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152.竜とも仲よく

 地下から地上に戻ると、ちょうど庭の外れにマナリルが来ていた。

 彼女は何故か両拳を前に構えていて、戦闘態勢っぽい状態だったのだが、


「おう、マナリル。そんな格好でどうしたんだ?」


 俺が声をかけると、ほっとしたような顔で、手を下ろした。


「よ、良かった。地下から何かが来るのは感じていたけれど、アナタたちだったのね」

「他に誰がいるんだよ」

「い、いや、モンスターが出てきたら、私一人で対処しないといけないかなあって思って。ほら、人に化けるスライムもいるから」

「へえ、そんなモンスターもいるのか。……でも、マナリルなら、感知とかで俺かどうかわかるんじゃないのか?」


 確か、竜の中で一番感知能力が高いとか、言われているそうだが。それでもモンスターか人か見分けがつかないんだろうか。

 そう言うと、マナリルはすねたように、唇を尖らせた。


「アナタの力が大きすぎるから、私の力じゃ微細な感知が出来なかったの! よくよく考えればスライムがそんな力を持っていたらおかしいけど、もしもを考えてしまったの!」

「ああ、うん、なんかすまん」

「い、いや、こっちもなんだか感情的になって御免なさい」


 マナリルはしゅんと身をすぼめた。

 この竜王は、比較的見た目通りというか、感情を良く出してくれる竜王なので分かりやすい。いや、ヘスティはへスティで老成していて分かりやすいけれども。


 うん、胸の大きさをアンネとかと比較すると、露骨に大人しく不機嫌になるしな。


「……なに? どしたの、我の胸元を見て」

「いや、なんでもない」

「……」


 今回は不機嫌になる前に話をうち切れたようだ。

 まあ、ちょっと半目を向けられたが気にしないでおこう。


「で、マナリルは何をしに来たんだ?」

「え? あー……その、平原のライブ会場に行ったんだけど、人が沢山いたから。ちょっと逃げてきちゃった」

「人ごみ苦手なのか?」

「す、少しだけね。うたっている時は気にならないんだけど、こういうときは、少し苦手」


 なるほど。その気持ちは分からないでもない。

 沢山の人が近くにいると体力と精神力がゴリゴリ削られていくものな。満員電車とか最たる例だし。まあ、それはともかく、


「ってことはさ。マナリルは今暇なのか?」

「え? まあ、そうね」

「そりゃ有難い。ちょっと今度のライブに持っていく飲料を味見してほしいんだけど、いいか?」


 流石に口に合わないものを持っていって飲ませるのもアレだと思っていたんだ。

 だから聞いたのだが、マナリルは頷きながらも戸惑っている。


「それは、良いけど。飲料ってなあに?」

「ああ、りんごジュースを希釈したものでな、飲みやすいかどうか判断して貰えると助かる」


 そう言って、俺は一体のゴーレムを呼びだす。

 昨夜に作ってからずっと、水場でキンキンに冷やしていたジュースサーバーゴーレムだ。


 そのゴーレムの指から出てくるのは、先ほど伝えた希釈したジュースで、俺は樹木のコップになみなみと注いでいく。


「す、凄い機能ね」


 その様子を見てマナリルは唖然としていた。ヘスティはヘスティで、分かる分かる、というような頷きをしているし、なんだか変な気分だな。ともあれ、


「ほい、飲んでくれ。一応、ごくごく飲めるようなスポーツドリンク的な口当たりを目指してみた」


 気になるのはリンゴジュースと水を一対十で混ぜ合わせたものなんだが、味的に濃すぎないか、だ。


「それじゃあ、ええと、頂きます」


 マナリルは俺からコップを受け取ると、静かに中身を口に含んだ。


「あ……冷たくて美味しい……」

 

 ごくりごくりと、どんどん飲んで、そして、


「……ふ」


 一息つくようにして俯いた。

 ただ、そこから数秒、俯いたままなにも返事がない。


「あれ、マナリル? どうした?」

「……」


 聞くも反応はふらふらと体を揺するだけだ。

 大丈夫かと思って、肩を掴んで、彼女の顔を窺ってみると、


「きゅうぅ~~」

「うん?」

 

 彼女の顔は真っ赤になっていた。

 その上、ふらふらと、体をこっちに倒してきた。


「ととっ」


 俺は咄嗟にコップとマナリルを掴み支える。

 軽い体重が腕にかかる。

 どうやら目も回しているらしく、体に力がない。


「これ、どうなってるんだ?」


 飲ませたのはただのソフトドリンクなんだけど。

 なんでこんな酒で酔ったみたいになってるんだ。


 ……精霊に引き続いて、この竜王も興奮したのか?

 

 なんて思っていると、ヘスティが俺の横に来て、コップに視線を当てていた。


「ちょっと、我も、味見していい?」

「おう、構わんけど……」

 

 ヘスティはコップの中の液体を指につけて舐める。

 そして数秒口の中でもむもむと味わってから、こちらを見た。


「この液体、強い魔力が含まれる樹木の中で熟成されてる。成分がすごく強化されたみたい。だからアルコールじゃないけれど、魔力で酔った可能性が、大きい」

「マジか」


 そんな現象も起きるのか。


「きゅうう~~目が~回る~」

「……まずは、マナリルを介抱するか」

「ん、そうだね」


 とりあえず、俺は目を回した竜王を寝かせるベッドをこしらえることにした。


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