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208.軽い力で砂遊び

 午前中から酒というのもアレなので、とりあえず夜までどこに置いておこう。


 そう思って酒箱を、砂浜に設置したパラソルの下に運んでいると、

 

「ダイチおにーさーん。なにしてるのー」


 アテナが駆け寄ってきた。


「それ、お酒? 街の方にお買い物に行ってきたの?」

「いや、貰いものだ。ちょっと近くに知り合いがいて、そいつらがくれたんだよ。というか、街ってこの近くにあるのか?」


 以前、ヘスティから貰った地図では、湖と武装都市の距離はかなり離れていた気がするんだけど、記憶違いだったかね。


「ううん、ここから遠いけど、お姉さまと一緒にどこか行くって言っていたから。テレポートで街の方に行ったのかと思ったの」


 ああなるほど。ディアネイアにこの周辺を案内して貰う話を聞いていたのか。


「まあ、どこか行くのは間違いないが、午後からだな」

「そうなんだー。午前中ならついていきたかったんだけど、私は午後から湖での修行タイムだからなあ。うん、お姉さまを応援するだけにしよう!」


 なんで散策するだけなのに応援するのか分からないが、楽しそうに笑っているからいいか。それよりも、気になったのは、


「修行タイムってここでやるのか?」


 アテナはカレンと魔法の練習してるとは聞いていたけれども。旅行先でもやるんだな。

  

「うん。一日休んだら遅れを取り戻すのが大変だからね。リゾートに来ていても、やらないとって思って。……あと、カレンがダイチお兄さんの前ってことで、気合が入って張り切っちゃってるのもあるんだけどね」


 アテナは笑いながら言ってくる。


「いや、俺の前だと気合が入るってちょっと意味が分からないんだけどな」

「うーん、力を発揮している所を見せたいんだと思うよ。ほら、カレンは自分の力を見せることが挨拶って思っているから」

「なんというか、竜王の挨拶って奴は分からんな。というか、カレンの力を見せるって、どんな修行なんだ?」


 聞くと、アテナは数秒悩んでから、砂浜と湖を見た。

 それからゆっくり口を開いた。


「えっと、普段はダンジョンに放り込まれたりすることが多いけど、ここなら砂浜を走ったりとか、湖を泳いだりとか。あとはカレンの手加減された攻撃を受け流したりとか、かな」

「かなり体育会系だな」

「うん。でも、臨機応変に魔法を使いこなす為の修行だから、基本的に魔法を使っているよ。たとえばこの砂浜で防御の修行をする時とかは、砂を操って盾を作ったりするしね」


 アテナはそう言って両手で砂をすくった。

 そして、静かに呪文を唱え始めた。

 

「――我が手に宿る自然の力よ、硬化せよ。《サンド・シールド》」


 彼女が呪文を唱え終えた瞬間、両手にあった砂は小さな円形の盾と化していた。


「ほら、こんな感じに、自然にあるものを盾にしたりして、カレンの攻撃をかわすんだ。……

私は修行中だから、このくらいしか出来ないけどね」

「へー、凄いな。砂の盾か」


 俺も樹木や、土や水を使った事はあるが、こんなにサラサラしたものを使った事は無いんだよな。

 ちょっと見よう見まねでやってみるか。

 俺は砂浜に手を突っ込み、


「ええと……砂のシールドを思い浮かべてっと、――《シールド》!」


 とりあえず、頭の中にイメージした盾の形に構築してみた。すると、


 ――ズオオッ!


 という勢いで、目の前の砂浜が盛り上がった。

 そして出来あがるのは、俺の体を隠せるくらいの大盾だった。


「……見よう見まねにしては、ちょっとデカかったな」

「え、あの、ここまで大きいと、もう盾というか壁じゃないかな。私のよりも何倍も分厚いし。――だ、ダイチおにーさん、砂でモノを作るの、初めてじゃないの?」

「いや、初めてだよ」


 真似をして大きさを間違える位だからな。

 そう言うと、アテナは口をぽかーんと開けていた。


「は、初めてで、こんなにディティールも細かい盾を作れるなんて……。本当にダイチお兄さんは器用で凄いね!」

「いや、アテナ。俺はそこまで器用じゃないぞ?」 

「え。そうなの!?」


 俺の言葉にアテナは目を見開いてビックリしているが、そんなに驚く事ではないだろうに。


 造詣のセンスも技術もまだまだだし、ちょっと細かく装飾出来るようになっているのも、ゴーレム作りの経験があるからだ。


「ちょっとモノづくりに慣れてるから、応用しているだけだからな。砂を操る技術はまだまださ」

「ほえー、ダイチおにーさんでもそう思うんだね」

「ああ、だから、砂でのモノづくりも練習していこうと思っているよ」


 意外と砂を使ったゴーレムを作っても面白いかもしれない。

 そう思ったら、昼飯までの空いた時間を使って、試してみたくなった。


「――そうだな。今から軽く砂で遊びながら練習するか」


 ぽつりとつぶやくと、アテナはハッとした顔で俺の目を見た。


「今からやるの? なら、ダイチおにーさん、私も混ざって練習してもいい?」

「うん? 別にかまわないぞ」

「やったあ! それじゃあ私、ダイチおにーさんの魔法を見て、一杯勉強するね!」


 アテナは嬉しそうに言いながら、砂浜に手を突っ込み始めた。

 俺も俺でゴーレムを呼びよせながら砂浜の砂を採取していく。


 そんなわけで昼飯までの間、俺はアテナと共に、ちょっとした砂遊びをしていくことにした。


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