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異世界人の手引き書  作者: たっくるん
第一章 帝国黎明期
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8 魔法の師匠

部屋に聞こえてくる鳥の囀ずり……優しい朝日が入って来ている

暑くもなく、寒くもなく穏やかな陽気だ

ベッドから起き上がり、窓の外を見ると抜けるような青空と緑がキラキラと光っていて眩しいくらいだ……


「結局……一睡も出来なかったなぁ……」


キラキラと光っていたのは俺の目だった

涙が止まらないよ……


その後、メイドさんが用意してくれた朝食を済ませて部屋に居ると青いローブの男が来て魔法の訓練場所に案内される

そこは屋敷の中庭だろうか?手入れされた芝生の広い場所

なるほど、ここで魔法の練習をするわけか……


いよいよ始まる

一年間で結果を出さなければ俺はお払い箱だろうな、イケメンに教わるのも嬉しくないが……

だって自分の容姿に自信が無い俺にはイケメンの相手は辛すぎる


「さて、早速だが始めようか。私はあなたの師となるソニアと言うものだ。辺境伯軍の魔法師団長でもあり、あなたに教えるのに最適……とは言わないが悪い相手では無いだろう」


イケメンで実力も有るのかよ……勝ち組ってやつか


「はい。よろしくお願いいたします。師匠」


「うん。では最初にあなたの魔法適性を調べてみようか。この水晶玉を両手で持ってみなさい」


そう言って渡されたのは20cmくらいの水晶玉だ

俺が手に持った瞬間、その中に白い光の玉が浮かんできた


なんだよ、割れるとか激しく輝くとかじゃないのかよ!

白い光とか…これ才能無いのかよ俺は…


がっかりしながらも師匠を見ると人を見下したような、蔑んだような、哀れみの笑みを浮かべていた……


はぁ……やっぱり駄目なんだな、俺は……


「素晴らしい!ふふふ、光属性!しかも純白の光とは!過去の大戦で戦った勇者様と同じとは、やはりあなたは一味違いますなぁ。私も文献では見ましたが、この水晶が白く光るのを初めて見ましたよ」


……誉められてるのか?これ?顔とセリフが一致してないぞ師匠


「ひ、光属性ですか。それはどのような?」


相変わらず小馬鹿にしたような笑みで師匠は頷いた


「光属性とは他の5属性、火、水、土、風、闇に比べて、防御・そして回復に特化した魔法を習得出来るのですよ。他の属性ではこうはいきません。我が帝国にも光属性の使い手は居ますが数える程度しか居ません。非常に珍しい属性です」


……防御回復かよ

こりゃ魔法チートで無双って訳にはいかないのか……くそっ!


「ついでに光属性の使い手は毒・麻痺・睡眠等、所謂状態異常に対して非常に強い加護を持っていて、高位の使い手ならば全て無効化するのですよ。まあ、これはオマケのような能力ですがね」


へっ!?いやいや、充分チート性能じゃないですか!師匠!


でもオマケ程度の認識ならそれでいい、俺にとっては切り札になる

最悪、状態異常無効ならこの世界でサバイバルしながら生きて行ける

毒キノコ、腐った肉どんと来いである


残飯あさりも捗るね!嫌だけどさ……


「では、早速魔法を使ってみましょうか。簡単ですよ?光属性には呪文の詠唱や動作等は必要ありません。魔力を込めてやりたいことを思い浮かべれば良いのです。まあ、師としてはこれ程教え甲斐のない属性は有りませんがね」


そう言って俺の肩に手を置く

何だろう……何か暖かいものが身体に入って来るような?


「あの、師匠……この入って来てるのが魔力ですか?」


心底、残念なものを見るような顔で師匠は語る


「そうです。それが魔力です。その魔力を意識しながら…この水晶玉と同じ大きさ、柔らかな光、それを目の前に浮かんでいる……」


言われるままに想像していると、目の前に実際に浮かんでいたのだ……光の玉が……


ニヤリ


ひっ!?だから怖いんだよ!イケメンがそんな悪い笑顔するなよ!


「そうです。それが魔法ですよ、簡単でしょう?まあ、光属性なのに魔法が使えないなんてものは聞いた事有りませんがね。後は私の補助無く出来るように練習しましょうか?」


イチイチこの人は嫌味ったらしいよなぁ

せっかくの初魔法だったのに……

俺は誉められて伸びる子なんだ!豆腐メンタルなんだよ……


「はい!やってみます師匠!」



実際に師匠の補助なしでも簡単だった……

一度魔力を感じたら、なぜ今まで解らなかったのが不思議でならない程、自然に感じるし使える

師匠が教え甲斐がないと言ってたのがよくわかるわ


「まあ、光属性自体が簡単ですからね。そもそも他の属性魔法使いでも簡単な光属性魔法は使えるくらいなんですよ。適性なんてなくても普通に使える魔法なんですよ。光を出して明るくするなんて、誰でも出来るんじゃないですかね?」


俺が光の玉を出したり消したり練習してるのにこのセリフである

誰でも出来るような事を練習してるのか……


「しかし、その光属性が適性となると話が違います。詠唱や動作の必要無く味方に防御魔法を使ったり回復出来たり。出来ることの幅が一気に広がって、まさに英雄の為の魔法と言っても文句なしな魔法になるんですよ。ですから……」


うん、良い師匠だとは思うんだよこの人さ

言葉にトゲが混ざったり、見下したような笑いを浮かべたり、満面の笑顔が悪役顔じゃなければさ






「ですから……私の娘の婿殿にはピッタリの魔法なんですよ。期待していますよ?婿殿?」








そう言って笑う師匠を見ながら『娘はどうか似てませんように』と祈りながら意識を失った



死にたくない……






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