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届かぬ想い
作:真田遼



第11話 決意


 家に戻ってからも、エリコの胸の鼓動は留まる事を知らなかった。再び彼と出会った瞬間を思い出しただけでも、胸がギュウッと締め付けられた。と、同時に何故か暖かい気持ちが心の奥から自然と湧き上がっているのを感じていた。
 名前も、年齢も、どこに住んでいるのかもわからない青年に、再び出会うことが出来たのだ。奇跡としか言いようがない。娘が言っていた通り、神様に願いが通じたのだろうか。ともかく、最近、あまり良い事がなく、心の中に暗雲が立ちこめ、暗い気持ちになっていたエリコの心に、分厚い雲の隙間から一筋の光が差すような、助けにも似た光が差し込んでいた。
 二度と会うことが出来ないと思っていた青年が、意外と近くにいるのかもしれないと思うだけで、今の苦しい状況に光が差すような、そんな明るい気持ちになり始めていた。
 青年の事を思い出すだけで、自分の心が明るくなっている事を、エリコ自身も分かっていた。青年の事を思うだけで、優しい気持ちになれ、日々の辛い出来事も何とか乗り切れるような、そんな気がしていた。
 今の、あまり幸せではない状況を乗り越える為には、自ら第一歩を踏み出さなければならない。何もしないままでは何も変わらないし、何もしないままで何も出来るワケがない。今の辛い状況を変えるためには、自分から一歩を踏み出そう。今のまま、いつもと変わらない日常を過ごしていては、何も変わらない毎日が続くだけだ、とエリコは思った。
 こんな気持ちになれたのも、あの青年のおかげだと、エリコは思っていた。あの青年にもう一度会いたいと思ったから、神社へと向かった。もう一度話がしたいと思ったから、神様にお願いをした。自分から何かをしたいと思い、それを行動に移すと、自然と上手くいくのかもしれない。そう思うと、今まで暗かったエリコの心は、どんどん明るい考え方へと変わっていったのだった。
 エリコはどうしても今の状況を変えたかった。夫の性欲を満たす為だけに存在しているような今の環境を、少しでも良くしたいという気持ちがエリコの中にはあった。その為には、新しい一歩を踏み出そう。離婚や別居という形ではなく、今までの生活の中で、自分の考え方を変えよう。エリコはそう決心し、早速行動に移すことにしたのだ。


 その日も旦那は仕事が忙しく、家に戻ってきたのは二十二時を過ぎた頃だった。例のごとく食事を外で済ませてきた旦那は、家に戻るなりスーツを脱ぎ、カバンを放り投げ、浴室へと直行した。少し長めの入浴を済ませた後、下着もつけず、頭にバスタオルをかぶり、髪の毛を拭きながら、冷蔵庫を開け、中から缶ビールを取り出した。
 そのままの格好で椅子に座り、ビールをグビグビと飲む。半分ぐらい飲み終え、缶をテーブルの上に置いた。話しかけるタイミングを見計らい、エリコが旦那に話しかけた。

「ねえ、あなた……私、綾香が幼稚園に行っている間に、少しだけ外で働こうと思うの」「はぁ? 何で働くんだよ。金は十分渡してあるだろう。俺の稼ぎだけで食べていけるんだからお前が働く必要はないだろう」
「でも、時間が勿体無いじゃない。家事は午前中で終わってしまうし、それからあとの時間は特に何もする事がないんだから。このままなら、私、どんどん年をとってしまいそうで、何だか嫌なの。あなたもそんなおばさんを相手にするのは嫌でしょう?」
「……まあ、それはどうだけどさ。でも何の仕事をするんだよ。スーパーのレジか?」
「ううん。近くにあるレンタルビデオ店が、スタッフを募集しているみたいなの。時間もお昼の二時から夕方の五時までだから、綾香を迎えに行くのにもちょうどいい時間だし。ねえ、いいでしょ?」
「おっ、レンタルビデオか……確かスタッフって安く借りる事ができるんだよな。昔、俺の友達がバイトしてた事があってさ、そいつのおかげで、安くAVを借りる事が出来たんだ。いいじゃないか、お前、そこで働いて、安くAVを借りて来いよ」
「えっ……そんな事できないわ。私、男性じゃないんだから……」
「何とかしろよ。慣れてきたらこっそり自分で借りる事ができるって。それが条件だ。その条件が呑めないなら、外で働くのはダメだ」
 何事も自分の性欲を満たす事が中心にあるのか、とエリコは不信感を抱いたが、新しい自分になる為の第一歩をどうしても踏み出したかったエリコは、その条件を渋々呑んだ。
「なあ、お前がそんな話を始めるから、やりたくなったじゃないか……」
「えっ……ちょっと待って……私はただ外で働きたいって……」
「そのことじゃないよ……AVの話さ。AVが安く借りられると思うだけでもう……」
 そう言うと、旦那はテーブルの向かい側に座っていたエリコの隣へとすぐさま移動した。下着をはかず、露になっている旦那のペニスはすでに勃起し、血液の流れにあわせ、びくびくと小刻みに上下していた。
 エリコの制止も聞かず、すでに硬くなったペニスをエリコの口へと押し込む。エリコは目を瞑り、硬くなったペニスに下を這わせた。
 エリコは、正直、旦那のペニスを見るのが嫌だった。無理やり口の中へと放り込まれるペニスを誰が愛おしく思えるのだろうか。しかし、キチンとフェラチオをしなければ、また無理やり頭を押さえられ、喉の奥までペニスをねじ込まれてしまうと考えると、憂鬱な気持ちになる。なので、仕方なく、エリコは愛撫を続けるのだ。
 その時、エリコに天の声が聞こえたような、そんなひらめきが頭に浮かんだ。
 今、自分が咥えているペニスを旦那のモノだと思うから、憂鬱な気分になるのだ。これが自分の愛おしい人のモノだと思えば、そんな憂鬱な気持ちも少しは安らぐのではないだろうか。エリコの頭の中には、ふとそんな思いが浮かんだのである。
 エリコは自分が今一番惹かれている男性の事を思いながらペニスに舌を這わせた。
 裏筋を通って、カリにあわせ舌を這わせる。唇で亀頭を挟み、湿らせた唇でそれを上下にゆっくりと動かした。

「ぅう……それ……気持ちいい」

 旦那が思わず声を漏らした。しかしエリコにはそんな旦那の言葉は届いてはいない。頭の中に思い描いているのは、あの青年の感じている顔だけである。
 エリコは愛しそうにペニスを愛撫し続けた。そして、いつしかエリコの下着の小さな染みは、時間を追うごとに徐々に広がりはじめていったのだった。

「なんだか……今日のお前は積極的だな……ぁ、それいい……」
 旦那がエリコのフェラチオに身悶える。エリコはさらに舌を上手く使い、ペニスを愛撫した。
 旦那は床へと寝転んだ。そしてエリコを自分の上にまたがらせた。自分のペニスをしゃぶらせたままで、いわゆるシックスナインの形になった。

「なんだ……エリコ、もうこんなに濡れてるじゃないか」
 
 下着の上からでも、エリコのヴァギナが濡れている事がハッキリ見て取れる。旦那は下着を一気に剥ぎ取ると、すでに潤っているエリコのヴァギナに人差し指を入れた。
 いつも以上にすんなりと指を受け入れる。旦那は指を抜き、中指と人差し指を絡め、それを再びヴァギナへと挿入した。

「ぁああん……」

 エリコの甘い声が漏れた。

「どうしたんだよ、今日は……もうこんなに濡れてるじゃないか」

 旦那が指を出し入れするたびに、ピチャピチャという水音がキッチンに響いた。

「はぁん……あ、あなた……もっと……もっとしてちょうだい……ぁああん……」
 エリコはそう言うと、再び旦那のペニスを咥え込み、激しく口を上下させた。
 エリコのいつも以上の熱のこもった愛撫に、身悶える旦那は、恍惚の表情を浮かべながら、その快感に浸っていた。そのあと、エリコが旦那に向かってそっと呟いた。


「お願い……早く……入れて……」

 エリコの言葉に促され、旦那はバックの体制から、エリコのヴァギナへペニスをねじ込んだ。

「ぁあああああン……いい……すごい……ぁああ……いい……」

 エリコはずっと目を瞑ったまま、後ろから自分のヴァギナを突いている旦那を、頭の中で青年に置きかえ、その快感に身を任せていったのだった。







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