挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
【完結絶対保証】ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【第三部:フォーの迷宮編】 作者:日比野庵

第三部:フォーの迷宮編

158/191

18-158.君は元々神官になりたかったのだろう?

 
「あの魔法は青の珠(ドゥーム)といって、回りのマナを集めて凝縮する魔法ですわ」

 エルテの答えは、ロンボクの説明の通りだった。

「シャローム商会で言っていた、君が幼い頃大司教から教わったという……」
「そうです」
「そうか。少し、確認させてくれ。マナを集める魔法という事だけど、それは体内マナ(オド)であっても集めてしまうのか?」
「はい」
体内マナ(オド)が無くなれば死ぬと聞いている。ということは、例えば、誰かの体内マナ(オド)を吸い取り尽くしてしまえば、その相手を殺すことも出来るということかい?」
「……青の珠(ドゥーム)は周囲のマナを吸収しますけれど集めたマナを解放して、魔法発動に使うことが出来ます。そうすることで通常では不可能とされる究極魔法をも発動する事が出来るようになります。歴代の大司教様達が死者を甦らせるなどの奇跡を起こし得たのは、この青の珠(ドゥーム)を使ったからですわ」

 そこまで言って、エルテは目を伏せた。

「けれど、ヒロさんの仰るとおりこの魔法(ドゥーム)は諸刃の剣。治癒に使えば人々を救う奇跡の魔法になりますけれど、攻撃に使えば全てを死に至らしめる悪魔の魔法となります。ですから秘奥義なのです」

 エルテは空を見上げ、満天の星空に語り掛けるようにいった。

大司教(グラス)様はこう仰いました。『この魔法(ドゥーム)は使い方を間違えれば自分の身を滅ぼすものとなる。貴方(エルテ)が復讐心からではなく、真にラクシス家を再興する資格があるかどうかは、この魔法を正しく使えるかどうかに掛かっている』、と。大司教(グラス)様は、私にこの魔法(ドゥーム)を教えた後、私が間違った方向にいかないかどうかずっと見守って下さったのです」

 エルテの頬に涙がつたっていた。もし、エルテが魔法の力に溺れ、その力を思うがままに振り回していたとしたら、一体どうなっていただろうか。きっと、危険人物として討伐対象になっていたに違いない。そうならなかったのは、彼女自身の自制心の強さとそれを育んだ神官教育の賜あっての事だ。

「エルテ、君はラクシス家を再興した後、どうするんだい? 君は元々神官になりたかったのだろう?」

 ヒロはエルテがシャローム商会で自分に語ってくれた身の上話を思い出しながら問いかけた。(ウラクト)の汚名をそそぎ、ラクシス家を再興する。それはいつも困難な道を選んできた彼女(エルテ)の選択だ。それをどうこうすることはできない。それはヒロ自身も十分承知していた。しかし、彼女(エルテ)にとって、自分の本当の気持を押し殺したまま、この先を生きていくのがいいのだろうか。そんな疑問がヒロの頭に浮かんでいた。

 冒険の便宜を図る為、神官服を身に纏ったエルテだが、その姿は本職の神官の如き威厳を備えていた。エルテは貴族よりも、神官の方がずっと相応しく見える。貴族に列せられ、政争明け暮れる世界に踏み入ってしまうくらいならば、神官として生きた方が幸せのように思えた。

 エルテは答えなかった。ヒロもそれ以上何も言わなかった。ただ天空の蓮月が優しい七色の光を二人に投げかけていた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ