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砂漠に降る花 作者:AQ
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第一章(12)盗賊との交流、そして決戦へ

水分を摂り、お風呂で体を磨いて12日分の汗と垢とホコリを落としたサラは、すっかり天使のようなサラ姫にもどっていた。
着替えに渡された服は、簡素なエプロンタイプの茶色いワンピース。
下着もあったが、さすがに胸のサイズが合わずにブカブカだ。

風呂場でチラ見した、おばちゃんの胸を思い出すと、サラはしょーがないなと思った。
リコも、ほぼ同じ格好をさせられているが、胸が余った様子はない。
サラはリコに背を向け「2年後リベンジ、2年後リベンジ……」と自己暗示をかけた。

  *  *  *

お風呂上りのリコは、白い肌をさらに青白くさせて、少し震えていた。

「リコ、寒いの?」

サラは、やさしくリコの肩を抱きながら、声をかける。
サラの方が、リコより身長が10センチほど高いため、サラの頬にリコの髪がふんわりとあたりくすぐったい。
岩肌はしめって、ひんやりとした冷気を発している。
それでも、砂漠の夜よりは全然温かいけれど。

悪いけどルールだから、と再び目隠しと手の拘束をされた2人は、階段を上がりぐるぐると歩かされ、食堂につれてこられた。
目隠しをはずされると、眩しい光がさしこみ、2人は目を細めた。

ずいぶん時間の感覚が狂っていたけれど、もう昼近くなのだろう。
天上に空いた岩山の隙間から、明るい太陽が見えている。
ちょうど岩が屋根になり、雨風は防げる。
天井も高く、天然の採光ができて、心地の良いスペースだ。

そこには、大きなテーブルと小さな木の切り株が並べてある。
だいたい60席くらいはあるだろうか。
隅には予備の切り株も積まれており、きっちり並べれば、もう少し座れるかもしれない。
家族という単位のチームを作り、ローテーションで食事をとるのだと、おばちゃんは笑顔で言った。

  *  *  *

適当な席につくと、おばちゃんが2つの丼をもってきた。
少しの肉と、野菜くずを煮込んだ、シチューだった。
12日ぶりの、まともな食事だ。
しかも温かい食事。

2人は、無言でガツガツと食べた。
途中からスプーンですくうのもおっくうになり、丼を傾けて直接すすった。
おかわりいるかい?の誘いにも、無言で頷いた。
「うちに来た子は、みんなこうだよ」と、おばちゃんは困った風にぶつぶつ言いつつも、なんだか嬉しそうだ。

この待遇、このご飯で、きっとみんなこの盗賊が好きになる。
ここにずっといたい、家族になりたいと思ってしまうんだろうな。
サラは、ちょっとだけ盗賊の仲間になった自分を思い浮かべて、慌ててかぶりを振った。

母の物語が、本当に予言として書かれたものなのか、サラにはわからない。
でも、実際に盗賊は現れた。
そして、この盗賊のくだりはまだほんの序章に過ぎない。

なによりサラには、成し遂げなければならない使命がある。
ここで気を抜いちゃいけないんだ。
サラが、一人真剣な眼差しでうなずいたとき、同じタイミングでおばちゃんが「もういっちょいく?」と声をかけたので、おばちゃんは細っこいのに良く食べる子だねと笑った。


食事をたらふくいただき、甘いお茶まで飲ませてもらって、リコの緊張はだいぶ取れてきたみたいだ。
サラは、リコの手を握って歩きながら、おばちゃんからまたバトンタッチした案内係の盗賊の男の分析をしていた。

まだ年齢も若いし、ひょろっこいし、威厳も無い。
きっと下っ端に違いない。

食堂にやってきた下っ端男は、小奇麗になってワンピースを着た可憐な2人を見ると、しばらく見惚れて固まっていた。
「なにやってんだよ!とっとと行きな!」とおばちゃんに怒られて、かなりびびってた様子だし、おばちゃんの何番目かの息子かもしれないな。

  *  *  *

ぐるぐると歩かされながら、少しずつサラは迷路の全体像を把握していく。
下の方に地下水脈があるとしたら、下のエリアは風呂と洗濯場、そして水を汲む作業場だ。
湿気が案外多いから、岩山の上に行くほど寝室がメインになるだろう。

食堂から見える太陽の位置からすると、この岩山は南向きだ。
ネルギとトリウムの国境のあたり南方面には、たしか山脈があった。
砂漠からトリウムに入る直線距離上の国境エリアは、戦闘の最前線で、現在はシシトの砦をめぐる攻防が繰り広げられている。

本当なら、シシトの砦を避けて、北側の湿地帯、精霊の森の端ぎりぎりを通り抜けていく予定だった。
計画とは反対に、南側にずれてしまったのか。
まあ、おばちゃんの話からすると、ここの盗賊はトリウムに安全に辿りつくルートもコネも持っているに違いない。
あとは、どうやって盗賊の頭領を説得するかだけれど。

サラは、母の物語を思い出す。

確か……

「説得して、味方にした」の1行……

母よ!大事なとこをはしょらないでくれ!

サラが涙目になったとき、ここだと合図があり、目隠しと手枷を外された。

  *  *  *

「なんだよ、泣いてたのか」

下っ端男が、儚げな美少女であるサラの涙にうろたえた。
リコもサラの涙にビクッとして、もらい泣きしかけている。

「あー、お願いだから、泣かないで。頭領は、泣く女が一番嫌いなんだ」

サラは外された手を顔にもっていき、ひっくひっくと泣きまねをした。

「ほかにっ、頭領のっ、嫌がることってっ、なにっ?」
「そうだな、あとはうるさいとか、意味分からんとか、考えりゃわかるだろとか、よく仲間に怒ってるとこ聞くぜ。さ、これで顔ふけよ。早く覚悟きめて部屋入れよ?」

下っ端男は、サラに小奇麗なハンカチを渡すと、慌てて階段を下りていった。
ここは1本道だから、もう2人にしても逃げられないし、自分が泣かせたと思われるとまずいのでとっとと退散したのだろう。

ふむふむ。
数秒考えて、サラは「沈黙は金、ベートーベンは赤」作戦で行こうと決めた。

1.絶対うるさくしない。
2.必要なこと以外しゃべらない。
3.聞かれたことには明瞭簡潔に答える。

リコに「今のはウソ泣き。私がしゃべるからリコは黙ってて。泣いたらだめよ」とささやいて、サラは頭領の部屋の扉をあけた。

↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。










初めてサラちゃんのバディ系ネタ・・・その後胸筋トレに力入れていきます。これ後日談予定。(嘘)
タイトルの決戦は、戦いじゃなくて、ドリカムの方です。こっから甘くて吐きそうな怒涛のジェットコースター展開覚悟してください。
「ベートーベン」のとこは、個人的なオマージュなので、ピンと来た方以外はスルー推奨で。
次回、ついにサラちゃんのお相手キャラ登場です。だんだん甘くなってくので、しょっぱいオヤツのご用意を。
+注意+
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