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等身大に、奇々怪々
作:怠惰



2.太陽、愛玩動物につき



「マジで? うわー、なんとかなんねーの?」

「悪いが今回はちょっと厳しい。俺が抜けると他に人がいないらしいんだよ」



午前の授業が終わり学食へと向かう途中、亮二に誘われた日曜のとあるバンドのライブイベントに行けなくなったことを伝えた。

目立ったヒット曲も無く知名度もあまり高くないが、他に無い独特の雰囲気を持っていて根強いファンが多く、亮二もその一人らしい。そのバンドのライブチケットが手に入ったので、俺達四人で行こうという話になっていたのだ。


「悪いけど他のやつ誘ってくれ。最悪うちの妹に話を通しても構わんが」

「いや、リっちゃんの耳に合うような音じゃないと思うし、そこは俺でなんとかしてみんよ」

「そうか、悪いな」


券売機でA定食の食券を購入し、調理場のおばちゃんに渡す。
俺は普段弁当を持参しているのだが、昨夜の献立やおかずの消費具合によって今日のように学食になることがある。
出された椀と皿をトレイに乗せ席を見渡すと、既にカレーを食べ始めている亮二と弁当の包みを開いている徹の巨体が見えた。

「よ、徹。……今日もまた随分と愛の溢れる弁当だことで」

徹の隣にトレイを置き、弁当の内容を覗いてからかい半分に話し掛ける。

「そ、そんなんじゃないって……」

「いやいや、いいことだ。麗しき姉弟関係、世は今も昔も愛によりてまわりけり〜、ってか」

「別にそんなたいしたことじゃないよぉ」

綺麗に焼け色のついた玉子焼きを口に運びつつ、徹は困ったように眉をひそめる。



三人の姉に可愛がられて十六年、190cm超の巨体に秘めるは謙虚な心と乙女な思考。無垢の胴着に身を包み、右の腕にフライパン、左の腕に裁縫用具。
刮目せよ、彼の者の名は楢木徹、我等が誇る天下無二の萌え要員なり!(ただし変化球)


……とまぁ阿呆くさい煽り文は捨て置き、この楢木徹なる男、ニメートル近い身長に対し体重は75キロと細身、かつ童顔である。

年の離れた三人の姉に小さな頃から料理やら裁縫やらを手取り足取り仕込まれ、今も休日には家族に昼食を作ったりしているらしい。
また空手の段持ちと隠れた武闘派でもあり、なかなかアンバランスなスペックの持ち主である。

「姉さんたちも仕事があるし、そのついでに作ってくれてるだけだよ」

しっかり咀嚼して嚥下した後におっとりと徹は語る。その辺りも姉仕込みだろうか。

「いや、肉に野菜、豆類、海藻と実に手の込んだこの献立。マサの冷食がぎっしり詰まった弁当とは格が違う。同じ弁当というカテゴリに分類することすらはばかれる。あえて言おう、ついでに作るってレベルじゃねーぞ、と!」

「それで僕にどうしろと……」

「つか、俺のお袋に喧嘩売ってんのかお前」

「マサの弁当に足りない物はっ! 情熱思想理念頭脳優雅さ真面目さ勤勉さ! そして何よりもぉっ!」

「愛が足りない?」

「決めを取られた!? しかもよりによって徹にっ! ……はっ、この状況。俺が遅い!? 俺がスロウリー!?」

「飯の時間くらい黙れんのかお前は」

微妙に分かりにくいネタだし。

「しかし徹にこのネタが通じるとは……お美事にございまする」

「いや、丁度見てたから……って、それも元ネタがあるの?」

「気にするな」

そっちは徹が見たら失神しそうだ。知らぬが仏。

「それより徹、日曜なんだが……」

「うん、コンサートだっけ?」

「ライブな。いや、間違ってないといえばそうなのかもしれんが。
ちょっとバイトが抜けられなくて、悪いけど行けなくなった」

徹は眉をひそめ、むーと残念そうに唸る。

「そうかー。でも、また今度暇が出来たら皆でどこか行こうよ。今回は仕方ないけどさ」

「応、とりあえず日曜は俺の分まで楽しんで来てくれ。土産は温泉饅頭がいいな」

「が、頑張るよ!」

「何をだ! んなもん売ってる訳ねえだろ、考えて返事しろよ徹!」

「饅頭……そういえば那佐くんは?」

「今お前の頭の中でどう話が繋がったのか分からんが、そういえば遅えな、那佐のヤツ」
首を伸ばして亮二がきょろきょろと辺りを見回す。

「さっき食券に列んでたから、今頃順番待ちじゃないか?」

「どれどれ……お、ホントだ。ありゃまだ五分はかかるな」

「んじゃ急いで食おう」

「ひどっ! そこはゆっくり食べてあげようよっ」

「なに、冗談だ。マイコォの鼻=着脱可能というようなもんだ」

「あながち冗談でもねえ気もするぞ、それ……」



そんな昼休み。












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