表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/309

49 悪魔の主 vs 不動なる制圧者

 ウッドアーマー《不動》をまとった俺は、敵の数を視認する。


 ダンジョンマスターが一体に、その取り巻きのサーヴァントデーモンが二十体ほど。

 

 既に取り巻きは火の球を抱えており、投げる準備は万端のようだ。


 数は向こうが上だ。けれども、


「主様! 六臂の準備、整いました! 存分に戦いください」

「おう、ありがとうよ、サクラ」


 負ける気はしない。

 俺は《不動》の腰から樹木のアンカーを伸ばし、地面に埋め込む。

 そして、背中から伸びた六本の腕を、敵に向ける。


 《不動は》魔法鍵に登録した、アーマーの形態の一つだ。

 その機能は、とても単純。

 一面と、六臂という多腕。つまり、


「大量の発射機構だ……!」


 俺は樹木弾を発射する。

 いつものよりも大きな、大砲のような弾だ。


 ――ドゴン!


 と、重い音と共に、弾丸はダンジョンマスターの取り巻きに直撃する。


 ドゴンドゴン、と次々に押しつぶして行く。 


「キィ……!!」


 俺の行動を見てか、サーヴァントデーモンが火炎を投げつけてくる。

 だが、避けはしない。 


「そのくらいの火は、対策済みなんだよ」


 ヘスティの襲撃を受けてから、ウッドアーマーの作り方は変えている。

 何重もの層を作り、耐火性を増している。


 食らっても黒く焦げるだけで済む。

 熱さなんて感じない。


 そんな火炎の海の中で、俺はゆっくりと狙いをつけ、


「樹木弾、追加発射」


 火炎ごとサーヴァントデーモンを、樹木の弾丸で撃ち落とす。更に、


「一発で終わると思うなよ……!!」


 六本の腕から、充填された弾丸を発射する。

 連射され、次々にサーヴァントデーモンを砕いていく。すると、


「グゥ…………コノチカラ……ハ……ナンダ……!!」


 ダンジョンマスターが叫びながら、突っ込んできた。


「あん? なんだ、ダンジョンマスターって喋れるのか」


 けれど、近づけさせない。

 弾丸を発射して、食らわせて、はじき返す。


 血反吐を吐きながら、平原を転がったダンジョンマスターは、強い敵意のこもった眼でこちらを睨んでくる。


「クゥ……オオオオ……!!!」


 そして叫ぶと同時に、全身からサーヴァントデーモンを生みだし始めた。

 今までよりも、早く、そして大量に、――湧いてくる。


 あっというまに取り巻きの数は百を超えた。一秒おきに数体増える感覚だ。

 こちらが樹木弾で削っていても、それだけ増えていく。


「なるほど。六本じゃ足りないってか……」

「……ッ!」


 俺の声を聞いてか、ダンジョンマスターが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 確かに、この状況は大変だ。


 百体以上のサーヴァントデーモンに囲まれ、火炎を投げつけられている。


 六本じゃ、間に合わないようだ。

 だが、別にかまわない。


「甘いぜ、ダンジョンマスター。……俺には、まだ上がある」


 それを使おう。

 俺は腰から伸びるアンカーを、地面から、森の木々に伸ばす。


 そして、ウッドアーマーは森を取り込み、さらに変化した。


「追加発射モード――《不動・千手》!」


 背中に四〇本の腕を持つ、大きな姿に。


「……!?」


 ダンジョンマスターは驚き、息をのんだ。

 そうか、モンスターでも、恐怖は感じるんだな。


 けれど、もう遅い。


「行くぞ、千手」


 《不動・千手》が動き出す。

 背中の多腕が回転し、次々に、弾丸を打ち出していく。


 さながら、ガトリングのように、樹木の弾丸を吐きだしていく。


 狙いはアンカーでぶれることはない。

 次々に、流れるように、敵を砕く。


 圧倒的な連射性と安定性による制圧力。

 それが、


「《不動》だ……!!」

「グ……オ、オマエハ……――ナンダアアアアアアアアア!!!」


 最後の力を振り絞り、ダンジョンマスターが弾丸の雨を突っ切ってくる。

 いい度胸だ。けれども、


「これで仕上げだ。お前は、そこで砕けてろ!」


 四十本以上の腕から、同時に発射された樹木弾。


 それをまともに浴びたダンジョンマスターはその場で全身を砕かれて、地に倒れた。


 後に残るのは、真っ黒に輝く、巨大な魔石だけだった。


 ●


 ディアネイアはまどろみの中から目を覚ましていた。


 大きな大木に背中を預け、薄く開いた目で、彼が戦っているのをみていた。

 この前よりもずっと近く、そして遠い所で戦っている彼を。


 圧倒的な数の差を、一人で圧倒してしまうその力を、みていた。


「……ああ、遠いなあ……」


 多少は強くなった気でいた。

 はぐれ竜くらいなら一人で狩れるし、相応の魔法も使えるようになった。


 けれど、彼にはまだ全然、届かない。

 その強さを見るだけで、身震いしてしまう。


「強くなりたいな……」


 そんなふうに言葉をこぼしていると、彼が木の鎧を解除しながら、こちらに歩いてくる。


「ふう、流石に《千手》にすると、樹木と魔力の消費量がハンパないな。腕を千本出さない、簡略版だったのに」

「いえいえ、主様の魔力、三割も減ってないですよ?」

「おう、マジか。使い慣れていないから疲れてるだけで、意外と消耗してないんだなあ。……もう少し、普段から使うようにするか。果物の収穫とかで」

「ふふ、その時は、お手伝いしますね」


 彼は肩をグルグル回しながら、余裕そうに和服の少女と喋っている。


 その光景に、ディアネイアは憧れた。


 ……私も、あの人みたいに、強くなれれば……。


 街を守れるようになるんじゃないか、と思った。

 そして、自分もあんな風に、彼の傍に立っていたいと、そう思ったのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●コミックス最新3巻発売のお知らせ
4/19(金)に『俺の家が魔力スポットだった件』のコミックス3巻が発売されます!
 面白いので是非お手に取って頂ければ嬉しいです! 
↓の画像はコミックス3巻の表紙です。クリックでコミックス3巻の公式サイトに飛べます。
avsf2uwqhujmfl939pohhpkl2j8k_1255_e6_k5_5sbz.jpg
  ●同時連載作品のご紹介
こちらの連載も応援して頂けると嬉しいです!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら、世界を回る冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
https://ncode.syosetu.com/n2477fb/

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ