休みだ」と本能的に分かっていた。

なぜ朝起きて昼休みと思ったのか、そんなことは関係ない。

どうして本能的にお昼休みだとわかったのか。そこを疑問に思っていた。


何故だろうか。


そんなことを考えているうちに、休み終了の5分前を告げるチャイムが鳴った。

すると、またもや本能的に、自分は教室に戻りだす。

でも、今度はその行動については疑問を抱かなかった。

自分は無心で教室の扉を開ける。


なんとそこは中学校の教室だった。

なぜ中学校の教室がここにあるのか。疑問に感じないはずがなかった。

自分はいつものように小難しい(本人は無表情のつもりである)顔をしながら、自分の席に座る。


しばらくすると、自分の周りの席の友人達が戻ってきた。

友人達はいつものように自分に語り始める。自分はこうして、一方的に語られることが多い。それが興味の無い話なら、おそらくつまらなさそうな返事しかしないだろうが、そこは自分の友人である。基本的に、自分も知っている話題について語ってくれる。

そうなると、こちらもつまらなさそうな返事はできまい。

そうして、授業までの数分を友人と語り合って潰しているうちに、先程まで疑問に思っていたことなど忘れてしまった。


数分が経ち、授業が始まった。英語だ。

ただし、この授業は英語は英語でも、会話する系の英語である。

いつものように教科書を開き、いつものように話を聞く。そして、グループを作り英語でワットウェンハウとグルーミングする。

ここまではいつもどおりである。


自分は内心ほっとした。なぜかというと、授業中に再びあれらの疑問を思い出したからである。今までこんな疑問を抱いたことは一度もなかった。それは当然だ。日常生活を送っていれば、あんな疑問を持つわけがないのだから。

                                     

先生がプリントを配り始めた。僕は一番前の席なので、先生からプリントを手渡しされていた。

しかし、先生は自分の予想とは違った。


自分の後ろにいる女子に対してプリントを手渡ししたのだ。

自分は思わず「は?」と言ってしまったが、先生はまるで気づかなかったかのように次の列へプリントを配り始める。

さすがにちょっとおかしいと思ったので、周りの友人達に、先程の事について話してみた。

すると友人達は、「え?お前、気付いてないの?」と言った。

自分は、はて、と思う。朝起きてから今まで、むしろ気づきすぎていて俺やべぇな、とまで思っていた。


「お前、死んでるんだよ」


自分は愕然とした。愕然という言葉の意味をあやふやにしか理解していないが、言葉とはそういうものであろう。

・・・と、思わず「愕然」について話題を逸らすくらい驚いた。


たっぷり1分くらい経って、ようやく精神が再起動してきた。

自分は、その友人達に向かって様々な疑問を投げかける。

しかし、いくら友人といえども友人止まりである。自分が知らない自分について、全て知っているわけではない。

友人たちは、自分が投げかけた疑問をほとんど無視してこう言った。

「家に帰りな」


そう言われた直後、自分にものすごく巨大な不安がのしかかる。

しかし、自分はその不安を友人に問うことをしなかった。なぜなら、先程疑問を投げかけ、投げかけてもほとんど無視したから。

きっと次問うても無視されるのだろうと思っていた。

なので、自分はその巨大な不安の正体をあえて問わず、先生から帰っても良い許可を得るため手を挙げる。


でも、先生は無視した。まるで見ていないかのように。

と同時に、先程教室の壁にもたれかかっているときに、人々は自分の前を通り過ぎていたことを思い出した。

もしかして、自分は死んでいるのでないか。友人に言われて気付かされたはずなのに、もう一回自分で気付かされた。

友人達は心配そうに自分を見ている。あいつらも、なんやかんや言って自分を心配してくれているのであろう。


先生は相変わらず無視し続けているので、仕方なく一人でがさごそと帰る準備をし始め、教室の後ろまで歩き、黙って扉を開けた。

皆の奇異な視線に注目されてもいいよう覚悟をしてから。振り向くとその視線とダイレクトに合ってしまうので、振り向かないようにする。


がららっ。

音を立てて扉が開いたが、不思議と背中に多数の視線を感じない。感じるのは数人分の視線だけ。恐らく、友人たちがこちらを見ているのだろう。

視線が背中に感じないのを改めて自覚し、思い切って振り向く。


・・・そりゃ視線を感じないわ。

そもそも、クラスメイトのほとんどはこちらを見ていなかったかのだから。

まるで音に気づいていないように。


思い知らされた顔で、数十秒ほどクラスメイト達を眺めてみる。彼らは皆前を向いているので、こちら側からは頭しか見えない。でも、誰が誰かよく分かる。

だが、いくらこちらが眺めてみても、向こうはこちらを全く見ない。まるで俺がここに存在しないように。

俺は何故か、静かに扉を閉めた。


誰もいない廊下を歩く。窓からは少し傾いた太陽が見える。

耳には授業をする先生の声しか入ってこない。

授業中なので誰も居ないのは当たり前なのだが、自分はそれを不気味に感じていた。

それを、「自分がこのような状況になったのは初めてなのだから、戸惑うのは仕方ない」と、強引に納得させた。

それが、不気味な正体の答えになっていないのに。


誰もいない道を歩く。嫌に静かだが、誰もいないからそんなものだろう。

恐らく、住民の大半は寝るなりテレビを見るなりして過ごしているのだろう。実に平和である。


しかし、自分の心中は全く平和ではなかった。

巨大な不安。それはまだのしかかってきている。

不気味な正体。自分を強引に納得させたためか、自分でどこか納得しきれていない。

この2つが体中をめぐりまわって、体中が黒になっているような気がしている。

しかも、ここにきて、何故友人達が「家に帰りな」と自分に言ったのか気になり始めた。

それだけ大きいことを自分は見落としているのではないか。

それを教えるために友人達は自分を家に帰らせたのか。

不安、不気味ときて、こんどは謎が襲い掛かってきた。

自分は頭をぶんぶんと振りながら家に向かった。


家が見えてきた。

家が近づいてくる。

それにつれ、巨大な不安はますます大きくなってくる。

自分はそれをこらえながら、なんとか自分をコントロールし、玄関を開けた。

がらがら。

家の玄関は引き戸なので、そんな聞き慣れた音がした。

普段は生きていて一番安心する音なのだが、この時はそうはいかなかった。

自分はものすごく巨大な不安にのしかかられながら、2階にある自室へ行った。


自室の扉の前に来た。

やはり、引き戸である。

がらがら。

カーテンは締め切っていて、やけに暗い。

そこには誰もいないと思って開けたのだが、予想に反してそこには人が居た。

母が自分の布団の上で横になっていて、妹がその隣で座っていた。

こうして言うと母が病気であるかのように聞こえるが、別にそんなことはない。


昼寝をしているだけだ。

という訳で、妹に母を起こしていいか聞こうとしたのだが、丁度母が目を覚ました。

母はこちらを見た。

はっきりとした、しかし悲しみも感じられるような目で。

自分もその目を見た。


数秒間見つめ合った。

でも、それは数分にも感じられた。

その間、自分は巨大な不安と戦っていた。


「おかえり」

母がそう言った瞬間、巨大な不安は一瞬にして塵になった気がした。

ああ、不安の正体はこれか。

自分は、母に認識されているのかどうかが不安だったのだ。

友人達以外、誰も自分を認識していなかったから。

自分は元々影が薄い方なのだが、あそこまで薄いことはなかった。


『俺はどうなっているんだ!一体何があったんだ!』

自分はそう叫んだ。

これは、友人達に問うのをためらった問いである。

すると、母は驚いた様子でこう言った。

「覚えてないの?あなたは死んだのよ。」


なんとなくそんな気はしていたが、やはりそうだったか。

母までもが言うのだから、これは真実なのだろう。

『なぜ死んだんだ?』

不思議と、自分は自分が死んでいることをあっさりと許容してしまった。

となると、その後の疑問はこれだ。

母は少し嫌そうな顔をしたが、こう答えてくれた。

「貴方は夏頃、対人ゲームで遊んでいたのよ。

 でも、対人ゲームをやり込むにつれ、お互いに憎しみが生まれたの。

 そしてついに、現実間での殺し合いに発展した。

 貴方は数人を殺したわ。そして、その後殺された。」


自分で、なんて馬鹿馬鹿しい殺され方なんだと思ってしまった。

もっとこう、死ぬなら格好いい死に方をしたかった。

そんなことを思いつつ、悔しい顔をしていると、母はさらにこう続けた。

「貴方が殺された後、葬式をしたわ。

 葬式が終わって、お坊さんはこう言ったの。

 『息子さんは、霊になっています。息子さんと関係の深い方には、息子さんの肉霊が見えるでしょう。肉霊とは、実体を持った霊のことです。』

 って。私は一瞬喜んだけど、すぐにそれは悲しさになった。

 また会えると思っても、霊。それも変な種類の。そんなものは息子じゃないじゃないの。」


「だから、私は貴方を息子とは思っていないわ。」


自分はそれを聞いて、死にたくなった。もう死んでいるのに。

すごく泣きたかった。でも、泣けなかった。

なぜなら、目の前に妹が居るから。こちらを見ていないけど、おそらく自分に気づいているだろう。

妹の前で泣く訳にはいかない。


格好良く死ねなかったという「無念さ」を持った霊が、最期を少しでも良くしようと、必死に涙をこらえた。


「貴方は明日の朝成仏するわ。早く逝ってらっしゃい」


まるで自分を息子と思っていないように、母はそう言った。・・・ああ、思っていないんだったな。

これまで「自分」を持っていた中で、一番ショックを受けた一言だった。

ショックを受けると同時に、わずかに残った理性が働く。

『なぜショックを受けたのか?』

その答えはすぐに出た。


さっきまで体の中にあった巨大な不安が、見事に的中していたからだ。

母に認識されているかなど、そんなことは問題ではなかった。

自分が死んで霊になっていたとしても、母は自分を認識してくれるだろうと予想していた。

そして、その予想は確かに当たっていた。

でも、当然だと思っていたことが当然ではなかった。

一方的な勘違いは、自らを傷つけるのである。


まるで「自分」など無かったかのように。

その場で落ちた。

どこへ?

多分、「眠り」へ・・・。








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