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砂漠に降る花 作者:AQ
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第一章(11)盗賊の砦

後半、大人キャラおばちゃんがちょい下?生物?保健体育?な話しますが、苦手な方は長文「」内スルーしてください。
サラが意識を取り戻したのは、砂漠で盗賊に捕まってから数時間後。
気付いたら、簡素なベッドが1つ置かれた穴倉の中だった。
岩山を掘ったか、天然の洞窟を四角く削り取ったような、ごつごつとした岩肌に囲まれた小部屋だ。

サラは起き上がって、コキコキと体の関節を動かしてみる。
特別、体に痛みはない。
ラクタから落ちたときに、右の肘を打ったようで、鈍い痛みがあるが、所詮ラクタの背の高さは1メートル程度だし、やわらかい砂の上に落ちたのでたいしたケガではない。

意識が無かったから、荷物のように何かに乗っけられて運ばれてきたのだろうが、それなりに丁重に扱われたようだ。
女だということもバレたし、もしかしてと思ったが、衣服の乱れもないみたいなので、サラはほっと胸をなでおろした。

  *  *  *

身体検査を終えた後、サラはきょろっと部屋の中を見渡した。
自分の枕もとの小さなテーブルに、あるものを見つけると・・・サラはしゃがれた声で叫んだ。

「み・・・みみずっ!」

みが1つ多かったことも、今のサラは気付かない。

サラの理性を飛ばしたのは、1リットルほどの水が入った大きな水差しと、陶器のグラス。
その水差しの方を素早く掴み、ぐびぐびと一気に飲んだ。
途中でガホッと咳き込んで、口から溢れた水で布団が濡れても、気にしない。

飲んで飲んで飲まれて飲んで・・・すべて飲み終わると、サラは水差しを置いて大きくため息をついた。

ああ、水がこんなに美味しいなんて!
生きていて本当によかった・・・

老婆のようにシワシワだった肌が、蘇るようにハリを取り戻していく。
がさつく指で顔に触れるが、あの恐ろしいシワのくぼみは感じられない。
もう鏡を見ても大丈夫だろう。

心底満足したサラは、もう一度布団にぱふっと倒れこんだ。
ベッドはフカフカとも言えないが、当然砂よりやわらかく、なにより清潔だった。
少しじゃりじゃりするのは、自分の髪や体からでた砂だろう。

身から出た砂・・・いや、サビか・・・
そんなことを考えていると、穴倉をふさいでいた板の一部がガコッとはずれた。
サラはその瞬間、半分夢心地だった目が覚めた。

盗賊っ?

板には1人が屈んで入れるくらいの穴があいている。
そこからひょっこり顔を出したのは・・・

「サラ様っ!」
「リコ!」

涙を大きな瞳いっぱいに浮かべたリコが、小部屋に飛び込んできた。

2人は、有事には入れ替わるという約束も忘れて、何度も名前を呼び合い、無事の再会を喜び抱き合った。
しばらく抱き合った後、リコはそっとサラをはなし、ブルーの瞳を覗き込んだ。
サラも、リコがきっとあまり良くない情報を告げるのだろうと覚悟を決める。

「リコ・・・いや、サラ様。聞いてください」

リコは、サラのことを普通に呼んだ。
きっと、板の向こうでは、盗賊の誰かが聞き耳をたてているのだろう。
もう入れ替えなんて小細工は必要ないくらい、自分たちの情報は盗賊たちに筒抜けなのだと、サラは悟った。

  *  *  *

「私たち、これからお風呂に入って、食事を取らせてもらえます」

思いがけない言葉に、サラは猜疑心いっぱいでリコを見つめた。
捕虜や奴隷扱いになるだろう自分たちに、こんな高待遇が待っているわけが無い。

「その後で、私たち、盗賊の頭領に引き合わされるそうです」

再び涙をにじませたリコ。
サラは、自分が意識朦朧としながら、盗賊たちに何を聞きたかったのか、ようやく思い出した。

「サラ様が、なぜあの状況で、盗賊の頭領に会いたいと言われたのか、私には分かりません。でも・・・私はサラ様を信じています」

サラの手を握りしめたリコの手は、震えていた。
リコだって、普通の女の子だ。
本物のサラ姫に仕えて、ずっと王宮で過ごしてきたんだから、盗賊なんて知らないに決まっている。
サラだって知らないけれど。

乱暴で残忍で、砂漠で死んでいたほうがマシくらいのひどい目にあうかもしれない。
でも。
サラは、リコの手をそっとはずすと、もう一度抱き寄せて、ささやいた。

「大丈夫、リコのことは、私が守る」

リコは、サラ様は男前過ぎですよと呟いて、泣き笑いを浮かべた。

  *  *  *

その後、風呂だと言われて連れて行かれたのは、岩山の中の階段をぐるぐると下りて行った先。
盗賊の1人に目隠しをされ、手を縄で縛られて連れて行かれた。
盗賊のグループには女性もいるらしく、風呂の入り口で女性に引き継がれ、縄や目隠しをとり、何日も着たきりの汚れた服をぬいで、湯殿へ進む。

風呂といっても湯船につかる訳ではなく、蒸し風呂で汗を流して、布で垢をこすって、最後にお湯を少しかけるだけという節水タイプだ。
当然髪の長いサラは、その程度のお湯では足りない。
肩につかない程度の髪のリコが、バシャリと頭にお湯をかける姿を横目で見ながら、サラは「髪が短いと、省エネ節水シャンプー可能か」と羨ましく思った。

お風呂にいる間、恰幅の良い下町おばちゃんタイプの盗賊は、大人しい2人のことを、すでに新入りの仲間と思ったらしく、親しげに話しかけてきた。

「あんたらみたいな若くて可愛いお嬢さんは、奴隷として売られないだけマシだよ。ここの頭領は人間ができてるからね。男たちも乱暴者だけど気のいいやつだよ、あああっちの方も乱暴だけどきっとすぐになれるさ。もちろん子どもができても売らずに面倒みてくれるからね。誰の子か分からないんで、全員の子として育ててるんだよ。あたしの子も確か10人、いや11人だったかな?難産だったのは1人目だけで、あとはすんなり出てきたよ。なんならあたしがとりあげてやるから、心配しないでいいさ。あたしなんて、1人目は生んでたあたしが自分でとりあげて、へそのおちょんぎったんだからね。その子は女の子だったんだけど、健康に育って今じゃ12人の母親さ。いや、13人だったっけ?みんなそれくらいポコポコ産んで、誰も皆家族みたいな感じで楽しくやってるよ」

というようなことをずっと言い続けて、リコをドン引きさせていた。

  *  *  *

一方サラはというと、案外真剣におばちゃんの話を聞いていた。

おばちゃんが産んだ子どもが10人、いや11人?
そのうちの半分が女の子として、5人としよう。
5人の女の子が育って、またそれぞれ産んだ子どもが12人、いや13人?
そのうちの半分が女の子として、6人としよう。

今この盗賊の中に、おばちゃんルートで何人の女がいるでしょーか?

正解は、


(考え中っ)

(考え中っ)

(考え中っ)


……そうだね、36人だね。

さらにそれと同等以上の男がいる。
おばちゃんの年齢的からすると、孫にあたるまだ小さい子ども達もたくさんいるはず。
この浴室の広さからみても、かなりの大所帯に違いない。

しかも高齢になった盗賊は、トリウムに捨てられるそうだ。
捨てられるというのは、おばちゃんの「そろそろあたしも捨てられる年かねえ、まあそれも楽でいいっちゃいいけどね」という文脈からして、本当は送り出されるということだろう。
老後は、過酷な盗賊稼業を引退して、便利な街に住み移るということだ。

決して高齢社会にはならず、安定したピラミッド型。
ある意味、理想的な社会だ。

  *  *  *

サラは、舌がのってきたおばちゃんに対して、さらに気持ちよくさせるような大げさな相槌をうち、さりげなく質問を投げかけ、着々と盗賊たちの情報を入手していく。

どうやら、この岩山はもともとネルギ国家が運営していた鉱山だった。
ずいぶん昔に鉱石が取れなくなり、誰もいなくなった跡地に、一握りの盗賊が住み着いたのが始まり。

そして、重視すべきは水だ。
捕虜に水差し1杯の水を簡単に与えられる。
節水といっても、手桶に何杯かのお湯も使える。
この鉱山のどこかに、豊富な水脈があるに違いない。

水は、盗賊の資金源にもなっているはず。
物販で資金が稼げるから、盗賊は無理な強奪や奴隷の売買をしなくても、この場所を守るだけで繁栄していく。
女に風呂を使わせたり、まだ働けない子どもを養える程度には。

砂漠で倒れた旅人をさらって、仲間に加えていくのは、血が濃くなるのを避けるためか、新しい知識や発想を取り入れるため?
盗賊たちは、自分たちの理想の国家を構築していく過程にあるのかもしれない。
それらを考え、コントロールしている人物がいる。

やっぱり私、頭領に会うのが楽しみだ。

不安いっぱいのリコをよそに、サラは少しだけウキウキしていた。

  *  *  *

その頃カリムは男湯で、ひげもじゃの男から「おめえ、なかなか見込みあるぜ」と言われ、肌がヒリヒリするほど体をこすられていたのだった。
↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。










人間も動物だということを言いたかった・・・わけではないんだけど。おばちゃん好きです。
サラちゃんはちょっとずつ脳みそ復活してきてます。外見もやっとね。カリムは・・・ゴメン、ヒゲ出したかったの。
次回、祝サラちゃん天使ルッキン復活。マジで恋する2回前?
+注意+
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