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【完結絶対保証】ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【第三部:フォーの迷宮編】 作者:日比野庵

第三部:フォーの迷宮編

166/191

19-166.カラスマル

「何だか、誰かに覗かれているような気がします」

 リムが不安そうな瞳をヒロに向ける。

 何か居るのか。ヒロは振り向いて後ろを確認するが、特に何も見あたらない。先導するソラリスにも確認するが、ソラリスは黙って首を振るばかりだ。

「心配要らないよ、リム。バリアもある」

 ヒロは念のため、リムもカバーできるように隊列の横腹にもバリアを張った。既に自分の後ろに展開していたバリアと繋げようかと思ったのだが、攻撃することを考えて止めた。万一攻撃でバリアを解除するようなことがあっても、バリアがいくつかに区切って展開すれば、必要なバリアだけを解除すればいいからだ。

 ヒロは自分の後ろに一つ。隊列の左右に一つずつの計三つのバリアを張った。最初、左右のバリアは隊列の後ろ半分に張っていたのだが、角を曲がる時にバリアがつっかえてしまう事がわかり、左右のバリアは人一人分程度に幅を狭めている。左右のバリアと背後のバリアの間に隙間が出来るが仕方ない。不意打ちに備えることができれば良いのだ。ヒロは死角となる後ろのバリアだけは大きく張っている。背中からいきなり撃たれても、最初の一撃くらいは防いでくれるだろう。

 地図に従って通路を進む。この角を右に曲がれば第三階層へと続く階段がある筈だ。突然、先頭を行くソラリスが右手を上げ、足を止めた。隊列が止まる。ソラリスは後ろを振り向いて静かに言った。

「出たよ。モンスターだ。準備しな」

 ソラリスは左腰の険をすらりと抜く。カダッタの道具屋で受け取った長剣だ。たしかカラスマルと呼んでいた。刀身の上半分が両刃で下半分が片刃の不思議な剣だ。その白銀の刀身が通路の所々に灯る魔法の青い炎を受けてきらりと光る。

突き当たりの壁に、モンスターの影らしきものが映る。四つ足のようだ。


◇◇◇

 ――グルルルルル……。

 紅い眼をギラつかせた、漆黒の毛並みの狼が三体。四つ足の正体は黒曜犬だった。以前に襲われたものよりも二周り程大きい。口を大きく開け、長く伸びた赤黒い舌から唾液が滴り落ちる。

 エルテは迷宮内の薄いマナを懸命に集め、風のスクリーンを張ろうとした。しかし、やはり、狭い通路ではマナが足りなかったのか、エルテは、防御スクリーンは諦め、風の刃に切り替えた。

 エルテの呪文が変わったことに気づいたヒロは、リムとエルテを下がらせ、彼女達の前に出る。ヒロは両手を広げ、左右の手の平に炎粒(フレイ・ウム)を発動させた。最初は様子見で、小さい炎玉にし、段々と大きくする。魔法発動そのものは特に問題ないようだ。

 ヒロの魔法は、彼自身の膨大な体内マナ(オド)を使って発動する。マナを集める必要も、魔法詠唱も必要としない。この世界では隔絶した存在であるのだが、ヒロにまだその自覚はない。

 ヒロは炎粒(フレイ・ウム)を等身大にまで大きくしようとしたが、直ぐに止めた。狭い迷宮の通路では、味方を傷つけてしまう恐れがある。

「ソラリス、こっちはオーケーだ」

 長剣(カラスマル)の切っ先を下げ、下段の構えを取ったソラリスの背中に、ヒロは声を掛ける。こちらの準備は出来た。

 黒曜犬は前足を伸ばして低く伏せの姿勢を取る。今にも飛びかからんばかりだ。

「いくよ」

 ソラリスがそう言うが速いか、三匹の黒狼に大きく踏み込む。長剣が下から斜め右上に空を切る。シュンという風切り音が鳴った次の瞬間、黒狼は弾け飛び、壁に叩きつけられた。声を上げる暇すら与えない。黒曜犬は()()()()()と化していた。ソラリスの剣が狼達を瞬時に真っ二つにしたのだ。濃い赤い血が壁に塗られ、その上に張り付いていた足付の肉片がずるりと滑り落ちた。

 ――!!

 ヒロは息を飲んだ。余りのことに言葉もでない。確かに剣は黒曜犬に触れてもいなかった筈だ。ヒロは自分が見間違ったのかと思ったが、ソラリスがそれを否定した。

こいつ(カラスマル)を使ったのは久し振りだけど、相変わらずの切れ味だ。流石だね」
「ソラリス、剣は黒曜犬に触れてもいなかったように見えたんだが……」

 ヒロは先程発動した炎粒(フレイ・ウム)を解除して、ソラリスに尋ねる。

「あぁ、こいつ(カラスマル)が生み出す衝撃波で斬ったのさ。それ程距離が出る訳じゃないけどね。黒曜犬こいつらくらいなら斬れる。派手にやると、迷宮が崩れるかもしれないから、大分手加減したよ。それでも十分間に合ったね」

 ソラリスが少しほっとした様子で答える。間に合うも何も十分過ぎる破壊力だ。あれで手加減したとは。

「死骸は?」
「ほっとけばいいさ。どのみち別のモンスターに喰われちまう」
「……そうか。先に行こう」

 ヒロ達は角を折れ、突き当たりの階段を降りた。
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