―sideプロシア― 仕事上がりのご褒美
夕方。
ディアネイアはダンジョンから舞い戻ったアテナとカレンから、報告を受けていた。
「なんだって!? ダイチ殿が往来で裸に!?」
「お、お姉さま、少し落ち着いて。水着、水着だったよ」
「そ、そうか、すまない。取りみだした」
書類仕事が積み重なっていたので、やや寝不足だった所に入ってきた情報だったから、勘違いをしてしまった。
感情のコントロールが上手くできないのは駄目だな、と頷いてから、再び話を聞くことにする。
「それで、ダイチ殿は武装都市にあるビーチに行きたいと?」
「ええっと、使えるなら使いたいって言ってたよ」
ふむ、とディアネイアは頭の中で想像をする。
……ダイチ殿はとても強い力を持っているから、まずプライベートビーチに案内するのが安全であるのは確かだ……。
更には、
「カレン。貴方や、他の竜王たちも行くのだよな?」
「ええ、そうですよディアネイア。私以外にも、アンネとヘスティ、マナリルが同行するのが確定になっています。……恐らくラミュロスも来るでしょう」
とのことだから、相応に空間を取っておく必要があるだろう。
彼女たちは彼女たちで、コーティングなどの手段を使い、周辺を気遣った対応をしてくれるだろうから、危険性は特にないだろうが、
「何か用意しておくものはあるか?」
「いえ、特には。今回のはただの慰安旅行ですからね。しっかり休むこと以外、目的はありませんから」
竜王側からは特に要求もないようだ。
ふむ、それなら普通に行っても良さそうだな。
「ね、ね、どうかな。行けそうかな」
「ん、ああ。許可は間違いなく出すぞ」
「いや、そうじゃなくて。お姉さまも行きたいでしょ?」
「まあ……そうだな」
最近は仕事づめで休みを取れなかった。
だからここで一気に取るのもアリだ。
騎士団長からは『いい加減休んでください』と言われてしまう始末だし、体を休める良い機会だと思う。ただ、
「水着……サイズが合うだろうか」
「あー、そういえば、お姉さまのサイズ、大きくなったよね」
どことは言わないのが優しさだろうか。
ずっと城で座り込んで仕事をしていた為、割と体が重くなっている。
修業はしているが、基本的に運動するタイプの修行項目でないため、ちょっと油断していたようだ。
「シェイプアップするのに、数日はいるな……」
それでも、上半身の肉付きが良くなっているので、水着も新たに調達しなければなるまい。
……流石に、だらしない姿をダイチ殿にみられる訳には行かんしな……。
「因みに、日程の方は、決まっているのか?」
「ううん、そういうのは決めてないよ」
「そうか。ならば体を調整してから、ダイチ殿と相談するとして……」
今日の所は、装備品の買い出しからスタートするべきだろうな。
「アテナも行くのだよな?」
「うん、ダイチお兄さんと遊びたいからね」
「そうか。ならカレン、アテナ、この後、時間はあるか? 水着の買い出しに行こうと思うのだ」
ここで必要なモノをそろえてしまうのが楽だろう。そう思って買い物に誘うと、
「あ、そうなの!? じゃあ、私も行く!」
「では、私も付いていきますね。水着はこちらに持ってきていませんから、新しく買わねばなりませんし」
「了解だ。――では、仕事をすぐに終わらせるから、少し待っていてくれ」
この後には、ダイチとの楽しいひと時が待っているのだと、その思いを原動力にして、ディアネイアは残った仕事を一気に処理していく。