俺はバイトをしている。
飲食店で、バイトをしている。
時間は、夜の9時〜12時まで。きついが、まぁ楽しくやっている。
とはいえ、夜の11時ともなると客足は途絶え、俺達バイトは手持ち無沙汰となる。
だからそんな時は、皿でも洗いながら他のバイトの奴と話をしたりしている。
専ら、今日あった事などをはなしたりしているのだが、
今日は、違った。
二人の男女が、客として店に入ってきたのだ。
応対には、俺が出た。
「いらっしゃいませ。御二人ですか?」
と、お決まりの台詞を言う。
まあ、どこから見ても二人にしか見えないが、店で決められている以上、確認は取らねばならない。
「はい」
と答えが返ってきたので、俺は空いている手前の席に二人を案内した。
水を渡して、お絞りを置く。いつも通りの流れ。
それを終えて、俺は奥に戻った。
そして、バイト仲間に呟いた。
「ありえねぇ・・・」と。
何が「ありえねぇ」のかって、その客の組み合わせが、「ありえねぇ」。
男の方は、背が低く、髪が無駄にぼさぼさに伸びているような、ハッキリ言ってそんなに異性からモテるようには見えない、そんな奴。
片や女の方は、背が高く、美人で、モデルでもやってそうな、そんな奴。
今までにもおかしなヤツ等が店に来たが、こんな組合わせは見たことが無かった。
だから、俺は他の店員を呼んで、一緒になって二人の動向を見守る事にした。
「〜〜が〜〜で〜〜でさ〜〜だよね」
ハハハ、と、専ら話をしているのはどうやら女の方。
男は、
「そうだね」
と笑顔で時折頷いている。
俺は会話が聞きたかったため、足早に注文を取りにいった。
が、二人はホットコーヒーだけをすに頼んだために、俺は二人の会話を聞く余裕もないまま奥に戻っていった。
その時にちゃっかり確認しておいたのだが、やはり女の方はかなりの美人だ。
こんな時間にホットコーヒーだけを飲みに二人だけでくる、と言う事は、やはり二人はそういう仲なのだろうか?
けど、あの二人が?あの組み合わせで?
どうなのだろう。
二人の関係を考えながら、入れたてのコーヒーを持っていく。
そして素早く奥に戻って、ばれないように他のバイト二人で二人を見守っていた。
どれだけ時間が経ったか。
二人はそれほどコーヒーに口をつける事無く、ずっと楽しそうに会話をしていた。
もうこれだけあの楽しそうな姿を見せ付けられると、二人がお似合いのカップルに見えてくる。
むしろ、あの組み合わせこそがベストなのかもしれない。そこまで思えるようになってきた。
だってもう、楽しそうなんだもん。二人とも。
俺はバイト仲間二人と、あの二人の関係をずっと「羨ましいな」と話していた。
あんな仲の良い。カップルはそうそういない。
だからもう見守る必要も無い。時間も時間だし、仕事に戻ろう。
そんな事を考えていたら、
「おい」
と、小声で、バイト仲間が俺を呼んだ。
「何だよ?」
「あの二人、見てみろよ」
言われて、俺は二人の方を見た。
すると、二人、と言うより、女の方の様子がおかしい事に気が付いた。
何かを切り出そうとしているかのように、顔を伏せて、黙っている。
「おいおい・・・」と俺。
「嘘だろ・・・」とバイトA。
「勘弁してください・・・」とバイトB
俺等の間に、“嫌な予感”が駆け巡った。
ああ、もしかして・・・。
そして、
「あの・・・」と、女が口を開いた。
「あの・・・、付き合って貰えないかな?」と。
「え〜〜〜〜〜〜ッ!?!?!?」
と叫びたくなる衝動を抑えて、バイト仲間を何故か殴って俺は二人を見た。
まさかの告白。しかも、女の方から。
どうやら二人は付き合っていたわけでは無いらしい。
女が告白するためにここに男を呼んだのか。それとも、衝動的に告白してしまったのか。
俺はもう二人が付き合っているものだと思っていたから、もしかしたら別れ話か?と考えていたのだが。
いや、そんな事はどうでもいい。
大切なのは、男が如何に応対するかだ。
とは言え、断る理由は無いだろう。彼女居なさそうだし。
そんな事を考えながら、いよいよ、見守っている俺等にも熱が入ってくる。
すると、男はさらり、とこう答えた。
「あ、ゴメン。俺お前の事そーゆーふうに見れない」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!?!?!?!?」
俺の叫び声が店内に響き渡った。
友達はそんな俺を見て大爆笑。
俺はその日の内に、バイトをクビになった。 |