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届かぬ想い
作:真田遼



第4話 ため息


 エリコの受け入れる準備が整ったとみると、旦那は陰部から顔を離し、立ち上がると、エリコの顔の前に、ペニスを突き出した。そしてエリコの頭を持ち、咥える事を強要した。
渋い表情をしながらも、エリコは舌を伸ばす。なるべくペニスを見ないように、そっと目を閉じ、旦那とは違う男のモノを想像しながら、それに舌を這わせる。
 袋の部分にから順番に、徐々に上へと舌を這わせ、裏筋を通って、亀頭を舌で包み込む。
口の中へ先端部分だけを含み、舌を回しながら敏感な部分を刺激した。
 旦那は時々「うっ」という短い言葉を漏らし、身体を震わせる。舐められているだけでは我慢が出来なくなったのか、エリコの頭を両手で掴み、エリコの顔を前後に激しく揺さぶった。
 喉の奥に先端が当たり、何度かえずきそうになったが、エリコは必死でそれを堪えた。
 堪えきれなくなったのか、旦那はエリコの口からペニスを引き抜いた。
 ペニスを伝わり、エリコの唾液が引きながら床へとこぼれ落ちた。
 旦那はエリコを立たせると、テーブルに手をつかせた。そしてエリコの後ろからペニスを一気に挿入した。
 エリコの表情が苦痛で歪む。旦那とのセックスに快感を得ることができなくなったエリコのヴァギナはまだペニスを受け入れる状態ではなかったのだ。それでも旦那は構わずにペニスを激しく出し入れし始めた。
 エリコは悦びの声をワザとらしく上げた。感じている振りをしなければ、この苦痛から逃れられないのだ。そんな自分の気持ちを虚しく思いながら、エリコは演技を続けていた。
 三十分後、この拷問のようなセックスはようやく終わりを告げた。
 行為が終わると、旦那は何事もなかったかのように、リビングでくつろぎながらテレビを見ている。
正月らしく、どこのチャンネルをひねってもめでたい内容の番組が放送されていた。
 旦那はお笑い番組を見ながら、ケラケラと笑い声を上げていた。


  元気ですかー!!
 
  みなさん、明けまして、バカヤロー!!
  
  元気があれば、何でもできる。元気があればコンビニの店員もできる!


 どこかのプロレスラーのものまねをした芸人を見ながら大きな声で笑い声を上げる旦那を見て、エリコは虚しさを感じていた。
 自分勝手な旦那には、もうトキメキも何もなかった。でも、なに不自由ない今の暮らし。そして可愛い愛娘がいる。それだけでも幸せなんだと、自分に言い聞かせながら、無理に作り笑いをしながら旦那に尋ねた。

「ねえ、あなた。今日の夕食はあなたの好きなものにしましょうよ。あなた何が食べたい?」
「ああ……別に、なんでも……ははははは! こいつ最高!!」
 お笑い番組から目を離さず、適当に答える旦那。
 エリコは深いため息を吐き、冷蔵庫にある食材を物色しはじめた。何とか気持ちを持ち直そうと、昨日初詣で出会った、青年の事を思い出していた。
 あんなにドキドキした気持ちになったのは久しぶりだった。
 まるで初恋の相手にラブレターを渡す前のような、心臓がどうになかるのではないかと思うほど、早く動いたあの感覚。忘れかけていた感覚が、エリコの心の奥から湧き上がっていた。
 どこの誰かは当然知らない。でもエリコは妙にその青年の事が気になっていた。
 いまどき珍しく、向かい合い、触れ合っただけであんなにも顔を赤くしてはにかんだ表情を見せた。
 しどろもどろになりながら、自分の事を気遣ってくれた青年の事を思いだすと、胸の中が熱くなっていくのを自分でもひしひしと感じていた。
 またどこかで、偶然会えないかしら、と淡い期待を胸に抱きながら、冷蔵庫から出したキャベツをトントンと慣れた手つきで素早く刻んでいった。

 しばらくして、娘を連れて出掛けていた旦那の両親が帰ってきた。エリコは作業を止め、玄関まで娘と両親を迎えに出た。

「ママ、ただいま! ねえねえ、この風船いいでしょう」
 そう言うと、綾香はキティちゃんの絵が描かれた銀色のバルーンをエリカに見せた。
「あら、素敵ね。おじいちゃんに買ってもらったの?」
「うん。でもね、綾香、買ってもらってすぐに手を離しちゃって、風船が飛んでっちゃうところだったんだよ。でも木にひっかかって、大丈夫だったの」
「あら、そう。誰かが取ってくれたの?」
「うん。お兄ちゃん。お兄ちゃんが木に登って取ってくれたの。でもね、そのお兄ちゃんすごくドジで、風船を取ったあと、木から落ちちゃったんだよ」
「あら、あら。それは大変。お兄ちゃん大丈夫だった?」
「うん、大丈夫大丈夫。お兄ちゃん、平気だって言ってたから」
「そうなの。ちゃんとお礼は言ったの?」
「言ったよ。マサトお兄ちゃんありがとうって」
「そのお兄ちゃん、マサトさんっていうのね。そう。でも怪我がなくてよかったわね」
 エリコは、まだまだそんな優しい青年がいるのだと思うと、何故だかホッとした気持ちになっていたのだった。







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