17.どんどん増えてどんどん高く
率直に言おう。
やり過ぎた。
いつのまにか我が家が七階建になっていた。
「これ、もうビルだな……」
「そうですねっ」
サクラはにこにこつやつや、笑顔である。
「エレベーターも、付いているんだな」
「はい、魔力で似たような装置を作りました!」
寝て起きて食べて散歩して、サクラと仲よくして寝る。
こんな生活を一週間続けた結果がこれである。
正直、かなりただれた生活をしてしまっている自覚はある。
「いや、でも、俺、回数はかなり少ない気がするんだけど」
むしろ、一週間のうち一回しかしていない。
それ以外は添い寝してたくらいなのに。
どうしてこんなに出来たのだか不思議である。
回数的に言えば、せめて一階層だけだろう。
「主様の魔力が強すぎるので、一度しただけですぐに満タンになるようです。だから一度した後、しばらくの間は、触れるだけでも出来るようになったのだと思います」
「え? つまり……添い寝しただけで増築されると?」
「はい!」
おいおいおい、
更に増築方法が簡易化されたよ!
いや、別に家が広くなるのは良いんだけどさ。
「ここまで来ると、下の方とか見えないんだよな」
一直線に立っている物だから、窓から下を覗き込んでも、中がどうなっているのか分からない。
警備とか大丈夫なんだろうか。
ここ数日、最上階と一階以外は出入りしていない。
一応、同期して確かめたり、ゴーレムとかには任せているけどさ。
「大丈夫ですよ。主様のゴーレムがあれば、基本的に侵入者なんて楽勝です!」
確かに、侵入者は即座に排除するようにしている。
二階には、あのリンゴ収穫用の刃物ゴーレムがスタンバイしているし、三階には岩で作ったゴーレムを置いてみた。
重みで床が抜けるかなあ、とも思ったが、サクラというか、我が家は魔力でコーティングされているらしく、かなりの重さに耐えられる頑丈さがあるらしい。
更に、そのほとばしる魔力お陰で、弱い虫とか、獣とかが迷い込んでくることはない。
盗賊や、強盗などにも、まだ襲われた事は無い。
「だからまあ、警備とかはオッケーだとしても、――部屋の使い道がないんだよな、本当に」
一階が出来ただけで、使い道で四苦八苦していたのに、それが六つ重なった。
どうしよう。使い道に悩む。
選択肢がリンゴ置き場か、リンゴの木置き場か、ゴーレム置場か、人狼が持ってきた食糧置き場しかない。
というか、それが一階だ。
一階と最上階しか使ってないんだけど、いいのかこれ。
「そこまで急いで決めないでもいいんじゃないでしょうか。別に腐るものでもありませんし」
「まあ、それもそうなんだけどな」
グダグダ言ってきたが、別に悪いことではない。
特に、最上階の景色はすばらしいんだ。
朝昼晩で、それぞれの空がきれいに見えるし、
「ここまで遠くを見渡せるから、地理も分かってきて面白いんだよなあ」
自分の家を中心に、西には岩場が、東には森がある。
森の奥の方には街らしき物体が見える。
あそこが、姫魔女の言っていた王都だろうか。
「こんな見晴らしがよくて、住み心地のいい場所で、毎日食っちゃ寝出来るんだから、贅沢だよな」
「ふふ、褒めて頂いて、ありがとうございます」
それにこの頃、自宅の上空を飛竜が飛ぶことも無くなったし。
空を羽ばたく音で睡眠を妨害される事もない。
この高さがあると、自宅の周囲は完全に俯瞰できるし、防衛する時の見張り台にもなる。……まあ、同期があれば、見る必要すらないけれども。
視力も多少は上がっているので、森の中にいる人狼なども見えるし。
……というか、あいつら今日も旅人を案内してんだよな。
なんでもこの頃、金を稼ぐことを覚えたらしい。森を抜けたい人間と交流したり、物々交換をして、俺への食いものを調達していたりもする。
王に渡す食料が毎日同じものでは駄目だ、という気持ちだと、人狼のリーダーからは聞いている。
さすがに悪いので断ろうとしたら、『至らぬこの身と命をもってお詫びをします』とか言い出したので、断れなかった。
「まあ、平和的にやってて、俺に迷惑掛からないなら、なんでもいいけどな」
うんうん、と頷いていると、人狼がこちらを向いた。
どうやら俺の視線に気付いたらしい。
相互の間で数百メートルの距離があるのだが、
『我が王の魔力は強すぎるので、他人の視線とは異なっています。故に、我ら人狼は、主様の視線であれば、どれだけの距離が離れていようと、感じることが出来ます!』
なんて言われてしまって、現に今も気づかれている。そして、
「うわ、人前で土下座すんなって、あいつら」
こちらを向いて、膝をついて礼をしまくってきている。更には、
「我らが王よ――!! 我々は今日も、我らが王のご命令通り、平和的に過ごしておりますぞ――!」
は、恥ずかしい。
土下座りながら、滅茶苦茶大きい声で言っている。
恥ずかしいから本当にやめてほしいんだけど!
旅人もすっごくビックリしてるしさ!
「これ……あとで人狼のリーダーと話さないと駄目だな」
「慕われてるんですよ、主様は」
あれは慕っているとかそういうレベルじゃないと思う。
このまま恥ずかしい目にあうのも嫌だし、言い含めておくとしよう。
「……でもまあ、こうして、色々な場所を観察できるようになったのも、家が大きくなったからだよな」
本当に、悪いことじゃない。
だから、もうちょっとだけ、拡張拡大しても、いいのかもしれないな。
続きは現在執筆中です! なるべく早め(昼とか夕方とか)に出せるように頑張ります!