探偵と科学者after〜新一の多忙な一日縦書き表示RDF


※新一語り(?)です。『平次と哀〜…』とは全然書き方を変えてますので、ご注意下さい。新一も妙にハイテンションです(笑)そちらに対する苦情もお許しください。ではどうぞおすすみ下さい(*^^*)
探偵と科学者after〜新一の多忙な一日
作:楓



新一は愕然としていた。

目の前の光景が信じられず、口を開いても何一つ言葉にならなかった。

リビングのドアに手をかけた姿のまま数分が経ち─────



発した言葉が。





「──────服部、遺言があれば聞いてやる」





怒りを超越した、何の感情も読み取れない声で宣告した。






◇◇◇



とにかく焦っていた。

高校のクラスメイトに『長野にある祖父の田舎に避暑に行かないか』と誘われ、蘭や園子他、野郎共合わせて十数名で長野までやって来た。
そして到着早々何時ものパターンで、その彼の祖父の家で事件に巻き込まれ、推理の真っ最中に阿笠博士からの10連続コール。なんとかかんとか電話に出ると、灰原が行方不明になったと泣き喚かんばかりの博士の声。あの組織との決戦以来、妙に心配性になった博士の考え過ぎだと最初はなんとかなだめようとしたがどうにもならず。

しかし一旦電話を切ってみると、確かに妙な違和感があった。あの灰原だ。博士が自分を大切に思っている事など、疾うに知っているはず。何の書き置きもせずに外出するなんて───もしそうなら短時間で帰宅するハズだ。そもそも博士の言う様に外出すらほとんどしない女だ。

そこまでを瞬時に考え、血の気が引く。
まさか、まさか考えたくはないが、奴らの残党に捕われたのかもしれない─────

最短記録を更新する勢いで事件を解決し、長野県警に引き継ぎ、引き留める蘭や園子を振りきってパトカーに乗り込み国家権力を最大限駆使して駅まで飛ばしてもらい、最終の東京行きの新幹線に飛び乗った。東京駅からも、タクシーの列に割り込み甘い声と顔で順番を譲ってもらって、飛ばして飛ばして阿笠邸に着いたのが深夜12時。静まりかえった住宅街にチャイムを鳴らすのも憚られて、そのまま玄関をくぐりリビングのドアを開けたらこの光景だ。



そう、この光景だ。



オメーらふざけてんのか!!!



◇◇◇



「もう一度聞いてやる──────服部、遺言はあるか」
「ちょ…ちょい待ち工藤!何や何怒っとんのや!?」

必死の思いでたどり着いた阿笠邸のリビングのソファに、何故か服部がまったり寛いでやがる。そもそも何故この男がこんな時間帯にこの家にいるんだ。

「新一君!帰ってきたのかね!?」

………確か博士が人を薄情モノみたいに罵りながら『帰って来い』って叫んだんだったよなそうだったよなオイ?灰原が行方不明じゃなかったのかよ話が違うだろ。

「いやぁすまんのう新一君、気が動転しておって、あの後すぐに哀君が戻って来たんじゃが、そういえば新一君に連絡するのを忘れておったのー」


……………そういえばって…………………………
ハハ、別にもういいけどね………………………………………………………………………


いや全然良くね━━━━━!!


「とにかくどうして服部がここにいるんだ」
「いやぁ勿論工藤に会いに来たに決まっとるやろ!まいったで今日は〜工藤ン家行っても誰もおらへんし携帯も繋がらんしな〜」

携帯?おっかしーな電源は一度も切ってねーんだけど。田舎だったから電波悪かったとか?

「んで、何の用なんだよ。わざわざ大阪から来るなんて急用か?そもそも事前に連絡の一つも寄越せ」
「スマンスマン、とりあえず東京来たら何とかなるわ思うてなぁ。ま、用事言うても簡単やねんけどな。春から工藤ン家から大学通おう思うてな。一応家主の同意、得に来たんや」


──────は?


「あ、ちなみに工藤の両親の許可は貰うとる」


─────────────オイオイ。何だソレ。


「てな訳や、工藤、お互いどー考えても落ちるワケあらへんし、今日は仲良う東都大生になる第一歩や!飲むで工藤!乾杯や乾杯!」


………………………
………………………
………………………。


「……………。わかったソレはもーどーでもいー。ところで」
「ちょい待ち。どーでもエエて何やねん」
「や、オメーのこったから、断っても無駄だろ。父さん母さん認めてるんなら尚更どーにもならねー。諦めた。だからソコはいいんだソコは。だから、さっきから明らかにオカシイだろーが」
「何が変やねん?」


何がって…

いや、視覚的状況的に明らかにオカシイだろ。当事者だからわかるだろ。


「ま、早よ座れや工藤!博士スマン、オレ見てのとーり動かれへんのや、せやから工藤の分のグラス持って来てくれへんか〜?」
「だぁ━━━━━!ソコだソコ!ソコが明らかにオカシイだろーが!!なんでオメー!膝の上に灰原のっけてんだ!!!」


そうだソコだそもそも!そりゃドア開けたまま固まるだろーが流石のオレも!有り得ねえだろオメーのキャラじゃねーだろ灰原哀!


「なんや工藤ヤキモチかいな」
あはは笑わしよんな〜と服部が目の前で笑ってやがる。ハハハハハつられて笑ってやるよ服部。しかし灰原のヤロー相変わらず素知らぬ顔でコーヒー飲みやがって。オメー全く赤の他人事のフリしてんじゃねーよ。

「灰原!オメーも黙ってねーで何とか言え!」
「………嫌よ。無駄な事はしない主義なの。もう一々抵抗するのも疲れたわ」
特に今日はこれ以上動きたくないわね、と心底疲れた様子で話す。どうやら灰原も好きで今の状況に落ち着いてるってワケじゃねーみてえだな。灰原も不本意なんだな。ん、多少は気持ちが軽くなった。


「…………よし、じゃあ」


ドサリと向かい側のソファに座り、ポンポンと自分の太腿を叩いてみる。


「………………………………………………ソレは一体何のマネなのかしら」
「こっち来い」
「絶対イヤよ」
「ッオメーさっき『抵抗するのも疲れた』とか言ってたじゃねーか!」
「そっちにいちいち移るのも疲れるでしょう!?」
「じゃー抱えてやるよ!」
「死んでもイヤよ」
「服部は良くてオレは駄目なのかよ!?」
「そういう問題じゃあないでしょ!?それにこの人は勝手にするのよ手を繋ぐのも抱き上げるのも抱きしめるのも膝に乗せるのも!逃げても『照れるな』とか訳のわからない事言って追ってくるし」
「そーいう問題なんだよ!てか服部オメーは何やってんだよ!?」
「まーまーエエやないか、哀チャンはオレみたいな男前の膝が良いって言うとるんや、アカンで工藤男としてソコは察しな」
「「言ってないし男前ってナニ」」
「うお息ピッタリ」

服部のヤロー、可笑しそうに腹抱えて笑いやがって。しかもオメーさっき何を口走りやがった!空耳か!?

「服部………オメー今まさか『哀チャン』っつったか?」
「哀チャン言うた。」
「───っンだソレ!?『哀チャン』ってなんだ!?服部オメーつい最近まで『ちっこい姉ちゃん』やら『また地下室かい暗いな姉ちゃん』やら『モグラっ娘』やら『根暗科学者』やら言ってたじゃねーか!!」
「ちょおまてコラ!なんぞオレが言っとらん事混じっとるやろ!」
「………………へえ『モグラ』………」
「!?ちゃう!ちゃうで哀チャン!言っとらん!工藤の陰謀や!工藤のアホンダラ、オレと哀チャンのイチャイチャ関係裂こうとしとんのや!」
「「誰と誰がイチャイチャ?」」
「いちいちハモんなやソコ!」

フッ…服部、コレが二人にしかわかんねー絆っつーモンなんだよ………ってちょっと呟いてみただけじゃねーか何でンなクールな冷却光線ビシバシ送ってくんだよ灰原。

「大体なんだ灰原オメーも!博士には『哀君』、黒羽には『哀ちゃん』、白馬にはいつの間にやら『哀さん』、服部には『哀チャン』!!オレの呼び方が残ってねーじゃねーか!!」
「……………いいじゃない灰原で」
「よくね━━━━━━!!」

どー考えてもオレとの関係が一番深いだろ!どうしてオレが『灰原』呼び!?

「分かった決めた明日からイヤ今から変更だ決定な、哀」
「工藤君あなたどうやら私にケンカを売りたいらしいわね」
今日は疲れてるから買いたくはないんだけれど聞き逃せないわ今の発言。

灰原、最後の部分、独り言のつもりか?しっかり聞こえてるぞ………うわ冷却光線が冷凍光線にレベルアップ。灰原ンなコト言わなくてもいーじゃねーかちょっぴり傷ついた──────イヤ駄目だ!ここで引いたら負けだろ服部みてーに押しだ押し!!

「哀でいーだろ哀で!大体、黒羽や白馬なんて数回しか会ってねーハズだろーが!」
「呼んだ?」
「「うどわ!?」」
「哀ちゃーん、こんばんは!久しぶりってか三日ぶり!」



──────────〜〜〜〜〜〜〜〜オメーの登場はいっつもいっつもいっつもいっつも!心臓に悪ィんだよ黒羽ァァァア!!!


…………………駄目だ少し落ち着けオレ。


「………三日ぶりってなんだ。ンな話ちっとも聞ーてねーぞ」
「名探偵に断る筋合いはねーな」
「………………………………博士、前から思ってたんだけれど、この家セキュリティ甘いわよ」
「お…おかしいのー、以前防犯グッズを開発した時にまとめて付け替えたんじゃが………」
「いやいやオレの腕がいーんだよ!なんたって夜はオレの時間だし?」

マジィだろ黒羽その発言。オレはオメーがあの気障な白い怪盗だって気付いてっけど、多分服部知らねーぞ。

「何のこっちゃ?けどな博士、よー考えたらオレも昼間フツーにこの家に入れたで?しかも玄関の鍵開いとったし」

お。スルー。良かったな黒羽、服部って今のところあんまりキッドの正体には興味なさそうなんだよな。キッド自身には妙に意識してそーなんだけど。

「そうよ博士、昼間この人チャイムも鳴らさず普通に侵入してきたんだから。玄関に赤外線レーザーとかやっぱり置くべきよ。古典的に天井から槍でも包丁でもこの際いいわ」
「「「…………槍や包丁って…………」」」

さりげなく怖いぜ灰原。服部と黒羽の頬に流れてる汗は、オレの目の錯覚じゃねーと思う。

「とにかく工藤君。貴方に『哀』なんて呼ばれる筋合いないから。今まで通りにして頂戴」



……………………………………
……………………………………
……………………………………



「………哀チャン、工藤完璧ヘコんでんで。ちと可哀想なんやけど流石に」
「う〜ん、アレは言われたらフツーにヘコむね。哀ちゃん別にいーじゃん呼び捨てくらい」
「嫌」
「「なんで?」」



「……………………嫌よ恥ずかしいものそんなの」


「「………………」」





…………は!!一瞬遠い世界に行ってしまった。スゲーこんなコトってあんだなーあいつらの台詞が口パクに見えた。現実逃避ってこえーな。



…………って人が小さくヘコんでる間にオメーら和気あいあいと会話続けてんじゃねーよ………もうどうでも良くなってきたけどよ………



「けど哀ちゃん今日はイヤに可愛いカッコしてねー?似合いまくってるけど」
「せやろ?ホンマ今日連れて歩いとって自慢っちゅーかなんちゅーか」
「………博士が買ってくれたのよ。私には似合わないって断わったんだけれど………」
「いや、スッゲー似合ってっぜ?」
「ホンマや、しかし博士にンなセンスあったとはなぁ」

あらためて見ると確かに灰原のカッコが何時もと違うな。もう博士ン家に着いてから突っ込みドコロが満載すぎて、全然気付かなかった。

白いキャミソールタイプのワンピース。軽くAラインタイプで胸の下辺りで切り替えられててリボンが揺れて。シンプルだけど可愛いし似合ってるな、確かに博士にこんなセンスがあったとは………


──────ん?


「…………なぁ博士、灰原が着てる服ってさぁ」
「おぉ!気付いたかね新一君!そうじゃよ新一君が選んだ服じゃよ!」
「あ、やっぱり?」
「「へ?」」


『へ?』って何だよ文句あんのかオメーら揃いも揃って。


「───え?博士が選んだんじゃあなかったの?」
「いやぁ、そのつもりだったんじゃが、ワシもどんな店に行ったらいいか不安でのう。新一君に付き添ってもらったんじゃ。新一君もエラク張り切って選んでくれてなぁ。もう一枚贈った方がワシの選んだ方なんじゃよ」

博士が照れくさそうに灰原に話している。
そーだ思い出した。
組織の件が一段落して、博士に呼び出されたんだった。
無事に戻ってきてくれて、このまま一緒に住んでくれないかと言ったら泣きそうな顔で頷いてくれた灰原に、娘の様な事をしてあげたいからって。涙ぐんで嬉しそうな博士を見てたら、ホントこっちまで幸せな気分になったんだった。オレも正直子供服のブランドや流行に自信がなかったから母さんに連絡してみたら『とっておきの店』を教えてくれたんだった。んで博士と二人で熱中して選びまくったんだよな…

オレはあらためて、上から下まで灰原を見る。うん、やっぱ………


「灰原、オメー似合ってるぜソレ」


素直に笑って言ったら、灰原とばっちり目が合った。
その頬がみるみる赤く────赤く??


「お……おい灰原オメー、もしかして照れ」
「脱いだ方がいーなソレ」
「せやでこんなん着とったから事件に巻き込まれたんや」
「………な!?」

オメーら人のセリフ遮って言う言葉がソレか!!?
しかも事件って何だ何の事件だよ聞いてねーぞ!?
あ、正面から黒羽のヤロー手まで握ってやがる!服部はずっと灰原を膝に乗せてやがるし!

「えー事思いついたわ、次からオレが哀チャンに似合う可愛え服買うて来るから!大阪帰りゃ浴衣も着物もオカン腐るほど持っとるし!」
「オレもぜってーメチャ似合いまくる服、今度持って来るから!あ、アクセサリー全般は勿論任せてそんじょそこらの代物じゃねー最高の質のモン持って来るし!服部!ぜってー負けねえからな!」
「アホンダラこっちのセリフや!」



………………

完璧オレを無視して話を進めてやがる。



大体オレは今日避暑旅行四泊五日の初日にトンボ帰りしてんだぞ。新幹線タクシー代自腹だぞ現在時刻夜中の1時だぞわかってんのかオメーら。特に服部!



「工藤には負けへん!!」
「工藤なんかに負けねーよ!!」





ぷちん。





「テメーらまとめてとっとと帰れ━━━━━━━!!!!!」






ザケんな!!オレもゼッテーオメーらなんかに負けねえよ負けてたまるかバーロォ!!!




※『東都大学〜』で言っていた〈平次が服を贈るきっかけ〉や〈いつも抱いてもらってる〉発言は、ここの事件が発祥です(笑)この後の年月に『添い寝』イベントもやってきます。
本当は白馬探偵も出演予定でしたが、紳士ですので夜中の登場は辞退されました。
読んで頂きありがとうございました!













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