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届かぬ想い
作:真田遼



第9話 妄想


 公園での出来事を思い出しながら、マサトは自分の部屋のベッドの上で寝転がっていた。その場面を思い出しただけでも心臓の鼓動が早くなっていくのを感じていた。
 アダルトビデオではあのような光景を見たことはあるが、実際に他人のセックスを目の前で見たのは初めてだった。辺りに照明がなかったこともあり、どんな感じの男女が交わっていたのかまでは分からなかった。しかし会話の内容や、話し方、声のトーンから、今どきの若者という感じは受けなかった。ある程度年を重ねたカップルだと、マサトは思った。
 マサトはその時聞こえた女性の生々しい声と、周りの状況を思い出し、妄想を膨らませた。そして自分を、茂みの奥で行為に励んでいた男に置き換えていた。そして相手の女性を、初詣の時に偶然出会った、あの時の女性に置き換えた。
 
 布団の中で、少し硬くなり始めていたペニスを、右手でしごき始めた。


 妄想の中で、突き出された女性の腰の辺りを掴み、後ろから激しく突き上げる。その女性は腰をくねらせながら、マサトのペニスを受け入れた。

「はぁ、はぁ……すごく……気持ちいいです……マサトさん……もっと……もっと激しく……ぁあん……突いてくださぃ……ぁあああん」
「で、でも……そんなに激しくすると、壊れちゃいそうで……」
「ぃい、いいの……もっと……もっと激しくしてぇ……ぁあああ……主人を……主人を忘れさえて……ぁん……くださぃ
「分かりました……じゃあ……」
「ぁ、あ、あああ、スゴイ……そう、奥まで、もっと……ぁあああ、そうそう、腰を振りながら……おっぱいも……強く揉んでください」

 妄想に合わせて、マサトはペニスの竿の部分をしっかりと掴み、そしてそれを激しく上下に動かした。はち切れんばかりに膨らんだ亀頭の先からは、透明な液体が流れ始める。それが亀頭を伝わり、竿をしごいていた右手へと垂れた。そして再び妄想の世界へと入り込んだ。

「はぁ、はぁ……マサトさん……マサトさんの……すごく硬い……ぁあ……主人のよりも……ぁああん……すごいです。その硬くなったもので……奥まで突いてください……ぁぁ、そう……もっと奥まで……ぁああん。ぃいい、すごい、すごい……子宮の入り口に……マサトさんの硬くなったものが……ぁ、あああ、ズンズン響いてくる……ぁあああん……こんなの、初めてぇ」

 マサトは妄想の中の女性と激しいセックスを繰り広げた。妄想の中のマサトが腰を激しく振るたび、現実のマサトの右手が激しく上下した。そろそろ絶頂を向かえそうだ。

「ぁ、ぁ、ああああ、いく、いく、いく……いっちゃう……」
「ぼ、僕も……僕もイキそうです!」
「ぁ、ぁ、ぁ、一緒に……一緒に、イッて、お願ぃ……」
「一緒にイキましょう、うっ、じゃあ、いきますよ」
「ぁ、はい……ぁああ」
 妄想の中のマサトは、今までよりもさらに激しく腰を振った。それに合わせて、現実のマサトは右手を激しく上下させた。

「ぁ、ああ、いく、いく!!」
「ぼ、僕も……もうダメです……ぁあああ、ああああああ!」

 マサトは妄想の中と合わせるように絶頂を向かえ、そして果てていった。
 あらかじめ用意しておいたティッシュへと射精した。ドクドクと白濁が放出されるたびに、いきり立ったマサトのペニスは小刻みに上下した。
 
 白濁を包み込んだティッシュをぐるぐると丸め、ベッドの横にあったごみ箱にそれを放り投げた。その後、天井を見上げながら大きなため息をひとつ吐いた。
 
 虚しい……

 マサトの心の中には、虚しさが溢れていた。
 いまだセックスというものを経験した事がないマサトにとって、本当のセックスというものがどんなものかはまだ分からなかった。アダルトビデオを見て、男優になりきり、妄想の中で女性とセックスをするという事でしか、セックスを味わった事がないのだ。本物の女性というものはどういうものなのだろう。自分で処理をした今よりも、もっと素晴らしいものなのだろうか。そんな思いをめぐらせながら、マサトは天井を見上げた。そして再び大きくため息を吐いた。早く好きな女性と交わりたい。そんな思いを馳せながら、いつしかマサトは眠りについていったのだった。

 翌朝、目が覚めるとすでに時計の針は十二時を指していた。布団から這い出て、一階へと下りる。テーブルの上には、昼ごはんの炒飯が用意されていた。今日はキチンと昼食が用意されていた。
 炒飯の入ったお皿の横に置手紙があることに気付いた。マサトは炒飯を電子レンジで温めている間、その置手紙を読んだ。

『あんたどうせ暇なんだから、玄関の注連縄しめなわ、神社に持っていってちょうだい。どうせ暇なんでしょ?』

 短い文章の中に、『暇でしょ』という事を二回も言われた。自分はそれほど暇ではない、とマサトは思っていたが、これといって用事も予定もない。やっぱり俺は暇なのか?と、その言葉を素直に受け入れ、神社へと行く事にした。
 昼食を住ませ、身支度をした。壁に吊ってある白いダウンジャケットを見て、ニヤけた表情を見せた。そしてそのまま階段を駆け下り玄関へと向かった。
 神社に行くついでに、お参りをしようと思い、財布の中に四十五円を用意した。『始終ご縁に恵まれますように』という意味があることを、マサトは知っていた。マサトはこういう類の話が結構好きなのだ。北風に身をすくめながら、神社への道を歩いた。
 神社に到着すると、思った以上に参拝客が多かった。境内には少しだが露天が立ち並んでいる。たこ焼き、ベビーカステラ、キャラクターのお面を売っている店もある。匂いに誘惑されながらその横を通り、マサトは注連縄をお炊き上げしてもらうために、所定の場所へとそれを持って行った。それが終わると本殿へと出向き、お賽銭をあげ、かしわでを打った。

『素敵な女性にめぐり合えますように。出来る事なら、この間ここであった女性ともう一度会えますように』

 そうお願いをし、マサトは本殿を後にした。北風が先程よりも強く吹き付ける。マサトは早く家に帰ろうと、身をすくめながら早足で歩いた。道の脇に並ぶ露店を抜ける。どんぐり飴の店は、お客さんが飴をひっくり返したのだろうか? 店主と女性客が、地面に転がっている飴を拾っている。あまりにも地面に飴が転がっていたのでマサトもそれを拾うのを手伝おうと、店主に声を掛けようとした時、後ろからマサトを呼ぶ声が聞こえた。マサトは声のするほうを振り返った。そこにはマサトの母親が手を振りながら立っていた。

「何だよ、母さん。母さんも神社に来るなら俺が来る必要なかったじゃないか」
「偶然だよ、偶然。工場の機械が壊れちゃってね、昼から仕事がストップしてるのよ。だから今日はもうパートも終わり。あんたの好きな芋ようかんを買いに、わざわざここまで来たというのに、親に文句を言うなんて……あんたには芋ようかんあげないよ」
「ええ! ウソウソ、冗談だよ。俺もお参りしに来たかったから丁度良かったんだ。さあ、早く帰ってようかん食べよう」
 そう言うとマサトは母親を急かしながら、神社を後にした。







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