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砂漠に降る花 作者:AQ
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第一章(6)砂漠への旅と、新たな仲間

サラの進む砂漠への旅には、道連れがいた。

まずは「ラクタ」という砂漠のらくだが4頭。
地球のらくだよりは背がひくく、どちらかというとロバに似ているが、背中にはしっかりとコブがある。
そのうちの3頭には人が乗り、もう1頭は荷物用だ。

サラも乗り方をしっかりマスターした。
ラクタ乗りの訓練は、7日間の勉強の中で唯一楽しめた。

  *  *  *

残り2頭に乗るのは、侍女と戦士。

侍女はリコという、17才の少女だ。
白い肌にそばかすがかわいらしい、いつもはにかんでいるような温厚で大人しいリコは、サラ姫お気に入りの侍女の1人。

なぜサラ姫がリコを手放したかというと、侍女の中で一番魔力が高かったからだ。
万が一サラたちが襲われたときに、魔術で対抗することも必要だと、カナタ王子から説得されて、しぶしぶうなずいていた。
実際リコがサラ姫に仕えていても、退屈がるサラ姫に花火やシャボン玉を出してみせるくらいの仕事しかなかったらしい。

リコ自身も、危険な旅ということよりは「王宮の外に出られる」という期待に胸を膨らませていた。
わずか3才のときに魔力を発揮し、すぐに王宮へ送られて、それ以来外へ出たことはなかったという。

ラクタ乗りの訓練はリコも一緒だったが、ラクタから落ちたリコを気遣うと、

「異界のサラ姫は、本物のサラ姫と違って、イイヒトですね」

と、こっそり耳元でささやいた。
お互いサラ姫には、かなりひどい仕打ちをされていたため、あっという間に仲良くなった。

出発前日には一緒にお風呂に入った。
といっても、リコはあくまでサラの侍女として、体や髪を洗ったりすいたりする仕事の訓練としてだが。

サラにはあって、サラ姫には無いものが、青みがかった瞳と、もう1つ。
それは硬くひきしまった筋肉。
とくに割れた腹筋と、力こぶカッチカチという地球ギャグには、リコは目を丸くして絶句していた。

お風呂上りに、調子にのって武道の形を見せると、リコの興奮はピークに達した。
真っ赤な顔で「命に代えてでも、強く美しい異界のサラ姫をお守りいたします」と、手をギュッと握られて熱く語られたため、サラはあらためて女子にモテるという自分のキャラを思い出したのだった。

  *  *  *

旅の道連れのもう1人は、戦士のカリムだ。
年齢は18才とのことだが、どう見ても20代後半という落ち着きっぷり。

カリムは、カナタ王子の側近中の側近だった。
常にカナタの傍に控えており、カナタの作業をサポートし、時には国政のアドバイスもするという重要人物。
魔力はそんなにないが、剣の腕は国内ーで、カナタ王子の暗殺を何度も食い止めたという。

そんな大切な人を旅に連れ出していいのかとサラは戸惑ったが、カナタ王子は、サラが赤面するようなことを言ってのけた。

「本来なら、私かサラが行かねばならない旅。あなたはいつも謙虚で、愛らしくて、信じられないくらい強い方です。こんなときくらい我がままになってください。愛しい女性のわがままは、嬉しいものですよ」

そのとき、いつもサラ姫にするように、サラの頭をなでたので、サラはびっくりして背の高いカナタ王子を見上げた。
その目には、サラ姫に向けるのと同じくらいの愛情を感じた。

たった7日間の関係だけれど、サラはカナタ王子の信頼を得たこと、そして大事な側近を旅に同行させてくれることに感謝したのだった。

当のカリム本人は、ラクタ乗りの指導をしてくれたときに初めて会話をしたが、サラと特別仲が良くなったわけではなく、単に大事な姫の替え玉という程度の扱いだ。
口調は丁寧だが、あくまで事務的で、打ち解けようというそぶりはない。
サラの方から、少しくだけた口調で話しかけても「はい」とか「個人的なご質問にお答えすることはできません」しか返ってこない。

まあ長い旅の途中で、それなりに打ち解けていくに違いないとサラは思った。

  *  *  *

最後の1頭には、大事な水と食料、衣類など日用品の大半を積んだ。
自分たちも少しずつ、水と食料を鞄に小分けしてつめたが、ラクタに乗せられる荷物には限界がある。
体重の重いカリムの分は、サラとリコが分担した。

出発当日の昼間は、涼しい王宮の木陰で旅のシュミレーション。
太陽が傾き、風が少し涼しく感じてきた午後、3人は砂漠の旅装束である、フードつきの白いマントをはおり、ラクタに乗り込んだ。

サラとリコは、一目では少年と見まがうような、ぶかっとしたシャツとズボン姿だ。
これも、女と見ると襲い掛かるような不埒な輩への、ささやかな目くらまし。
サラの履いている靴の底には、王の印がある和平文書が隠されている。
出発前に水を飲めるだけ飲んだ。

これから、上手く進めば10日、長くて14日の旅がスタートする。
手を振って見送る者もなく、静かな旅の始まりだった。


その出発を、王宮から少し離れた木陰からそっと伺っている者がいたことに、3人は気付かなかった。

↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。










ようやく出発かー。長いですこの話。もっとファスタファスターで行きます。
新キャラや新動物の名前が考え付かず。そしてラクタ・・・すみません、手抜きしすぎたか。
次回、サラちゃん疲労でだんだんイイカンジに可愛く壊れてきます。裏テーマ、目指せ母レベルの小悪魔ってことで。
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