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神封巫女伝 作者:栗田隆喬
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第二章(11)


  ***

 心のうちを見透かすように、リリルルはじっとアミネを見つめている。底知れぬ闇が赤い瞳からは感じられた。
 このまま吸い込まれてしまいそうな引き付けるものがあって、アミネはどうしても目を逸らすことができなかった。
「おぬしが『外されっ子』になったのも、リリルル様はすべて承知。そのうえでの相談じゃて」
「外されっ子……」
「そうじゃ。イアの大巫女に、おぬしは精霊を感じ交わる力も、神殺しの力も封じられとる。巫女にありながら、力を外されとるからの、外されっ子じゃ。……わしなら、おぬしの外された力を取り戻すことができる。その力をさらに強めることもできる。さすれば、あらゆる森の神を殺し、精霊を滅ぼし、従えて、このような位におぬしを落とした大巫女に見せつけてやれる。おぬしが望むなら、外された力を取り返したうえに大巫女を討ち滅ぼすことも思いのまま。……どうじゃ」
 アミネの耳元にリリルルがささやいた。
「さすれば、おぬしが新しいイアの大巫女じゃ。強大なイアの巫女共を統べる、真の大巫女の誕生じゃ」
「真の……大巫女」
「そうじゃ。お主はもとは力のある巫女。外されっ子にされて辺境に流されるなぞ、おかしなこと。……思い出してみぃ、あの大巫女がこれまで一柱でも神を封じたことがあるか。否、じゃ。あやつにそんな力はない。せいぜい、大神殿の鏡が持つ神気を自らの力と偽り垂れ流す程度じゃ。力のないものが地位につくと、残されたのは保身ばかりじゃ。自らを脅かすことになりそうな力ある巫女は見つけ次第に最も激しい戦いの予想されるところへ送り込み、殺したりする。つまり邪魔者を次々と殺していくんじゃ、あるいは神鏡で力を吸い取り、おぬしのような外されっ子にして辺境に送る。人の世にとって、これが良いことだとお主は思うか」
 リリルルは血のような舌で唇を濡らし、再び語り始める。
「そのような穢れた存在が新たな世を統べる巫女となってよいか。……否、じゃ。新たな世を統べるは力ある清らかな存在でなければならぬ。その点、おぬしこそ新たな世の大巫女、真の大巫女にふさわしいのじゃ」
「でも……」
「森神の穢れを恐れとるなら、案ずるな。わしが思うに、真の巫女にはそれと分かるしるしが必要じゃ。万人にそれと分かる痕がの。森神の呪いが残した傷痕は見事に蛇の姿を描いとる。これこそ、まさに真の巫女の痕。消え行く森の神に託された蛇。この蛇が大地を統べ、役目を終えた神々と精霊を追い払い、鏡の力を騙る偽りの大巫女の姿を暴き、この人の世を全きものへとしてくのじゃ。……さぁ、真の巫女への道を歩み始めようぞ」
 リリルルの瞳に一層強い光が差した。眼差しはアミネの内側に虫が身を捩りながら入り込み、そこから糸を引いて身体を操るように感じられた。
 巫女として身の清めを第一にしていた時ならば、とっさに意志の力で視線を避け、反撃へと転じていただろう。それはあらゆる存在との融合を拒む、巫女としての習練の現れだった。神殺しと同じく自らを刃で傷つけてさえ己の魂を守る、巫女としての宿命と生きざま。
 だが、今のアミネには操られること、内側に入り込まれ蝕まれていく感触が心地よかった。
 自らの存在が消えて行く。ただ、操られるだけの影。
 ――でも、巫女としてすべてを拒み続けていた時でさえ、私は大巫女の影のようなからっぽでしかなかったのかもしれない。
 ふと、ひとつの疑いが浮かぶ。
 巫女の身体はすぐに浮かんだばかりの疑いを忘れ去ろうとしたが、アミネの内に入り込んだ虫のようなリリルルの気配が、いくつもの糸を放ち、消え去りそうになった疑いをからめとった。
 疑いは身を滅ぼす。
 疑いは巫女として抱いてはならない最大の罪悪のひとつ。
 疑いは自らの存在を否定する悪しき感情と、穢れに結び付くあってはならぬもの。
 だが、消えずにアミネの内に残ってしまった疑いは、次から次へと新たな疑問を呼び覚ました。
 なぜ、森の神は封じられなければならないのか。
 どうして森の神は我々を襲うのか。
 巫女は森をなぜ清めなければならないのか。
 神を封じるとは、本当はどういうことなのか。
 巫女とは何なのか。
 穢れとは何か。

 私のすべては、大巫女に蝕まれていたのではないか……。
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