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砂漠に降る花 作者:AQ
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第一章(14)運命のひと

ここから2回分、めちゃめちゃ甘くなります。恥ずかしい展開苦手な方は流し読みを。LはラブのL。
心地よい光に溢れる部屋のなかで、サラは頭領と呼ばれる男を見ていた。
男も、面白そうに目を細めて、サラを見ている。
その緑の瞳には、サラがどんな風に映っているのだろう。

ほんの数秒が、数分にも感じる、重い沈黙。

「お前の、名前は?」

男の低い声で、重い沈黙が破られた。
サラは、まだ警戒を解かないまま、簡潔に答える。

「私はサラ。あなたは?」

男が切り返す。

「お前は、魔力が無いのか?」

意味が分からないという風に首をかしげるサラを見て、男はふっと笑って言った。

「魔術師が名前を言うということは、相手に自分を使役する鍵をあたえることに等しい。おそらくそこのリコという女も、別に真名があるのだろう。だがお前は、嘘はついていないな」
「ええ、私には魔力が無い。だから本当の名前を言おうが関係ない」

男は、自分を怖がらないサラの態度を、ますます面白いと感じているようだ。
さっきよりいっそう目が細められる。

(これでメガネ……いや、そこじゃない)

サラは、案外自分は混乱しているのかもしれないと思った。

  *  *  *

「しかし、お前の声には、魔力と似た力があるようだな」
「は?」
「もっと話してみろ」

ゆっくりと、男はサラに近づいてくる。

「この黒髪も、精霊好みだな」

そして、サラの黒髪をひと房手に取ると、そこに口付けた。


『ホゲー!!』


サラは思わずジャイアン叫びしそうになったのを、全力で押さえ込んだ。

至近距離に、馬場先生を超えるレベルの好み男子が!
しかも、髪に触られた!
そういえば、15年生きてきたけれど、パパたち以外の若い男にこんなに接近されたことってない!
いや、ファミレスの痴漢がいたか!
でもアイツは人じゃなくて獣だから除外だ!

はぁはぁ、少し落ち着かなきゃ。

「あのっ」

サラは、意を決して、至近距離の男に話しかけた。

「なんだ?」
「もうちょっと、離れてください……」
「どうして?」
「だって、顔が近い……」

男は、緑の瞳を宝石のように煌かせて言う。


「お前は俺のものなのに?」


(いつどこでだれがなんじなんぷんなんじゅうびょうちきゅうがなんかいまわったときそんなことにー!)


サラの心臓はバクバクと嫌な音を立てている。
この絶妙なスピードで着実に近づいてくるストライクど真ん中の顔を、思い切り張り倒してここから逃げたら、私は助けてもらえなくなっちゃうかも?
でももう耐えられないんですけど、心臓が!

サラの動揺など意に介さず、男はそっと、サラの頬に手のひらを寄せ、そのままおでこへずらして前髪をかきあげた。

「お前の瞳は、不思議な色をしているな」

ああ。

もう、無理だ。

サラが常に意識している、冷静に論理的にと考える癖。
その瞬間、何もかもがはじけ飛んだ。

  *  *  *

そこからのサラは、感情で動く。
ただ、思ったことを素直に。

「あなたの瞳も、とてもきれいな緑」

サラは、ささやいた。
この世界で初めてサラ姫の声を聞いたときに、鈴が鳴るようだと思ったが、今目の前で薄く笑んでいる男も同じように感じたのだろうか。

「これがきっと、緑の森の色なのね」

次の台詞に、男は目を見開いて、サラの髪を手放す。
初めて、サラに対して優位な立場を忘れて、男はサラに攻撃的な顔を見せた。
この顔が、盗賊である男の本来の顔。
それでも美しいと、サラは思ってしまう。

「お前は、俺に会いたいと言ったそうだな。一体何を知ってる?何が目的だ?」

質問への回答は、簡潔に。

「ええ、会いたかった。あなたは私の運命のひと」

物語の姫が、死ぬまで恋して、裏切られた相手。
でも私は、本当にあの物語のサラ姫なのだろうか?

「私は、あなたに恋をするかもしれない」

今のサラには、まだ分からなかった。
だって、恋なんて物語でしか知らない。
このひとを見てドキドキするのは、見た目が好みだから?
まだ今会ったばかりで、言葉を交わしたばかりでしょ。

「でも、私にはやらなきゃいけないことがあるの」

男は、瞬きもせずにじっとサラを見ている。
その視線が鋭く痛くて、サラは目を伏せた。
長い睫毛が、ブルーの瞳に影を落とす。

「私の目的は、トリウム国の国王に会って、和平の調印を果たすこと。そのために、あなたに協力を求めにきました。私と仲間を、ここからトリウムへ連れて行って」

  *  *  *

サラは、もう迷っていなかった。
鈴の鳴るような声は、言霊を乗せて男の心に入り込んだ。
男は、挑戦的な視線をほどいて、穏やかに、楽しそうに笑った。
なぜ笑われたのか分からないサラは、きょとんとして男を見返した。

「お前の言い方、それ協力しろって言い方じゃないだろ」
「え……そうかな」
「お願いしますとか、なんでもしますとか、無いのか?」
「じゃあ、お願いします。なんでも……あの、常識的な範囲内で」

男は、もう一度サラに近づいて、黒髪に口づけた。
サラの心臓が、再び騒ぎ出す。

「口付けていいか?」

黒髪を手放さないまま、緑の瞳が輝きを放つ。

「もう、してるじゃないですか」
「いや、ここじゃなくて」

そして男は、ニヤッと笑って、サラの腰を引き寄せた。
↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。










なんかもう……ごめんなさい。続きは想像にお任せとかにして逃げたいとこだったんだけど、それからどしたのっ?という話がもう1個。
次回、サラちゃん最強天然小悪魔化、ついに完了です。ヘルシア茶2リットルほどご用意を。
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