挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 作者:門司柿家

また帰れない娘

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

48/68

四十六.アンジェリンの発する冷たい闘気に、ギルドの


 アンジェリンの発する冷たい闘気に、ギルドの執務室は一足先に冬が訪れたかのように凍り付いていた。ライオネルは勿論、ドルトスやチェボルグでさえ思わず体がすくみ、息を飲むようであった。

「……もういっぺん言ってみろ」
「だ、だからねアンジェさん……これは俺たちからじゃなくて、エストガル大公……」

 どん、とアンジェリンが足を踏み鳴らした。ライオネルは身をすくませて震え上がる。

「ふざけるな……大公だか何だか知らないけど、わたしを引っ張り出す権限がある筈ないだろ!」

 アンジェリンは握りつぶした手紙を思い切り床に叩きつけた。ライオネルは「ひい」と言って身を引いた。ドルトスがなだめるように前に出た。

「アンジェ、少し落ち着くのである。これはライオネルのせいではない」
「誰のせいかは関係ないぞ、しろがねのおっちゃん……! 今エストガルになんか行ったら冬が来ちゃうだろ! そしたらトルネラに帰れないじゃないか……! 岩コケモモがわたしを待ってるんだぞ!」

 嘆くようにしてアンジェリンは膝をつき、頭を抱えた。
 周囲の者たちは何と声をかけて良いものか分からず、互いに顔を見合わせた。

 つい先日、ギルド宛てに届いた一通の手紙が発端であった。
 ライオネルは手紙の印を見てまず驚き、内容を見て再び驚いた。手紙の封印は帝国の北部を統治する大貴族、エストガル大公のものであり、内容は、魔王討伐の功績を讃え、深秋の舞踏会の際にアンジェリンに勲章を授与する故に、公都エストガルまで来させたし、との事であった。

 当然ライオネルは頭を抱えた。アンジェリンがトルネラへの帰郷の支度を進めている事は周知の事である。それを尋常ではなく楽しみにしている事も知っている。何分、前の魔獣騒ぎの時に無理に引き留めた負い目もあるのだ、言い出すのが憚られる。

 しかし、相手は帝国の大貴族だ。里帰りを優先して叙勲をすっぽかすなどという事になれば、アンジェリンだってただでは済むまい。
 それでも、何とかして知らぬ存ぜぬを貫き通そうとしたのだが、色々な紆余曲折があって、伝えざるを得ない状況になってしまった。
 そうして今に至る。

 アンジェリンはイライラした様子でライオネルに歩み寄り、机にバンと手を突いた。

「ともかく、わたしは行かないぞ……! 大貴族だの叙勲だの……知った事か!」

 ライオネルは泣きそうな顔で言った。

「俺もこんな事頼めた義理じゃないと思ってるけど……頼むよぉアンジェさん……流石にエストガル大公家に睨まれたらおじさんたちおしまい……」
「ふんだ! どうせギルドマスターが首切られて終わりだろ……!」
「首を切るのが物理的な話になっちゃうから……おじさん、まだ死にたくないよ……」

 アンジェリンはドルトスやチェボルグの方を見た。
 しかし、老兵二人も困ったように顔をしかめるばかりだ。

「しろがねのおっちゃんとマッスル将軍も同じ意見なの……?」
「……大公家の手紙の内容が問題であってな。アンジェ本人に来いと言っているならば、お主の一存で行くも行かぬもある程度は言い訳が立つ。我らも、見て見ぬふりを決め込む事ができるのであるが、しかし手紙はギルド宛てに、お主を公都まで来させよとある。お主一人の問題ではなくなってしまったのだ、アンジェ」
「ぐむう……!」

 アンジェリンは唇を噛んだ。故意か偶然かは知らないけれど、突っぱねるとギルドの責任も問われるようになってしまっているのだ。
 冒険者ギルドそのものがなくなる事はあり得ないだろうが、ライオネル初め、現在の運営陣が軒並み首を変えられてしまっては、恐らく以前の中央ギルドの形骸化したやり方に戻ってしまうだろう。
 それはアンジェリンも望むところではなかったし、何より、ライオネルたちが気の毒だという気持ちもあった。なんだかんだで、アンジェリンもオルフェンのギルドが好きなのである。
 ドルトスが諭すように言った。

「何より、貴族は体面を重視する連中である。アンジェ。我らもSランク冒険者だ何だといっても、地位の上では一般人と変わらぬ。一般人に誘いを断られたとなれば、あちらも良い顔はしないであろう。まして相手は大公爵であるからな、面子を潰されては黙っているまい」
「……でも、嫌なものは嫌。冒険者は自由を愛するんだよ、おっちゃん?」
「むう……」

 ドルトスは困ったように目を伏せた。
 その時、チェボルグがぼりぼりと頭を掻きながら言った。

「おい! 揃いも揃ってだらしないじゃねえの!! こうなったらよ! 突っぱねちまおうぜ、そんなもん!」
「え!? ちょ、何言ってるんですか、チェボルグさん!?」
「いいじゃねえの! もし連中が気に食わねえって嫌がらせして来たらよ! ぶっ潰しちまえばいいじゃねえの!! 大公家だろうがなんだろうが、雑兵が束になったところで俺たちに適うわけがないっつーの!!」
「む、む、む、無理に決まってんでしょ!! ねえ、ドルトスさん!?」
「いや……考えようによってはありであるな。吾輩もいればチェボルグもいる。マリアも引っ張り出せよう。戦力的には大公家の軍にも引けを取るまい。一当てして力の差を見せつければ、オルフェンのギルドの独立性を示す事も……」
「いやいやいや! オルフェンを戦場にするつもりですか!」
「そこは、まあ、何とかなるんじゃねえの!?」
「うむ、何とかなるであろうよ」
「なりませんよ!!」

 妙に張り切っている老人二人と対照的に青ざめるライオネルを見かねて、アンジェリンは身を乗り出した。周りがヒートアップしはじめたせいか、妙に頭が冷えてしまっていた。

「いい……わたしが行けばいいんでしょ?」
「えっ!? 何!? アンジェ、何か言ったかよ!?」
「エストガルに行くから、戦わないでもいい……」
「ア、アンジェさん……」
「大公軍と戦うのは面白そうだけど……別にそんな事しないでいいし、もしやったら、お父さんに怒られる……」

 チェボルグは残念そうに拳を打ち合わした。

「なんだよ、詰まらねえじゃねえの!! 久々に暴れられると思ったのによ!!」
「そういう問題じゃないでしょチェボルグさん!」

 ライオネルは嘆息して、すがるような目でアンジェリンを見た。

「ありがとう、アンジェさん……あと、ごめん。前にあれだけ迷惑かけたのに……」
「いい……さっさと行って、さっさと帰って来る」

 アンジェリンはくるりと踵を返し、さっき放り投げた手紙を拾い上げると、つかつかと執務室を出た。
 ライオネルは大きく息をつき、ドルトスとチェボルグは眉をひそめた。

「やれやれ、アンジェも大人になっちまったじゃねえの!」
「まったくであるな。嬉しいやら寂しいやら……しかし、エストガル大公め、気に食わぬ。叙勲するならばもっと早くすればよいものを」
「それには同意ですね……けど何だか政治的な意図を感じるなあ……ギルドとしても何かしらでアンジェさんをサポートできるといいんだけど……」

 とライオネルは頭を掻き、ドルトスとチェボルグの方に向き直った。

「けど、お二人とも道化を演じてもらってすみません。おかげでアンジェさんも冷静になってくれて……」
「……えっ?」
「えっ……? え、あの、冗談で言ったんですよね……? ね?」
「…………」
「ちょッ! 黙らないでくださいよ! なんで目逸らすんですか!」


  ○


 荒い足取りでロビーに戻ると、シャルロッテが驚いた顔で出迎えた。

「お、お姉さま。どうしたの……?」
「……どうしたもんかな」

 アンジェリンはどかっと椅子に腰を下ろした。
 向かいに座っていたビャクが、読んでいた本から顔を上げた。

「何を怒ってんだよ」
「……トルネラ行きは延期」

 アンジェリンが言うと、シャルロッテが驚いて駆け寄って来た。アンジェリンの服の裾を掴む。

「な、なんで!? 明日には出発の予定なのに……」

 アンジェリンはムスッとしたまま、手に持ったくしゃくしゃの手紙をシャルロッテに手渡した。
 手紙に目を通したシャルロッテは目を見開き、アンジェリンと手紙を交互に見る。

「た、大公家から? お姉さま、これに行くの?」
「……行きたくないけど、断るとギルドの人たちに迷惑がかかる」

 ビャクが本をぱたんと閉じた。面白そうな顔をしている。

「親父狂いのテメェにしちゃ、偉いこったな」
「うるさいぞビャッくん……岩コケモモ……採りたての岩コケモモ……」

 さっきまでは怒っているような表情だったのが、一気に落胆と絶望の表情に変わり、アンジェリンはテーブルに突っ伏した。
 シャルロッテはおずおずとアンジェリンの背中をさすってやった。

「大丈夫、お姉さま……?」
「……ありがと、シャル。でもトルネラには行けない」
「それじゃあ……わたしとビャクはどうしたらいいの……?」
「……それを考えてるの」

 アンジェリンは涙目で顔を上げ、大きく嘆息した。
 シャルロッテとビャクをオルフェンに留めているのは、トルネラを除けば一番安全だからである。ギルドの全面協力も取り付けてあるし、復帰組のSランク冒険者たちは頼もしい。
 しかし、エストガルはまったく知らない土地だ。不意の襲撃に対して逃げ込める場所も、頼れる人物もいない。
 襲撃の可能性は限りなく低いとはいえ、高をくくって油断した挙句、二人が命を落としたり、ルクレシアに連れ去られたりしては悔やんでも悔やみきれない。

 アンジェリンはしばらく目を閉じてギルドの雑踏に耳を澄ましていたが、やがて立ち上がった。

「アーネとミリィの所に行って相談する……」
「わ、わたしも!」

 シャルロッテがアンジェリンの手を握った。アンジェリンはその手を握り返し、顎をしゃくってビャクを促した。
 ビャクは少し笑ったような顔で立ち上がった。アンジェリンは口を尖らした。

「……お姉ちゃんが困ってるのがそんなに楽しいか、ビャッくん」
「ビャッくんって呼ぶんじゃねえ。まあ、ない知恵絞って足掻いてみるんだな」

 ビャクはそう言ってくつくつ笑った。アンジェリンは拳骨でビャクの頭を小突いた。

「お前が空間転移の魔法を持ってれば……ッ!」
「……ないものねだりをするんじゃねえよ」

 アンジェリンはシャルロッテの手を引いて外に出た。

 昼前の往来は人が大勢行き交って、あちこちから音楽が聞こえて賑やかである。
 アンジェリンは、はぐれないようにシャルロッテの手を握ったまま、人の間を縫うようにして道を下って行った。シャルロッテが不安そうな顔をしてアンジェリンに言う。

「お姉さま、大丈夫? 無理してエストガルに行かないでも……」
「……わたし一人の問題なら突っぱねたけど、そうもいかないの」

 シャルロッテは悲し気に俯いた。アンジェリンとトルネラに行けるのを余程楽しみにしていたらしい。

 今朝までのワクワク感が一気にどん底だ。
 エストガル大公め、とアンジェリンは歯噛みした。何か意趣返しをしてやらないと気が済まないが、何も思い付かない。
 もしも同じ状況だったとして、ベルグリフならどうするだろうと考えかけたが、ハッとして首を振った。

「お父さんはくだらない仕返しなんかしない……」

 そうだ、この程度でへこたれてたまるか。わたしはお父さんの娘だぞ。
 と、アンジェリンはむんと胸を張った。

「頑張れファイトだアンジェリン……」

 ぽつりと呟いて、足を速めた。

 アネッサとミリアムの家は下町の一角にある。
 教会孤児院にやや近く、市場にも行き来しやすい所だ。スラムに隣接している事もあって、立地の割に家賃は安いらしい。
 戸を叩いて「わたし!」と呼びかけると、驚いた顔のアネッサが戸を開けた。

「なんだ、アンジェか。どうした?」
「問題発生……」

 アネッサは額に手をやって、眉根に皺を寄せた。

「……ひとまず上がりな」

 家の中は雑多にものが散らばっていた。
 洗っていない食器もあるし、畳んでいない洗濯物もある。
 旅行の準備にかまけて家事がおろそかになっているという具合だ。
 奥の部屋ではミリアムが旅行鞄の前に座って唸っていた。

「むー……どうしようかにゃー……」
「ミリィ」
「ありゃ? アンジェ、どしたの? 出発は明日でしょー?」
「それがね……」

 アンジェリンの説明を聞くうちに、二人は無表情になった。
 ミリアムは怒った様子で口を尖らした。

「そんなの貴族の勝手じゃん! 勲章くれるったって、アンジェが魔王を討伐したのはもう一年も前なのに! ねえ、アーネ!?」
「うん……けど、仕方がないか。流石に大公相手じゃすっぽかせないよな……よく決断したなあ、アンジェ」

 アネッサは少し感心したようにアンジェリンの頭をぽんぽんと撫でた。アンジェリンはふんすと鼻を鳴らした。

「わたしも大人になったのだ……二人には悪いけど」
「ま、しょうがないよな……あーあ……」
「うー……ベルさんに会いたかったよう……」

 二人は目に見えて落胆したが、流石に大公家の意向を無下にするのは危ないと理解したらしい、渋々ながらトルネラ行きを諦め、今後の予定を組み直す事になった。
 花茶を淹れて、テーブルを囲む。

「エストガルまでは馬車で寄り道しないでおおよそ半月……行って帰って来てもひと月はかかる……」
「行ってそのまま帰って来るわけにもいかないだろう。何日か引き留められると思うぞ」
「シャルとビャッくんは? 連れてくの?」

 アンジェリンは首を横に振った。

「オルフェンと違って味方なんかいない。土地勘もない。リスクが高すぎ」
「でも……でも、お姉さまがいないと……わたし」

 シャルロッテが不安そうにアンジェリンの腕に抱き付いた。アンジェリンは嘆息して、シャルロッテを撫でた。

「わたしだって、一人だけじゃ守り切れない……この前だって、ロゼッタさんに怪我させちゃったし」

 シャルロッテは俯いて、腕にぎゅうと力を込めた。

 ロゼッタは怪我こそ随分治ったけれど、まだ本調子ではない。本人は笑っているが、アンジェリンもシャルロッテも責任を感じて、足しげくお見舞いに通っていた。
 不意の出来事とはいえ、アンジェリンには自分の力の限界を思い知る出来事であった。
 いくら強かろうが、一人でできる事には限界がある。だから、人に頼るのも大事なのである。そんな自覚を持たされた。

 だからシャルロッテとビャクを連れて行くのは無理だ。
 単なる観光であれば構わないが、勲章を寄越されるとなると、一緒にいられるタイミングがなくなってしまう。
 アネッサがテーブルをこつこつ叩いた。

「わたしとミリィはどうしような? 一緒に行っても仕方がなさそうだけど」

 手紙にはあくまで“黒髪の戦乙女”アンジェリンを、とある。実際に魔王を倒したのはアンジェリン一人であるし、パーティメンバーとはいっても列席できるかは微妙なところだ。

「でも、二人が一緒なら、シャルとビャッくんも連れて行ける……?」

 アンジェリンはそう言ったが、アネッサは難しい顔をした。

「どうかな。先日の襲撃は奇襲と接近戦だろ? わたしらもそうそう負けない自信はあるけど、誰かを守りながらってのは少し難しい」
「だねー。アンジェなら感じる殺気とか、わたしたちには分からない事もあるし」
「むう……」

 確かに、二人は射手と魔法使いだ。基本的には前衛を張るよりも後方支援を得意としている。戦場での護衛ならばともかく、日常生活における護衛はアンジェリンほど得意ではない。まして、相手が得体の知れない悪の組織と、ルクレシアの貴族、教皇庁の浄罪機関ともなれば、そこらの盗賊などとは難易度が段違いだ。
 アンジェリンは椅子に深くもたれかかった。

「……じゃあ、どうするの?」
「むしろ、シャルたちが残るなら、わたしたちがアンジェの代わりに付いてた方がいいかもな。ギルドの人たちも協力してくれるとはいっても、自分たちの仕事もあるんだし……それとも寂しいか?」
「寂しいわけないだろ……わたしを誰だと思ってる」
「あ、そうだ。いっそ、わたしとアーネでシャルとビャッくんをトルネラに連れて行くってのはどーお? 準備も無駄にならないし、ベルさんにも会えるし」

 と、冗談めかして言いかけたミリアムは、アンジェリンを見てギョッとした。アンジェリンは目から大粒の涙をぼろぼろこぼしていた。単独行動は何ともないが、自分一人だけ置いて、仲間だけトルネラに行ってしまうというのは、仲間外れのようで絶望が深すぎるらしい。
 アンジェリンはとめどなく溢れて来る涙を手の甲で拭い、鼻をすすってしゃくり上げた。

「えぐっ……お……っ! 置いてかないでぇ…………」
「わーッ! ごめんごめん! 冗談だってば! アンジェを置いてトルネラに行くわけないでしょ! ほら、いい子いい子!」

 ミリアムは大慌てでアンジェリンの頭を撫でたり背中をさすったりしてやった。シャルロッテまでおどおどして少し涙目になっている。
 アネッサが嘆息した。

「ミリィ、お前……」
「ご、ごめんってば! 泣いちゃうとは思わなかったんだよぉ……」

 アンジェリンはしばらくしゃくり上げていたが、やがて落ち着いた。目と鼻と頬を赤くして、口をムスッと尖らしてテーブルに頬杖を突く。

「……じゃあ、わたし一人で行って来るから、みんなはオルフェンでお留守番」
「それがいいかもな。身軽だし、終わればすぐ戻って来られるだろ」
「……抜け駆けしてトルネラに行かない事。絶対。いいなミリィ……?」

 アンジェリンは怒った様子で、ミリアムの猫耳を掴んでぴこぴこ動かした。ミリアムは困ったように目をぱちぱちさせた。

「あうー、だから冗談だってばー……」
「シャルとビャクもそれでいいか?」

 アネッサの問いかけに、シャルロッテは遠慮がちに頷いた。ビャクは壁にもたれて黙っている。了承の意だろう。アネッサは頷いた。

「よし、じゃあ二人はうちで預かりだな。散らかってて悪いけど……」
「お、お掃除手伝うわ、アーネ!」
「はは、ありがと。で、アンジェ、お前はいつ出るんだ?」
「明日……どうせ旅支度済んでるから。お土産は置いてくけど」
「そっか。そうだよな」

 ミリアムがヤケクソ気味に立ち上がった。

「よーし、酒場行こ、いつもの酒場! 今日はヤケ酒だ!」
「……ミリィの奢り?」
「うぐっ……よ、よーし……いいよぉ?」

 アンジェリンは少し元気が出たらしい、くすくすと笑って立ち上がった。
 窓の外は日暮れ時の赤い光が満ちていた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ