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神に魅入られた少年と異世界の日常 作者:櫻 紅葉

第一章 ~ 第一節『深層世界』~

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プロローグ

「…」
「そんな悲しい顔をするな…すぐ帰ってくる。」

 少年は目の前の今にも泣きそうな少女の頭を優しく撫でる。

「妾は何時まででも待ってるぞ。寿命は長いからな。それは御主もであろう?」
「でも……もし…戻ってこれなかったら…」
「大丈夫だ。規模は違うが実験は何度も成功している。それに…何と言われようが戻らなきゃいけないんだ。」
「何故…そんなに…ずっと此処に居れば良いじゃないですか…」
「妾も理由は気になるな。」
「理由…は…」

 2人の問いに対して、少年は何かを言おうとしたが、口を閉じた後、左手で口を覆い視線を少し2人から外す。

「なんだ?その理由は面映いものなのか?」
「いや…別に…」
「妾の目は誤魔化せぬぞ。」
「…そうですね。貴方様のその仕草は恥ずかしさを誤魔化すものですから。」

 少年の様子に、少女の横に居た女性はニヤニヤとした笑みを少年に向け、先程まで泣きそうな表情をしていた少女もくすりと笑った。

「…そうか…無意識だったな…」

 少年は口を覆っていた手でそのまま顔を覆う。

「それで、理由は何なのだ?」
「…大切な奴等が居るんだ。そいつらを放って置けない。」
「…それは…私達よりも…ですか…?」

 少女は泣くのを我慢し、少年の目をじっと見て尋ねる。

「…勿論、お前らの事も大切に思っている。…だが、それと同等に彼奴らも大切なんだ。」
「…そう…ですか…」

 少女は少年の答えを聞き、暗い表情で俯く。

「此奴は、大切な者はすべて守る。そう言う奴だ。…これまでもそうであったようにな。心配することはない…そうであろう?」
「…そうですね。」

 女性が少女の肩に手を添えながらそう言うと、少女も顔を上げ女性と少年を交互に見ながらそう言った。

「まぁ…そうだな。お前等の事を放って置くつもりも毛頭ない。それに、俺としてはまだ足りないが、今でも1往復くらいならできるしな。」

 少年の答えに女性は悪戯な笑みを浮かべる。

「まだ足りないと言うとは…御主にはまだ伸びがあるのか。」
「ああ。一応増え続けてるぞ。」
「全く、御主は何処までイレギュラーな存在になるのだ?…まぁそれは兎も角…本当にあ奴等には知らせなくて良かったのか?」

 少年の答えに呆れた表情をした女性だったが、その表情を真剣なものに変え少年にそう尋ねる。

「ああ。彼奴等には2人から伝えてくれ。…まぁ、すぐに戻ると思うけどな。」
「分かった。伝えておこう。」
「…本当に…戻って来て下さるのですね…?」
「ああ。必ず。」

 不安げな表情で尋ねた少女に、少年は少女の目を見つめ返事をする。

「…分かりました。貴方様が帰るその時まで、私達は城を守り待っています。」
「妾達に任せるが良い。」
「…頼んだ。」

 少年のその言葉に引き締まった表情で頷く2人。

「じゃあ、俺はもう行くぞ。」
「はい。」
「さっさと行って、さっさと戻って来い。」

 少年は笑顔で見送る少女と女性の頭を撫でると、床に書いてあった魔方陣の中心へ移動する。
 暫くすると魔方陣が光り始めた。

「行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
「行ってくるが良い。」

 見送られた少年は光に包まれながら消え、先程まで光を放っていた魔方陣も消えた。



「…許せ。」

 暫くして、誰も居なくなったその部屋で、女性は誰にも聴こえぬ声でそう呟くのだった。

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「…ん。」

 眩しさに目を開く。

 少年が辺りを見回すと真っ白な空間。そして、周りに人が倒れている。30人程だろうか。

(なんなんだここは…)

 そんな思いを抱きながら、少年は現状を整理する。

(ほんとに何もないな。あるのは…台座だけか…)

 少年は台座に目を向ける。なにか乗ってる訳でもない。ただの台座のようだ。

(それにしても、ここ妙に明るいな…)

 眩しさに目を覚ましたが、この部屋ライトがある訳ではない。部屋の白さで異様な眩しさが生じているのだ。

(…これあれか、もしかして今流行りの異世界召喚とかそういう感じか…)

 なんて考えを巡らせながら、少年は何故この現状に至るのか思い返すのだった。

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「………ふぁあ…」

 カーテンから除く太陽の眩しさで目を覚ます。

(眠いな…)

 そう思い、まだ半開きの目を閉じようとした--が、

御空(みそら)ーっ。何時まで寝てるのっ、早く起きなさいっ。今日入学式でしょーっ。」

 母の声に叩き起こされる。

「早く起きないと朝食とる時間無くなるわよーっ。それに、待ち合わせしてるんでしょーっ。」

(…入学式…待ち合わせ…そうだった…)

 まだ冴えないていない頭を働かせて、学校へ向かう準備をする。母親に急かされながら朝食を取っていると…

 ピンポーン

 どうやら迎えが来たようだ。

(あかね)ちゃん青治(せいじ)君いつもごめんなさいね。もう少しだと思うんだけど。」
「大丈夫ですっ。まだ遅刻する時間じゃないですからっ。」
「それに、いつもの事だしなぁ。」

 御空が洗面所で身支度を整えながら

(高校生か…)

 御空がそんな事を考えて呆けていると--

「御空ーっ、早くしなさいっ。2人が迎えに来てくれたわよっ。」

 母の声で現実に引き戻され、玄関に向かう。そして母に見送られ家を出る。

「2人とも待たせてごめん。」
「まぁいつもの事だし気にすんなって。」
「うんっ。9年間も一緒だからもう慣れっこだしっ。」
「…毎度申し訳御座いません。」
「はははっ」
「ふふっ」

 御空、清治、茜の3人は家が近く、幼稚園の頃から一緒の、属に言う幼馴染みだ。
 日常的な会話をしながら15分程歩くと、学校に着いた。3人が今日から通う学校はかなり大きな高校だ。今年の1年生は11クラスあるらしい。
 御空が中庭に張り出されている紙でクラスを確認すると6組だった。青治も6組、茜は7組だった。

「御空は6組か。俺と一緒だな。茜は7組だけど隣のクラスだし、良かったな。」
「そうだねっ。同じでないのは残念だけど、11クラスあって隣だっただけラッキーかなぁ。…それより、さっきから視線を感じるんだけど…」

(あぁ、それは…)

「2人のせいだろ。」

 御空の幼馴染み2人は、属に言うイケメンと美少女だ。
 青治は爽やか系だが優しさのあるイケメン顔をしている。髪は短めに切り揃えてられていて清潔感がある。何より高身長だ。180cm弱ある。そして、運動神経が良い。だからきっと、学校が始まったら更に騒がれるだろう。
 茜は綺麗というよりは可愛い感じだ。柔らかさを感じる綺麗な茶髪をポニーテールにしている。身長は大体158cmくらいでスタイルが良い。中学の時は可愛い顔に反して毒舌な所が、ギャップ萌えとやらでモテていた。
 視線を集める2人を横目に、御空は悪戯な笑みを浮かべる。その理由は…

(…残念だったな。2人は--)

 付き合っている。

(まぁ、小学校の時から青治は茜に惚れてたしな。だから俺は別に知らされた時驚かなかったな。)

 御空がそんな事を考えていると、

「ちょっとっ。その発言、聞き捨てならないよ?2人のせい(・・・・・)ではないでしょっ。」
「そうだぞ。お前のせいでもあるぞ」
「ん?なんで、俺が関係あるんだよ。」
「はぁ?お前今頃それ言うかのか。」
「ほんと…呆れるなぁ。」
「…?何の話だ?」
「「…はぁぁ…」」

 2人曰く、御空も小中とモテていたらしい。実は、御空も青治とは違う系統だが、青治に負けず劣らずのイケメンなのだ。
 身長は青治より低いものの、175cmはある。御空は、少し長めの黒髪なのだが、猫目であまり笑わないため、初対面ではキツい印象を与える。しかし、暫くすれば偏見は無くなる為、友達はそれなりに多い。そして、御空の瞳の色は紺色だ。生まれつき紺色の瞳は、光を受けると鮮やかな蒼色に変わる。その蒼さが、御空のクールな印象を与える端整な顔立ちを引き立てる、そうだ。(御空ファン談)

(何故俺は、溜め息を吐かれているんだ?)

 これらの事について、本人は全く自覚なしだ。よって、女子の好意にも気付かない。御空曰く、別に自分は鈍感ではない。唯、女子に特に興味を持ったことがないだけ、だそうだ。その為、告白したら、した方が傷付くことを見計らった幼馴染み2人が、御空への告白を止めていたらしい。そして、「御空には告白をしてはならない」というのが御空ファンの暗黙の了解になったそうだ。それが、本人が知らないだ。

「ほんとに…」
「お前って奴は…」

 茜曰く、その面倒くさがり屋なところがクールで良いと、言われていたらしいが。
 中学の時はファンクラブもあったらしい。勿論、本人は全く知らない。

「まぁ、俺には関係ないな。」
「うぅん…まぁ、いいっかぁ。」
「そうだな…。言っても無駄な気がしてきた。それにそろそろ入学式始まるしなっ。」
「そうだね、行こっ。」


 そして、入学式の席順が書かれた紙を貰い入学式に出た3人は、入学式後、自分達の教室で自己紹介や、始業式後の指導を受け、学校での1日を終えた。因みに、御空は青治と席が隣になった。青治の苗字は浅葱(あさぎ)で御空の苗字は烏羽(からすば)だから近いとは思っていたが。もし仮に、茜も同じクラスだったら白百合(しらゆり)だから近かっただろう。

(一番後ろで隣同士か…〝あ〟の奴多過ぎるだろ…)

 御空はそんな事を考えながら青治と一緒に隣のクラスの茜を回収し、学校を出た。
 因みに、茜を回収しに行った時、御空や青治が、茜の周りに居た女子と目が合い、目が合った女子が頬を染めていたりするが、御空はそんなことは気付いていない。
 その後、3人で昼食をとり、新学期必要な物を揃える為に買い物へ行った。そして「次いでに…」と、茜の買い物に付き合わされたり、茜が行きたいと言ったカフェに連れていかれたりしたのだった。



 家に着いたのは夕方だった。学校が終わったのは午前中だったから、かなりの時間連れ回されていたのだ。

(まぁ、いつもの事だし、必要な物買えたから良いけどな。)

 そんなこんなで、家に帰った御空は、夕食をとったり明日必要な物を準備したりして、1日を終えた。

(10時か…なんか今日は眠いな。連れ回されたからか?まぁ良いか。明日遅刻は困るしな…今日は早く寝るか。)

 そうして、御空は眠りに着いた。

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(…特に何もないな。)

 思い返したが現状に至る原因は全くわからなかった。
 周りにを見ると20人程目を覚ましていた。様子を見ると皆混乱しているようだ。御空が回想してる間に目を覚ましていたらしい。
 そして、御空の横でも声がした。

「…んぁ?」

(間抜けな声だな。)

 御空がそんな失礼な事を思いながら、その声がした方へ目を向けると…

「…青治?」
「うぉっ!御空!お前なんでっ!」
「それはこっちの台詞。俺にも分からない。というか、声が大きい煩い。」
「ご、ごめん。驚いて声がでかくなっちまった…」
「まぁ良い。」

(…ん?待てよ。青治が居るってことはもしかして…居た。)

 御空は小さく溜め息を吐く。

(幸せそうに寝てるな…)
「青治、茜を起こせ。」
「えっ、茜?--あ。」

 茜は青治の隣で寝ていた。すやすやと幸せそうに眠っている。

「茜ー、起きろー。」
「…んん?…ここどこー?」
「ごめん。それは俺にも御空にも分かんないんだ。」
「あぁ、--だがこれから分かるようだ。」

 茜を起こしている間に全員が目覚め、それぞれが様々な感情を露にしている中、台座が白く輝いた。
 そして、白いワンピースに柔らかくウェーブがかかった金色の髪、好き通った緑色の目をした女の人が現れた。

(正に女神って感じだな…)

 そして、その女の人は口を開く。

「私の名はアージェント。アージェとお呼びください。そして私は、女神と呼ばれるものです。」
お読みいただきありがとうございました。
とりあえずプロローグでした。
登場人物の名前が読みにくいですが、ちょっとした関連性があります。これから続々と登場人物も増えていくと思うので是見つけてみて下さい。

感想、レビューよろしくお願いします。
次回更新は未定です。できるだけ早く更新できるようにしたいと思っています。
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