第41話 悲鳴
「どうしたの?何か落着かない様子だけど……愛しの彼女とは、上手くいっているの?」ナオミは横に座るなり、マサトに向かってそう尋ねた。
「あの……ナオミさん、ちょっとお願いがあるんですけど」
「あら、何かしら……エッチに関するテクニックを教えて欲しいっていうのはダメよ。あなたは愛しの彼女以外と交わらないって決めてるんでしょ?」
「いえ……そういう事じゃないんです。時間がないんです。時間が!」
「時間がないの? 何だか話が全く見えてこないんだけれど」
「今説明している暇はないんです。とにかく僕と一緒にある場所に行ってください。お願いします!」
「何だかよく分からないけど……私がそこに行かなきゃ、問題は解決しないのね?」
「はい、そうです。時間がないんです!」
「分かったわ……で、いつ行けばいいの?」
「今すぐです」
「えっ? 今すぐ?」
「はい、今すぐです」
「それはちょっと無理よ……だって私、一応勤務中だから、店の事をほったらかして外に出るなんて出来ないわ」
「そうですか……そうですよね……」マサトはがっくりと肩を落とした。
「そこは……遠いの?」
「いえ……斜向かいです」
「斜向かいって言うと……カップル喫茶のある所よね?」
「そうです! そこに用事があるんです!」
「そう。あそこなら何とかなるかもしれないわ。ねえ、あなた、今いくら持ってるの?」
「えっ……えっと、一万五千円くらいなら……」
「そう、それだけあれば十分ね」
「どういうことですか?」
「今から一時間、私を指名するのよ。それでこっそりと裏口から抜け出すの。その間、私はあなたの相手をしている事になっているから、ここから姿を消しても怪しまれないわ。彼女を救いに行くんでしょ?」
「は、はい……そうです」
「そう、やっぱり……あなたの顔を見ていたら、きっとそうなんじゃないかなって思ったわ。分かった。あなたに協力してあげる。だけど、一時間でこの場所に戻らないといけないから、そのことだけは分かっておいて」
「ありがとうございます!」マサトが深々と頭を下げると、ナオミはニッコリと微笑んだ。
「じゃあ、ちょっと待ってて、色々と準備をしてくるから。あ、それと、指名料と延長料金を合わせてあと7千円頂く事になるんだけど……」
「あ、はい……」
マサトはこれから一時間の料金とナオミを指名するための料金を払った。
二人は店員に気づかれないように、そっと裏口から店の外へと出た。そして斜向かいにあるカップル喫茶の前へと移動した。
「そうだ……あなたの名前をまだ聞いてなかったわね。名前は何て言うの?」
「マサトです」
「マサト君ね。それじゃマサト君、行くわよ」
「はい……」
そう言うと、ナオミが店の扉をゆっくりと開いた。そして店の中へと足を踏み入れた。
相変わらず、店内は真っ暗である。目が少し慣れてきた頃に、店員が二人の前へと現れた。
「いらっしゃいませ。あ、この間の……」店員はマサトの顔を覚えていたのか、マサトを見るなり、そう呟いた。
「今回はご同伴の女性がいらっしゃいますので、当店をご利用して頂けますよ。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
入り口で入場料を払い、ナオミと腕を組みながら中へと進んでいくマサト。店の奥へと進むにつれ、胸の鼓動が早くなっていった。
二人は、店の中でも一番目立たない席に座った。店内の様子を探る為、あまり目立つ席に座ることを避けたのだ。
「ねえ、この店ってどういうことをするか知ってる?」ナオミが尋ねた。
「はい……この間、この店の人に聞きました。お互いの行為を人に見てもらうとか言ってましたけど……」
「そうそう。ここはそういう場所なのよ。だから、何もしないでここに座っていると怪しまれるから、もしもの時は私とマサト君がいちゃイチャしているところを見せないといけなくなるんだけど、いい?」
「そ、そうですよね。何もしないと逆に怪しまれますよね」マサトはしどろもどろになりながらそう答えた。
「ところでさ……なんで彼女がこんな所にいるの?」
「無理やり連れ込まれるところを見てしまったんです。恐らくエリコさんは、あの男に無理やり連れてこられたんです」
「ふーん……エリコさんって言うんだ。その人。それで、エリコさんは店の中にいた?」
「それが、店内が暗くてあまり回りの様子が分からなかったんです。早く店内を探らないと、エリコさんが……」
「そうよね、ヤバイわよね。分かった。ここはお姉さんに任せなさい。でもマサト君も協力してね」そう言うと、ナオミは着ていた服をスルスルと脱ぎ始め、あっという間に全裸になっていた。
「な、ナオミさん! 何やってるんですか?」
「何って……ここはそういう場所なんだから……さあ、マサト君、店内を探りに行くよ」
ナオミはマサトの手を引っ張りながら、店内を歩き回った。
店内には複数のカップルが行為に及んでいた。もしもマサトが一人で徘徊していたのなら怪しまれただろうが、全裸のナオミが傍にいてくれたおかげで、マサトは誰にも怪しまれずに見せの中を探る事ができた。そして……ついにマサトはエリコの姿を目の当たりにすることとなった。
マサトは目の前の光景に絶句した。
エリコがあられもない姿で、店長の陰部を愛撫している。しかもその横ではマサトを殴ったあの男が、ニヤニヤと笑みを浮かべながらその行為を見ていた。マサトはその場に呆然と立ち尽くした。あのエリコが店長の陰部を……。その事実を目の当たりにし、マサトは何も考えられなかった。いや、何も考えたくなかった。夢であってほしかった。見間違いであってほしかった。しかし……それが現実だった。
「ねえ、あの人がエリコさん?」ナオミは呆然と立ち尽くすマサトの袖を引っ張り、彼らから見えない場所へと移動した。
「そうなの?」マサトは何も言わずに頷いた。
「そう……でも今はまだ動かない方がいいわ。ここで騒ぎを起こしてしまったら、マサト君があいつらに何をされるか分からないし。もうちょっとだけ様子を見ましょう」
「で、でも……」
「大丈夫。今はまだ出て行かないほうがいい。私に任せて」
マサトはナオミの言葉に従い、そこから店長やエリコの様子をそっと窺った。
「エリコさん……エリコさんがそんなに激しくしゃぶるから、我慢できなくなってしまいましたよ。あの方の了解も得ていることですから、そろそろ入れていいですか?」
「……いやっ! それだけは止めてください!」
「でも、我慢できなくなってしまったんですよ……エリコさんもただしゃぶっているだけではつまらないでしょう。エリコさんのアソコも、きっとこれを欲しがっているはずですよ」
「いやっ! そんなモノ……見せないで下さい」
「おやおや、そんなモノなんて……さっきまで美味しそうにしゃぶっていたじゃないですか。ホントは入れて欲しいんでしょ?」
「嫌ですっ! それだけは絶対に……」
「イヤといわれると、余計に入れてしまいたくなるんですよね。入れちゃっていいですよね」
店長はそういうと、男に押さえつけれれているエリコの後ろへと周り、後背位でペニスを挿入しようとした。その時……。
「止めろおおおおおおおおおおっ!」
今まで隠れていたマサトが、目の前の光景に堪えきれず店長の前へと思わず飛び出し、店長の顔面に向けて右ストレートを放った。が、店長はそれをひらりとかわした。店長は不機嫌な表情で、床に倒れこんだマサトを見た。
「おや? 誰かと思えばマサト君じゃないか。何でマサト君がこんな場所にいるんだい? ここは君のような童貞君が来る場所じゃないよ」
「うるさいっ! そんな事はどうでもいいだろう! エリコさんを離せ!」
「おやおや、上司に向かって、なんていう口の利き方をするんだい? もっと自分の身分をわきまえたらどうだい?」
「うるさい、この変態野郎!」
「おやおや、それは酷いなあ。そんな事を言って許されるとでも思ってるのかい?」
店長はそう言うと、倒れているマサトの顔面を蹴り上げた。マサトの鼻から大量の血が流れた。
「マサトさんっ!!」
男に押さえつけられていたエリコが男の手を振り払い、マサトへと駆け寄った。
「どうして……どうしてこんな所に?」
「エリコさんが無理やり連れ込まれるところを偶然見かけたんです……それで……」
「でも、どうしてここまでして」
「エリコさんが、汚されると思うと堪えられなかったんです。僕、エリコさんの事、好きです!」
突然のマサトの告白に、エリコは一瞬言葉に詰まった。だが、次の瞬間、エリコは血だらけになっているマサトをギュウッと抱きしめた。
「ありがとうございます……私なんかの為に……私も……私もマサトさんの事、大好きです……」
そういうと、エリコはさらに強くマサトを抱きしめた。
「へえー……マサトってお前の事か。お前か、エリコと交換日記まがいの事をやっていた男は。俺に隠れてこそこそと人の女房に手を出しやがって! 俺はお前とエリコが交わしていた交換ノートを見ちまったんだよっ! この泥棒猫がっ!」
エリコと一緒にいたのが、エリコの旦那だという事を、マサトはこの場で始めて知った。そしてエリコの旦那がエリコに対しこんな辱めを強要することに怒りを覚えた。マサトはサッと立ち上がると、旦那に向かって右拳を振り下ろした。拳は旦那の右の頬をかすった。
「この野郎……いい根性してんじゃねえか……いいだろう。お前を地獄のどん底まで突き落としてやるよ。お前、エリコの事が好きなんだよな。お前に今からいいものを見せてやるよ」
そういうと、旦那はマサトの後ろに回りこみ、マサトを羽交い絞めにした。そして店長に目配せした。店長はその合図を受け、口元にイヤラシイ笑みを浮かべた。
「マサト君……君が大人しくしていたのなら、こんな事はしなくても済んだのに……残念だよ」
店長はそういうと、マサトの近くにいたエリコの腕を取り、自分の方へと引き寄せた。そしてエリコの髪の毛を掴み、エリコをその場に四つん這いにさせた。
「マサト君……自分のしてしまった事を、そこでじっくりと反省するんだな」
そういうと店長は、エリコの陰部へと自分の陰部を近づけた。
「や、止めろーーーーーーーーー!!」マサトが悲痛の叫び声を上げた。
マサトの反応を楽しむように店長はニヤリと笑いながら、マサトの目の前でエリコのヴァギナへといきり立ったペニスを挿入した。
「い、イヤーーーーーーーーーーーっ!!」
薄暗い店内に、エリコの悲鳴にも似た叫び声がこだましていったのだった。 |