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153.竜王の休憩タイム

樹木と葉っぱを使って適当に組んだベッドの上にマナリルを寝かせて数分後、


「うん……? ここは……?」


 マナリルは、うろんな瞳をしながら体を起こした。


「おー、起きたのか、マナ。調子は大丈夫か?」

「……うーん? 調子は……らいじょうぶ……。でも、人が多いところに行ったらまた……」


 問いかけると、マナリルは寝ぼけた目のまま首をボソボソと呟いていく。

 まだ半分寝ぼけているようだな。

 

 ただ、数十秒もすれば、やがて意識ははっきりしていったようで


「えっと……!? ――ご、御免なさいダイチさん! わ、私、何を言って」


 目をバチッと開くと、ベッドから立ち上がって降りようとし始めた。けれども、


「――っとと?」


 そのままベッドの上に倒れこんでしまった。


「ああ、まだ本調子じゃないみたいだから、寝てるといいさ」

「で、でも……」

「急ぐ用事とかは無いんだろ? なら、ゆっくりしていけよ」

「……う、うん。じゃあ、お言葉に甘えて」


 マナリルはそう言って、ベッドの上に腰かけた。

 すると、そのタイミングで森の方からへスティがゴーレムと一緒に歩いてきた。


「あ、起きたんだ、マナリル」

「ええ、どうにか、ね。ヘスティは何をしているの? ええと、ゴーレムをひきつれて」

「森の水を取ってきた。近くにある、比較的、普通の水。取ってくるのはそれで、いいんだよね?」

「おう、サンキューな、ヘスティ」


 魔力量が少ない水場がこの辺りにあるということなので、ゴーレムに取りに行ってもらったのだ。


「酔ってるけど、体に悪い影響が出てはいないから、アナタの家の水でも、大丈夫なのに。むしろ回復すると思うけど」

「まあ、念のためな」


 また酔われても困るから、今回はこれで良いだろう。

 そう思いながら俺は、ゴーレムが取ってきて濾過した水をコップに注ぎ、マナリルに渡した。


「あ、ありがとう。……それにしても、とんでもないものを内包していたのね、あのゴーレム。少しびっくりしたわ」


 水を受け取りながら、マナリルはジュースサーバーゴーレムに目をやっていた。


「個人的には、あの中に含まれているリンゴジュースは飲みやすくて美味しいと思ったんだけど、ちょっと失敗だったから作りなおすわ」

「いや、それは私の体が耐えきれなかったから悪いんだし、気にしないで。普通の竜王なら格別の回復薬になったものだから。でも、私が驚いたのは、あのゴーレムが水もれしないってことなの」


 驚くポイントはそこなのか。


「ええ、魔力が強い水は保存するのが大変で、特殊な容器を使わなきゃはじける事もあるのよ」

「まあ、色々工夫して作ってるからな」


 しかし、流石は湖の竜王だな。

 水については詳しいようだ。そしてかなり舌も回るようになってきている。


「調子は戻ってきたか?」

「え……? あ、そうね。もう、平気よ。この地では、体の調整がとてもうまく行くから、すぐに不調が治ったわ」


 そう言って、マナリルはベッドから降りて立つが、まだまだ顔色は悪い。

 コップを握る手も震えているし。足元も不安だ。


「いや、治りきって、ない」


 へスティも冷静に突っ込んでいる。だから、

  

「もうちょっと休憩しとけ」


 俺とへスティでベッドに押し戻した。

 流石にこの状態で放り出すわけにはいかん。


「うう……竜王なのに子供扱いされるなんて思わなかったわ……」

「見た目が見た目なもんでな」


 ヘスティと並んでいると幼女と少女にしか見えないし。

 俺は魔力の感知とかまだ殆んど出来ないから外見で判断する以外ないしな。


「……なんというか、初めてよ。そんな見方されたの」

「不満だったらもう少し扱いを変えるけども」


 言うとマナリルは、ふるふると首を横にふった。


「ううん、このままでいいわ。このままの方が気楽だし」


 ふむ、ならばこのままで行こうかね。 


「んじゃ、そのまま休んでおいてくれ。俺は飲み物の改良してるから」

「うん、あ、でも、元気になったらでちょっと味見を手伝ってもいい? 改良したの、飲んでみたいわ」

「別に良いけど。倒れるなよ?」


「ふふ、もう大丈夫よ。それに、あのジュース、ちょっと癖になる位の美味しさだったから。もうちょっと飲んで慣れておかなきゃ、ライブに支障が出ちゃうもの」


 マナリルは悪戯っぽくほほ笑みながら、そう言った。


「そうか。じゃあ、しっかり作るから、今のうちに味わってくれ」

「ええ、ありがとう、ダイチさん」


 そうして俺たちの午後の時間は、飲み物の改良と味見によって過ぎていった。

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